映画人が語る「テロと資本主義の関わり」③ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督) 〜西部邁ゼミナール〜

映画人が語る「テロと資本主義の関わり」③ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督) 〜西部邁ゼミナール〜

ゲスト:寺脇研(映画評論家) 荒井晴彦(脚本家・監督)

【ニコ動】
西部邁ゼミナール)映画人が語る「テロと資本主義の関わり」【2】2016.01.24


◉世界規模のテロの原因は「金狂い資本主義」と「俗情まみれの民主主義」

⚪︎「近代文明とテロ」近代社会は底なし沼に沈むのか

今村有希
年初企画、テロの元凶は資本主義と民主主義であるの最終回で、ゲストはこれまでの2回と同じく映画関係者の荒井晴彦先生と寺脇研先生です。

現代人の気風に通じていなければ現代風の映画は作れません。ですから、お二方とも眼を凝らして、現代人の生態を観察、分析、解釈しておられるハズです。

その何処にテロの芽が生え、木が生い茂っているのか、鋭い解説をお伺いできると存じます。
宜しくお願い致します。

いま世界に訪れている危機状況というのは、いわゆる『近代主義』というもののどん詰まり状態ね。底無し沼に沈んでいく。底があるのかもしれないけど、僕はあと数年しか生きられないから、僕が生きている間には底が見えないだろうと。荒井君が生きている間も見えないんじゃないかなぁ。辛うじて、寺脇さんが死ぬ頃に・・・

[*世界に訪れている危機:近代主義のどん詰まり状態 ]

そうですね、死ぬ頃に(笑)

底無し沼の底が見えていくという。

こういう順番(西部>荒井>寺脇)ですか(笑)

一同
(笑)

近代主義(modernism)っていうのはね、要するに多くの人々(mass)の飛びつきやすい模型(model)ね、形ですよ。それが直ちににも大幅な流行(mode)となって燃え拡がるというね。

現在の資本主義(capitalism)も政治の民主主義(democracy)も、もう限界状態どころか次々と、経済で言えば詐欺行為ね、政治で言えば一種のポピュリズム(populism)=人気主義ね、一週間しか持たないような人気主義、これがここまで続いてしまったら、これは単に『テロ』ね、パリで200何十人死んだとか、アルジェリアの奥地で日本人が3人殺されたとか、そんなことばっかり言われているけども、もっともっと深い、何かもう文明のデッドロック状態(deadlock=行き詰まり) の反映としてテロが現れ、それはいずれ3年後か5年後かわからないが、まぁ10年単位で言えばアジアにだってやってくるハズだという気がするんもんですから、3回目はもっと広い、近代主義と限定する必要はありませんが、文明論の見地からね、このテロの問題を論じて頂きたいという、そんな感じかな。

[*経済の詐欺話、政治のポピュリズム 人気主義 / 文明のデッドロック状態がテロに現れ近づいている ]

今村有希
はい。

最初にこのお二方(荒井、寺脇)に聞いてみたいこと無い?

今村有希
わたし子供の頃に、自分が本当に欲しい物だとか自分が望んだ物に対して、親にお願いしたことは賛成されたんですけど、みんながやっているからとか、みんなが持っている物だからとか新しく出た物だから欲しいと言った物に対して、すごく父親に反対されまして、これは(西部)先生の仰います近代主義と関係ありますか?

[*次々と新しいものに飛びつく近代主義によるモデルの流行 ]

大いに関係あるけど、僕は逆のことを言いたいの。ぼく個人も貴女に近いんだけど、でも76年も生きるとね、何か一種の諦めの境地があってね、結局、人間の多くはね・・・うん、新しいものに飛びつくもんだと。

今村有希
えぇ(笑)

たぶん、旧石器の昔からね、例えば鏃(やじり)一つでも石斧一つでも、新しげのものができるとみんなしてウワッと飛びつくというね、何か人間にはどうしょもない性みたいにしてね、これまで2回そういう現代社会の問題を指摘したけど、同時にシュペングラー(オズヴァルト・シュペングラー)が言っていることなんですけど、宿命論的にそんなもんなんだと。

