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マイナス金利は資本主義の断末魔③ (ゲスト:京都大学大学院准教授 柴山桂太)〜西部邁ゼミナール〜

マイナス金利は資本主義の断末魔③ (ゲスト:京都大学大学院准教授 柴山桂太)〜西部邁ゼミナール〜

ゲスト:
柴山桂太 京都大学大学院准教授、「表現者編集委員、近著「静かなる大恐慌」「TPPの黒い条約」〔共著〕(集英社新書)ほか

youtube
マイナス金利は資本主義の断末魔③ 2016.06.25
https://m.youtube.com/watch?v=jBSTUgDiYscvia&feature=youtu.be

今村有希
3回連続でお送りしています。マイナス金利は資本主義の断末魔の最終回です。引き続きまして、ゲストには京都大学大学院 人間・環境学研究科 准教授の柴山桂太先生にお越し頂いています。

日本で初めて導入された「マイナス金利」ですが、柴山先生は、「有望なフロンティアは、もう生み出せない」という資本主義の最後の叫びと捉えるべきではないか、と主張しています。

グローバリズムイノベーション構造改革規制緩和から脱却して、むしろ長期的視野で公共的枠組みを構築するのが今後の日本のあるべき姿ではないか、示唆に富む議論になるかと存じます。それでは先生方、今回も宜しくお願い致します。

西部邁
あっ、今日も宜しくお願いします。

柴山桂太
宜しくお願いします。

西部邁
本当に貴方の言う通りで、あれは民主党時代ですけどもね、

今村有希
はい、

西部邁
今の自民党にもそういうの残っていますけども、「事業仕分け」って言葉を覚えていらっしゃいます?

[*民主党政権時の事業仕分け、背後に公共事業悪玉論 ]

今村有希
はい、覚えてます(笑)

柴山桂太
ありましたねぇ。

西部邁
つまり、公共事業には無駄なモノが多いと。それで厳密に仕分けして無駄なモノを削れと。それ自体はまぁそれはそれで結構だけども、その背後には『公共事業悪玉論』みたいなものがあるし、しかもそれに経済学者がね、「財政支出は大した効果が無い!」という、僕に言わせれば“嘘話”ですけどね。

[*“財政支出は効果なし” という経済学者による嘘話 ]

今村有希
(うん)

西部邁
なぜ嘘話と言いたくなるかというと、今のアベノミクスの中で、若干なりとも成長というか、それに寄与したものがあるとしたら、公共事業ぐらいなもんなんですよ。

柴山桂太
(うん)

西部邁
「数ある言葉だけの政策」の中でね。

今村有希
はい、

西部邁
こういう資本主義のバブルとか、それの破裂・burst(バースト)、その浮沈に耐えるにはね、人間が個人及びコミュニティですね、

今村有希
はい。

西部邁
ドイツ語で言うと、Gemeinschaft(ゲマインシャフト)=共同体か。そういうものをしっかりと保ってね、カネの次元の浮き沈みにあまり左右されない人間関係、生活形態、或いは、集団の形というものをつくっていればね、まぁなんとか持つだろうと。

[*膨張と破裂の浮沈に耐える Gemeinschaft 共同体 /⇄ Gesellschaft  利益社会 / 金の浮沈に左右されない人間関係・生活形態・集団 ]

今村有希
うん。

西部邁
未開民族は放っといても大丈夫とこの間は言ったんだけど(笑)

今村有希
はい(笑)

西部邁
ここまで近代化、複雑化されるとそうもいかないと。やっぱりその公共的な支援というかね、助力があって初めて共同体が維持される。

[*公共的な支援、助力があり、はじめて共同体が維持される ]

柴山桂太
(うんうん)金利が下がってきたわけですよね。

今村有希
はい。

柴山桂太
金利が下がったということは、お金を借り易くなってる。

今村有希
はい。

柴山桂太
そうすると、民間もお金を借りないわけですよね。本当は民間が借りて(お金を)使うというのが本来の資本主義の姿なんですけど、それが無いからいま困っているわけです。

