戦後70年 特別連続企画:『政治家としての戦後70年間の結果にどう対処するか』ゲスト 小林興起(国民党代表)×東郷和彦(元外交官)×脇雅史(自民党参議院議員)×西田昌司(自民党参議院議員)

戦後70年 特別連続企画:『政治家としての戦後70年間の結果にどう対処するか』ゲスト 小林興起(国民党代表)×東郷和彦(元外交官)×脇雅史自民党参議院議員)×西田昌司自民党参議院議員

【ニコ動】
西部邁ゼミナール)戦後70年間の結果にどう対処するか② 2015.10.18


今村有希(アシスタント)

先週に引き続き、政治家の脇雅史先生、小林興起先生、西田昌司先生、元外交官東郷和彦先生の御四方に、戦後70年の結果にどう対処するのかを論じて頂きます

今週の主題は『対米外交と対中外交の絡み合い』ということになろうかと思われます。それに関連して、『ロシアと韓国、北朝鮮の外交の進め方』も論じられることになるでしょう。中国経済にバブル崩壊の濃い影が差し、またヨーロッパやアラブの外交に対するアメリカの外交も一貫している今日只今、日本の外交も次第に瀬戸際に近づいているのではないでしょうか。

では、宜しくお願い致します。


あぁ宜しくお願いします。最初に僕、今村さんに質問してみようかな。『A級戦犯』って言い方あるでしょう?

今村有希

はい。


そして靖国神社A級戦犯が祀られているんで、そんなものを祀っているところに首相が行っていいのかとか、天皇は97年あたりから行かなくなりましたけどね、日本の首相が公的だ私的だと言いながら(靖国参拝に)行くたびに、中国それから(朝鮮)半島がね、ワーワー騒いでる。

貴女その、A級戦犯ってどういう意味か、そのことご存知?

[※首相参拝のたびに起こる「靖国問題」 ]

今村有希

フフッ(笑)あの、平和の罪に問われた戦争指導者であるということ・・・。


平和と人道の罪の両方ね。

今村有希

人道の罪、はい。


でもね、

今村有希

はい。


これヒドいんですよ。じゃあ最初ぼく言うけども、実は東京裁判というのは、平和の罪とか人道の罪とかいうのは、ドイツのニュルンベルグ裁判に出てきた観念で、あの場合は確かに、特にユダヤ人の一種のホロコーストがありましたでしょ。民族撲滅・殲滅ね。これは何か国際社会の法が無くても、法の前の国際の大前提として、特定民族を殲滅するってことが公に認められたら国際秩序が成り立つわけもないから、それをわざわざ「事後的に」法文化して平和だ人道だといって裁判をやるという、それなりの正当性が出てくる・・・がしかし、日本がそんなことをですよ、中国民族をホロコーストとかね、朝鮮民族を全滅とかさ、そんなことはただの一度もやった試しがないわけさ。そういうドイツと日本の違いを知らぬ上にですよ、事後的に法律の無い裁判を、こんなものは裁判じゃないわけ。結論を言うと・・・

東京裁判は、勝者の敗者に対する復讐ったって、この場合はアメリカは余りに強いから、むしろあれですね、【見せしめ】でしょうね。『俺たちは勝ったぞ!お前たちは負けたんだぞ!!』と。負けたことははっきり確認せいやと、そういうふうな【見せしめの政治的儀式に法律というベールを事後的に被せたものに過ぎん】、というこれ常識だと思うんですけどねぇ。

僕はまず、【それが70年もですよ、この常識が、日本人自身が確認しない】というところ、そういう問題が結構外交にまで影を落として、靖国問題が出るたびに外交でグチャグチャしてるというね、気持ち悪い状態がうんと続いているんですよ・・・。

[※東京裁判戦勝国による法を装った政治的儀式 ]


私の場合はその、祖父が【東郷茂徳】で、


えぇ。


そのまさにA級戦犯になるんですね。ですから、物心はついてた時から、いま(西部)先生が仰ったようなことはある意味で叩き込まれている。


えぇ。


ですから、それが私の常識になってしまっていて、ですから日本は恐らくそういう感じとは違った感じが日本国民の大部分にあるということが、ちょっと感覚的に理解出来なくなってきているところがあるですね。

その立場に立って言いますと、東京裁判の判決は絶対に受け入れられない。けれども、占領が終わったサンフランシスコ平和条約を結んで、その11条であの有名な『accept the judgment』ですね。『判決を受諾する』とやっちゃった。これはですね、いま仰られた論理をひっくり返すということは、これは大変なことになるんですね。

