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◼︎アジアは大火事で燃えている(西部邁ゼミナール)政治思想家 伊藤貫

◼︎アジアは大火事で燃えている(西部邁ゼミナール)政治思想家 伊藤貫

評論家 国際政治・米国金融アナリスト 伊藤貫 【著書】『自滅するアメリカ帝国 - 日本よ、独立せよ』(文春新書)

 【ニコ動】
西部邁ゼミナール:アジアは大火事で燃えている 2014.04.13


19世紀ヨーロッパにおける【勢力均衡による外交戦略(Balance of Power Politics)】⇒ 勢力均衡を目指す古典的な外交術を現代に蘇らせるべき。

日韓、日中、日米の国家関係が異常なまでの混乱・混迷を見せつけているいま、伊藤貫の洞察と方針が極めて重要なものになると考えられてならない。

遠路はるばる(※長らくワシントンD.C.在住)お越しいただいてありがとうございます。

伊藤貫
懐かしいです、はい。

素朴な質問を最初に。僕の記憶では1980年代まで、米ソの両大国の冷戦構造、つまり二大勢力の均衡が可能かどうかというそんな話があって。

[*二大国の勢力均衡の崩壊 米ソ冷戦(1980年代)]

90年代に入り、アメリカの【クリントン政権】時代に『アメリカの一極集中』じゃないかという話になって、突如変わって。

[*米国による世界一極集中 クリントン政権(1990年代)]

今世紀に入って、ブッシュがその延長で【ユニラテラリズム】、自国中心主義を貫こうとして、トルコとアフガニスタンなどでいろんな失敗を演じて。

[*Unilateralism:自国中心主義(ユニラテラリズム、単独行動主義)ブッシュ政権(2001年〜)]

イラクアフガニスタン侵攻の失敗 ブッシュ政権(2001年〜)]

それと同時に、BRICs ブラジル、ロシア、インド、中国が出てきて、それを含めて『多極分散』、世界のPole、「極」ね。世界の極は「多極化」しておると。

[*BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国) 世界は多極化するといわれ]

そして、最近になったらね、BRICsの経済もバブル(崩壊)でぐちゃぐちゃになる。先進国は言うに及ばずぐちゃぐちゃ。そういう時代に入っている。

[*BRICsも先進国もバブル崩壊で無極で混沌]

さて、今の時代を貴方(伊藤貫)はどういうふうに形容なさるのか。

伊藤貫
はい。僕のいちばん好きな話題で。

Let's begin with Big Picture.

Big Pictureからはじめますと、僕がつくづく感じることがあって、それは、『日本人とアメリカ人の両方とも外交が下手だなぁ』と。外交が下手なだけじゃなくて、言うこととやることが、こう言っちゃなんですが、『子供ぽくて単純』なんですよ。日本人もそうだし、アメリカ人もそうなんですよ。

何でか考えてみたら、日本人にとって外交というのは、1853年にペリーが来るまで存在しなかったのですよ。(西部:概ねね。)そうそう。

[*1853年ペリー来航まで概ね外交が存在しなかった]

アメリカはアメリカで、1776年に独立宣言するんですけども、本当に外国と関わり出したのは、1896年に【ベネズエラ危機】というのがありまして、普通はあまり日本の方は知らないのですが、『ベネズエラ危機』でアメリカがイギリスに対してものすごく強硬な。ベネズエラの国境線の争いで、(本来は)アメリカは関係ないんですよ。それをものすごく強硬な態度で。

何故、強硬な態度で(当時の)イギリスにケンカを売るようなことをしたのかと言えば、『イギリスの勢力を西半球から追い出したい』という意図があってやりだしたのですがね。

[*アメリカ独立宣言大陸会議 1776年7月4日]

[*英国に対し強硬の米国 ベネズエラ危機(1896年)⇒1895年から1896年にかけて、イギリス領ギアナベネズエラとの間の国境紛争に関し、当時の米国大統領【グロバー・クリーブランド】は、武力を使ってもイギリスに対抗すべきという断固たる態度をとった。]

