映画人が語る「テロと資本主義の関わり」① ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督) 〜西部邁ゼミナール〜

映画人が語る「テロと資本主義の関わり」① ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督) 〜西部邁ゼミナール〜

ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督)

【ニコ動】
西部邁ゼミナール)映画人が語る「テロと資本主義の関わり」【1】2016.01.10

今村有希
明けましておめでとうございます。今年もTOKYOMX 西部邁ゼミナールを楽しんでご覧下さい。

この年頭はあまりお目出度く無いテーマ、つまりテロの元凶は「資本主義」と「民主主義」である。言い換えると、近代主義の断末魔として世界規模でテロが広がっているということについて論じます。

ゲストはその方面の情報通とやらによる専門家による話をあえて避けまして、現代文化の一般に通じておられる映画人のお二人を。つまり、脚本家の荒井晴彦先生と映画のプロデュースと映画芸術という雑誌の出版に携わってこられた寺脇研先生をお招きしました。広い視野からの『現代テロリズム論』が伺えるかと存じます。

[*世界規模のテロの原因は「金狂い資本主義」と「俗情まみれの民主主義」 ]

今村有希
第一回目は、資本主義とテロとの関係についてです。では宜しくお願い致します。

[*アメリカ流資本主義の広がりが世界を破壊する ]

あぁ、新年早々どうもありがとうございます。

宜しくお願いします。

あの僕がね、世間で言われていない「テロと資本主義」のこと1回目で取り上げたのは、ブッシュJr.がイラクを襲ったあの前後の話はね、世間でももうみんな知っていると思うけど、裏でいわゆる石油のオイルメジャーというの? それがあのあたりの石油を自由自在に操ろうとして・・・というのが100%とは言わないけども強く働いていたというのが常識になっている。

[*オイルメジャーによる石油利権、ブッシュ(Jr.)によるイラク侵攻の失敗 ]

今度の件もね、これのぼく出典を明らかにすると、元外交官の馬渕睦夫さん(元キューバ大使、元ウクライナモルドバ大使)という方の意見、非常に説得的であると思うんだけど、彼の意見によればね、まずロシアの自然資源、天然資源その他をglobal marketに引きずり出そうとする、まぁアメリカ系の資本の、自由主義系が主でしょうけどもね、そういうのがあってウクライナ問題を起こしたと。で、必ずしも上手くいかない、プーチンも頑張ると。

[*ロシアの天然資源をグローバル市場へ引きずり出そうとする米・資本家 ]

それで今度ね、ロシアはシリアと仲が良いわけで武器で繋がって。ロシアの裏側から(突っつくジェスチャーをしながら)こうやるという意味で、シリアのアサド政権を倒せばプーチン打倒にもつながるというので、アメリカが例の「シリア自由連合」にそれ(=肩入れ)を仕掛けたと。

で、それに対する反発としていわゆる IS=Islāmic state(イスラミック・ステート)が出来て、それで難民が大量発生して、今度のベルギー経由でパリでテロがと。

[*アサド政権=ロシア打倒と米国がシリア自由連合に肩入れ ]

で、その問題がね、そういうのを簡単に、資本の流れ、まぁ「資本主義」と言えば、今回の件にもブッシュ(Jr.)の時と同じく、そういう経済の動きが背後にあるのにテレビでは一切言われていない。新聞も恐らくそうだと思うね。

[*大量の難民、テロの背景、報道されない経済の動き ]

今村有希
はい。

で、(新聞テレビメディアに)言われて無いことから始めようというので。資本主義。

今村有希
あの、資本主義の反対は労働主義だと思うんですけど、そのもし資本主義がダメだったら労働主義で行こうという話はあまり聞いたこと無いのですが?