[※参考:サンフランシスコ講話条例 第11条▷「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の “裁判を受諾し” 且つ、“日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するもの” とする。」 ]


ですから、やっぱり受け入れたものは受け入れたものとして戦後の日本があって、でも、判決が受け入れられない以上、私が考えてきたのは、それじゃあ連合国の判決は認められないんだったら、日本人として戦争の問題をどう考えるんですかってことを、戦後の自分たちで考えて、自分たちなりの結論を出して、そこに立脚していく以外に無いんじゃないかというのが私のずっと考えてきたことです。

[※日本人として戦争の問題に結論を出し これに立脚せよ ]


でも(東郷)先生が仰ったことと矛盾するかどうかね、僕が言いたいのは、そのサンフランシスコ条約で、その東京裁判のジャッジメント、複数ですけどね、それをアクセプト(accept)するということで始まっていますが、解釈とすれば、東京裁判といいサンフランシスコ条約のそのアクセプト(11条)といいですよ、これは基本的に【政治レベルの話なんだ】と、政治は法律とは違ったところで進みますのでね、こういう形で東京裁判は法律というカモフラージュのもとに進んだ政治劇だが、自分たちはこういう政治的なプロセスは受け入れた上で戦後独立すると、あくまでこれは【政治の判断】であって、裁判の、純裁判の次元の判断じゃないってなことはね、これは国際社会もちゃんと常識がある人はいますから認めるハズだし、これは言ってみれば、【政治上の妥協】であって、法律上の法理に基づく正か邪のこういう区別じゃあり得ないのだ、ってなことはね、これはもう全世界知ってることですからね。それを誰かが言えば、堂々と言えば、丹念に言えば、通る話ですけどね。

[※判決の受け入れは政治的判断に過ぎない ]


東郷先生が仰ったように、日本人が自分たちの戦争の総括をしていませんからね、知らないんですよね、全く教えられてませんから。で、たぶん平成になる前の昭和の時でしたらまだ、あの現役世代の中に「あの戦争」を知っておられた方がけっこうおられたんですが、そこから26年、7年経っていますからね、もう知ってる方がもう現役世代にはいないどころか日本の中にいない。だから、もう教えられた紙に書かれた後の、教科書的なあぁいう戦後のそういう歴史観しか残っていないんで、これはかなり大変な事業になりますね。


いまお二人ね、戦争を知らない子供たちみたいな事を仰いましたが、僕は若干抵抗したい(笑)そんなことをお二人言い始めたらですよ、果たして歴史を知ってる人間はどこにいる・・・


いや、ですから、


聖徳太子に会った人はいませんしね、織田信長と会ってません。

今村有希

ウフフ(笑)


いや、いや、


われわれ知らない歴史についてですよ、それなりのデータに基づいて一貫した解釈をして、あの時代はこうだこうだやってますでしょう。


そうですそうです。僕もそうです。


それと同じように、戦争を知らなくたって、我々が冷静に情報と解釈でそうまとめればね、あれはこうだったってことは言えるハズですよ。


いや勿論です。私の言いたかったのはそうなんですが、世間がそういう形で染まってしまって、しかし事実は残っていますからね、あの時も。だから、アメリカの公文書もどんどん出てきて、あの戦争は何だったかってことが検証できる仕組みになってますからね、そうやるべきなんですよね。


だけどさ、どんな事実でもね、いろんな諍いや紛争がありますよね。それが、どっちが正しいかとかお互い当事者はみんな言いますよ。それで決着つけなくちゃいけないというわけで、通常は「裁判」で決着つけるわけですね。で、【裁判はなにも正義を決めるわけじゃない】んですね、いろんなことを情報を総合的に判断した結果、『こういうことで決着することにしようよ』と、みんなそれを受け入れるんですね。正しいかどうかなんてことを言っているんじゃないんです。裁判の結果が正しいこともあれば、正しくないこともあり得るんですね。


そりゃそうだね。


だから、国家間の戦争もそうであって、戦争していろんな事があったと。それはもういろんなことが起こっていますから、誰が正しかったか悪かったかなんて言い出したらキリがない。しかし、どっかで決着をつけようっていうんで、国家間なら国家間でまぁ裁判とかいろんなことで決着、条約その他で「手を結ぶ」んですね。それで終わりなんです。であとどっちか正しかったかって言いたい人は幾ら言っててもいいのだけど、その争いはそこで決着をして、次の世代へ向かっていくと。

