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『アメリカニズムを如何にせん』ゲスト 佐伯啓思(京都大学名誉教授) 伊藤貫(ワシントン在住 評論家)〜西部邁ゼミナール 年末特別番組(後編)〜

『アメリカニズムを如何にせん』ゲスト 佐伯啓思京都大学名誉教授) 伊藤貫(ワシントン在住 評論家)〜西部邁ゼミナール 年末特別番組(後編)〜

西部邁:評論家、雑誌「表現者」顧問、近著「生と死、その非凡なる平凡」(新潮社)、「ファシスタたらんとした者」(雑誌「正論」連載中)

ゲスト
佐伯啓思京都大学名誉教授、近著「さらば、資本主義」(新潮新書

伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト、近著「自滅するアメリカ帝国 〜日本よ、独立せよ」(文春新書)

【ニコ動】西部邁ゼミナール 2015年年末特番

アメリカニズムを如何にせん(前半) 2015.12.31


アメリカニズムを如何にせん(後半)2015.12.3


今村有希
『アメリカニズムを如何にせん』の後半です。アメリカからいらした伊藤貫先生と、京都から来られた佐伯啓思先生、共にアメリカニズムという名の近代主義、あるいは、社会実験主義について深く考えてこられた方々です。

アメリカニズムによる世界破壊とでも呼ぶべき事態が立て続いているのが、この21世紀初頭における世界風景といってよいでしょう。大いにおもしろい議論が伺えるはずです。宜しくお願い致します。

あっ、後半も宜しくお願い致します。ちょっと前半と繋げるために佐伯さんね、あの日本で「安保法制」なるものが成立したんですけども、安倍首相その他、日本人全部かな・・・今時ね、自前で、自分だけで自国を守ることは不可能だと、他国との協力が必要だという大前提から、それに対して前半で伊藤先生がね、もう勘違いも甚だしいと。理由は、アメリカという国はもう既に世界の強烈な覇権国(hegemon)としての地位を失いつつあると。そんなものをここまでアテにしてね、アメリカに頼って協力してればどうにかなるというのがオカシイということを指摘されている。

僕はもう一つね、指摘したい。『個別的自衛』についてね、ある程度、自分たち自身を鍛え上げるということを無しに、まず最初から集団安全保障でいきましょうという考え方自体が・・・佐伯先生、僕はもう国民として腐り切っていた連中じゃないかと思うんだけど。

[*世界覇権の地位を失いつつある米国、個別自衛を鍛えず集団自衛を言う国民 ]

そうですね。あのだから、この安倍政権、あるいは安倍さんを支持する保守派の側は、要するに個別的自衛権は行使は出来るんだけど、実際やってみると頼りないと。実際に戦争になってみるとどれくらい武力が使えるかが分からない。だから、アメリカに守って貰いましょうというので集団的自衛権に賛成するわけですよね。

で、(集団的自衛権の行使に)反対の側はこれまた懐かしい話でね(笑)

えぇ。

とにかく憲法を守れ!平和を守れ!という話で、しかも「60年代安保」の時もそうだったんですが、あの時にも最初に反対派は「安保反対」をやっていたんだけども、いつの間にか話が変わってしまって、安保粉砕から「民主主義を守れ!」とかいう運動に変わっていったんですよね。

[*憲法と平和を守れと安保に反対、次第に民主主義を守れと変わる ]

そうでしょう。僕はそうはしませんでしたが(笑)

今回も、いわゆる学生全学連のね・・・まぁあの(当時の西部)先生なんかを中心とする主流派は安保粉砕!!と叫んだんだけど、多くの知識人は民主主義を守れ!!に変わっている。今回も何か、そういう感じが非常に強かったですねぇ。

そうだねぇ。

特に、SEALDs(シールズ)とかいう若い学生たちの集まりがあって、民主主義を守れ!!という形で結集してきた。

[*SEALDs(Students Emergency Action for Liberal Democracy-s)自由・民主的な日本を守るための学生による緊急アクション ]

あぁ〜。

後は、原理的に原則的に思うんですが、その民主主義、民主主義というのは「国民主権」ですが、原則的に言えば、主権者の第1番目の役割というのは、その国の国民の生命や財産の安全確保なんですよね。

[*「民主主義」とは国民主権であり、原則的に主権者の役割は国民の生命や財産の安全の確保である ]

だからまぁ、「君主国」の場合には、君主が臣下である国民の生命や安全を確保する義務があるんだけども、じゃあ「民主主義」「国民主権」の場合はどうかというと、(主権者である)国民が自分たちの手で自分たちの生命や財産の安全を確保しないとだめなんですね。ということをは要するに、ちょっとまぁ簡単に言ってしまえば、基本的には【国民皆兵】なんですよね、民主主義というのは。

うん。

(主権者である)自分たちが武器をとってそれで守ると。でもちろん実際には、国民皆兵でやってしまうと現代の戦争は厄介ですから、そんな風にいきませんから、まぁアメリカも志願兵にしていますし、だけど、《精神として言えば、国民が自分たちで武器をとって自分たちの国土を守る》と。

そうだね。話こだわるようだけど、国民が自分たちで自分を守るということなんだけど、伊藤さんね?