[*旧石器時代から新もの好き、人間の性のようなもの / 宿命論的な文明の没落:O.Spengler ]

だからどこか、何も認める必要はないけど、僕の場合でいうとスマホ・・・気持ち悪いから電車にすら乗れないってことを1回目の時に言ったけど、とは言うものの、例えば、北原白秋はいつ死んだのかなと、すぐ娘に頼むと娘がインターネットでパッパッとやって、何年に死んだよと教えてくれるんですよ。

今村有希
フフフ(笑)

波浮の港(はぶのみなと)はいつ出来たのかと、あれは野口雨情か。悪いけど、便利は便利なのよね、だから僕も使ってる。でもなんか僕はどっちかといえば後追いで使いたいというのかな、息急き切ってさ、大声あげて行列作ってさ、飛びつくことはあるまいにというその程度かなぁ。

だけどそれは、新しいもので言っているけれど、みんなが持ってるものを持たないと、彼女(今村)は子供で、みんなはクラスに行ってみんなは持ってるけども、自分だけ持ってないことでやっていけるかというと、それはちょっとキツいんじゃないですか?

今村有希
(笑)

そうでしょうねぇ。

それは、僕ら大人になったから、みんなスマホでも俺はこんなのよくわからないからガラケーだけども、携帯だって遅かったですよ。だから、若い人ってみんなが、その「みんな」ってことが圧力になるんじゃないの。

そうねぇ。僕はたまたま事情があって主催者でありながらアトピーのせいでネクタイしていない。あっ、そういえば二人ともしてないねぇ。

今村有希
(笑)

(苦笑)

でも普通はね、公の場に来る時にはネクタイを。でもね、ネクタイなんてものは日本人のものじゃないんですよ。そうかと言って、僕がこうで急に羽織袴で来たら、あいつおかしいんじゃないかと思われる。

今村有希
(笑)

結局そういう意味ではね、それを「時代の流行」と言うのならば、明治この方の流行にみんな従ってこういう洋服を着、Yシャツを着ているんですよ。

西部さんもそうだけど、僕らのほら学生服があって、あれは貧乏とお金持ちの差があんまり関係ないじゃないですか、洋服無くても。

あっそうだ。

あれもある意味で平等な衣装だよね。

そうだったね。

で、個性が無いと言われたけどね(笑)

今村有希
(笑)

まぁだから同一で言うと、それこそ私も役人(文部省)やってる時は毎日ネクタイしていくわけじゃないですか、みんなそうするもんだと思ってる。ところがあれ、小泉内閣の時にですね、「クールビズ」なるものが言われて、総理官邸からの命令で、「ネクタイをしてくることは罷りならん!」みたいになっちゃう。

あぁ〜。特に暑いシーズンね。

あぁいうのがね、みんなが流行でやってるならばまだ自分で決めているからいいのだけど、そうやっていわゆるモダンの模型を、しかも設計図を書いて設計主義でもって、例えば、地球温暖化だからなんだと、28度冷房にしなきゃならないと。「いや俺は28度でもネクタイしてるぞ」という人もいていいハズなのに、全員ここではネクタイを外すように、みたいな話になっちゃっているところが問題だと思うんですよね。

これだけイノベーション(innovation)、新しいいもの好き、しかも我勝ちにそれに突っ込んでいくようになると、新しいものが次々とさらに新しくなるから、未来がますます予測不能になってくるでしょう。

[*未来を危機にさらし、innovationで予測不能へ ]

そうです、はい。

にも関わらず、我々は生きていかなきゃならない。そうすると、どっかでね、別に賢人政治とまでは言わないが、少々、大所高所からね、少々遠くまでものを見る人々の集団が、それが普通は『役人』というと思うんだけどさ、