それが96年で、1898年に【米西戦争】ですね、スペインと。

[*これに勝利したアメリカはスペインのカリブ海から太平洋における植民地を獲得する。⇒フィリピン、グアム、プエルトリコ、独立支援の名目のもとキューバ保護国化]

で。、アメリカは本当は1896年から98年あたりから外交を始めたのですよ。そうすると、(日本とアメリカの)両方とも、英語で言うと『Upstart』、つまり『成り上がり者』というか、『初心者』というか。

『近代の外交』は、1648年に【三十年戦争】というのが終わりまして、それで『ウェストファリア条約』というのが出来て、『三十年戦争』というのは二つの意味があり、①一つは、スペインとポルトガルオーストリアとを支配していた【ハプスブルク帝国】を周囲の国で押さえつける。

②もう一つは、キャスリックとプロテスタントとの戦い。それで30年間も戦争をして、、、

[*三十年戦争(1618~48年)を終結させた、Westphalia条約、ハプスブルク家の覇権を阻止しようと国際戦争へ。

条約】(英:ウェストファリア条約)(独:Westfälischer Friede、英: Peace of Westphalia)は、1648年に締結された【三十年戦争】の講和条約で「ミュンスター条約」と「オスナブリュック条約」の総称である。(英語読みでウェストファリア条約)近代における国際法発展の端緒となり《近代国際法の元祖ともいうべき条約》である。]

要するに、ドイツの小国分立に、互いに他の国々が関わってくるという。

[*ドイツの小国分離に他国の思惑絡む激しい戦闘⇒ 三十年戦争

伊藤貫
そうです。それでもう、ドイツ人なんか(当時の)三分の一殺されているんですよ。30年間で。血塗れの酷い戦争で、もう30年間戦争してお互いに疲れたわけです。

それでもう『こういう「イデオロギー」とか「宗教」とかを振り回すのをやめましょう』と。『純粋にどっちが正しいとかいう屁理屈言わないで、【バランス・オブ・パワー】でいきましょう』と。そういうふうに決めたのが、1648年のウェストファリア条約(※ヴェストファーレン条約)ですね。

[*Balance of Power:勢力均衡 ウェストファリア条約(1648年)]

で(そこから)すっ飛ばしていっちゃうと、19世紀の初めの【ナポレオン戦争】(1803~15年)は「例外」として、1648年のウェストファリア条約から、1914年に【第一次世界大戦】が始まるまで、ヨーロッパの諸国というのは、あまり屁理屈言わないで、Balance of Power(パワー均衡)だけでやると。

[*国際政治は勢力均衡の秩序 第一次世界大戦までの欧州]

だから、ヨーロッパ人には17世紀の中頃から1914年、20世紀の初めまで、『国際政治はBalance of Powerだ』というのがあるんですよ。

中国語で言うと、合従連衡ね。

伊藤貫
そうそうそう。

これは(中国の)戦国時代かな。くっついたり、繋がったり、バランスとったり、、、

[*合従連衡(がっしょうれんこう):B.C.403年~秦の統一までの「戦国時代」において、西方の「秦」が強大になってくると、東の6国が縦に同盟して秦に対抗する「合従」策と、秦が6国のそれぞれと単独で同盟を結ぶ「連衡」策とが重要な外交政策(※時勢に応じた政策)となった。「従(縦)」はたて。「衡」はよこ]

伊藤貫
2500年くらい前でしょう?

それで、Big Pictureから言うと、ヨーロッパ人というのは500年くらい前から『国際政治のベースというのは、バランス・オブ・パワーである』と。

ロシアも、1700年頃に【ピーター大帝】、18世紀の初めに。で。ずーっと300年間バランス・オブ・パワーでやっているんですよ。

[*ロシアもBalance of Power ピーター(※ピョートル)大帝(1689~1725年)、ピーターは英語読み。ピョートル1世、若しくはピョートル大帝のこと]

で、今だって別に【プーチン】の弁護をするわけじゃないけども、『プーチンだってね、バランス・オブ・パワーでやっている』わけ。僕はあんまりロシアに対して敵意を持たないのは、これって典型的なバランス・オブ・パワーじゃないの?と。