伊藤貫
はい。

実は日本の最高裁はご存知と思うけど、自衛隊という存在、まぁ普通は憲法違反としか思えないわけさ。でも9条第2項では、陸海空その他の戦力はこれを保持しないって言ってるんだけども、自衛隊は戦力だろうと。

ところが、それを日本の最高裁が正当化するために、次のようなことを考えている。

「独立国家、主権国家は自分を守る権利はいわば『自然権』としてあるハズだ。従って、自衛隊は不法とは言えない。」、という弁護をやった。

[*独立国家は自国を守る権利が自然権としてあると最高裁が肯定化 ]

うん。

僕に言わすと、これ東大法学部出身の最高裁判事になり仰せた連中のある意味で「ごまかし」だと思うんだけど、その意味は、実は自分の国を守るためには他の2つの方法があるんですよ。

1つは、話が飛び跳ねるようですけど、かつてインドで10数年やったガンディー(※【マハトマ・ガンディー】)ね。つまり武力は、この場合は戦力、一切持たずにひたすら不服従、撃たれようが、殴られようが、殺されようが、不服従ね。前進をし続けるという、非暴力・不服従主義ね。

[*ガンジー主義:インドの独立運動指導者の思想と実践哲学、暴力・戦力は一切持たず殺されようが、ひたすら不服従 ]

もう1つはね、国軍・政府軍じゃなくて「民兵」、簡単に言うと「ゲリラ戦」ね。

はい。

軍隊は正式には作らないが、いざとなったら我が国民はですよ、自分たちでピストル、鉄砲、爆弾を持ってやるぞというね。そういうやり方が2つあるわけ。

[*ゲリラ(guerrilla):国軍政府軍の軍隊をつくらず、民兵として自ら武装して戦闘する ]

だから、自衛隊を正当化するためにはね、ガンジー主義は無理です。それからゲリラ主義は無理ですと。ゲリラってのは法律的に言うと「テロ」ですからね。つまり、支配国がつくっている法律に違反して反抗するんですから爆弾で。不法の武力を使う事をテロというのならば、要するにゲリラをやってのける連中はテロを、ある種のテロを肯定しなきゃいけない。

しかも、guerrillaというのはもともとスペイン語ですか?

伊藤貫
いや(わからないです。笑)

あれ、もともとの意味は「戦争」(=guerrilla:小戦争)という意味なんですね。

伊藤貫
(うんうん)

guerrilla(ゲリラ)もまたテロという形をとる「戦争」なんですよ。こんな日本人のように、反戦反戦と言ってる奴らがゲリラを出来るわけが無いわけさ。

ということを言った後で、それ故ね、いまのあれ(=自衛隊)を国軍と言うべきかはともかく、要するに、軍事法廷も無いしその他なにも無いから半端なあれなんだけど、とりあえず「政府軍」と言っておきますけども、そういうふうにして消去法で、これもダメ、これもダメと言って残るのはね、政府軍としての自衛隊だと(法律家は)やらなきゃいけないのに、もう法律家の誤魔化しでそういうことをやって、憲法問題自体を法律家が誤魔化して、なんとか自衛隊は(認める)。

[*政府軍としての自衛隊の存在を、憲法問題自体を法律家が誤魔化す ]

(笑)

というふうに解釈してるけど、それでいい?

うん、まぁアメリカの場合には例の憲法の修正第二条でしたっけ?あれで要するに、民兵の感じ方と一緒ですよね、武器を保持できるという。だから、アメリカの場合にはやっぱり自分たちが自分たちを・・・

[*アメリカ合衆国憲法の修正第二条 武器を保持する権利が記されている ]

▷「参考」:権利章典(Bill of Rights)とは、アメリカ合衆国において、憲法中人権保障規定のことをいう。州によっては統治機構とは区別して規定されている。アメリカ合衆国憲法では、最初の修正条項である修正第1条(Amendment I)から修正第10条(Amendment X)がこれにあたる。名前は1689年に制定された英国の「権利章典(Bill of Rights)」に由来する。

合衆国憲法修正第1条から修正第10条は、市民の基本的人権に関する規定であり、憲法制定直後の1789年第1回合衆国議会で提案され、1791年12月実施されたものである。

修正第2条 編集(人民の武装権):「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない。」

あぁ〜あそこから来たの、あれ(=民兵)は?

そうだと思います。民兵って言葉はMilitia(ミリシア)ですか、という言葉が使われてるハズですよ。

伊藤貫
(うんうん)

『だから、アメリカ人が武器を絶対に手放さないというのは、民主主義国というのは民兵(Militia)がいて当然だと。自分たちの財産は自分たちで守るもんだと。』

伊藤貫
えぇ。

そっから来ているんだと思いますね。

そうだと思うんですよね。

それは一つの、いま(西部が)仰ったのはちょっと論理の問題のように仰ったけど、基本的には【精神の問題】でね。

そうだね。

えぇ、だから民主主義国というのは、自分たちの国民主権であるし、自分の財産生命はまず自分で守るということは当然含まれますよね。

いやちょっと伊藤さんね?