はい。

役人がね、ある種のインディケーション(indication)というんですけど・・・サジェスチョン(suggestion)でもいいな、『方向指示』ね。まぁ東西南北で言うと、「東南東の方に当分進んだ方が良さそうですよ」というようなインディケーション=方向指示を、どこか、命令とは違う、指示を与えて未来の大まかな図柄を描いてやらないとね。もうその場その場でさ、みんな流行に突撃してひっくり返る、今度はあっちへ突撃してひっくり返るというさ、混乱状態が続くでしょう。だから、役人の役割というのはすごく大きいと思うんだけども、彼(寺脇)は役人を辞めちゃったんですよ、文部省ですけどね。大した権力のある役所じゃないんだけど(笑)

[*未来の図柄描く役人の役割、indication 方向の指示 ]

今村有希
(笑)

(苦笑)

今はあれか経産省か、元は通産省と言っていた。あれがだいたい首相官邸を牛耳っていてね、本来はね、経済にある種の秩序を主として与えるべく通産省、(現)経済産業省が出来たんですよ。

[*経済に秩序を与えるべく通産省(現経済産業省) ]

それが今ね、経産省が先頭を切って、「経済は自由に任せればいい。政府の介入が少なければ少ないほどいい」ということを経産省が言って、大雑把に言えば首相官邸を占拠してですね、誤った方向(指示を)与えている。今の役人の果たしている役割ってのは学者もヒドいけど、役人もヒドいね。

いま仰ったような意味で言うならば、日本のこれからをどうしていくのか、「じゃあアニメがウケるからクールジャパンだ」とそうは言うけど、実はアニメってのは世界でも一応日本のアニメは尊敬されているけど、それが別に産業として商売になることじゃない。そしたら今度は引いちゃって、今度は外国人観光客を集めてやっていくんだと、言ったところが、じゃあ今度は宿が無いよみたいな話になっちゃう。『その場その場の接ぎ木接ぎ木でやってるような話になってしまっている』んですよね。

そうねぇ。

だから、本当は大きな視点に立って、30年とか50年を見越してやっていかなきゃならないんですけど、ただまぁ、私はそれでクビになっちゃったわけですけども、その例えば教育だって、30年先50年先を見据えなければならない。じゃあ30年先どうなるんですか?と言われれば、(西部)先生の仰る通り分からないわけですよ。不確実性だ、そんな(不確実な)時代。じゃあそれに耐えられるような人を育てなきゃならないと言ったら、それはよく分からないと言われちゃって、ようするに「設計主義」ですから、その政策をとったらどうなるか示せ、と言われて、どうなるかよく分かりませんと言ったら途端に、そんな政策は良くないなんて言われちゃうわけですけど。

やっぱりその、30年先50年先を見通せば見通すほど、さっき仰ったように、もう何か、『30年後必ずこうなりますって言えない状態なんだ』ということがハッキリ言えない。

[*30年先50年先の教育、不確実性に耐え得る政策 ]

しかも役人の場合ね、ちょっとこれはなにかファシスト的ナチ的型になるけども、役所でしょう、ある種の『権限』を持っているでしょう?

今村有希
はい。 

もっと言うと、『法律をつくれる』わけですよ。そうすると、ある種の『秩序をつくる主体が役所』なんですよね。単に僕のように漠然と、東南東に行った方がいいよと言うんじゃなくて、東南東に進むための大まかな秩序を法律の体系としてつくれる、そういうエリート集団が役所なんですよね。ですからね、本当は東南東は正しくないかもしれないけど、まぁまぁ考えた上で東南東向けの秩序をつくって日本はそっちに進んでいくという、そういうパワーを持っているハズの集団なんですよね。

[*秩序をつくる主体が役所、パワーを持つエリート集団 ]

それを責任放棄して、どこでもみんな好きな方向へ行くのが自由ですよと、これをやり始める。急に僕ね、荒井さんに話を振りたいんだけど、これはお世辞じゃなくてね、脚本家 荒井晴彦のことを評価しているのは、ちょっと冗談も交えて言おうかな・・・ある種のリアリティというのにこだわっておられて、小さい声で言うけども・・・主として、あぁまで男女のリアリティに限定する必要はないんじゃないかとは思うが、

(苦笑)