でね、厄介なのがアメリカと日本なんですよ、アメリカはアメリカで、自分たちはものすごい侵略的なことをやるくせに『自分たちのことを理想主義者だと思っている』のですよ。実際には(アメリカは)【覇権主義者】なんですけども、自分のことをいつも『理想主義者』だと思いたがるんですよね。

[*「参考」アメリカの特徴:
⑴American Exceptionalism:アメリカ例外主義:(メイフラワー号に乗って)アメリカにきた人たちは『神に最も認められる国である。We Are the Special』そこから「Exceptionalism」はきている。そして、アメリカだけは他の国よりも例外的に優れた国である(アメリカ例外主義)と、それでずっとやってきた。

⑵Manifest Destiny(明白なる使命/明日なる運命):かつてはインディアンに対する民族浄化と、黒人の奴隷使役によって進めた白人の西部開拓を正当化した標語で、それが「フロンティア」の事実上の消滅後、米西戦争米墨戦争、ハワイ併合など、合衆国の帝国主義的な領土拡大や派遣主義を正当化する為の言葉になった。]

宗教が絡む時、【聖戦 Holy War】、もしくは【正義の戦争 Just War】ってね。要するにアメリカは、こんな子供っぽいことをやってるってことね。「俺は正義だ!」とか「日本を滅ぼすのは聖なる振る舞いだ!」とか。

[*Just War 正義の戦争だと子供っぽいアメリカ]

伊藤貫
そうそう。

ヨーロッパは、悪く言えば、悪賢いのですけども、よく言えば、やっぱり『大人』だから、この(アメリカのように)「正義だ!」などというのを振りかざして、相手の国を。そして、『アメリカってのは、正義を振りかざすと、相手の国の国内体制と、それから歴史解釈と、文化と人間関係まで変えようとする』んです。

[*国内体制、歴史解釈、文化、人間関係も変えるアメリカ(という特徴)]

[*伊藤貫の著書より抜粋:アメリカ外交の5つの特徴:
❶ 「アメリカは例外的な国だ、例外的に優れた国だ」という思い込み。(※アメリカン・エクセプショナリズム、アメリカ例外主義、アメリカ例外論)

❷ 国際政治にアメリカの政治イデオロギーをそのまま持ち込もうとする。他の諸国を、アメリカのイデオロギーを基準として判断し、裁き、処罰し、時には破壊する。

❸ 世界諸国にアメリカの経済システムと政治制度をそのまま採用させようとする。世界を「アメリカのイメージ」に合わせて作り変えようとする。

❹ アメリカ外交を「美しい神話」に加工・修正して、ひたすら礼賛する。アメリカの外交政策と軍事政策に関して、自己欺瞞する。

❺ 戦争になると「完全な勝利」と「最終的な決着」を求めようとする。異質な国と妥協して平和的に「棲み分け」する。]

ヨーロッパはそのようなことをやらないんですよ。大人だから、大人なのか悪賢いのか知らないけども、たぶん、両方なんでしょう、あの人たちは。

要するに『自分たちのすぐ子供っぽい単純な正義感を振り回すのがアメリカ』で、それとは逆に、今度は日本人もやっぱりあるんですよ、これは『大義ある戦いだった』ってね。そうすると、例えば日本の人も敗戦後に占領軍(=戦勝国のアメリカ)が東京裁判というのをでっち上げて、【あれ(東京裁判)はでっちあげ】でしょう?あのでっちあげで「お前らこんなにも悪い奴らだ。」そうすると、左翼の連中が「そうだ!そうだ!日本人はこんなに悪い奴らだ!!」と。

で、結局、日本人の歴史解釈と外交解釈も『日本人は悪い奴らだ』というのと『悪いことはやっていない。それは誤解だ!』と言って怒る保守派と、結局、どっちがいいとかどっちが悪いとかいうね。言っちゃ悪いんですが、アメリカ的な、それで先ほど言いましたように、ロシア人とかフランス人とか(そういうことを)あまり言わないんですよ。もちろん、口では言うけども、本気でしてないわけです。