伊藤貫
はい。

僕ね、あの今村さんから・・・「西部さん、そういう下品な発言をしちゃいけません。」と言われているんだけど、この場でね、下品なね・・・3回目になっちゃうんだけどねぇ・・・

伊藤・今村
(笑)

今の憲法9条ね、世事ね、世間の出来事に準えるとこういうことになる。

伊藤貫
えぇ(笑)

『男性たる者、女性をレイプしちゃいけません。』まぁ正しいんです。

問題は第二項です。『レイプをしないために男性は・・・あれ逸物って言うの普通ね・・・逸物を持っちゃいけません。逸物を使用してはいけません。』というね、そういうことなのね。

[*「戦力不保持」「交戦権否認」の憲法9条第二項を世事に準えれば ]

それを言われて70年間、日本人はそれを根拠に平和を守れと言ってるわけさ。それで思わず、この前この番組でね、『日本の男性はみんインポテンツ です!』って言っちゃったの。それで今村さんから、「そういう下品なことは言っちゃいけません」って言われてるの。

佐伯・今村
(笑)

伊藤貫
(笑)あの、僕が最近1年から1年半の日本の特に「保守派」のね、外交議論を観察してて納得出来ないなと、僕はもともとアンチ左翼ですから、それは左翼が何を言っても全然気にならないんですけど、保守派の言ってることが全然理屈が通ってないと思うことが2つあったんですね。

で、1つは、日本政府はアメリカと一緒に世界国際政治における「法による統治」を守るんだと。だけど、そのアメリカと一緒に「法による統治」を守るんだと、だからロシアに対抗するんだと、クリミア半島は許せないと言っているんですけど。

[*米国と一緒に世界を「法による統治」 日本の保守派による外交議論 ]

伊藤貫
じゃあアメリカが「法による統治」をやっているかというと、あのイラクに入っていってあのサダム・フセインを殺して滅茶苦茶になって今も内戦状態で、アメリカがイラク戦争で政府を壊したことで、もう内戦で民間人が130万人から140万人は死んでいるわけですよ。で誰も責任をとっていないわけですよ。であれ、アナン国連事務総長(※当時)が言ったように、2003年のアメリカの行為というのは『国際法違反の侵略戦争』なんですよ。

[*米国のイラク侵攻で130万人が死亡、国際法違反の侵略戦争である ]

そうですよ。

伊藤貫
で、そのアメリカと一緒になって「法による統治」はなんとかかんとかだと言ってるわけでしょう?で、アメリカは例えば隣のシリアでは、シリアでいま「アサド政権」と、「アルナスラ」(アル=ヌスラ戦線)という実はアルカイダなんですけど、それから「ISIS」というIslāmic Stateと3つのグループがあるんですけども、ISISはあのサウジアラビアイスラエルクウェートとそれからカタールが支持しているんですけども、アルナスラってアルカイダの後継者は、実はCIAが応援しているんですよ。どう見てもアメリカが、まともな「法による統治」を守っているとは思えないと。

[*シリア情勢におけるアサド政権、アルナスラ(アルカイダ系)、ISISの3グループの争い / アルナスラを支援するのはCIA 「法による統治」を守らない米国 /参考サイト:https://tanakanews.com/150222isis.htm

◉全て合理的に未来を予想するという近代主義による世界破壊

もっと抽象レベルで言いたい事があって、

伊藤貫
えぇ。

それは今度の安保法制、つまりこれね、ある種の「戦争というものをめぐる矛盾」なんだけども、軍隊、あるいは戦争というものはものすごく近代主義的に合理的なものですよね。

伊藤貫
えぇ。

何名の兵が必要か、武器をいくら持ち、戦略をどう企てどう遂行するかという、非常に計画的・合理的に物事を組み立て遂行するという意味では近代主義的。

伊藤貫
えぇ。

ところがね、「戦争」でしょう?そんな目算通りにいかないわけですよ。

伊藤貫
(うんうん)

ちょうどいまアメリカがイラクでも何処でも目算通りにいかなかったように、そうするとある種の近代の戦争および近代の軍隊の抱えるparadox(パラドックス)というのは、安保法制のように、「法制」というのはこういうことが起こるだろうからこういう法律をつくるという「合理主義」ですよね。ところが、一旦始めると、アメリカが直面したように「予測しない事態」が起こり得るわけさ。ある意味じゃ『例外状態』ですよね。【カール・バルト】(※独、神学者、1886~1968)の言葉で言えばね。

[*近代の戦争および軍隊抱えるparadox 安保法制のような合理主義で立ちゆかず ]

伊藤貫
はい。

そうですよね。あるいは『非常事態』ね。今度の安保法制論議でね、『日本の憲法には非常事態条項が無い』わけ。逆に言うと、『非常事態が起これば、全部アメリカがやって下さるハズです』という大前提のもとに憲法体制があって、それを守れ!と叫んでいるわけさ。

[*非常事態条項を持たない憲法を、米国に依存し、それを守れと叫ぶ ]

伊藤貫
(うんうん)

ところがね、戦争の問題をちょっと考えると、目算通りにいかないことがしょっちゅう、アメリカですら起こるんだから、では(日本は)もっと起こるだろうと。それを一般に『例外状態』『emergency(エマージェンシー)』『非常状態』というのなら、『非常事態においては民主主義なんかは通用するわけが無い!』んですよ。

[*例外状態、非常事態においては民主主義は通用しない ]