今村有希
はい。

柴山桂太
あと、そのお金を借りるところはどこかと言えば、政府になってくるわけですよね。しかも、今や長期金利というのはマイナスになっているので、政府はお金を借りて、且つ利子まで貰えるというような、借金まで減らせるという(笑)

西部邁
ハハハ(笑)

今村有希
(笑)

柴山桂太
もちろん長く続くか分かりませんけども、市場のそれこそシグナルとしては、政府がお金を借りてくれ、とそういう状態になっているわけです。

[*マイナス金利が施行されるが民間に資金需要がない今は政府支出を拡大『公共投資』の好機といえる ]

柴山桂太
これは日本だけではなくて世界的にそうなんですが、まぁこの「資本主義の停滞」ですよね、これを乗り越えるために、もっと政府が積極的な役割を果たすべきじゃないか、というふうに議論が変わってきたんですよね。

今村有希
はい。

柴山桂太
この2、30年間、むしろ「政府は小さくあるべきだ」と。事業仕分けもそうですけど、無駄使いを減らすべきだ、という考え方が変わってきて、これはヨーロッパでもアメリカでも日本でも、段階的に変わっていく。多分、今年の伊勢志摩サミットというのは、そういうものの一つの転換になるんじゃないか。積極的財政出動しましょうということを、まぁドイツはなかなか飲んでくれないですけど、多くの国がそれを確認するという流れになっているんです。

[*資本主義の停滞の中で、政府による積極的財政出動

今村有希
うん。

柴山桂太
問題は、これを何に使うのか? 或いは、政府がそれをどういう方針でお金を使っていくのか? ということなんですよね。アメリカ、イギリスはそういう思考的な実験をするのが好きな人がいっぱいいて、

西部邁
(ニヤリ)

柴山桂太
「ヘリコプター・マネー」という考え方があるんです(笑)

今村有希
はい。

柴山桂太
これは、ミルトン・フリードマンという経済学者が言った、「みんなカネを使わないんだったら、政府が上からカネをばら撒けばいいじゃないか!」といった考え方があって(笑)

[*「ヘリコプター・マネー」 ミルトン・フリードマン(経済学者) ]

今村有希
アハハハハ(笑)

柴山桂太
これは簡単に言うと、消費を増やす。つまり商品券のようなものですよね。

今村有希
はい。

柴山桂太
ひとり10万円ずつ国民の口座に入れていって、日本銀行が発行したそのお金を政府が受け取って、それをばら撒いていく。消費が増えれば経済が活性化するでしょう、というこういうアイデアもある。だけど、前回の話ですけども、『消費は使ったら終わり』ですよね。

今村有希
(うん)

柴山桂太
商品券を貰っても、その分、また貯金しちゃうかもしれないですから。

今村有希
はい(笑)

柴山桂太
まぁやはり、いろんな意味で効果は必ずしもあるとは思えない。そうすると、やはりその政府がせっかく使うんであれば、国民のしかも今いる世代だけじゃなくて、長期の世代のために役に立つ何かをつくっていく、そういう生産的なことにお金を使うべきだという方が、やはりいちばんオーソドックスというか、正しいんだろうと思いますね。

西部邁
そうですよね。僕ね、いま仰ったことを英語で言うと、state capital、この場合のstate(ステート)だけど、政府という意味、government(ガバメント)という意味ですけどね、政府によってサポートされる。

今村有希
うん。

西部邁
もちろん、命令までくると社会主義計画経済で大失敗になったんだけど、大まかな方向ね、東西南北のおおよそ東の方向に、速度はおおよそね、こんな速度で歩むのがいいでしょうといった種類のね、これは indication(インディケーション=指示)というんですけどね・・・indicationというよりsuggestion(サジェスチョン=示唆)に近いかな?