ほんと無いねぇ(笑)

今村有希
それは何故なのでしょうか?(笑)

寺脇先生どうなの?(笑)

いや(笑)、それこそね、荒井さん(荒井晴彦)は世界革命をやろうと思っていた。

そうなんだよね。

荒井さんたちの時代の運動というのはやっぱり資本主義を打倒する!と。まぁ、その時は共産主義とか社会主義とか言ってたけど、要するに、資本家が中心なのか労働者が中心なのかという話なんだけど、やっぱりその労働者が中心ということは、結局、自分の事しか考えないというか、「儲かったらみんなで分けちゃおう」みたいな話になっちゃうから『発展しない』ですよね。全部の資本の儲かったら分を貯めといて、次の新しいもっとすごい商品を開発しようというふうにならないもんだからそっちは廃れてしまうんだけど、かといって資本主義というのはさっき西部先生が仰ったように、『本当は全ての近代の戦争というのは資本主義によって引き起こされている』のに、やれ新聞なんかでも、「戦争はいかん!」みたいなことは書くけれども、「資本主義がいかん!!」というふうには書かないですよね。

[*未来を発展させる資本主義が近代の戦争も引き起こしてきた ]

そうね。でも本当にいま言った通りでね、あの、今村さんが仰った「労働主義」ね。

今村有希
はい。

・・・それに近いことをやろうとしたの「旧ユーゴスラビア」ね。労働者自主管理(※自主管理社会主義⇒自主管理制度)というんですけどね、

今村有希
はい。

それがね、大変失敗したんですけど、やはり「資本」というのはいま寺脇さんが仰ったように、資本を未来へ向けてどう動かすか、普通それを『投資』と言いますがね、何をどんな製品に向けてどれだけ資本を増やすかって投資ね。

今村有希
はい。

これやっぱりね、現場にいる者でないと具体的なことが分からないわけですよ。それを、労働者が集団に任せてしまうとね、やはり結局は、労働者団体の利益、団体利益を優先してしまうのね。

今村有希
はい。

資本の利潤を利益をあげるために将来資本をどう増やすかと・・・まぁ減らす場合もあるでしょうけど、そういうことが(※旧ユーゴのような労働者自主管理だと)ちゃんと出来なくなってしまうんですよね。だから僕ね、公共財を除いて、普通の資本を「私有制」という意味では、資本制というのはまぁ間違った制度じゃないと思うの。

それをマルクスのようにね・・・荒井君(荒井晴彦)が昔勉強したと思う。僕も大昔55年ほど前に勉強した。資本の私有制 Private Ownership(プライベート・オーナーシップ)は良くない!というのは、それは明らかに言い過ぎだと思う。

けど、「資本制」と「資本主義」とはまた別で、やっぱり、資本「主義」というのはさ、ともかく利潤を最大限に追求するということが一つと、もう一つは、これ『現代資本「主義」』なんだけど、そのために兎にも角にもinnovation(イノベーション)ね、新しい技術・新しい商品・新しい資源・新しいマーケット・新しい組織、そのイノベーションでもってとりあえず“独占的な利潤”を得ようと“熾烈な競争”をね、それが現代の資本「主義」なわけですよ。

今村有希
はい。

その辺りの愚かなエコノミストはね、「マーケットの競争は素晴らしい」なんて言ってるけど、実際の資本「主義」はいま言ったようにね、『マーケットをぶっ潰しかねない独占的な利潤を巡る競争』なんですよね。ぶっ壊すというのは言い過ぎだとしても、混乱させるね。ですからね、その独占利潤を得るために、イノベーションをうまくやるために、これはマーケットの広い意味でのイノベーション、そのために国家をも動かす。

[*独占利潤を巡る熾烈な争い、国家をも動かす現代の資本主義 ]

多分、荒井さんは昔ね、俺も知ってるんだけど、国家独占金融資本主義とかいう言葉ってあったよ
な?(笑)

国家独占資本主義でしょ。それは、西部さんの友達のこないだ無くなった人がそういう本書いてたんだよ(笑)

青木昌彦か(笑)

姫岡玲治(笑)

[*青木昌彦ペンネーム:姫岡玲治)経済学者、スタンフォード大学名誉教授、1938~2015:学生時代は共産主義者同盟(ブント)の指導部の一人だった。東大在学中に「姫岡玲治」の筆名で執筆した論文「民主主義的言辞による資本主義への忠勤-国家独占資本主義段階における改良主義批判」は、共産主義者同盟の理論的支柱となり、「姫岡国独資」と略称された。]