途中で悪いけども、(小林)麻子さんと視聴者の皆さんね、なんも平凡な話なんだけども、アメリカという国は、例えばね、イラクを、フセインをやっつけた後ね、『GHQ方式に従って』ということは、『アメリカが日本をやった時の、General Headquarters、総司令部方式に従って、イラクにNation Buildingを施す』とね。イラクのNationをBuildする。『建築し直す』と。

[*General Headquarters(連合国最高司令官総司令部)方式でイラクをNation Building(国家建設)]

それが、日本人がですよ、『GHQが日本にやったやり方をもう一度イラクにやろう』と言われて、それに屈辱を感じている日本人を、僕は「クソーッ!!」と思ったけども、10名ぐらいはいるんでしょうけども(笑)

伊藤貫
えぇ。僕は「クソーッ」と言うよりも、『また(アメリカは)子供っぽいことをやっている』と。そういう「子供っぽい」のを英語でセルフ・ワイシャスね。

そうね。それから、もう一つ言おうとしたのは【南京大虐殺】ってあるでしょう?それを信じているかどうかの話をしようって言うんじゃなくて、あれはね、『東京裁判』で出てきた最大の理由は、日本に(米軍は)【原爆を落とした】でしょう?あの当時、原爆で20万人死んだと。いろんなの入れたら広島・長崎で30万人近いという、そういう話があったの、今も続いている。

(当時の)アメリカはさすがに参ったわけさ。それ(原爆投下)が東京裁判で出てきたら、【ジェノサイド】、民族皆殺しみたいなやり方でしょう。その時に、まぁほとんど「ガセ情報」なんだけど、『南京で日本軍が20万人を超える大虐殺をやった』という話が《間接情報》で、しかも、現場ではなく、そういう噂を聞いたドイツ人のそれが伝わってきて、「これは使える!」と。アメリカは日本人の数十万殺したのと、日本人は中国人を殺して(=殺したことにして)「これで引き分けじゃないか!」というので、【東京裁判用に(南京大虐殺なるものは)でっち上げられた】話。

[*東京裁判で原爆を正当化 でっち上げられた南京虐殺

伊藤貫
それで、(西部)先生の最初のご質問に戻りますけども、1945年(※冷戦突入)から、ベルリンの壁が壊れたのは1989年なんですけども、それまでの約43・4年間は、【(米ソ)二極構造】でしょう。

それで、1991年の末に「ソ連帝国が崩壊」して、1992年に『アメリカが世界を一極構造にする』という【一極化戦略】をたてて、それでブッシュの息子の「おバカさん」の方ですね。お父さんの方は結構賢い。

(パパブッシュの方の)取り巻きたちも結構賢かった。

伊藤貫
そうそう。だけど、息子は馬鹿だから、「イラクを占領して、中東を全て支配できるという誇大妄想」に取り憑かれていた。

それで結局失敗して、僕が何を言いたいのかといいますと、1945年から89年までの「二極構造」と、1991年から2003年までの本物ではない、Appearant unipolar(「見せ掛けの一極」)ね。

[*1945~1989年の二極構造 1991~2003年見せ掛け一極]

その皆さんね、「二極構造」と「一極構造」というのは、実は過去500年の国際政治から見ると【異常】なんですよ。

そうね。

伊藤貫
で、我々は、はっきり言って、1945年から2003年まで【アブノーマルな国際政治の下に住んできた】わけです。

それで、(西部)先生が仰ったように、最近、【多極化】して、混迷して、みんなが悪口ばかり言い合って、それでコンセンサスってなるわけでしょう。僕に言わせれば、それって(本来は)【ノーマル】なんじゃないの?と。そういう、5つも6つもある国同士が勝手なことをやりあって。だって、(本来は)人間ってそういうもんだし。世界中が東と西に分かれて対立するっていうのが「不自然」なんですよ。

でもね、途中でさ、お言葉ですけどね、まぁちょっと「ノーマル」と思えないような、まぁ大人で言えばさ、お互い三人同士がケンカをやるとしてもさ、どっかで物事の『限度』をね、「これ以上殺すのをやめよう」とかさ、「そろそろ引き際」とかね、それが無い混沌状態から始まっているような面もあるでしょう?