これは明治憲法には何て書いてあるか、31条かな。戦争その他の時には、天皇が大権を握るを妨げず、かな。一応、「天皇」という言葉が出てますけども、あそこで言いたいのは、何処か特別の組織がある一定期間『全権』をもって戦争にあたるというね。まぁそれの象徴として「天皇」が来るだろうというぐらいの意味なんですけどね。

[*明治憲法大日本帝国憲法)第31条:戦時又は国家事変の場合において天皇大権の施行を妨げるものではない ]

つまり、僕が言いたいのは、戦争というのは近代が始めるものなんだけど、その行き着く先にはね、近代主義ではやっていけない非常事態ね、そういうことを安保法制論議を論じている人は一切分かっていないんだね。

うん。

何かね、全て合理的に予測出来るから、全部法制化出来ると思っているわけさ。

[*近代主義ではやってゆけない非常事態、合理的予測で法制化という思い込み ]

これだから、あの国会の最終段階でねそういう、民主党はとにかく法制の内容まで、つまり「これはこういう状況になったら、これはどこまで出来るんだ?」って話をみんなするわけでしょう(呆笑)

全くねぇ(笑)

「これはどこまで自衛隊は行動出来るんだ、それを全部法制化しろ!」って(民主党は)言う。凄まじい話で、それに対して、また政権の方がまともに正面から答えようとするねぇ・・・笑ってしまいますねぇ(呆)

あぁ〜。

それは非常事態というのは、全く・・・(そもそも)戦場というのは何が起きるのか分からないということを前提にしないと。

だから、僕が伊藤さんが言ったように、アメリカはイラクその他でとんでもない非常事態に直面して、とんでもない侵略ということをやって、その他もろもろやったのだけど、でもそれはアメリカの落ち度だと思うし、それは徹底的にそれを指摘しなきゃいけないと思うけど、同時に、『近代が抱えた矛盾というのはね、未来を全て予測出来ると、少なくとも確率的に予測出来るとしといて、実は出来ない。』

これは「戦争」だけじゃないでしょう?例えば、「経済」だってリーマンショックが起こったのはそれなんですよ。「この株の将来収益率はこうこうこうなります」と。「データは?」と言ったらね、「去年はこうでした」ということでもって、それを未来に当てはめて、それで株価が暴騰する、みんな買漁る。蓋を開いてみたらね、『非常事態』が起こってて、何にもそんな収益はあがらない、暴落するというね。

伊藤貫
(うんうん)

そういう意味ではね、「政治」のみならず「経済」も含めて、『未来をほぼ完璧に予測出来るとする嘘話ね、これが世界を破壊している。』嘘話をもっとも信じ込んでいるお馬鹿さんの国(=アメリカ)ね・・・日本もそうなんですけど、それで気になる。その(=アメリカの)マネをするなというね。

うん、まぁアメリカはね、先ほど伊藤さんも仰っていたけど、案外と非合理的なことも平気でする国でね(笑)

伊藤貫
えぇえぇ。

それで、一方でアメリカの「国益中心主義」というのはものすごく強烈にありますから、だから、アメリカはワリとその辺は上手い具合に計算しながら、その状況に合わせて適当に国益を守っていくことが出来るんだけど、

そうか。

それをそういう表面上ね、仰ったような「法の支配(法による統治)」とか、「自由民主主義の勝利」だとか、「自由民主主義の国際秩序」だとか、そういう風なことで上手く糊塗するというか誤魔化し過ぎますよね。

◉日本に相応しい自主防衛とは、議論を進めなかった戦後日本

伊藤貫
もう一つ僕は、日本の保守派の議論でこれはインチキだなぁと思ったのは、要するに皆さんも仰ったように、世界で自主防衛出来るのはアメリカだけだと。だからアメリカにくっ付いていくしかないんだと。

うん。

伊藤貫
だけど、そんな変な、世界で自主防衛出来るのはアメリカだけだってヘンテコリンな議論をしているのは日本人だけでね。

[*世界で自主防衛できるのは米国だけ、ヘンテコな議論をするのは日本人だけ ]

(笑)

伊藤貫
他はそう思っていないわけですよ(笑)例えば、ベトナム人にしてもインド人にしてもパキスタン人にしても、それからトルコ人にしても、

そうだよねぇ(笑)

伊藤貫
自分の国が戦争に巻き込まれたら、アメリカが飛んで来てくれるとは思っていないわけですよ。だから、要するに最初から、「我々は自主防衛は出来ない」というところから(安保法制関連の)議論がスタートしてるんですね。

そうか。

伊藤貫
で、それはもちろん、アメリカの国防省とCIAの日本担当官にとっては(日本が自主防衛しないことが)一番都合がいいんですよ。「お前たち日本人は自主防衛出来ないだろう?!だから俺たちの言うことを聞け!だから自衛隊を出せ!!」とくるわけですね。

『だけど、戦争というのは、抑止力を持っていない国に対して起きるわけ。抑止力を持っている国に対しては(戦争は)起きないです。』

じゃあ、抑止力って何かと言うと、攻撃する側としては cost・benefit計算で、この国を叩いたらどのくらい反撃されるかと、どのくらいコストが掛かるかと、コストが高いんだったらやめておこうと、コストが低そうだったらやってもいいと、いうことになるわけですね。

そうすると日本は、本当に軍事的な抑止力を持てるのか、持てないのかと。で、もし日本が軍事的に抑止力を持つとしたら、どういう抑止力が相応しいのかと。

そうだ。

伊藤貫
そういう議論をしないで、アメリカにくっ付いて、見捨てられたら大変だと、そういう議論しかしないわけですよ。

せっかくね、京都から佐伯さんいらしているからね、こちらの伊藤先生はね、強烈なる核武装論者となの。

今村有希
(驚いた表情で)うん。

(挙手して)私は、弱々しい核武装論者。

フッフッフッフ(笑)

でね、佐伯先生は、

今村有希
はい(笑)

核武装なんかやめなさいって言ってる人なの。

そんなことも言っていないですよ。

言ってないの?