柴山桂太
うん。

西部邁
大まかに示唆する(=suggestion)というね、実物の公共的なコミュニティの土台を作るということとかも含めて、stateが、政府が、経済の土台、及び先程言った、経済の方向付けね、

[*state capitalism 政府によってサポート、suggestion に近い indication 大まかな方向を示す ]

今村有希
はい、

西部邁
それを大まかにせよね、やっていかないと、もう capitalism(キャピタリズム)、資本主義は保たないと、

柴山桂太
うん。

西部邁
・・・ということをね、僕は15年ぐらい前からある雑誌に・・・僕のことはどうでもいいんだけど、

今村有希
フフッ(笑)

西部邁
だから、ノーベル賞をよこせとは言わないけども、ノーベルというのはダイナマイトを作った、発明した人でしょう。

今村有希
(あ〜あ)

西部邁
世界でダイナマイトで大金儲けちゃって、反省の気持ちもあってね、ノーベル・プライド。

[*ダイナマイトの開発で富を築いたアルフレッド・ノーベル

今村有希
うん・・・(笑)

西部邁
ノーベル賞おれによこせとは言わないけども、せめて「ダイナマイト賞」ぐらいわさ、よこせ!と(笑)

柴山桂太
ダイナマイト賞・・・(笑)

今村有希
(大笑い)

西部邁
state capitalism以外にもう抜け道はないんだと。どんなのでもいいとは言わないけども、結論を言うと、日本社会、及び各コミュニティの長期的な安定、存続を計り得るような、そういう教育も何もかも含めて、老人問題も子供問題も全部含めて、そういうことを着実にやっていくという支えが、方向付けが無いともたないんだと。

[*日本社会・各コミュニティの長期的安定、存続を計る、教育・高齢者・子供問題を含む着実に支える方向付け ]

柴山・今村
(うん)

西部邁
これ実は、既に1930年代にそうなってたわけですよ。

柴山桂太
うん。

西部邁
ただ、そこらは世界大戦の時期だから話はグチャグチャになっちゃったけども、戦争のことを除いて言うと、僕はNazism(ナチズム)もfascism(ファシズム)も大政翼賛会軍国主義、統制主義もそのものとして拍手喝采するわけじゃないけども、あぁいうものが出てきたのはね、少なくとも当時の止むを得ぬね、1929年の世界恐慌の後でマーケットがブッ潰れていくなかで、それでもなんとか生き延びようとするとね、state(ステート)=政府の(それを)やらざるを得ないという、そういうものとして出てきたわけさ。

[*1929年 世界大恐慌ファシズム、ナチズムが台頭 ]

柴山桂太
うん。

西部邁
それを戦後になったらね、まぁ〜ナチズム、ファシズム軍国主義批判がどんどん続いて何十年か経ったら、個人の自由に任せよ!市場の競争だ!!個人の自由に新しいイノヴェーションをやらせろ!!・・・といってこんな顛末。

[*個人の自由、市場競争に任せるといった戦後の顛末 ]

柴山桂太
うん・・・。これ、今のお話は非常に大事で、というのは、こういう公共事業とか公共投資が必要だと言うとね、すぐ、じゃあ何兆円出すんだ? とい話になるわけですよ、10兆なのか、20兆なのか。

今村有希
はい。

柴山桂太
で、実際日本は1990年代のバブル崩壊後の不況から、まぁ(公共投資を)結構やってきたんですよ。ご存知の通り、この20年間、大して経済は浮揚しなかった。

今村有希
はい。

柴山桂太
ところが、1930年代のさっき(西部が)仰った『ニューディール』と言われますけど、一気に政府がその高速道路をつくるとかですね、ダムをつくる、電力網をつくる、まぁinfrastructure(インフラストラクチャ)ですよね、つくった。これは非常に大きな効果があった

[*1930年代のニューディール政策、政府によるinfrastructure整備(高速・ダム・電力網) ]