[*引き際の限度がなくなる 世界情勢の混沌状態]

伊藤貫
それはね、歴史家のギボン(※エドワード・ギボン)というのがいるんですよ、『ローマ帝国の衰亡(ローマ帝国衰亡史)』とかいうのを書いた。

[*【エドワード・ギボン】英・歴史家『ローマ帝国衰亡史』の著者1737~1794年]

彼(ギボン)がね、『18世紀のヨーロッパの政治家と、それから18世紀のヨーロッパの戦争は素晴らしかった』と。なんで素晴らしかったって、、

『こういう戦争は、Half Hearted、本気でやっていない』と。ギボンはそこが良いのだと(笑)

[*18世紀ヨーロッパの戦争 Half Hearted 本気ではない]

様するに、18世紀のヨーロッパの王様とか軍人とか外交官とかは、『本気で叩きのめすわけではない』のですよ。ある程度やると「ここいらで手を打とうか」と言って。

だから、18世紀の戦争の頻度は高いのですよ。だけども、いいことが3つあって、①一つは、民間人を殺さないわけです。②それから、ちょこちょこっと何ヶ月か数年か中途半端な戦争をやって、どちらかが不利かといういうのがわかると、外交官同士が喋って「ここら辺で手を打とうか」と。外交官同士が喋って手を打ってしまうのですよ。だから本気じゃないわけ。

でも、それはこうでしょう?第一次世界大戦がね、やっぱりね、『デモクラシー』、それから戦争の形態が『徴兵制』になるでしょう。

伊藤貫
そうそうそう。徴兵制がいかんのですよ。

「国民皆兵」だよね。そうすると、民衆は、それまではね、しっかりとした軍人さんなり貴族が戦争をやっていたわけさ。ところが、デモクラシーと同時に一般民衆が戦争へ参加する。当然の ことながら、一般民衆は投票権も要求する。

「俺たち死んでみせる以上、政治的権力をよこせ!」と。

そうすると、Total War というのは「総力戦」ですけどもね、ですから、本当に凄まじい総力戦としての殺し合いとDemocracy というのが表裏一体になっている。

[*Total War 総力戦と民主主義 がDemocracy表裏一体]

[*「補足」そもそも近代民主主義というのは大衆が主権者として政治参加すること、そして最大の主権の発動として大衆自らが武装し自国領土や財産を保全する(ホッブズもそうであるし、ルソーに至っては「民衆は国家のために死ね」とまで言っている)それが近代民主主義の本質なんだということを、いわゆる「日本の(エセ)民主主義者」「自称・近代主義者」は知る由もなし]

従ってね、アメリカはデモクラシーの国なのだから、アメリカの仕掛ける戦争は Total War。

伊藤貫
そうそうそう。そういうこと。

(西部)先生の大嫌いな『Mass-Mobillization(西部:大衆動員ね)』ね。

[*我々は正義で敵は悪魔だと Mass-Mobillization(大衆動員)]

そう。マスを mobilize(動員する)しなければならないから、『我々こそが正義の味方だ!』と。『我々の敵は悪魔だ!!』と、こうくるわけでしょう?そうすると、相手国の女子供に爆弾を豪雨のように降らせても『あいつらは悪魔の仲間だからいい』と。

それでね、皆さん、18世紀のヨーロッパ史は、絶対そういうことをしなかったわけですよ。それが、(西部)先生の仰るように『徴兵制』と、それから『Public Opinion を動かさなきゃならない』わけでしょう。

あ〜あ、世論ね。

伊藤貫
世論を動かそうとすると、やっぱり「相手の悪口を言ったほうが勝ち」と。(西部:そうなんだよね。)そういう感じになるんですよ。

そうすると、【20世紀の戦争ははしたない】んですよ、すごく。

うんとはしたない。薄汚い。

伊藤貫
そうそう。

それでね、僕がいまのこんなふうに言ったら、あなた怒る?