必ずしも(笑)

今村有希
(笑)

伊藤貫
ちょっとちょっと、それでね、ごめんなさいね。

あぁいいよ(笑)

伊藤貫
あのね、20世紀の戦争というのは陸軍と海軍と空軍の三軍がやって、それでこの陸海空が強くないと戦争を抑止出来ないという戦争だったんですけども、21世紀になってからもう戦争のコンセプトが変わって、要するにこの三軍だけではなくて、『核戦力』と『宇宙戦力』と『サイバー戦力』とこういった3つもが加わったんですね。

あぁ〜。

伊藤貫
ですから、陸海空に核と宇宙戦力とサイバー戦力。

[*20世紀の戦争は陸海空の三軍、21世紀は核・サイバー戦力 ]

宇宙戦力って?

伊藤貫
宇宙戦力というのは具体的に説明しますと、中国はいま実際に使っている人工衛星が100あるんですね。

あぁ〜そういうことか。

伊藤貫
で、アメリカは(人工衛星が)300あるんです。で、中国軍もアメリカ軍も人工衛星が無くなったらもう動けないんですよ。

うん。

伊藤貫
もうとにかく最近の精密誘導弾とかいって全部相手側のどこに動いているかをやって、クルーズ・ミサイル(巡行ミサイル)にしても、普通の爆弾でも、(人工衛星による)GPSからのシグナルをもらいながらいくわけですね。相手側の使っている人工衛星を数時間、もしくは数日以内に全部チャラにしちゃう、というのが『宇宙戦争』なんですね。

それで、相手側の使っている人工衛星、中国は100、アメリカは300、(これを)チャラにするのに実はものすごく安上がりなんですよ。僕なりに計算してみて、日本が例えば中国の持っている100の人工衛星をチャラにして動かなくするために、どのくらいの宇宙戦力の軍事予算が必要か計算してみたら、GDPの0.05%なんですよ。

[*相手国の人工衛星を無力にする宇宙戦略軍事予算はGDPの0.05%と試算 ]

伊藤貫
例えば、中国だってサイバー攻撃されて、自国内の電力システムとか運輸システムとか金融システムが全部マヒしたらものすごいダメージでしょう。

そうだね。

伊藤貫
で、ともかく両方ともサイバー戦力と宇宙戦力ってものすごい安上がりなんですね。だから、まずそれを持ったらどうか?って議論を国会でしないで、とにかく自衛隊はアメリカの下請け部隊として、米軍と一緒に戦って血を流さないとアメリカに見捨てられると、そういう議論ばかりでしょう。

『だから、要するに21世紀の戦争が陸海空、核、宇宙、サイバーという6つになったんだから、日本も抑止力を持とうとすれば出来るハズなんですよ。』

うん。

なるほどね。

伊藤貫
だから、その抑止力を持つという努力をする前に、アメリカと一緒に戦わないと見捨てられてしまうという議論ばっかりで、要するに【独立心がない】わけですよ、最初から。独立心がない連中が、「これをやらないとアーミテージに見捨てられるから」とかね、そういうことばっかり(日本の保守派は)言ってるわけでしょう。

[*米国と一緒に闘わないと見捨てられると、抑止力を持つ努力をせず独立心がない ]

これは「核」に対してね、核に対して懐疑的なのは、

伊藤貫
えぇ。

そういう国民が核を持つことが独立する資格がないわけですよ(笑)

伊藤貫
えぇ、それはそうなんです(笑)

ただ今のね、僕は宇宙もサイバーもよく分からんけど、核も含めてですけども、先ほどの人間の予測、可能性の問題から言うと、間違う可能性があるでしょう人間はね。

伊藤貫
えぇ。

なんか英語ではfallible(フォリブル=可謬性)というらしいが、例えばですよ、中国がなんか日本に悪さをしているんじゃないかと予想・予測して、中国が人工衛星をですよ、さっき言ったなんとかでもって全部ダメにした(=無力化した)とする。ところがね、その判断が間違っている可能性があるわけさ。もしもそういことをやったらですよ、単に日本が恥ずかしいだけじゃなくて、国家が持たなってくる。あ〜最後まで聞いてくれる?