今村有希
うん。

柴山桂太
でも、(30年代と90年代バブル崩壊後と)何が違うのかということをやはり考える必要があって、これはいろんなことがあるんですけど、まず1930年代はグローバル化をやめたんですよね。

今村有希
へぇー。

柴山桂太
その保護貿易といって、貿易の自由化をやめて国内でお金が回るような仕組みをつくった。なので、お金の回りが(国内で)回った。それが1つ。

[1930年代はグローバル化をやめ、保護貿易により国内にお金が回るように仕組みをつくる ]

今村有希
はい。

柴山桂太
もうひとつは、1930年代はやっぱり戦争の予感があったということもありますし、今よりも国民がもっと精神的にも若かったというのもあるんでしょうけども、国家をもう一度建設しようとするですね、国民の参加意志といいますかね、みんなツルハシを持ってこう道路のところへ行って雇ってくれと言ったというような。

今村有希
はい。

柴山桂太
或いは、ルーズベルトなんかはアメリカの偉大なる大創造を行うんだという演説を行って、国民を感動させるように。

[*国家建設の国民の参加意志、ルーズベルトの再創造演説 ]

今村有希
(うん)

柴山桂太
グローバル化、或いは、人々の自由な活動を放置しておいて、お金だけ撒きますというんじゃなくて、政府が司令塔の役割を果たしながらも国民がある方向に団結していくというふうな、そういう運動が無いとですね・・・

西部邁
そう。

柴山桂太
まぁ、お金だけ10兆20兆ですと言っても、それは瞬間に雪みたいに消えていく、そういうことになるんじゃないかと。

[*自由放置のバラ撒きではなく、政府司令塔による国民団結 ]

今村有希
はい。

西部邁
戦後、僕らの時代からそうだけど、例えばね、fascism(ファシズム)というと、全くの否定語、批難語でしょう。

今村有希
(うん)

西部邁
fashion(ファッション)のもともとの意味はご存知?

今村有希
もともと意味は・・・(首を振る)

西部邁
これね、最近タクシーでもそうか。fasten your seat belt(シートベルトを締めてください)というアナウンスあるでしょう。

柴山桂太
うん。

西部邁
fasten、締めるね。

今村有希
締める、はい。(シートベルトを締めるジェスチャーをしながら)

西部邁
語源的にはそれと同じなんですよ、fàscio(ファッショ:伊語 → 複数形 fàsci ファッシ)は。「束ねる」という意味ね。fàscioというのは「国民を束ねる」或いは「国民が団結する」ね。

[*fàscio「国民を束ねる」「団結する」 語源は “束ね” fasten your seat belt(タクシーの自動音声)と同じ ]

今村有希
へぇー。

西部邁
勿論、あんまり勝手に団結させられたちゃ、アタシは嫌いですけどね(笑)

今村有希
はい(笑)

西部邁
あんまりバラけちゃうとね、ダメだから。

今村有希
うん。

西部邁
という程度にはですよ、そういう意味じゃファッショ(fàscio)という言葉の考え方それ自体は、況してや資本主義の末期状態の中で当然のことだ、それ自体は。

ひょっとしたらユダヤ人の方が(この番組を)観たら怒るかもしれないけども、Nazism(ナチズム)だってね、あの発生は実は第一次大戦で勝利したアングロ・サクソン、イギリス・アメリカがつくった、フランスも含めてかな、

今村有希
はい。

西部邁
なぜかといったら、賠償金をドイツの戦前のGNPの20倍要求した。

[*第一次大戦でドイツにGNP20倍の賠償金を要求 ]