いずれにしても、リアリティという。ところが最近、ぼく暇でしょ家に居て。本もね、読む力もないからよくテレビのスイッチを捻るんですけども、テレビドラマをみているとやり切れないのは、主としてハリウッドものが多いけど、日本モノもそうなっているな、何かあの宇宙モノとかね、ゴースト、お化けものとか、あるいはもうちょっとタイムトラベリングものね、過去に行っちゃいましたとか、未来に行っちゃいましたとかって、僕に言わすとそれ物語としては変化に富んでいるように見えるけど、決定的にリアリティに欠けているからね、もう途中で5分も観てられないものが多い。

単に、インディケーション(indication)として東南東に行こうというのはね、それはなんか役所の思い付きじゃなくて、これまでの経験のリアリティを踏んでいえば、こっちの方だと思うぜという、そういうリアリズムというものがどんどん無くなっている。

[*決定的にリアリティに欠ける 宇宙、幽霊、未来もの映画 ]

だからさっきの経産省のことで言うならば、戦後ずっと第一次産業中心の国から、第二次産業第三次産業にシフトしていくぞというずっと大きな方向があって、ところがその第三次産業中心になった時にどうやっていいか分からなくなった。でじゃあまた二に戻るのか、また三・五を作るのかみたいな話になっちゃうからいけないで、そこでいま仰ったように、今度は例えばこの国はこれからどんどん人口が減っていって、少子高齢化で若い人が少なくなって年寄りがいっぱいいる社会になることは分かっている。その時に今までの何次産業を目指すということじゃなくて、多数派も少数派も納得がいくような新しいシステムを作るんですよというような提案をすればいいのに、近代の時、20世紀の時にやっていた形の提案をしなきゃいけないと思い込んでいるんですよ。

そうだね。この3回の話は「テロ話」だから・・・テロ話(笑)、本当はね知識人たちがヒドい事を言っているんですよ。例えば、「フランス革命」ってのはね、巨大なテロなんですよ。あの時にあったブルボン王朝というんですけどね、マリー・アントワネットも含めて。ブルボン王朝の秩序があったわけですよ、それをジャコバンがテロを仕掛けたわけですよ、巨大なテロ。それでギロチンまで持ち出して首をちょん切って。

[*ブルボン王朝への巨大テロ、フランス革命ジャコバン派

今村有希
はい。

それから随分経って言えば、ロシア革命だってそうですよ、ロマノフ王朝の秩序があったんですよ。それを暴力革命でテロを仕掛けて。その前のアメリカだってそうですよ、イギリスの植民地ですからね、イギリスの秩序があったわけですよ、植民地アメリカも。それをぶっ壊して独立したわけですよ。


明治維新だって、西郷隆盛とか高杉晋作ってのはあれでしょう、巨大なテロリストでしょう?

そうですね。

ですよね?

(うんうん)

みんなテロリズムのお陰で文明が進歩したって教科書に書いてあるんだよ。それなのに急に「テロ反対!!」と言われたって私としてはね、これだけテロ礼賛をやって、文明の進歩を称えておきながら、たかだかIS如きのテロでねぇ・・・

[*革命というテロ礼賛、文明が進歩と教科書にも ]

賛成ってわけにもいかないでしょう。

いかないね(笑)

今村有希
(笑)

そこが厄介なところ(笑)

だから、テロに反対さえしておけばいいってことじゃない、ということなんですよ。別に(テロに)賛成は誰だってしないけど、テロ反対!!って言っておけば、もうこれで自分はお役御免だというような考え方じゃダメだってことだと思うんですよ。

今さ、テロ賛成とはいかないって話を荒井さん簡単に仰って、俺もそうだと思う。けど、これちょっと話をズラして言うけど、荒井さんとか穏やかな人格の人だからね、僕は子供の時からね、自分のオツムの中の願望の一つとして、『テロへの願望』というものが、公の場でいうと語弊があるけど言っちゃうんだ僕は。それはね、割合として1/5か1/10か知らないけど、既に76(歳)になってもですよ、何かやっぱりこの世は余りにも、それこそ不道徳不正義その他に満ち満ちているから、幾ら言ってもどうにもならないから・・・

うんうんうん。

斯くなる上は、爆弾を小脇に抱えて、で、娘とか息子とか親戚がいないで俺一人だったらね、老人テロでもやってみようかなという気持ちは心の片隅にはまだ残り火として残っているような気がするけど、貴方(荒井)はもう何も無くなっちゃった?

