アメリカ帝国大混乱!!!② ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜

アメリカ帝国大混乱!!!② ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜


ゲスト:
伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト、近著「自滅するアメリカ帝国 〜日本よ、独立せよ」(文春新書)ほか多数


【ニコ動】
西部邁ゼミナール)アメリカ帝国大混乱① 2016.08.20
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29484089

 

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今村有希
3回に渡りまして、ワシントンD.C.在住の評論家 伊藤貫先生にお越し頂いており、今回はその2回目です。前回はイギリスのEU離脱をめぐり各国各有の国民の歴史に培われた国柄を無視したグローバリズム資本主義では世界が立ちゆかないことなどを論じて頂きました。
いま何故アメリカが大混乱に陥っているのか、近代を顧みながら今後の日本のあるべき姿に大いに参考になる本質的な議論が展開されるかと存じます。それでは先生方、宜しくお願い致します。

西部邁
何かね、グローバリズムというものを最初に広げたのは90年代で、

今村有希
(頷く)

西部邁
あれは、ヒラリー・クリントンのご主人のね・・・何クリントンでしたっけ?

 

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伊藤貫
ビル・クリントンです。
西部邁
あっ、ビル・クリントンね(笑)

伊藤貫
はい。

今村有希
(笑)

西部邁
一種の金融グローバリズム

伊藤貫
はいはい、

西部邁
或いは、証券グローバリズムでもって・・・情報グローバリズムも含めてかな。

伊藤貫
(頷く)

西部邁
もうひょっとしたら(アメリカによる)世界の一極支配かと。アメリカは賑わうしね、日本もそれに付き従おうと。

[*金融・証券・情報のグローバリズムで世界一極支配、1990年代にクリントン政権時に押し広げられる ]

今村有希
うん。

西部邁
それに絡んで日本では『構造改革』、structural reform(ストラクチュアル・リフォーム)と。

伊藤貫
えぇ、はい。

西部邁
アメリカ的なコンピュータ計算システムでもって全てを動かそうと。

[*日本では“構造改革” structural reform アメリカ的コンピュータシステムで全て動かすと ]