柴山桂太
うん。

西部邁
賠償金で10000兆ということは、1京、京都の「京」と書いてね、「京」という単位があるんだけど、

今村有希
はい。

西部邁
それ要求されてごらん? それは干上がるわけですよ。

柴山桂太
うん・・・。

西部邁
そしたらね、俺たちで何とかしようと言ってね、元々の意味はNationale(独語:ナチオナーレ)国民のでしょう。sozialistische(ゾツィアリシュティッシェ)社会主義的、この場合は、社会がまとめるという意味でね。sozialistische Deutsche(ドイッチェ)ドイツね、Arbeiter(アルバイテン)、普通に言えば、労働者よ、社会的に集まって国民として頑張れ!!と。

[*Nationalsozialistische Deutsche Arbeiter(国民〔国家〕社会主義 ドイツ 労働者) ]

柴山・今村
うん。

西部邁
その考え方自体はね、何の問題も無いのね。

柴山桂太
うん。

西部邁
ただ、あぁいう狂暴な時代ですから、ゴロツキたちが、確かにNazi(ナチ)及びfàscio(ファッショ)に集まって。みんなそれにケチをつけてるけどね、僕はこれもね、「ダイナマイト賞」貰いたいんだけども、state capitalism(ステート・キャピタリズム)のね、敢えて挑発的な意味でね、Nazi-Fàscio(ナチ-ファッショ)と呼んだこともある。

柴山桂太
うん。

西部邁
今そういう意味で、考え方から言うとね、

今村有希
はい、

西部邁
Nazi-Fàscio Statecapitalism(ナチ-ファッショ ステート・キャピタリズム)のような方向しか無いってことをね。

[*Nazi-Fàscio Statecapitalism のような考え方の方向しかない ]

柴山桂太
う〜ん・・・。

西部邁
トランプ君が、

今村有希
はい(笑)

西部邁
大統領共和党候補が言ってるのはそういうことなの。

今村有希
うん。

西部邁
じゃあ、日本もそろそろ「花札」という苗字の人でも首相にして、

柴山・今村
(笑)

西部邁
トランプvs花札でさ、Nationalsozialistische fascismoか、やろうじゃないかぐらいのね、冗談を飛ばす人間がね、必要なんですから(笑)

(*伊語:fascismo→ 英語:fascism)

柴山桂太
いま日本の抱えている問題、特にこうした「国家全体の公共計画」を考える上で一番大きな問題は、やっぱり東京とか大都市に人やお金が集まり過ぎてしまっていることなんですよね。様々な弊害が、地方の衰退をもたらすであるとか、或いは、東京とか大都市に地震が来た時に国全体の機能が麻痺してしまう。

今村有希
(うん)

柴山桂太
地方がもっとその活力を取り戻すというか、そういう方向で公共計画を考えていく必要があると思うんです。

[*国家全体の公共計画の課題、東京大都市へ人・カネが集中 ]

今村有希
はい。

柴山桂太
地方のほうでそれこそ団結といいますかね、何か新しいプロジェクトみたいなものが始まっていく、そういうのが(地方のほうから)次々に起こってこないと、いま言った形での「束ねる」というのが生まれないわけで。

今村有希
はい。

西部邁
地方、地方というでしょう。

今村有希
はい、

西部邁
英語でそれを訳すと local(ローカル)になっちゃう。

今村有希
はい。

西部邁
localというのは、中央=central(セントラル)の、中央 対 地方という意味だよね。新幹線の枝分れしたのを在来線、ローカル線と言うでしょう。

今村有希
はい。

西部邁
でもね、たぶん柴山さんが言いたいことは、英語で言うとね、local(ローカル)なんていうんじゃなくて、region(リージョン)という言葉があって、日本語ではそれを「地域」と訳すのね。