で、際限なく昔へ戻って、本当は俺がよかったとか悪かったかとかですね、言いたい気持ちはあるけども、それは紛争といったことの決着の仕方としては一応終わってます。非常にドライに考えて、そこからじゃあ我々は未来へ向けて何を為すべきか、その時に、先週も申し上げましたけども、本当に日本は大変なことをして悪いことをしちゃったんだと、本気で思っている人がものすごく多いんですよ。なんとかして、謝らねばならぬと。

だから、今回の安倍さんの声明(※戦後70年安倍談話)の中でも、あの『孫子(まごこ)の代まで謝ることはないじゃないか』ということを言われてますが、


えぇ。


そのことに逆に違和感を覚える人もいて、「我々は悪いことをしたのだから、ずーっと謝っていこうじゃないか!!」と一見いかにも正論というか、いい事のように聞こえますが、あのそう思っておやりになる人はいいのですが、国家としてそういうことを言ってしまってはいけないのかなと思いますね。


本当にヒドいのは、僕ちょっとむかし読んだのだけど、女性で【ヘレン・ミアーズ】って人が、

[*ヘレン・ミアーズ GHQの諮問機関「労働政策11人委員会」のメンバー、著書「アメリカの鏡・日本」 ]

一同

あぁ〜。



簡単に言えば、『いかにアメリカが日本を戦争に巻き込むべく、策謀の限りを尽くしたか』ということの歴史家ですから、実証研究ですよ。それをあの昔は向こうでも「禁書処分』にされてたんですが、今は発刊されてますけども、そのあとであれはいつになりますか、東郷先生、【チャールズ・ビアード】という人が、これも歴史家ですけどね、要するに、『真珠湾攻撃の時に、アメリカは日本に挑発させたくてしょうがない』わけですよ。というのは、実はあの時のアメリカはヨーロッパで戦争してますし、財政のこともあって軍事費が足りないということもあって、アメリカに幾分、対日戦争には厭戦気分があって、それをどうしてもアメリカの為政者は『アメリカ人を興奮させたい』わけですよ。『日本を討つべし!』というふうに。


[*チャールズ・A・ビアード 著書「ルーズベルトの責任 〔日米戦争はなぜ始まったか〕」 ]



ということは、日本に先制攻撃をさせることはいかに決定的かと。それをね、ABCD包囲網その他をかけて日本をじわじわじわじわ締め上げて、とうとう日本が耐えられなくなって暴発して、暴発かどうか知りませんが、真珠湾にいった時に、アメリカの為政者たちがルーズベルトを中心にして「やったぜー!!!」ってね、拍手喝采する【議事録が残っている】わけですよ。それをね、チャールズ・ビアードたちは本(※「ルーズベルトの責任」)にして、翻訳もされているんですよ。そしたらね、日本人は知らないんじゃなくて、たぶん【知りたくない】んですね。

[*米・歴史家も報告 日本の先制攻撃はアメリカの謀略 ]



あの時はね、アメリカは『大変な戦略』をもってやっているわけですよ。



そうですね。



大東亜戦争の問題はね、戦略無きまま感情で突っ込んでいった。だからそういう意味じゃ、向こうから戦犯言われなくても、日本人からね、やっぱり東條英機がトップだったでしょう?あの人は私は戦犯だと思う、日本人から見てね。あんな戦略無いまま総理大臣として戦争をやっていいのかってね、そういうことを勉強してですね、これからの日本もそうですけど、なんかこうアメリカに操られているような政治でいいのかってね、もうちょっと戦略を持って、そういうことに活かせばいいと思う。



そうですね。



ほんとその通りです。戦争映画ありますよね、あの『日本のいちばん長い日』 もですね、むかしのはじめのやつも観ましたけどね、なかなか立派な映画だったんですが、



うん、あれはいいね。



要は、あぁいうの観ていますとね、僕もムカムカって来るんですよね。「なんだ、あの戦争は!」と。昔の軍人さんは何を考えているんだと、途中で止める、講和をどういうところでするかというのを考えずにですね、はじめちょっと緒戦が勝ったものだから調子に乗ってどんどん拡大しますよね?これもう狂ってますよねぇ。だからね、そこはかなり反省すべきところは有ると思うんですよね。

ただ、その平和に対する罪だという日本が線を踏むようなことをやったのかどうなのかということは、全然別の話なんですが、そういうことも含め先週言ったように、『あの戦争は何だったのか?ということを日本人自身が考えたことが無いんです』よね、これ。