[*fallible 間違う可能性がある 人間の予測可能性をめぐり ]

ということはね、核のことも含めて厄介なのはね、核の方がいちばん議論しやすいんですけども、retaliation(リタリエーション)、報復ね、向こうがやったらこっちがやり返すというね。で、向こうがやるまではこっちはね、予防的には本当は強くやるに決まっているけども、こちらから先制攻撃をかけたいんだけども、ひょっとしたら向こうはその直前で中止する可能性もあるから、そうするとね、やられた後でやり返すという『報復』、一種のガンジー主義を思わせるような恐るべき忍耐力ね。

[*敵の攻撃も対する報復 retaliation ガンジー主義を思わせる忍耐力 ]

うん。

ともかく核の方が議論しやすいんですけども、向こうが核の先制攻撃をやるまでは、日本は(仮に)核を持ってたとしてもですよ、「報復」だから、何十万何百万の日本人が殺されるまでは、日本は(核攻撃を)やらない!というね。

うん、そうですね。

もっと言うと、それに耐える力を日本は持つということね。それは、恐るべき努力を要する問題。

いや、そう思いますけどね。

それは人工衛星もそうですよ、どうもあの国は悪そうだから人工衛星を撃ち落としちゃえとやったらね、「証拠はどこにあるの?」って話になったら、今度はあの、この前アメリカがフセインを潰した時と同じですよ。「フセイン大量破壊兵器を持ってるハズだ!」と。やっつけた後で探したら、どこにも(大量破壊兵器は)ありませんというね(笑)

うん。

そういうバカなことになったら、もう大恥どころか国が滅びに入るでしょう。まぁそういうことも含めてね。

◉世論(国民の一時の気分)は政治をも動かす、国を滅ぼしかねない「民主」主義

だけど、その「民主主義」というものが、国民の世論というけども、まぁ実際には、その時その時のほとんど情緒、気分、それからマスコミや何やらが、どういうことをどういうふうに宣伝するかというようなこと、そういうものが何か本当にこう不定形なもの、ぜんぜんマトモな形をとらないで政治を動かしてしまう、それで民主主義国は全部いまそうなってきているんですよね、それはヨーロッパも含めてね。

うん。

軍事的なパワーがどうのこうの、戦略的に何が出来るかという話と、その元にある政治を動かす何か「気分」「情緒」「得体の知れないモノ」、その間の距離がものすごくどんどんどんどん遠くなってきているんですよね。

だから、計算可能性、予測可能性といえばそうなんだけども、何かもうそういう意味ではちょっともう『何が起きるか予測出来ない』、原則的に言えばね。

話をズラすようだけど、ほんとう不思議なことでね、今村さんね、政治学というものがあるでしょう。政治学はね、長い歴史の中で最初にやった人は、古代ギリシャの【プラトン】さんなの。

今村有希
はい。

プラトンさん、何を言っているかというと、『民主主義ってのはヒデェもんだ!』ってな事を延々と言った人なの。ね? それを政治学者がですよ、「民主主義は素晴らしい」という路線で歩まんとしていつも先頭に立っているわけね。でも、お前たちの先祖のプラトンはね・・・いいんですよ、プラトンが言ったからどうってわけじゃないんだけどね、マトモな人はね、『民主主義というのは国を滅ぼしかねないものだ!』ということをプラトンから延々と来て、例えば、トクヴィルに至るまでまだたくさんいますけどね、(それが)常識のハズだったんだけども、常識をどんどん学者が先頭に立って無くしていった。

[*民主主義は酷くなるとプラトン、素晴らしいと宣伝してきた政治学者 ]

そうですね。しかもギリシャの民主主義というのはねぇ、結局あれなんですよね、「民衆指導者」が出てきて、やっぱりね、もちろんギリシャは抽選(※古代ギリシャの公職は抽選で選ばれた)でやっているからみんなが参加なんだけども、しかしやっぱり中心になる本当のリーダーというのが出てくるわけで、そのリーダーがどうやって出てくるかというと、だいたい演説が上手くて、それで将軍なんですよね、軍の将軍として戦争で功績を挙げた者が政治的リーダーになってくる。だから、ギリシャってのは絶え間なく「戦争」をやってるでしょう?

[*民衆指導者は軍で功績をあげた人、ギリシャでは絶え間ない戦争があった ]

democracy(デモクラシー)なんて言うけどね、demagogue(デマゴーグ=扇動政治家)という英語があるの。なんだと思う?

今村有希
どういう意味ですか?

民衆扇動家って意味なんですよ。

今村有希
扇動家。

(demagogueの)agogue(アゴーグ)というのは「扇動する」「煽りたてる」という意味ね。

今村有希
はい。

民衆を煽り立てる(demagogue)、だからプラトンであれ誰であれ、今だって見てれば分かるわけですよ、主に新聞だったりテレビだったり政治家だったりするんだけどね、ちょっとした刺激的な情報、嘘か本当かわからない事実、そんなことを使いながらdemagogie(デマゴギー)ね、民衆扇動をやって、しかもそれ戦争には付きものなわけよね。

『だから、確かに戦争の問題は民主主義の問題と同じように古代ギリシャから直結しているわけ。』

[*demagogue(民衆扇動家) 「デマ」の語源はdemagogie(独:デマゴギー) ]

今村有希
(うんうん)

伊藤貫
僕も民主主義は好きじゃなくて、特に外交問題・軍事問題に関して言うと、僕は民主主義というものに関して非常に強い不信感を持っているんですね。で、その理由は、民主主義の政治家が外交問題・軍事問題を議論しだすと必ず、『国民の好きか嫌いかという情緒に、英語で言うとpanderly(パンダリー)、阿る』ということをやりだすわけですね。