今村さんも多分観ていると思うけど、

今村有希
はい。

この間、あの「ライト兄弟」の伝記を題材にしたミュージカルを観てて、ライト兄弟の存在は知っていましたけど内面まであまり知らなかったんだけど、ライト兄弟はただ飛行機で空を飛びたいというだけのことなわけです。空を飛びたい。もうちょっと考えて、空飛ぶ道具が出来ると、戦争が無くなると思ったらしいんですね。

おぉ。

空から見てると、いろんな作戦も全部丸見えになっちゃうから、それまでのいわゆる陸上戦みたいな考え方だともう全て手の内が分かっちゃうから、もう戦争が出来なくなっちゃうと、本人は素朴に思っていたらしいわけです。

うん。

ところがそれが出来ると、ワァーッと「資本」が来てしまって、たちまち彼らの個人商店みたいなのをロッキードとかカーチスとかそういうところが作っていって、それで第一次大戦ではご存じのように飛行機が戦争の中心になっていき、そしてどんどん第二次大戦まで進んでいくわけじゃないですか。

結局それは「資本の論理」が入ってくると、どうやったってどっかで争いみたいなことに、まぁテロにまで行くかどうかはともかく、少なくともテロと戦争というのはある意味同義語だと思うんで。

僕の想像よ。今の世界はアメリカを例にとるとね、本当にこの(スタジオにいる面々のように)まさか4人じゃあるまいけれども、10人ぐらいかもしらんが、Global Capitalist(グローバル・キャピタリスト)が集まって「どうする?」と・・・俺たちもう巨大な何十兆円とか動かしようがねぇぞと、ブラジルからも引き上げなきゃいけねぇぞと、さらに金をどうする?ロシアの守備をどうにかしようか?そうだね、と。・・・いい?僕が言いたいのはその調子でね、世界70億人もいるののにねね、巨大な桁外れに巨大な金をもった人間たちが、まぁ大統領その他若干の政府要人を交えてね、お茶飲んでるかアルコール飲んでいるかはともかく、まぁ適当に世界を動かしている粗放な気配が残る。

それは第一次大戦が終わったベルサイユ条約だってそうでしょう?

あぁそうだ。

ウィルソンよりロックフェラーだかモルガンだか、それが出てきて仕切っているわけだから。自分たちの利益(のために)。

そうだ。

政府っていうのは僕ら昔、「ブルジョワ政治委員会」って言ってませんでしたか?(笑)

言ってた(笑)

うん。資本家の利益を代表するのが資本主義の政府でしょう。あの少数派の代表ですよね。

なんか急に二人してね、僕にとっては50何年も前のマルクス思い出したけど、マルクスの「Das Kapital(独:資本論Kapital→ 英:The Capital))」、資本論ってのは科学目化して書いて嘘話ばっかりなんだけど、それはいいとしてね、ただね、資本のことを「capital」と言うでしょう。これはもともと「cap(キャップ)」から来ているのね、「帽子」から。

今村有希
はぁー。

この意味にはね、やっぱり意味合いとして言うと、「captain(キャプテン)」ね。

今村有希
はい。

captainは「船長さん」かな。「総帥」でもいいんだけど、なにかimplication(インプリケーション:暗示)で言うと、資本論はともかく、マルクス主義全体として言えばね、やっぱりcapitalist(キャピタリスト=資本家)が、資本(capital)を持っている奴がキャップ(cap)となって、キャプテン(captain)となって、この世を動かしているという、で今の彼(荒井晴彦)が言った、政府というのはブルジョワの政治委員会であるという切実な話。

そう。金持ちの利益を代表している政府・・・

だから、荒井さんたちの時代は政府がそれをやっていると思うから「それを打倒!」と言ってたわけだけど、もっとデカい「世界を10人でやっている」とかいうような話が、きっとそうやっていると思うし、荒井さんもよくご覧になる「007」で今度の「スペクター」っていうのは、あの世界を仕切っている奴らがいるわけですよ。世界中の情報をコントロールしてこうやろうなと。