しかし、考えたこと無いと仰いますけども、仰るように山のように本は出ているわけですよね。しかもインターネットですから、ものすごく情報を取ろうと思えば取れる。それから、大学、学校で教えていないという恐ろしい問題はありますけども、でも、じゃあだからと言って勉強しなくていいのかというと、それはそうじゃないハズなんで、こういう議論をきっかけにやはり私も含めてもうちょっとよく勉強して、歴史というものの流れはどうだったかということを把握することが大事だと思います。

それで、その戦争を始めた人たちがぜんぜんダメだったと仰いましたけども、



フフフ(笑)



でも、なぜ日米戦争が始まったかというと、結局それは戦争をしないためにものすごくエネルギーをかけたわけですね。『その外交が失敗した。外交が失敗をすると戦争になるというのが国際社会の状態だったわけで、その意味で対米戦争が侵略戦争だったなんてとんでもないですよ!!』

対米戦争は外交が失敗した後の、【起きざるを得なくなった戦争】で、始めた時の当時の日本軍部と、それからまぁ外務省を含めた総合判断は、「暫くの間は勝てる」と。現実に半年はメッチャクチャに勝ったわけです。



そうですねぇ。



で思ったより早く負けちゃった。その負け始めてから後の処理が要するに目を覆いますね・・・これは、反省しなくちゃいけない。



僕ね、皆さん御四方に聞きたいことがある。仰る通りなんですけど、戦争のことを考える時にいろんな重層構造が必要でいちばん下の層で言うと、やはり日本はある一つの『日本帝国の歴史の運命』であったというね。やっぱり遅れてきた、しかもイエローカラーの帝国がですよ、白人たちは怒りと嫉妬で日本を睨んでいる。それに対して、日本人は明治この方やっぱりそれなりに欧州と戦って、それなりに利口に振舞って、それなりに妥協をしてね、まぁ不可抗力と言えば言い過ぎなんですが、【歴史の運命のようにして、日本はあの大東亜戦争に突入せざるべからず】ということになったんだと。

そうなったらそれは悲惨な敗北でしたがね、生き残った者からしたら、やはり、礼儀作法の第一は、『よくも偉大な敗北を我が先祖はやって下さったと。ありがとうございました。御苦労さまでした』というね、そういう態度をベースに持つべきであってね、それをたかだか生き延びて、あと50年か60年生き延びる我々がですよ、それを、あいつが悪い、コイツが悪い、ココが失敗だ、あそこが不十分だっていう、そういうなんていうか、【小利口なコメント】ね、これをインテリを中心に延々とやっているということの不愉快。たぶん、【小林秀雄】さんはそういうことでしたよね。一言・・・

『頭のいい奴はたんと反省しやがれ。俺は頭が悪いからたんと反省はしない!』と、断固として居直ってそれっきりというね、そういう日本人が本当はもうちょっと必要ですよね。

[*戦った先祖を後世の人間が評する傲慢さ ]



我々が本当にその振り返るべきことは、それぞれ我々の御先祖様、様々な人が如何に生きたかと、胸を張ってこれるような生き方をしたのか、ずる賢いことばっかり悪いことばっかりしてるのかと、今の現実に生きている我々もそうですけども、結果が失敗しようがどうしようが、本当にきちんと正しく生きている人間はやっぱり尊敬されるべきですよ、やっぱり結果だけでなくてね。

そのことは歴史も正にそうなので、我が日本国が長い歴史を持っていて、本当に情けない国だったのかと。私は絶対に違うと思いますね。



ただちょっと、私が言いたかったのはですね、要するに、明治、明治維新この方ですよ、あの「勝てば官軍」というのはね、日本人のいちばん柱に来ているんですよ。



確かにね。



それで、戦後もそうですし明治維新もそうですし、本当はあの幕府側にもですね、もちろん言い分があったハズなんだけど、勝ってしまったらその事を聞かなきゃならないと。それでどんどんやって、最期は止むに止まれず戦争であったにはしましても、破綻しましたら、後は何も考えないんですね。

今度はアメリカが占領してきた。今度は『アメリカ様』になってですね、全く今度は何の合わせもなしにやる。でいまの平成の日本になって、全く同じことやってるわけですよ。それがちょうど『合わせ鏡』のようにね、先生が見る時に見えたきたもんですから、我々のこの政治の現状も含めてね、やっぱりちょっとね、日本のマズさがあるなと。