そうですね。

伊藤貫
で、実は僕は日本の戦前の中国に対する軍事介入も最初から失敗だったと。で、戦前も日本の保守派というかnationalist(ナショナリスト)は、中国に対して非常に侮辱的な言動をして、

「中国人なんかダメな奴だ!我々は明治時代以降、中国人や朝鮮人よりも先に西洋人の猿真似をして近代化したけれども、朝鮮人と中国人は猿真似するのが遅れた」と。

[*戦前日本の保守派による中朝への侮辱、日本は文明国だという驕り ]

あぁ〜。

伊藤貫
「だから、最初に猿真似した俺たち(日本人)の方が(中朝人より)偉い!」と言って、日本は文明国で、文明の遅れた朝鮮人や中国人を処罰してやるというような議論を始めたでしょう。僕はあれは非常に中国人と朝鮮人に対して失礼な議論だと思うし、

そうだねぇ。

伊藤貫
なんでこういうことを言うかというと、日本に(アメリカから)帰ってくるたびに本屋さんに行くと、中国を侮辱するような本が何百冊も出てるわけですよ。

あぁ〜。

それは必ず儲かるらしいねぇ(笑)

伊藤貫
僕は、中国の軍備拡張というのを非常に深刻に受け止めていますから、核抑止力なり、宇宙戦力
サイバー戦力によって、(中国の軍備拡張を)抑止しなければダメだというふうに思うんですけども、中国人もしくは中国文明を侮辱するようなことは、ちょっと言いたくないんですよ。

そうだね。

伊藤貫
そういうね、中国人なり中国文明を見下すような、もしくは侮辱するような感情を外交議論や軍事議論に持ち込むと、全く不必要な挑発的な振る舞いを。で、なんでこんなことを言うかというと、アメリカ人は大好きなんですよ、そういう、あの国は悪い国だ・・・

[*中国の軍備拡張は抑止すべきだが、文明を侮辱する外交議論は挑発に ]

うん。

アメリカでも、日本人のそれは「ヘイトスピーチ」って言ってるんだけども、アメリカでもそういう言葉が流行っているの?

伊藤貫
というか、あのとにかくイスラム教諸国とイスラム民族とイスラム文明に対する侮辱、それからロシア人とロシア文明に対する侮辱がアメリカのマスコミにもう溢れているんですよ。

[*イスラム諸国やロシアの文明に対する侮辱、アメリカのマスコミに溢れている ]

あぁ〜。

伊藤貫
他の文明なり民族に対する侮蔑感を自分の国の外交判断・軍事判断に持ち込むのは、僕はすごく嫌なんですね。だけど、民主主義だと必ずそうなっちゃうんですね。

そうですねぇ。

伊藤貫
えぇ。

ちょっとその問題と関係あるか、根本で関係あると思うんですけどね、日本人はよく「民主主義」という。それで「独裁反対」という。結構な話だけどね、これはね、独裁者は一体どこから生まれるかというとね、古代ローマで言えば、もちろんあの【ジュリアス・シーザー】は皇帝になる直前に、ブルータスに暗殺されましたけどね、民衆が要するに「シーザー万歳」を叫び立てたわけさ。・・・と来て、ヒットラー(【アドルフ・ヒトラー】)は皆さんご存知・・・今村さん、ご存知かどうか、1933年にドイツが国民投票(referendum=レファレンダム)でナチス党、もっというとヒトラーに全権を委任したの。だから、ドイツ語分からないんで、日本語で言うと『授権法』、権利を授かる法ね。何やっても結構ですよと言ったのは「民衆」なんですよ。ですから、民主主義から独裁が生まれるというのは歴史上1回2回ありましたじゃないんですよ。

[*民衆がシーザー万歳、ヒトラー全権委任、民主主義から独裁が生まれた歴史 ]

今村有希
(うん)

例えば、中国の【毛沢東】だって、投票なんかしたわけじゃないけどね、紅衛兵という少年まで動員してね、「マオ(毛)さん、マオさん、マオさん!」毛沢東万歳という民衆の圧力のもとにね、毛沢東に反対する勢力が「実験派」という名前を付けられて三角帽子を被せられて滅ぼされていくわけね。

[*紅衛兵(少年兵)まで導入した 中国の毛沢東による文化大革命

『必ず独裁を生み出しているのは、どっかから悪い奴が降りて来たんじゃないんですよ、民衆が、それを歓呼の声で、あるいは投票で表して、独裁者は生まれるんだというね。』

そんなことすら気付かずにさ、あの国は独裁だから滅せ!ってなことでもって話を進めるんだよね。

アメリカの独特のやっぱり歴史観があって、America Legacy(アメリカ・レガシー)と言ったりもしますけどもね、

伊藤貫
えぇ。

要するに、アメリカは自由と民主主義というより、それ(=America Legacy)を体現した国で、それに対して手向かってくる、戦争を仕掛けてくる、それは全体主義ファシズム独裁国家であると。だから、独裁・全体主義 vs 自由・民主主義(=アメリカ)という、そういう【非情に単純な図式】を作ってしまって。