今村有希
はい。

西部邁
なぜ「地域」の方がいいかと思うと、「域」というのは範囲でしょう。

今村有希
はい。

西部邁
北海道でも九州でもいいんですけどね、何かその地域としてあるまとまりね、

今村有希
はい、

西部邁
まとまるためにはその地域がね、あんまり特別のものに特化しているとですよ、あっという間に崩れるわけさ。

今村有希
はい。

西部邁
例えばだけども、農業だけしかやってませんとなったらですよ、本当は人間の生活には食い物の他に衣類も家もいろんなものが必要なわけでしょう。

柴山桂太
うん。

西部邁
そしたらね、地域が安定して成り立つためにはある程度ね、いろんな多様なものについて、ある程度その地域で「自給」できるというね。

柴山桂太
うん。

西部邁
そういうまとまりをもったのが region(リージョン=地域)なんですよね。

[*region「地域」 域=範囲のまとまりのこと、衣食住など地域が安定成立するための自給ができる事 ]

今村有希
はい。

西部邁
勿論それで閉じられていたらダメなんですよ。ある程度、開かれていて北海道は東北と、東北は関東と、もっとこう少しは開かれているけど、まぁまぁまとまりを持っているというね。そういうのをずっとまとめたのが「国家」なわけですよね。

[*開かれながらもまとまりを持つ地域がまとめたのが国家 ]

柴山桂太
うん。

西部邁
英語で言うと、interregionalism(インターリージョナリズム)、地域と地域の関係性、Inter(インター)ね、それをしっかりと保つということが大事なんだと。

[*interregionalism 地域と地域との関係性をしっかりと保つこと大事 ]

西部邁
それを考えなきゃいけないのだけど、全く逆に進んだんですよね。「攻めの農業」とか言ってさ。

柴山桂太
うん、うん。

西部邁
そりゃあスゲーうまい米だか果物だか作れば、それは中国人の金持ちが食うでしょう。でも、その考え方自体が賤しいと思わない? 「農業の本筋は中国の金持ちのモノを売る事だ!」って・・・

今村有希
フフフフフ(苦笑)

西部邁
そういう発想ね。その前にね、その地域が近辺の地域も含めて、しっかりと生きていくための安定した産業の一環としての農業をprotect(プロテクト)=保護するというね。

今村有希
うん。

西部邁
雁字搦めの保護じゃ息が詰まるでしょうから、枠組みぐらいは保護すると。

柴山桂太
農協・・・いまJAという組織がありますよね。

西部邁
あぁ〜。

柴山桂太
あれ元々はルーツが社会主義だってご存知でした?

今村有希
あー知らないです(笑)

柴山桂太
あのー、一見するとすごく頑迷で古い、なんというか悪い意味で保守的な組織で、戦前に農村がバラバラになってお金の回りも悪いって時に、協同組合というのを作っていこうとする組合運動から始まって、それが戦時中に国家と結びついて今の農協になっていくんですけども。19世紀に終わりに【ロバート・オウエン】(1771-1858年)というまぁ社会主義者なんですけども、

今村有希
はい、

柴山桂太
いま(西部)先生が仰ったような、地域が産業革命が起こったことでバラバラになってコミュニティが壊れてしまったという時に、もう一辺、それを新しく作り直そうと、仕事を作って、生活する空間を作って、それでいろんな地域の発展をみんなの協力でやっていこうというのが、もともとの社会主義というモデルのルーツなんですよね。

[*農協のルーツは社会主義:戦前、農村がバラバラに協同組合つくる運動から戦時中に国家と結びつく / ロバート・オウエン(19世紀)協同組合の基礎をつくる ]

今村有希
はい。

柴山桂太
そういうのが派生して、今の農業組織だとか生活協同組合だとかいろな組合が出来ていると言われているのですけども、僕の考えるイメージというのは、社会主義という言葉に語弊があれば、何か、バラバラになったものをもう一辺、こう繋ぎ合わせていくようなそういうその運動、そういうのがあちこちの地域のそれぞれの個性に応じて起こって来るということなんだろうと思うんです。

[*バラバラになったものを繋ぎ合わせるような運動、あちこちの地域のそれぞれの個性にあわせ起こってくる ]

今村有希
はい。

西部邁
地域の共同体、他の共同体との連関も保ち、そういうものを守るためにはどうしても英語で public goods(パブリック・グッズ)という「公共財」が必要なわけね。