今村有希
(うん)
西部邁
証券の将来収益もデータに基づけば、確率分布として平均いくら、外れていくらと計算ができると。それであの証券この証券を組み合わせれば、こういうデリバティブ証券ができると、新証券が。
今村有希
はい。
西部邁
あれで全世界に売り捌いて大儲けして、で、蓋を開いたらそんな計算は全部嘘でしたと。
[*デリバティブ証券で大儲け、蓋を開けたら全て嘘だった ]
伊藤貫
(深く頷く)
西部邁
そんなね、未来を予測できるようなデータ、根拠あるデータなんて無いところに、あるとしただけのことですからね。
今村有希
うん(笑)
西部邁
それで金融パニックだ何だと言って大変なことになって、なにかそういうグローバリズム、カネ・・・
[*世界を破壊するアメリカ流 “グローバリズム” の本質 ]
今村有希
うん・・・
西部邁
それどころかね、その一環としてEUはそれやっちゃったんですけども、人間の移動ね。
伊藤貫
はい。
西部邁
とうとう、それがいまやアラブの問題をきっかけに移民問題も絡んできて、大変なことになっている。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
そのグローバリズムの問題について、やはりこの・・・彼(伊藤)はアメリカの責任者じゃないんだけども(笑)
伊藤貫
えぇ(笑)
西部邁
責任を問うというので(笑)
今村有希
(笑)
伊藤貫
自由経済システムが良い良いと言うんですけども、イギリスがEuropean Unionから出る時にいちばん問題になったのが、4つの経済的自由ということを実行したわけですね。モノとそれからサービスと資本と労働力、この4つの移動を全て自由にしようと。
[*英国のEU離脱の際の問題 “四つの経済的自由” モノ、サービス、資本、労働力の移動 ]
伊藤貫
例えば、アダム・スミスとかリカード自由貿易論を唱えた時には、彼らが考えてたのは要するにせいぜいモノと・・・
西部邁
モノね。
伊藤貫
それから、せいぜい育ったサービスを自由にするということだけで、アメリカという国の経済システムはものすごく異常で、何兆ドルという単位のお金ををコンピュータによって、1秒の100万分の1ぐらいのスピードでどんどん動くんです。
[*100万分の1秒の速さで何兆ドルが動くアメリカ経済 ]
西部邁
ねぇ〜。
伊藤貫
その0.000000…
今村有希
(笑)
伊藤貫
…1秒ぐらいで何十兆円もね、あっという間に動くわけですよ。
今村有希
(うん)
伊藤貫
資本がいつどのぐらいの額が動くかというのは、全く予測不可能になりますから、どんどんどんどん不安定化していくわけですね。
でもう一つは、どこの国にも経済システムにはどういうふうに企業と労働者は関係を持つかというんで、これは文化とか歴史とか伝統に規定されるんですよ。ところが、このglobal capitalismとかいうやつは、もう容赦無くreturn on capital、return on equityとか言ってね、要するに株主資本(=equity capital)、もしくは総資本で、return(リターン)、利益率がどのくらいかというんで、ちょっとでも下がると「全部売り飛ばすぞ!!」というふうに脅かすんですよ!!
西部邁
うん。
伊藤貫
そうすると、日本の企業が例えば内部留保がもう何百兆円もあるわけでしょう。だけど、実質賃金はぜんぜん上がらないわけでしょう。なんで上げないの?と言うと、「いや、それはもう株主が怖いから」と。
[*内部留保があっても実質賃金が上がらない日本 ]
西部邁
うん。
伊藤貫
で株主って誰かと言うと、その0.0000000…1秒に何十兆円も何百兆も動かすようなコンピュータなんですよ。
西部邁
(笑)
伊藤貫
それが怖くて、例えば日本の証券市場でも7割は外国勢、大体がアメリカ人なんですけど、その連中が支配してるわけでしょう。
今村有希
はい。
伊藤貫