つまり「二極均衡」から「一極集中」になって、「多極分散」になって、ところが多極の分散状態がいっそう混迷を深めると、日本語で言うと【無極】、極が無い、Non-Pole、混沌 Chaos、つまり『Non-Pole Chaos』、世界は無極混沌と。多極分散とはまた一味も二味も。

[*Non-Pole Chaos 世界は無極混沌に]

伊藤貫
それは、あの、アメリカでそれを一番言っているのが二人いまして、一人は【Council on Foreign Relations外交問題評議会)】というグループがありまして、日本語で言えば、外交関係評議会

で、実は、CFR(外交問題評議会)というのは一番権威があるとされている外交政策団体なんですね。シンクタンクの中では、CFRがベストだと。


「Foreign Affairs」という雑誌をご存知でしょう?(西部:えぇ。)Foreign Affairs はCFRが出しているんですよ。(※隔月発行です)

そこの会長さんのハース(※【リチャード・N・ハース】)という奴と、それから最近売り出しの外交評論家の【イアン・ブレマー】とかいう奴が、この二人が『無極化だ』と言っているんですね。

[*無極時代の到来 リチャード・N・ハース外交問題評議会会長(パパブッシュ時代の国務省政策企画局長、息子ブッシュ時代のNSC近東・南アジア担当上級部長を務めた)]

[*イアン・ブレマー、政治学者、外交評論家、世界最大の政治リスクコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」社長、「Gゼロ」論で著名]

だけど、僕と同じように伝統的な【リアリスト・スクール】、バランス・オブ・パワーを重視する人たちをリアリストスクール(リアリスト学派)というのですが、例えば、ブレジンスキーとか、キッシンジャーとか、ケナン、スコウクロフトとか、みんなリアリスト・スクールなんですけども、リアリスト・スクールの連中は、必ずしも世界を「無極だ」というのに賛成していないのですよ。

[*世界無極に必ずしも賛成ではないリアリスト・スクール]

[*「参考」【ジョージ・ケナン】(元国務省官僚、戦略家、外交官、冷戦初期のアメリカ外交の基本政策となった、ソ連陣営に対する《封じ込め作戦》を政策立案局長として作成した)

【ブレント・スコウクロフト】(退役空軍中将、フォード父ブッシュ政権元国家安全保障担当大統領補佐官)

ヘンリー・キッシンジャー】(フォード政権時にスコウクロフトと同メンバー)

【ズビグニュー・ブレジンスキー 】(カーター政権時の安全保障政策補佐官、ポーランド生まれ)]

何故かと言うと、彼らの考えでは、、

『The Ultimate Decisive Factor』(究極的な決めては何か)

究極的に何が Decisive(決定的)なのかというと、やっぱり【軍事力】を持っている国が、「やれるものならやってみろ!」と。で、そういうところに持ち込まれて話が決着すると。

キッシンジャーが有名な、有名かどうかは別として、、

「法律家が(手に抱えられないほどの)こんなにも束になった法律書を抱えて会議場へ来るよりも、リボルバーを持っている奴の方が最終的には勝ちである」と(笑)

撃つぞ!と言われたら、どんなに高邁な法律文書を何千頁積み上げても、最終的にどこかの強国が「この会議で決裂するなら、撃つぞ!」と言ったらそれで終わっちゃうと。

[*高邁な法律文書を積んでも撃つぞと言われたらお仕舞い。(ヘンリー・キッシンジャー)]

で、ケナンジョージ・ケナン)はケナンで、要するに Diplomat(外交官)、Diplomatic(外交)というと「ソフトなスピーキング」でしょう?でも、『(外交のような)ソフトなスピーキングでも、背後に【軍隊】というものが控えていない外交官は、どんなにソフトなスピーキングで、ジェントルマンで、civilize(文明化する、洗練する)な、文明化されたおしゃべりしても、誰も言うことを聞かない』と。

だから、『外交官の後ろに軍事力がバックアップであるから、もっともらしいことを言うと、皆が聞いてるフリをする』わけですよ。

だから、軍事力のバックアップの無い外交官なんてのは、それこそ『クリープの無いコーヒーよりもっと悪い!』わけですね。

[*⬆︎この瞬間、伊藤貫が「田村正和」に見えましたw もっとももっと古い人は芦田伸介ww(クリープの入っていないコーヒーなんて・・・)]

こんなとこでね、本当にいまどうなっているか知らんけども、日本の外国での大使館、公使館ね。いまどうなってるか知らんけども、長い間、要するに「軍人」いまで言えば「自衛隊」だけども、軍人がね・・・『武官がいない』んですよね。いまもほとんどいないんじゃない?