今村有希
はい。

西部邁
公共財ってみんなで共同で使うでしょう。だからマーケットの競争には適さないわけさ。

今村有希
うん。

西部邁
それをね、market failure(マーケット・フェイリアー)失敗という意味ね、公共財があるとマーケットの競争システムが失敗し、うまくいきませんと。でも逆なんですね。

今村有希
(うんうん)

西部邁
マーケットというものが成り立つためには、マーケットの土台も悪意も必要で、それをどうにかするのが公共財及び(柴山の言った)公共運動、公共活動だけども。

[*public goods 公共財 地域の共同体守るために必要、market failure ではなくマーケットの競争に適さない ]

柴山桂太
うん。

西部邁
マーケット成立の条件として、public goods があるんだという常識すらも通じなくなっているのね。公共事業悪玉論も、あの新聞とかテレビが悪かったじゃなくて、もう学者連中が悪いわけですよ。「公共財はマーケットに合わない!」なんてそういう馬鹿げた話を・・・

[*マーケット成立条件のために公共財がある常識すら通じず ]

柴山桂太
(深く頷く)

えぇ? 緻密に証明してみせて・・・僕に言わせれば、もうほとんど悪魔の証明みたいなことをやって、本当なんですよ。

今村有希
(笑)

柴山桂太
でも、この種の公共運動ってやっぱりリーダーがいるんでしょうね。よく地方に行くと銅像って立っていますよね。

今村有希
はい。

西部邁
あぁ、そうか(笑)

柴山桂太
なんで銅像が立ってるのかなぁと思ったら、そういうかつてその種の公共運動を行って、何か成功した人の多分その栄誉を称えているんじゃないかって勝手に思ったりして(笑)、あぁいう銅像が日本全国にいっぱい立っているということは、まぁ多分、日本社会の各地でもう何度も何度も行われてきて、

今村有希
はい、

柴山桂太
今またそういう局面に入ってきているという事なんじゃないかっていうふうに思いますけどね。

西部邁
公共的なるもの一般でいいんですけどね、人々が思っている以上に遥かにそのpublicnes(パブリックネス)というのは大事なもので、例えば、いま我々がね、大した背広じゃないところにきて背広を着ていますけども、private goods(プライベート・グッズ)=私的財、俺のモノ。確かにね、僕が着てたら柴山君が着れない。

今村有希
(うん)

西部邁
でもね、こういうもの(※背広)にはある種の「公共イメージ」があるわけですよ。MXをからかうわけじゃないが、テレビでしょう?

今村有希
(苦笑)

西部邁
ここで僕が普段着のままでね、パジャマ姿で出てきたら公共イメージに反するわけ、あいつは何をやっているんだって。

今村有希
(笑)

西部邁
この服装もね、頭はプライベート、自分の私有物だと、専有物だと思っているけど、これの醸し出す、その服装の醸し出す「あるイメージ世界」はね、お互いに共有しているわけですよ。これは全てそうなんですよ。

[*公共イメージのある 私的財 private goods ]

今村有希
(頷く)

西部邁
だから、食品だろうが衣料だろうが何でもみんなね、私的財だと思い込んでいるけども、少なくとも半分はね、全てが公共的な、それを確認し合うことによって共同体が安定するわけですよ。

柴山桂太
公共性というのは、我々の誰しもがその半分は、まさに公共世界の中でいろんなイメージをやり取りしているということですよね。

西部邁
あぁそういうことか。ということでですね、3回に渡って続きましたが、これは雑誌『表現者』にも載る予定でありますけども、

[*マイナス金利資本主義の断末魔 表現者9月号に掲載 8月16日発売 ]

今村有希
はい。

西部邁
柴山先生、3回に渡ってありがとうございました。

柴山桂太
どうもありがとうございました。

今村有希
ありがとうございました。