でアメリカでも企業の利益がどんどんどんどん増えてっても、最近25年間はアメリカ国民9割の実質所得というのは、ジリジリジリジリ下がっているんですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
そうすると、要するに資本が主役で、資本の動きに全部の人間がある意味でenslavement(エンスレーブメント)、
西部邁
そうだね。
伊藤貫
奴隷化するわけですよ!
[*25年間アメリカ国民9割の所得がジリジリ下がる、資本が主役で人間が奴隷化 enslavement ]
西部邁
経済学でね、まぁ貨幣数量説というんですけど、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
(※MV=pt[貨幣数量説]について)Mというのはmoneyね。
今村有希
マネー。
西部邁
まぁ「金融」と思ってください。Vがね、いま喫茶店でveloce(ヴェローチェ)っていうのがね、
今村有希
あぁ、ありますね、はい。
西部邁
あれはもともとは早くコーヒーが出るから。英語で言うと、velocity(ヴェロシティ)というのは速度という意味ね。
今村有希
あぁ〜、へぇー。
西部邁
「貨幣の回転速度」ね。
今村有希
はい。
西部邁
1秒間で・・・いま1秒間なんだけど(笑)、1日に何回転貨幣が動くかというね。
今村有希
はい。
西部邁
Pというのは「価格(price)」なんだけど、Tは transaction(トランザクション)「取引」ね。
[*MV=PT:貨幣数量説、M(貨幣)V(貨幣回転速度)P(価格)T(取引) ]
今村有希
はい。
西部邁
transactionというのはモノですからねぇ、これ生産期間もかかるし、工場つくったりね。
今村有希
はい、
西部邁
(右辺のT=取引:transactionについては)そう大きくは変わらないのね、瞬間的には。ところが、こっち(左辺のMV)の方は、いま(伊藤が)言ったように、Mだ、Vだってのはね、コンピュータ・マネーで、極論すれば、
今村有希
(うん)
西部邁
ものすごい勢いで、例えば、投入されれば大きくなるし、引き上げられればマイナスになるし、
伊藤貫
(うんうん)
西部邁
こちら(※左辺のMV)は大変化を起こすわけさ。
西部邁
そうするとこっちの方(※右辺のT=取引:transaction)はあまり変化しないとすると、全部それは価格(P=price)に反映されるのね。
今村有希
(うんうんうん)
西部邁
これは急激なインフレが起こったり、逆に引き上げられるとものすごいデフレが起こったりという、資本主義の大混乱。
[*コンピューターで急激変化、インフレ、デフレの大混乱 ]
伊藤貫
(うんうん)
西部邁
で、価格が上がるんだか下がるんだか分からなくなると、どの企業も将来どう計画していいか分からないじゃないですか。
伊藤貫
えぇえぇえぇ。
西部邁
作っても高く売れるんだか安く売れるんだか分からないね、
今村有希
はい。
西部邁
そういう状態に資本主義をぶち込んだのが、その Financial globalismだったんだね。
[*価格が安定せず企業は将来の計画が立たない、資本主義を大混乱へと導いた Financial globalism ]
今村有希
はい。
伊藤貫
クリントンの時から、日本の金融市場を全部アメリカにオープンにしようと、それから構造改革しようと、
西部邁
うん、
伊藤貫
見てると奇妙な一貫性があるんです。こういうことを言うと、お前は陰謀説を撒くつもりかと言われるんですけども、クリントンの経済会議の議長をやって、その後に財務長官をやったのがルービン(ロバート・ルービン)という、元ゴールドマン・サックスの会長なんで。
[*クリントン政権時の財務長官、ロバート・ルービン
西部邁
あぁ、いましたねぇ。
伊藤貫
その次に共和党のブッシュの息子が大統領になった時に、それで誰が財務長官になるのかと思ったら、元ゴールドマン・サックスの会長で(笑)