でも、外国はね・・・(伊藤:えぇそうですね。)外国の大使館は、要するに軍事なり、スパイ・諜報員なりがごっそりいて、六本木のアメリカ大使館は200人ぐらいいるんでしょうけど、僕の計算というか冗談半分で言っているのだけども、その200人のうちの180人ぐらいまでは、そういう意味じゃ「軍事」「諜報」の専門家たちがいるというね。

日本はね、何をやっているかというと、「民間の企業人」が「外務省への出向」と称して、外国のお勉強のために外国の(日本)大使館にいるという能天気な国なんですよ(呆)

伊藤貫
軍事力のことを国際政治では、【The Last Resort:最後の手段】と言うことがあるんですよ。

要するに、『日本は軍事力が無いから、会議が決裂すると困る』わけですよ。だけど、中国とかロシアは「困らない」わけ。「そうかよ。それじゃ俺たちはいい。」と言って。

バランス・オブ・パワーを重視するリアリスト・スクールの連中は、無極(※イアン・ブレマー風には「Gゼロ」)と言うけども、最終的にはやっぱり軍事力を持っている国が、最終的な決定権を持っているし、もっと言っちゃうと、最終的には『相手からの要求にNO!と言えるのは、軍事力を持っている国』なのね。

[*相手国の要求にNoと言えるのは軍事力]

で、それでいまの世の中で、本当の「まともな軍事力」を持っているのは4つか5つしかないわけですよ。でそういう国は全て【核武装】をしている。

であれかな。控えめに言ってもね、やっぱり自分から(相手を)脅かす力が無いまでも、「こちとら、もしもやったら(相手は)相当に深手を負う」というね、それぐらいの力(軍事力)を持っていないとどうにもならない。

「俺を襲ったら、お前らただじゃ済まさないぞ!」というね。

伊藤貫
だから、最近というか、過去69年間の日本外交が、ぜんぜん何を言っても説得力が無いのは、その『The Last Resort』ね。No!と言える、そういう・・・

日本人の「Resort」は「観光地(リゾート)」のことだから(笑)

伊藤貫
あっそっかそっか(笑)

『最後の手段』ですよね、The Last Resortね。で、要するにそれを、アメリカはズルいから、(日本に)それ(=行使可能な軍事力=最後の手段=The Last Resort)を持たせないと。

といういことは結局、日本は・・・【「絶対にNo!と言えない日本」】であるということなんですよね。

それからすると、やっぱり無極化ではなくて、それで僕の大好きな【ケネス・ウォルツ】というリアリストの非常に立派な学者がいるんですが、彼は、、

『Superiority of Politics over Economy』

どんなに経済が発展しても、どんなに経済に依存関係が進んでも、最終的には Political Factor、要するに「軍事も含めた政治的な発言力」というので、国際政治は決まってしまうと。

[*国際政治は発言力で決まる ケネス・ウォルツ]

[*「参考」ケネス・ウォルツ(80年代以降の国際政治学に最大の影響を与えた人物、「ネオ・リアリスト派」を創設、UCB教授)

ウォルツは「核均衡理論」で有名。モア・メイ・ビー・ベター論などとも言われる。「核兵器による勢力均衡を考えれば、核兵器を保有してる国が増えた方が均衡は生まれやすい」というもの。

このウォルツの核均衡理論は、これまた伊藤貫の好きな同じくリアリスト学派の【ジョン・ミアシャイマー】によって、彼の自著『大国の悲劇』の中で、『ウォルツの著書「国際政治の理論」が(シカゴ学派的な)経済学をモデルにしている』と批判している。ちなみにミアシャイマーは、シカゴ大教授であるw]