あるいは「007」の中だけの話って普通はみんな思っている、まぁ娯楽だからこんなって言うけど、本当にそういうことがあるんじゃないですかねぇ。

あぁ〜。

あの「ナチスドイツ」にも随分とアメリカの資本は投資して、ナチスドイツがあれだけ台頭したのは、やっぱりアメリカの資本ががナチスに投資するために、ドイツをとにかく大きくしようみたいなことをやったってのもあるわけですよねぇ。

[*巨大な資本をもつ者たちが世界経済を動かしている現実 ]

荒井さんたちの時代ね、新しいもの好きとか、新しいがり屋とか、軽いけども「軽蔑語」じゃなかった?

うん、あの・・・そうですね、軽薄な。

軽薄な奴のこと。でもね、話を戻して、イノベーション(innovation)ってのは「新しいものの中に入っていくこと」なわけ。

今村有希
はい。

ところがね、テレビひねっても、どこの道を歩いてもね、ありとあらゆる企業がイノベーションイノベーションイノベーションでしょう。最近ぼく新幹線に乗らないけど、広告があるでしょうクルクル動いている。あれだってね、「わが社はなんとかのイノベーションで〜」ですよ。

新しいものがどんどん起こるということは、「未経験の事態が増える」ということでしょう?

今村有希
はい。

経験している事態なら、未来がどうなるかはまぁだいたいは予測出来るよね。ところが、未経験の事が突如として大規模に起これば、未来は予測出来ない、しきれないわけですよね。ということはさ、そこに資本が利潤を求めるわけでしょう。

・・・結論、この前のフォルクスワーゲン、僕の直感によればですね、あぁいう事は別にフォルクスワーゲンだけじゃなくて、ほとんどのあらゆる企業がやっているのではなかろうか、という気がする。で、それを出来る理由はね、つまりイノベーションで新しい事態だからものを作る奴らは知ってるけど、買う方は知らない、『情報の格差』(情報の非対称性)あるでしょう、作る側と買う側にね。

それから、もともと未来というものは『不確実』で、それで馬鹿なエコノミストは嘘ついてね、確率的に予測出来るというけど、あれも嘘でね。予測なんか出来ないんですよ、確率的にすら。でもそこで何かを言おうとすると、当然ね、英語で詐欺のことを「fraud(フロード)」と言うのかな、要するに詐欺と言われて致し方ないことが随所に出てくる。これが『現代のキャピタリズム』なんだね。

[*未経験の事態にあって未来を予測、現代のキャピタリズムにおける嘘 ]

電気製品だって、全部そうじゃないですか、DVDでも。新しく新しくして買い替えなきゃいけないようにして。

あぁ〜。

いや、きのう飛行機で帰って来たんだけど北京の空港でね、ライター取り上げられるというか、あれは世界中ですごい数のライターが。100円ライターが集まると思うんですけどねぇ。

今村有希
(笑)

あんなところに行ってるんだ(笑)

それで我々はまた羽田についてライターを買うわけじゃないですか。これが資本主義じゃないかと思うんですけどねぇ(笑)

なるほどそうか(笑)

あれが政府と資本家が結託していると思うんだけど(笑)

やってるかもしれないね(笑)

武器もそうでしょう。使わないと新しいのに・・・。だから、戦争で使っちゃわないと。

それはまぁライターはもちろんそうですし、テレビをデジタルに変えるって、政府がこれからテレビはデジタルに切り替えるので、アナログじゃ見れなくなるよって言われたら、みんな買い替えなきゃいけなくなっちゃうわけですからね。

Islāmic state(IS)ができた時に、アメリカが凄まじく空爆に入ったのね、最初に。僕はあの時に思ったの、それで今はアメリカはあんまり(空爆を)やっていないんだけどね、あれはアメリカがね、軍事産業、それこそ産軍複合体がね、古い武器のストックがあるでしょう、あれを全部使っちゃえと、落としちゃえと、そうすればまた(武器を)新しく作ってね。