う〜ん・・・

あるんだよ(笑)

そうね。癌だと分かったらやるかな?(笑)

一同
(笑)

いやね、そんなことを公に認めようと言っているんじゃないんですよ。テロというのはもの凄い厄介で。

だけど、ロマンチズムじゃないけど、啄木(石川啄木)は「テロリストの悲しき心を〜」(※啄木詩集「ココアのひと匙」)と歌ったように、ロシア革命の時、その皇帝に爆弾を投げようと思って(行ったら)、馬車に子供が乗ってたからやめるという何か・・・あったわけじゃない。

あぁ〜アレキサンダーなんとかの時ね。(セルゲイ大公)

ISはそうお構いなしじゃないですか。そこは無差別ということに対するある倫理がかつてはあったんじゃないですか。

[*馬車に子供が乗っていて、爆弾投じるの止めた倫理 :アルベール・カミュ「正義の人々」]

そりゃそうなんだね。それから、戦前日本の右翼もまぁ全部は肯定しないけど、「一人一殺」ですからね、

えぇえぇ。

一人殺したらやっぱり自分も死ぬというね、そういう感じのテロ。

[*「一人一殺」を掲げた戦前の右翼血盟団

だから、テロでしか動かないって事はあんまり新聞の大見出しには出来ないし、キャッチフレーズには出来ないけれどもね、どこかそういう石川啄木の「テロリストの悲しきこころ」 、でもやっぱり「皇帝をやっつけねば!」というね。

[*「テロリストの悲しきこころ」石川啄木の詩 ]

だから今この特集で、「民主主義がテロを生む!」と言った時にビックリする人が結構多いと思うんですよ。

[*民主主義の押し付けがテロを生んでいる現実 ]

今村有希
はい。

だけど例えばね、井伊直弼桜田門外で斬るという、一人殺せばいい、一人に対するテロで済むわけでね、子供は巻き込まないし、通行人も巻き込まないで、桜田門外は結構人がいたみたいだけど、あれだけの人波の中でそれだけやっているじゃないですか。それはまぁ、民主的な意思決定機構じゃないから井伊直弼を斬ることによって幕府の政策もある程度変わったりする

ところが今は民主主義だから誰かを、例えば、フランスの大統領を暗殺すればフランス社会が変わるかというとそうじゃなかったりするのでテロがあんな形になってきている。ISが異常で、昔のテロリストの方が筋道が立ってたというのは、ちょっとそこの違いがあるんじゃないですか。

まぁその問題があるね。それから、もう一つ僕はどうしてもね、インドの【マハトマ・ガンディー】のことを出したいんだけど、彼は『塩の道』という運動から、つまり塩はあの当時、(植民政府の)イギリスが専売特許にしていたんですよ。インド人は自分で塩を作っちゃいけない。それに抵抗してガンディーは行進を始めたの。次々と村人が集まって巨大な集団になるんだけど、ガンディーが言った事は、「非暴力、不服従」ね。

[*ガンディーの塩の道行進(「塩の行進」1930年、インド独立運動の重要な転換点になったと言われる) 非暴力、不服従 ]

「非暴力」だから、今で言えばテロの反対ね。

今村有希
はい。

と言いながらですよ、仮にテロの言葉の意味を元に戻して「恐怖(=terror)」として考えると、あの時のイギリス人が(巨大な行進行動に対して)すごい「恐怖」を考えたわけ。つまり、頭をカチ割ってもですよ、例えば100人のうちの2、3人殺しても、インド人はガンディーを先頭にして行進を止めないわけさ。「不服従」のね。それはものすごい(イギリス人にとって)恐怖だったの。そういう意味に解釈すると、歴史上最大のテロリストは、バイオレンス(violence)を一切使うなと言った非暴力のガンディーであったという見方も出来るんですよね。

[*歴史上の最大のテロリスト、violence不使用のガンディー ]