要するに、あの『空気を読む』、空気を読む・読めないってあるでしょう。それで、いま我々が個人で思っていることを主張し合うのではなくて、この場で全体でどうすべきかという事はあるだろうと。それに外れたことを言う奴はアホだよと。その要するに全体調和を重んじる。絶対的なこれだよというのは、その時々で動いていまして、ある時は天皇陛下だったり、戦後の暫くは進駐軍だったんですよね。アメリカ軍が言う、こう思っているのだからそれに逆らわないようにちゃんとやろうよと、放送であれなんであれ、そうなってきますとね、それに阿るように先を読む人が今ある組織の中で重宝がられて出世してゆくんですよね。



そうそうそう。



『空気を読む人間が出世していって、決してその時々に議論して最適なことを選ぼうとしない。』それが、ずーっと今日まで来ていて、それはいつからか、昔から日本人にそういう習性があったのかどうかわからないですが、その【空気を読む】という言葉が、実は我々が本質の議論を出来ない非常に大きなことで。

[*公明正大な議論をせず「空気を読む」だけの戦後日本人 ]



軍隊の問題ね、大きな矛盾があって、近代の軍隊というのは数百万、日本で一時期でいえば1千万を豪語するような巨大な組織ですよね。組織であるのみならず兵器武器がありますから、極めて合理的に計算をしないとそれこそ戦略・戦術ってね、【軍隊こそは近代主義の権化】と言っていいようなそういう組織および活動なんですよね。そういう意味では軍隊というのは気を付けたほうがいいと。それ僕よくわかるんですよね。ビジネスであれなんであれ、ぜんぶ処方箋を書いてですね、戦略・戦術を出して、『この世を計算世界に持ち込んだ最初の巨大な組織は軍隊』だと。

軍隊 Be carefulというのはわかるけど、しかしながら、日本は幸いにも「負け戦」でしたから、ここで皆さんどう思うかな、最終局面に大西瀧治郎先生をはじめとするですね、日本人が繰り出したのは、いわゆる神風特攻という【合理主義とは全く逆の非合理の極致】である『帰らない。死んでみせる。相手の心胆を寒からしめす。負けるだろうが日本人の心根だけは歴史にだろう』という恐るべき非合理主義に賭けて突入した。

[*大西瀧治郎(海軍中将 軍令部次官)神風特攻隊創始者 / 「合理的な軍隊」にあって歴史に残る神風特攻隊 ]



極論しますとね、日本がやった負け戦で本当に歴史上残るものがあるとしたら、僕はあの【神風(カミカゼ)】だというふうに言いたくなる時がある。そして今度のナントカってバカ映画のいちばん気持ち悪いところは、この大西瀧治郎を本当にその辺りの気違いと扱っているんですよ。



あぁ〜



恐ろしい嫌な映画でね・・・。



だからね、この国の問題というか、見ますと要するに中堅といいますか、そこは非常にいいんですよ。何が無いかって、本当のリーダーがダメだってことを知らなきゃいかんですよね。やっぱり明治の頃は凄かったのはですね、リーダーが各分野で軍人も政治家も科学者もみんな優れていた。太平洋戦争の時はですね、本当にいま言ったそういう人たちが頑張ったが、上がポーッとしていて、大事な戦争にみんな負けちゃうわけですよ、スグにね。



そうだね。



そういうことでいくと、もっとやるべきは、日本はアジアを!ということを言ってきたわけでしょう。「アジアのために立つ!!」って大義があった。ところが、アジアでそんな根回しもしないで日本は(戦争を)やって、しかもアメリカに負けたと言われてますけど、実はアメリカと中国に負けた、中国はアメリカとくっ付いてたということを知らなきゃいかん。

でいまもですよ、みんな中国が悪い悪いと言いながらアメリカにぺこぺこしてるけどね、よく見ると、アメリカと中国は既にくっ付いている。



そうなの。



そういうこともあるわけですから、常に日本という国は米中を見たり、日本の本当のシンパはアジアにたくさんいるんだってこういう仲間を集めないとね、孤立無縁の中でこないだの戦争みたいにすぐ死んじゃうんですよ。

[*確かなリーダーのもと世界情勢の見極めを ]



まぁそりゃそうだね。



今後の日本をどうしましょうという時に、まぁいろいろ難しいのだけど、個人のレベルでもそうだけど自分自身どう生きようかということを一生懸命に考えて、自分の生き方をある程度イメージしないと努力のしようもないですね、方向性としては。そういったものをしっかり作っていく。