そうですよ。

・・・それやってるんだろうなぁ〜と思うぐらいに、ばかすか古いモノを落としてね。

だから、経済を循環させなきゃいけないわけですよね、そのさっきの(今村が言った)労働主義だと、

今村有希
(うん)

自分たちが、たとえば作物つくってそれを売って、種ぐらいはいれなきゃいけないけども、それ以外はみんな分けちゃいましょうだから、変わらないんだけど、

今村有希
はい。

それを、来年はもっとすごいスイカを作る、そのためにバイオの技術でこうやっていくみたいのを入れて、そこでまた新しいものをつくって売って、お金をどんどん回していかない限り資本主義って成り立たないんですねぇ。

急にね、文化論目化して言うと、僕の持論なんですけどね、よく「戦後70年」ってことを去年言われていた。でもさ、あれシュペングラーがね、『西洋の没落』、あれはまぁ文明の没落なんだけど、それを書き始めたのがたぶん1914~5年なんですよ。あれは18年辺りに書きあがったから、19年出版されるのかな。だから書いた時期で言うとね、「シュペングラー100年祭」と。で、シュペングラーが言ってることは・・・

『文明は春夏秋冬と季節をめぐって最後には冬になって凍りついて、それで馬鹿な奴ばっかり登場すると。文明が滅びます』って説なんだ。

で、それで彼はね、冬になると流行るのがね、『新しいtechnology(テクノロジー)への熱狂』と、実は新しい宗教、『新宗教への熱狂』ね、これはメソポタミア以来ずっとそうだと。

[*オスヴァルト・アルノルト・ゴットフリート・シュペングラー(独: Oswald Arnold Gottfried Spengler、1880-1936、ドイツの文化哲学者、歴史学者/「西洋の没落」(1919年):文明の没落期には新技術への熱狂と新宗教の昂揚 ]

僕は、「オウム事件」が起こした時に、あれは1995年ですからね、あの時にそのことを書いたことがあるの。でもね、新宗教を日本でね、まぁ目立たないけどさ、どうやら今の日本は、新技術がそれ自体が新宗教になっている。『猫も杓子もNew Technologyとなったら新宗教を崇めるようにして飛び付く』というね。そういう意味でシュペングラーというのは、あれは相当の変わり者らしいけど、あいつの言ってることは結構、正しいなと。

[*新技術が新宗教となり、大衆があがめる今の日本 ]

そもそも、スマホも新しいのいろいろと作っているもんねぇ、もっともおれガラケーだけど(笑)

今村・寺脇
(笑)

まぁね、スマホももちろんそうですけど、そのある意味仰る通り、そのスマホ信仰と宗教の信仰って似てるところがありますね。なんか、これからコレだぞ!と言われたらいかなきゃいけなくなっちゃうみたいなところはあると思うから、確かにもうそういう時代に入っちゃってるということなんですかねぇ。

ぼく最近、電車に乗れなくなっちゃったの、「スマホ恐怖症」で。だって座ると前に10人スマホだろう。ぼくは首が左右に曲がらないんだけど、仮に曲げてみてもこっちの5人もこっちの5人もスマホに決まっているわけさ。それを見ると恐怖でね、それでタクシーに。タクシー代稼ぐのって大変なんだけどね(笑)

[*電車の中でのスマホ現代社会に映る現象 ]

一同
(笑)

まぁそれはともかく、ふと考えたの。われわれ若い時に、結構、電車で本を読んでたんだよね。どっちかと言うとね、まぁもちろんエロ本もあるから本をいっぱい集めてとは言わないけども、まぁまぁ普通の本を読んでいる奴はまぁまぁの奴。ところが、スマホの場合は本も含めて、スマホ見てる奴をまぁまぁとは思わないわけよ。二人答えてくれる?電車で本を読むのと、電車でスマホを見ることの本質的な差はいったい何処にあるのかと。難しいでしょう、これ。

[*スマホを見る事と本を読む事、本質的な違いはどこにあるか ]