つまり、人に危害を加えず自分の主張を少数派でも通せる仕組みという意味で(テロリストだと)言っているわけですよね。

そういうことだね。ですから話がズレるようだけど、「反戦」だってね、僕は見ていないから言い過ぎだけど、国会を取り巻いたといわれるSEALDsと名付けられる青年たちね、なかなかええじゃないかと励ます人も多いみたいだけども、僕はなんかこう伝え聞く限りで言うと、あんまりあぁいうのに期待を持てないな。やっぱり何かに反対するということはね、どこかで『命懸け』でないと。

[*評価もあるが命懸けでない反戦デモのSEALDs ]

この人(荒井)こう見えてのんびりしてるけど、一時期は命懸けでね、早稲田大学ですけどね。

(苦笑)

僕は自分の事は言わない。命懸けだというのが言い過ぎだとしたら、自分の人生を失うぐらいの、ここでこうなったら自分の人生をそれでshutdown(シャットダウン)かもしれない、という思いを込めてね、やっぱり国会でも大学でもどこでもいいのだけども、何か集まってみんなで歌を歌ったりね、笛吹いたりしているようなね、そういう抵抗運動というのは相手に何の恐怖(Terror)でもありませんからね。

[*人生を失うくらいの思いが無ければ恐怖にはならず ]

僕らの頃は、現状に対する不満、不安、たぶん人生うまくいかないなみたいなこともあったから「壊そう」というふうに言ったけど、SEALDsの連中は「守ろう」なんですね、たぶん何かで読んだら。

あぁ〜なるほど。

今の生活が安保法制、あんなもんで戦争が始まったら壊されると。ということの反対(運動)みたいですね、どうも。

なるほどねぇ、俺はもう反対ですよ。この限りではマルクスが大好き。マルクス以上だな。マルクスはProletariat(プロレタリアート)と無産者階級のことを呼んで、(プロレタリアは)鉄鎖以外に失うべき何ものも持たない人々とこう言った。僕の場合は「鉄鎖すら無い」というね(笑)

[*プロレタリアは鉄鎖のほかに失う何ものも持たない ]

「失うものは鉄鎖のみ。獲得するべきは全世界!」と言ってたんだけどね(笑)

一同
(笑)

だから、今の若い人たちはね、新しい抵抗運動をするとしたら、昔の荒井さんたちや西部先生たちの時は、荒井さんたちは棒振ったり石投げたりしてた。

(笑)

あぁいうのはしたくないんだったら、それを昔の人は石投げたけど俺たちはやらないぞ、じゃなくって、ガンディーという人がいたよと、(かつての)『ガンディーのやり方の今の日本でやるやり方』ってのを考えたらすごいと思うんですよね。

そうだね。僕こんなね半分眠ったような人間がね、刮目、目を見開くようなことをやってくれよと、若者ならばさ。小さい声で言うけど・・・やはり僕ね、イスラム教のことは全然分からないし、肯定もしないけどね、やっぱり彼らが必死で爆弾を持って、僕この過ぐる15年間、テレビetc見て涙が出そうに感激した事件が一件だけあって・・・それは、チェチェンのご婦人たちが黒衣装でモスクワの映画館に行って、自爆ね。

あーあーあー。

あれ何百人か死んだんだけどね、父親がロシア人に殺され、兄貴も殺され、夫も殺され、男共は全てロシア人に殺された未亡人たちが、せいぜい5、6人ですよね?

(うんうん)

爆弾をカラダに巻いてね・・・自爆ね。あぁいう事件を見ると、なんかね、すげぇ女たちだなって。

今村有希
(うんうん)

俺もあの未亡人ならそうするだろうなというね、そういう『共感』をね、あまりテレビの前で大声で言うとテロを煽っているようだからやめるべきでしょうけどね、いざとなったら人間ってのはそういうもんなんだと。

今日をもってこの3回が終わって、これから3人で飲み屋に行きます。

今村有希
(笑)

飲み屋の話題はそちらの方向に行くであろうと予告して(笑)

どうも3週間ありがとうございました。

一同
ありがとうございました。