[*ブッシュ政権時の財務長官、ヘンリー・ポールソン ]
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
要するに、民主党から共和党に代わっても、やっぱり財務長官はゴールドマン・サックスと。でその後オバマが2008年に大統領選挙に出た時に誰がいちばん選挙資金を出しているかというと、またゴールドマン・サックスなのね。
西部邁
あぁあぁ〜。
伊藤貫
で、今度ヒラリーが大統領選挙に出ているけど、ヒラリーの1人娘の旦那はヘッジファンドのマネージャーなの。その彼が、ヒラリーの義理の息子が立てた、設立したヘッジファンドに誰が金出しているのかというとゴールドマン・サックスなのね。
[*民主党共和党も財務長官にゴールドマン・サックスオバマの選挙資金、ヒラリーの義理の息子に融資 ]
西部邁
(苦笑)
伊藤貫
でね、これは単なる偶然の一致なのかと(笑)でアメリカの投資銀行でいちばん能力が高いのはゴールドマン・サックスなんですね。
[*参考:ゴールドマン・サックス出身の閣僚:クリントン政権 財務長官 ロバート・ルービンブッシュ政権 財務長官 ヘンリー・ポールソン、ポールソンの前任財務長官 ジョン・スノー  / ワシントンとウォール街との間には幾重ものコネクションがあり、このお陰で金融システム改革も貧富の格差是正も出来るハズがない /ジャグディシュ・バグワティ(経済学者・コロンビア大学)は、この構造を【財務省ウォール街複合体】と呼び、特にゴールドマン・サックスとの癒着構造については【ガバメント・サックス】などと呼ばれた ]
今村有希
(興奮口調の伊藤に思わず笑う)
伊藤貫
ロシアのエリツィンが政権とってた時に、ロシアの国債を発行してたのがこれまたゴールドマン・サックス
伊藤貫
スゴイねぇ・・・
伊藤貫
ギリシャ財政赤字を誤魔化した時に、その時にデリバティブ使って誤魔化したんですけど、それを誰がやったかというとこれまたゴールドマン・サックスなんですよ!!
[*エリツィン政権時にロシアの国債を発行、ギリシャ財政赤字デリバティブもゴールドマン ]
西部邁
(頭を抱えて苦笑)
今村有希
(伊藤のオーバーアクションにただただ笑う)
伊藤貫
これは単なる偶然なのかと!!!(笑)
今村有希
(笑)
伊藤貫
どうもねぇ・・・誰かに操られてるという感覚が強いんですよ!だから、今回トランプが人気が出たり、それからイギリスで52%の国民がNO!!と言ったのも、それからギリシャなんかもみんなEUから出たいと言ってるわけでしょう。みんなね、国民が『誰かに操られているんじゃないか!!』と。それで、僕なんかワシントンの住んでると、『何でゴールドマン・サックスは何でこんなに全部決めるんだ』と。
伊藤貫
それでね、今度のTPP
西部邁
うん、
伊藤貫
あれだってね、アメリカの金融業者がものスゴイ力を持って、裏で全部操作してるわけですよ!!で今のTPPを決めたフロマン(マイケル・フロマンUSTR代表)はゴールドマン・サックス(出身)じゃなくて、シティバンクなんですけどね。
[*金融業が力持ち “TPP” も裏で全て操作している ]
西部邁
うん。
伊藤貫
フロマンもルービンの下、すぐ下で働いていたわけですよ。だから全部繋がってるわけですよね。
西部邁
なるほどね。ヴェブレン・・・ソースティン・ヴェブレンという人が言ったんだけど、
[*Thorstein Veblen (1857-1929)アメリカ 経済学者 ]
伊藤貫
はい。
西部邁
captain of financeね。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
これの逆が、captain of industry なんだけど、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