周りとはみんな上手くやっていくに越した事はないが、じゃあ日本が国家として、この先どういう国家になりたいのかということを本気で議論しておかなければ、どっち向いていいのかわけがわからないですね。周りとはみんな仲がいいほうがいいですよ、だけど本体はどっち向いてどういう国になりたいのか、それを日本国民がある程度さまざまな議論をしたりしながら作っていかないと。

[*日本が目指す方向 国民が本気で議論を ]



歴史との関係では、私の意見はさっき申し上げたように東京裁判の判決は絶対に認められない。じゃあ日本人の判断をどこで作ってきたかと言うと、私は村山談話だと思うんですね。



あぁ。



村山談話はしかも出来てから20年、外交にとってはものすごく重要な役割を果たしてきて、それで中国・韓国を含むアジア諸国およびアメリカその他との和解に具体的に貢献してきた。じゃあしかし、中国・韓国との関係がいいか、アメリカとの関係が本当にいいか、良くないんですね。だから、歴史問題は村山談話でもう収めていって、今の問題は何かというと、今の米中です。

現状を変えようとしているのは力をつけてきた中国ですから、アメリカはどちらかといえば、現状維持の方から向かい合っているんですね。だけど、アメリカも中国もお互いに戦争したいと思っていない。間違いないと思いますね、お互いが破滅するから。そうすると、台頭する中国と向かい合うアメリカが、どこでこう収めてくかということを、これは外交の総力をつくしてよく見切って、でまぁ当面の日本の脅威は中国ですから、中国に対しては抑止と対話、これをやって、アメリカとは日米関係をよくするけども、日米関係の終局の目的は対米自立、それ以外にどこが大事かと言えば、韓国とのロシアなんです。韓国とロシアとの友情関係を強めると。こういうのがすごく単純な、しかし大戦略だと思うんですね。

これこそ安保法制をきっかけとして、どこが日本にとっての本当の戦略問題なのかということを議論するということが、最も大事なことだと思いますね。

[*対中国 抑止と対話 / 対米 日本の自立 / 韓国 ロシアとの友好 ]



先生が仰ったその場合にね、【日本の自立】といった時に、どの程度かまでか僕はここで言えませんけども、ともかく諸外国が日本に下手な手出しをしたら、お前さん方が相当な深手を負うぜ、日本はそれだけの強さを既に持ってるぜ、という一つのパワーを、何をワーワーとこれを誇示する必要はないが、それをしっかりと持つということ、これがたぶんアメリカに対してすら、アメリカに約束を守らせるという意味でも前提条件だし、中国が日本に対して控え目にするための前提条件、ロシアさんともついても然りというね。



私も全くそれについては同意見です。



そういう意味では、それを個別的自衛というかどうかはともかく、本当にいま議論しなきゃいけないのはそれなんでしょうね。ひょっとしたらいまのGNP5兆円というのでね、それで結構な力だということかもしれませんけども、そうなのかどうなのかという説明・解説がこの国では何にも言われて無いんですね。これが日本の出来る最大限でこれでいいんだ、という議論が無いんですよ。

[*日本の自立のためのpowerの議論が必要 ]



外国から見て、この国はアメリカの属国だと思われているわけですよね。



当然ですね。



それは誰から見てもそうで、アメリカの基地がある、基地があったっていいですよね、いろんな意味であってもいい。しかし、そこがですね、【日米地位協定】を見れば完全に占領されているだけで、何の意見も言えない。そんなことを平気でやっている。ドイツもイタリアも地位協定はあるけども、みんな自分(=自国)の主権が及ぶように変えちゃった、国民がね。日本だけが変えてないですから。



そういう意味では、本当に小林先生の仰っている地位協定の問題、これまでも何度も議論していますが、日本がこの独立国であるという、基地はあってもいいけども、それをめぐる地位協定は、日本の主権が及ぶんだということをここでハッキリさせるというのは、非常に重要なポイントのような気がしますね。



そうですね。



ということで、第2週目は時間が来たそうであります。第3週目は、いわゆる、近代主義を保守はどう乗り越えるか、そんなことになろうかと思います。ありがとうございました。

【次回】戦後70年 特別連続企画:『政治家としての戦後70年間の結果にどう対処するか』③ ゲスト 小林興起(国民党代表)×東郷和彦(元外交官)×脇雅史自民党参議院議員)×西田昌司自民党参議院議員) 「保守」は近代「主義」をどう乗り越えるのか