簡単に言うと、このケネス・ウォルツって人は【核兵器】で言うと『皆が核武装すべきだ!』と。その方が、やはり「核」を持ってしまうと、(核保有国を)襲うと(核兵器による報復で)深手を負うでしょう。(だから、核武装せよ)そのほうが世界は(結果的に)良くなると。

[*国際秩序安定のため核武装すべきと説くウォルツ➡︎核保有国同士は「戦争出来ない」というのが大前提]

伊藤貫
そうです。それで、ケネス・ウォルツさんは、確か1992年ぐらいに論文を書いて、日本に関しては、『アメリカの国益と日本の国益が Identical、同一であるわけがない!』と。(西部:そうだねぇ。)

「あるわけがない」のに、「あるフリ」をして、「同一であるかのごときフリ」をして、日米関係を続けても最終的には『うまくいかない』と。

[*日本とアメリカの国益が同一であるはずがない ケネス・ウォルツ]

で、ウォルツさんが言ったのは『核(兵器)を持たないのだったら、日本はもう独立国じゃなくなるし、どんどん国益を損なっていく』と。だから、ケネス・ウォルツさんは1992年に『日本は核を持つ(核武装する)だろう』というふうに予言したわけです。

そのときに、世界の心がある人は、世界の七不思議の一つとして『どうして日本は、(核を)持たないんだろう、この人たち・・・。』という。

伊藤貫
(笑)ここまで(日本は)追い詰められてのに、なんで持たないのだろうと。

[*「参考」西部の言う「心ある人」のひとり、ジョン・ミアシャイマー
核兵器は、非常に強力な平和維持機能を持っている。核武装国は、他の核保有国を攻撃出来ない。核兵器は他国に対する侵略行為に使うのにはあまり役に立たないが、他国からの軍事攻撃を抑止するには高い有効性を発揮する・・・核を持つ事により、核武装した大国と核武装した小国との関係は『実質的に対等な関係』となる。少量の核兵器を所有する国は、核大国による軍事的恫喝を恐れなくなる。」(※Back to the Future)

特に、ミアシャイマーが日本について
「中朝露三カ国の核兵器に脅かされている現在の日本には、《自主的な核抑止力が必要である。》現在の日本を安全に守るために一番良い方法は、核を持つ事である。日本が核を持てば、中国の日本に対する軍事行動はもっと慎重になる。」]

で、キッシンジャーも同じ頃に(ウォルツと)同じように『日本は核を持たざるを得ない』と言ってるわけですです。結局、それは何故か言えば、核を持たない限り日本は周りの国(中国・ロシア・北朝鮮といった核保有国)にNo!と言えないと。そうすると、何をやっても、どんなにお金をばら撒いても、結局は『無視される』ということなんですね。

本当にそう。延々と(それが)半世紀以上、続いている。

ということでですね、今日、お話いただいたのは、そういう子供っぽい、Childishな国際政治学、アメリカね。

アメリカはなんと言うか、一種の Enfant terrible 恐るべき子供ですけども、「日本の子供」は、アンファン・テリブルかどうか知らないけども、要するに日本も子供なわけ。そういうもののツケがね、いよいよもって『支払わされる』という状況が刻一刻と深まっているのに、誰も大して(そのことに)みんな気づきやしない。

僕に言わせれば、もう【失せやがれ!】と。【くたばれやがれ!!】という気がせんでもない。

ということで、次の週は今日のこの延長の話を。

[次週の予告]

小林:
日韓、日中、日米の関係・が異常なまでの困難・混迷を示している。

伊藤:
国家には3つの要素が必要である。経済力・軍事力・価値観。

西部:
自尊心と独立心無きものは地球上から去れと。

伊藤:
1945年から現在まで、アメリカという国は、核を持っている国とは絶対戦争しないんです。

もし、中国の勢力圏に巻き込まれたくなかったら、日本は自主的な核抑止力を持って、自主防衛するしかない。

日本と韓国のそういう紛争というかケンカは、国際政治的に見て不毛なんです。

西部:
従軍慰安婦がどうのこうの、韓国の方がおかしいとか、もういい加減にしたらってのがたぶん、世界の気分になるんでしょうね。