industryの方のこれはモノをつくる方なんですけどね、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
これ captain というのはこの場合は船長というよりも親分、「総帥」という意味ですね。
伊藤貫
はい。
西部邁
金融の総帥。要するに、アメリカを動かしてるのはファイナンスを牛耳っているキャプテン(captain)であると。
[*captain of finance “金融の総帥” ファイナンスを牛耳るキャプテンがアメリカを動かす ]
西部邁
今はスゴイね、その話聞いただけでね。
伊藤貫
えぇえぇ。でね、例えばアメリカの大企業が稼ぎ出す、毎年の収益の今から半世紀前は、金融業界が獲る分というのはせいぜい15〜6%だったわけですよね。
西部邁
うん。
伊藤貫
だけど、前のブッシュ政権と、現在のオバマ政権では、アメリカの民間企業の全体の収益の40数%を金融業者が獲ってるわけね。
西部邁
ワッハハ〜、凄まじいねぇ(笑)
伊藤貫
そしたら金融業者がアメリカの生産性を上昇させるのに何か貢献したかと言うと、何も貢献していないわけでしょう。
西部邁
うん。
伊藤貫
だけど、利益だけは昔の半世紀前の3倍獲ってるわけですよ、シェアでね!
[*アメリカの民間企業における収益40数パーセントを金融業が占め、半世紀前の3倍に ]
西部邁
そうだよ、カネを持ってるというだけで(笑)
伊藤貫
完全におかしくて、だから表面的には「トランプに投票した共和党の連中はみんな馬鹿だ馬鹿だ!」とマスコミは書くんですけど、
西部邁
うんうんうん、
伊藤貫
でもまぁそれは本当なんだろうけども、だけど、そういうトランプに投票するという人達はみんな、『エスタブリッシュメント糞食らえ!!』と思っているわけですよ。
[*establishmentにNO! トランプ候補人気の理由 ]
西部邁
そうでしょうね。
伊藤貫
で要するに、エスタブリッシュメントに対してNO!!!と言いたいから、みんなトランプを応援するわけですね。
西部邁
(頷く)
伊藤貫
だから、何でアメリカの国民がそれほど怒っているのかというと、やっぱり見ると、とにかく全部利益は金融業者が持ってっちゃうと。
西部邁
うん・・・「目撃者」という映画観たことある?
今村有希
ないです。
西部邁
あれはアーミッシュという古い宗教で、新しいモノは使わないという特殊な集落があるんだ。そこでしょっちゅう出てくるのはね、「アングロサクソンの言うことは信じるな!!」ってね。
[*映画「刑事ジョンブック目撃者」(ハリソン・フォード主演)に出てくる宗教集団、近代的技術を使わず暮らしているアーミッシュ / 【アーミッシュ】:キリスト教の非主流派で、アメリカではペンシルバニア州を中心に居住し、自動車や電気を用いず農耕や牧畜を中心とした移民当初の生活様式を保持している。]
伊藤貫
うん。
西部邁
今はアングロサクソンじゃないんだけど、当時はアングロサクソンが金融を握っていて、それでその金融の動かし方に相応しい言わば理屈話をね、仕立てて、それがワシントン若しくはニューヨークから流れてくると。それに対して、このミドルウェスト、中西部のね、真面目に小麦を植えて、トウモロコシを穫ってるそういう人達がね、
今村有希
(うん)
西部邁
勝手に農産物の価格を上げられたり下げられたり、いろんなことをしながらどんどん搾取されていくと。そして、それで正しいんだという理屈をまた東海岸のインテリたちが新聞だ、あの頃はまだテレビは無いけれども、それでやるというね。
伊藤貫
(うんうんうん)
西部邁
そういうことに対する反発というのは、アメリカでずっとあるのね。
[*真面目な勤労者の反発、アメリカの中西部 Midwest ]
伊藤貫
はい。
西部邁
そういうことで考えると、多分もうアメリカ社会のね、中西部あたりのもう何百年にも渡ってあるね、そういう勤労する人達の不満ね。
今村有希
はい。
伊藤貫
(頷く)