あの、本というのはまぁ本でしかないですねぇ。本を読んでいる人を見たら、あれは本を読んでいるんだなと。ところが、スマホってのはスマホの中で電子図書を読んでいる場合もあれば、一方でエロゲームを見てる場合もあるし、それから全くプライベートな友達へのメールとか書いてる場合もある。あの中って外から見るとブラックボックスなんですね。

なるほどね。

最近(覗き込むように)こうやって見てたらゲームが圧倒的に多いね。

そうそう。ゲームをね、今までだったら箱に入ったゲームを買ってくるわけですけども、そのゲームのアプリというやつをそのデータの中に買っちゃうわけです。それでそこで実は(西部)先生が見ているところの10人中6~7人はゲームをやっているでしょうね。

そうか。それからさ、その入手する時にね、僕はいざ本も嫌いで本屋も読むのもあんまり得意じゃないんだけどね、でも本を買う時にはさ、本屋に行くでしょう、それでドストエフスキーを買おうかと思って、まぁでもなぁ〜と思ってチエホフにしたりさ、そういえばスタンダールもいたなぁとかさ、文学飽きたと、ちょっと哲学にしてみようかとか、いろいろ歩くじゃない。そこで、自分で主体的にね、なんか5分でも10分でもいいけど、 御身体というのかな、自分の身体でもっておもむろ頭も使って、「何かを自分で選ぶ」というプロセスがあるじゃない、書物の場合ね。それはスマホにだって、どの情報を出すかってボタンの選び方で主体性はゼロとは言わないけども、非常にそれが弱い形でね、なっているんだと思うね。

そうですね。この情報をつまりモノとして買うと、あるいはこの新聞、あるいはこのDVDという情報、この情報を自分が入手しているんだって自覚があるんだけども、この中で起こっていること、しかもそれはすごくたくさんのものがこの小さい中に並んでいるので、つまり「自分が何を所有するか」という概念さえ曖昧になってしまっていると思うんですよね。

あぁ、そうだね。なんかね、どうして資本主義とテロと関係あるかというとね、今村さん。

今村有希
はい。

僕は、そんなふうな雰囲気ね、人々の振る舞い方、これは僕の持論なんだけどね、「近代」のことを「modern」「modern society(モダン・ソサエティー)」と言うんだけど、modernというのはね、近代と訳したのは誤訳でね、あれは字引みると分かるんだけどね、modernのちょっと上には「model=模型」って言葉があって、それをもうちょっとみると「mode=様式、流行」ね。

やっぱりね、modern societyを日本人は「近代」「最近の時代」で、「明治この方100何十年は〜」なんていってるけども、そうじゃなくてね、『模型が流行する時代』ね、がやってきたと。

[*modern=「近代」は誤訳、大量のmodel「模型」がmode「流行」すること ]

そこにね、僕に言わせればだけど、「民主主義」が入るでしょう。民主主義というのは、『大量の一般民衆がこの世の前面に出てくる』わけですよね。まぁ『戦争』もそうだったんだけどね。『総力戦』、第一次、第二次の総力戦と共にdemocracy、民主主義も発達して、多くの人々が社会の前面に出てきて、これは小さい声でしか言えないのだが、『多くの人々は、わかりやすいモデルに大量に飛び付く連中』・・・

[*民主主義が近代で発達、大量の民衆が社会に出てくる / わかりやすいモデルに大量に飛びつく大衆 ]

小さい声で言う。

今村有希
はい。

阿呆な人が多い。

今村有希
・・・はい(苦笑)

・・・というと荒井君怒るハズなんだけど、それはともかくね。

一同
(笑)

(大苦笑)

まぁある意味、『戦争の熱狂』みたいなのに取り憑かれるのも、そういうmodernism(モダニズム)ということですよね。

そうそう。それを利用する形で資本主義も動いているというね、そういうことの中から『テロ』というものが出てくる。で、テロの話は次の週で、もうちょっと突っ込んで話しますけども、バックグラウンドはね、そうは単純なことじゃない。例えばね、Islāmic Stateのね、クレイジーな宗教原理主義者がいるとか、そんな単純な話じゃないんだということを一週目はやりました。

今村有希
はい。

【次回】「アメリカ流民主主義の押し付けがテロを誘発する」 ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督)