[*アメリカは自由・民主主義の理想を体現 手向かうのは全体主義ファシズム

伊藤貫
そう。

それをやったんですよね、まんまと日本人が洗脳されたところから、(日本人)自分たちから、そうですそうです!(=アメリカの言うとおりである)と言い出したんですよ。

つまり、第二次世界大戦で言うと、連合国 vs 枢軸国。枢軸というのはあの三国同盟、日本・ドイツ・イタリアのね、「こいつらはみんな独裁体制の悪い国で、自分たち連合国、アメリカ・イギリス・フランスその他は要するに民主主義で良い国である。わかったか!」というので東京裁判が行われ、エトセトラ・・・それで日本人が(アメリカ側の言うことに)そうですそうです!!と言って70年。

もうこの番組はそれを確認して、そろそろやめにしようか、と提案したくなるぐらいのとんでもない事を(戦後70年間にわたり)やり続けてきている。

[*民主主義(連合国)=善 vs 独裁(枢軸国)=悪 ]

うん。伊藤さんにむしろお伺いしたいんだけど、

伊藤貫
はい。

そういう自分たちが特権的に、まぁ自由でも民主主義でもいいのだけど、世界を支配出来るし、しなければならないというある種の使命感まで持っているわけですよね、アメリカの少なくとも指導者たちはね。

伊藤貫
えぇ。

こういうふうなものの背景にあるのはやはりあれですか・・・宗教的信念のようなものを感じますか?

伊藤貫
あの、最初はそういうのが、まぁ〜今でもあるんですけども、でも全部宗教感情から来ているか?というと、そうではないような感じがするんですね。

なるほど。

伊藤貫
戦略家の【ジョージ・ケナン】というあの「冷戦構図」をつくった人が国務省のプランナーがいるんですけど、もうひとりは国際政治学者で神学者の【ラインホルド・ニーバー】という人がいて、

はいはい。

伊藤貫
二人とも同じことを言ってまして、それは二人とも非常に真面目な人なので、その・・・

『人間というのはどうしても自己欺瞞と偽善と独善というものから逃れられない』と。生まれてから死ぬまで、自分自身を騙して、それから偽善と独善をやると。

[*人間は自己欺瞞と偽善と独善から逃れられない / ジョージ・フロスト・ケナン(George Frost Kennan、1904~2005:外交官、政治学者)/ ラインホルド・ニーバー(Reinhold Niebuhr, 1892~1971、神学者)/ 参考サイト:http://www.nagoya-bunri.ac.jp/information/memoir/files/2009_06.pdf

伊藤貫
ようするに彼はそれを、(The)Original Sin(オリジナル・シン=原罪)と言っているんですけど、ニーバーにしてもケナンにしても、人間というのはOriginal Sinから・・・

Original Sinというのは「原罪」のことね。

今村有希
(うんうん)

伊藤貫
原罪。要するにもう自分が罪深い存在であることすら気が付いていないのが、Original Sinなんですよ。

[*自分が罪深い存在であることすら気付かない Original Sin「原罪」 ]

あぁ、なるほどね。

伊藤貫
気が付いていればいいんですけど。

人間は道徳的にも知性的にもいつもimperfect(イン・パーフェクト) 、不完全であり、

伊藤貫
えぇ。
でも何か選ばなきゃいけないから、ちゃんと『議論』をして、なぜ議論するかというとね、実は『少数派が正しいかもしれない』から、少数派の意見も聞いてみて、なるほどね、こいつらいい事言ってるとこあるね、というところで、でもいつまでも議論しているわけにもいかないので、どっかでまぁ止むを得ず majority decision(マジョリティ・デシジョン)、多数決で決めるけどね。

[*人間は不完全 imperfect であるが選択する、少数派が正しい可能性があるから議論 ]

その多数決がまた間違っている可能性があるから、物事はあまり過激に、急進的に、大規模に、急速度にやっちゃいけないというね、そこから来たのがあの本当はイギリスに発生した保守主義の gradualism(グラデュアリズム)と言うんですけど、『漸進主義』と言うのかな。

[*過激・急進的・大規模にやってはならない 「漸進主義」gradualism

伊藤・佐伯
うん。

少しスローテンポで事を進めようぜ。理由は自分たちは imperfect、不完全だからというね。そういうcommon sense(コモンセンス=常識・良識)を無くしたのがアメリカ人なんだねぇ。

伊藤貫
そうです、そうです。

そのど真ん中の小高い丘の上で伊藤貫先生は、

伊藤貫
(笑)

英語で言うところの、Olympian Aloof(オリンピアン・アルーフ)

伊藤貫
いやいやいやいや(笑)

(今村を見て)分からないでしょう?

今村有希
はい分からないです(笑)

「高みの見物」

伊藤貫
そんな勇気ありませんよ(笑)

丘の上から、この傲慢な国アメリカがどうなっているかと。この傲慢な国に「洗脳して下さい!」と頼み込んでいるアメリカの向こうの日本人は一体何者であるか。ということをね、Olympian Aloof はしていらっしゃる。

(笑)

時々帰ってきて下さいよ。

伊藤貫
はい、どうも(笑)

ということで、少しは大晦日ですから考えて下さい(笑)

今村有希
(笑)

ということで終わりまーす。ありがとうございました。

一同
ありがとうございました。