 

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西部邁
金融にこう右行け左行けと牛耳られることへの不満、それが今や中西部に限らずね、いろんな Colored People その他を含めて広範に広がっていて、それがよく分からないけれども、あのトランプなる人物はどうも俺達の本心の不満をね、表してくれているようだと、それ行け!!と。
で、僕も密かに太平洋のこっち側からその通りになって欲しいと思っているんだけど、どうもそうは行かないようですね、エッヘッヘ(笑)
伊藤貫
Wall Streetの連中からの(トランプの)評判が悪いのは事実なんですけども、(西部)先生の仰ったアングロサクソンが金融業界をコントロールしているというのは実は1950年代までのことで、
西部邁
50年代までか。
伊藤貫
60年代からは別の人達が降臨して、それは名前は言いませんが(笑)
西部邁
言わない方がいいよ(笑)
伊藤貫
言わないけど、うん(笑)
西部邁
トランプを支えてるのは、この世は不公平だ!!というそういう直感、感情でしょうねぇ。
今村有希
(頷く)
西部邁
でもそれはアメリカだけじゃないんですけどね。
伊藤貫
アメリカだけじゃないですけど、あのアメリカを見る時に理解して頂きたいのは、0.1%、1%、10%という差別があって、でアメリカを本当に支配しているのは0.1%なんですよ。でアメリカ全体の過去20年ぐらいの資本の取引による利益の半分は、この0.1%が全部握っているんですよ。
[*アメリカに広がる0.1%、1%、10%層の差別、ここ20年の資本取引の利益半分を0.1%が得る ]
西部邁
うん。
伊藤貫
でアメリカの政治家の共和党も民主党も政治資金の半分以上は、この0.1%から貰っているんです。
西部邁
それなんだねぇ・・・。
伊藤貫
だから、経済政策だけじゃなくて、外交政策にしても軍事政策にしても、この0.1%を敵に回したら、アメリカの政治家はもう誰もやっていけないと。
[*資産トップ0.1%層が政治資金を提供する、経済・外交・軍事政策も敵に回せない異常さ ]
西部邁
うん。
伊藤貫
それから次の1%というのは、所得がどんどん増えているのが1%なんですね。だから、金持ちとしていい生活をしているんですけども、それじゃあこの1%は政治権力を握っているかと言えばそうじゃない。政治権力は0.1が持っているわけです。
西部邁
うん。
伊藤貫
で、過去25年間で見ると、生活レベルが上昇してきたのが10%なんですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
だから、トップ10%に所属している人達はそれほど金持ちになったわけじゃないんですけども、生活はどんどん楽になっていますから不満は無いわけですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
例えば、マスコミなんかで今の体制がいいんだいいんだと言ってる奴らは、みんな一応10%のメンバーなんですよ。
西部邁
そうか。
伊藤貫
自分たちはエスタブリッシュメントのメンバーだという意識があって、実は共和党も民主党も政策はそれほど違っていないですから、oligarchy(オリガーキー=寡占体、寡頭政治)なんですよ、oligopoly(オリゴポリー=寡占)というか、オリガーキー・システムになっていると。
[*0.1%層が政治権力を支配、1%層は金持ち、10%層は生活レベル上昇しestablish意識 / 超富裕層オリガーキー「寡占体」が政策の違いがない民主党と共和党を支配する ]
西部邁
寡占体ね。
今村有希
寡占体、はい。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
単一じゃないんだけど、ごく少数、今で言えば0.1(%)という、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
oligopolies(オリゴポリーズ)ですね。少数者が牛耳っている。
伊藤貫
で大学なんかでも、例えば左翼っぽいというか、リベラルっぽいことを言いたがる教授にしても、結局は10%に、
西部邁
うん。
伊藤貫
若しくは1%に、ハーバードの教授なんかは1%ですけども。
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
だから、今のシステムを根本的に変えたいとは思っていないわけですね。
西部邁
うん。
伊藤貫
そうすると、悲惨な目に遭っているのがボトム6割ぐらいで、ボトムの5割6割ぐらいはもう生活レベルがどんどんどんどん下がっているわけですね。
[*ボトム5〜6割は生活レベルが下がり、悲惨な状況に遭っている ]
西部邁
そうか。
伊藤貫
この人達は例えば、僕なんか去年の夏に女房と一緒にペンシルバニアとかウェストヴァージニアとかオハイオとかドライブしてたらもう田舎へ行くとヒドいんですよ!涙が出るというぐらいもうボロボロでね。
西部邁
うん。
伊藤貫
でちっちゃな町、人口数千とか1万ぐらいの町へ行くと、3割ぐらいが空き家なんですよ。
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
でボロボロになって崩れているわけ。でね、レストランなんかももうホコリだらけで、要するに誰も入っていない。要するにもう可処分所得がぜんぜん無いわけ。
西部邁
うん。町に漂流して出てたわけね。
伊藤貫
そうそうそう。
西部邁
で、裏町で乞食をやってる、簡単に言えば。
西部邁
そうそうそう。
今村有希
(うんうんうん)
伊藤貫
ワシントンに住んでる限りね、分かんないんですそれ。
西部邁
うん。
伊藤貫
下の5割から6割の国民の生活がどれぐらい苦しくなっているかってことは、アメリカのマスコミは意図的に報道しないんですよね。
[*人口数千〜1万人程度の小さな町では空き家3割、可処分所得がない、国民生活苦を報じないマスコミ ]
西部邁
だから昔からね、産軍複合体(※もしくは軍産複合体)、 military industrial complex ってアイゼンハワー(ドワイド・アイゼンハワー)というね、50年代の大統領をやった方で、引退にあたって、要するに、産業と軍隊が複合しているから、これは権力を握るから気をつけろ!と。
[*産軍複合体 military industrial complex(MIC) 国家に行使する可能性指摘(アイゼンハワー) ]
今村有希
はい。
西部邁
あれを言ったのは、まぁ55年だとすれば、もう70年近く経って、
伊藤貫
はい、
西部邁
いま起こったのは、本当に一握りのこの場合は産業というよりも金融ですね。それこそ『0.1%の金融資本』がね、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
それが軍隊どころか、政治もマスメディアも何もかも握っているというね。それでね、民主主義アメリカ。
[*0.1%の金融資本が政治からマスコミまで支配、アメリカの民主主義を真似しようという日本人も ]
伊藤貫
アメリカでいちばんおかしいのは、政治資金のシステムがね、確か10年ぐらい前に最高裁が非常におかしな判決を出して、一応、政治資金規正法というのがあって、アメリカの普通の人はMAX、最大限で1年に27万ぐらいがmaximumの最大限の。
ところが、政党に寄付するのではなくて、自分自身で政治活動団体をつくって、
西部邁
あぁあぁあぁ。
伊藤貫
それで特定の候補を応援するのには、個人ひとりで何十億、何百億使おうがそれは表現の自由だと!でトップ0.1%というのは冗談抜きに、毎年ひとりで50億、100億円使ってケロっとしてる連中がいっぱいいるわけですよ。
[*アメリカの表現の自由、おかしな政治資金規正法
伊藤貫
アメリカのトップレベルの資産層というのは、自分の個人資産が何兆円ですからね。だから何兆円も持っている人は、例えば、トマス・ピケティ(トマ・ピケティ)ですか、「LeCapital」(資本論)で書いていたんですけども、そういう billionaire(ビリオネール)、700億ドル、800億ドルとかそういうのを持っている人達は、returnが毎年8%〜10%あるわけですよ。すると、毎年5000億収入がある人達にとっては100億円なんてもうねぇ、爪の垢みたいなもんで、
西部邁
そうでしょう。
今村有希
はい(笑)
伊藤貫
それで政治家は政治家で、あの人は100億円出せるらしいとか言うと、もう血相を変えてしがみついていくわけですよ。
[*billionaire 5兆円ある人は金融で5000億円収入、政治家は100億円に血相を変えてしがみつく ]
西部邁
ヨーロッパをもう15年ぐらい前かな、ちょっと旅した時にもう分かったんですよ。つまりオーベルネというのかな、あのレストラン付きのホテルがあるでしょう、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
有名なの。全部田舎にあるんですよね。なんでこんな田舎でこんな豪勢な食事がと思ったら、アメリカからね、いま言ったような連中が飛行機でですよ、家族を連れて、おそらく友達も連れて、ちょっと飛行機に乗ってどうする?リヨンあたり行くかってな、そういう調子の動き方をしているというね。
今村有希
へぇ〜。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
そういう世界。
今村有希
うん・・・
西部邁
そのど真ん中で(伊藤は)暮らしてらっしゃる(笑)
伊藤貫
(笑)
今村有希
(笑)
伊藤貫
政治資金の話で言いますと、カール・アイカーンという乗っ取り王、企業の乗っ取り王で有名な人が、「今年は僕は大統領選挙で既に150億円使うことにした」と。
西部邁
おぉ〜。
伊藤貫
それとは別に、シェルドン・アデルソンというラスベガスのカジノ業者がいて、彼は世界で8番目か9番目の金持ちらしいんですけど、彼ももう100億円以上使うと。
[*投資家のカール・アイカーンは大統領選に150億円、実業家のシェルドン・アデルソンは100億円使う ]
西部邁
うん。
伊藤貫
でこういうことを公言するわけですよ!
今村有希
(笑)
伊藤貫
そうすると政治家はみんなビビって、アレを敵に回したら大変だと。しかもおかしいのは、ヘッジファンド業者で非常に金持ちの連中が、例えば共和党のルビオ(マルコ・ルビオ)という大統領候補にいっぱいお金を出していたんですけど、そいつらヒラリーにも出しているんです、民主党の。
西部邁
うん、そうなんだねぇ。
伊藤貫
そうすると、ヘッジファンド業者というのは政党別に対立しているようなふりをしながら、共和党の大統領候補にも民主党の大統領候補にもそれぞれ数億円ずつ渡しているわけ。
西部邁
こういうアメリカの0.1%の金持ちたちの動きと比べると、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
日本の都知事は・・・セコい!!と。
一同
(爆笑)
西部邁
アメリカを見習う気は無いが、まぁ偉大な captain of finance が、アメリカに生まれ、アメリカを牛耳って、
伊藤貫
(頷く)
西部邁
それに対する多数派のね、ほとんど直情的な反発がね、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
選挙結果がどうあれね、広まって、これが二度と再び燎原の火にように広がったこの格差に対する不満は消えることは無いであろうと。・・・ということで次の週に入りましょうか、
一同
はい。ありがとうございました。

 

 

 


【次回】今週の続編です