読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アメリカの国柄とはどんなものか① ゲスト:京都大学名誉教授 佐伯啓思 〜西部邁ゼミナール〜

アメリカの国柄とはどんなものか① ゲスト:京都大学名誉教授 佐伯啓思西部邁ゼミナール〜

ゲスト:佐伯啓思京都大学名誉教授 、著書「反・民主主義論」〔新潮新書〕、『「アメリカニズム」の終焉』〔中公文庫〕ほか多数)

 

【ニコ動】

西部邁ゼミナール)アメリカの国柄とはどんなものか【1】2016.11.12

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm30029298?ref=search_tag_video&ss_pos=1&ss_id=cbca8c98-1e55-447f-96df-f5e0baf07935

 

今村有希
史上類を見ない嫌われ者同士の対決となった、ヒラリー・クリントン候補ドナルド・トランプ候補による大統領選挙、“アメリカのドタバタ喜劇” を演じたわけですが(※放送収録時は大統領選挙の結果が出る前)、トランプ氏は大統領選で「アメリカ第一主義」を掲げ、外国の戦争には関わらず、自国の問題を最優先にすると主張しました。

 

そこには、拡大する格差や人種問題、イスラム教圏への軍事介入の大失敗に対する国民の不満が色濃く映し出されています。

 

アメリカの自由民主主義を押し広げ、世界を破壊してきた “アメリカニズム” とは一体何なのか、今回から3回にわたり、京都大学名誉教授の佐伯啓思先生をゲストに迎えまして、アメリカの国柄とはどんなものなのかを論じて頂きます。

 

それでは先生方、宜しくお願い致します。

 

西部邁
あぁ、今日はわざわざありがとうございます。

 

佐伯啓思
ありがとうございます。

 

西部邁
最初にですね、この番組の録画が実は “大統領選の前” に行われておりましてね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
たぶんこれが放映される時にはヒラリー、トランプ、どっちか決まっているんですよね。佐伯先生もそうでしょうが、どっちが勝とうがね、急激になんかこうアメリカの政策が変わるわけはないんで。長期には少しづつ変わるでしょうけどね。それぐらいアメリカはもうCIAだろうがペンタゴンだろうが何だろうがね、世界中に網の目広げていますんでね、急に網を切ったり仕上げたりできませんから。もっと広くアメリカ論として、話せばいいだろうとこう思っている。“アメリカニズム” という言葉もね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
最初に活字として使ったのは誰であろう・・・この先生(佐伯)なの。

 

今村有希
あー、そうなんだ!(驚)

 

佐伯啓思
(笑)

 

西部邁
それでねぇ、まさかこの先生が使ってると知らなかったのだけど、

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
踵を接して2番目に使ったのは誰であろう・・・

 

今村有希
(笑顔で西部を指差す。)

 

西部邁
僕なの(笑)

 

佐伯啓思
(笑)

 

西部邁
もうずいぶん前のこと20年ぐらい前のことかねぇ・・・

 

今村有希
へぇ〜

 

西部邁
アメリカニズムの?

 

佐伯啓思
えぇ、終焉というね。

 

西部邁
終焉だったよね。

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20161114151223j:image

 

佐伯啓思
えぇ、はい。丁度、最初の湾岸戦争の直後ぐらいですかね、書いたのは。(※『「アメリカニズム」の終焉』〔中公文庫〕佐伯啓思著)

 

西部邁
あぁそうですかね。それじゃあもう25年ぐらい前。

 

佐伯啓思
94年ですね、はい。

 

西部邁
ところで今村さん、

 

今村有希
はい。

 

西部邁
どうしてアメリカは “アメリカ” というと思う?

 

佐伯啓思
フッフッフッ(笑)

 

今村有希
へへへ(笑)一番最初に発見した、アメリゴ・・・

 

佐伯啓思
(小さい声で)ベスプッチ。

 

今村有希
ベス・・・プッチさん?

 

西部邁
左様(笑)

 

今村有希
笑。その方が名付けられた。

 

西部邁
まぁ正確にいうとね、南米にコロンビアという国があるでしょう?

 

今村有希
はい、

 

西部邁
名前からわかるようにね、コロンビア・・・大陸があるじゃあないかと。それを発見したのは本当はコロンブスなの。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
ところがベスプッチがね、ちょっと遅れて発見したにも関わらず、(コロンブスよりも)一足先にヨーロッパに帰ったの。イタリア人ですけどね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
それで「俺が発見した!」みたいなことを自分から言ったかどうか、もう大人気でね、講演が相次いで、何たって巨大な大陸があるらしいというのでね、それでね、アメリゴね・・・アメリカでしょう?何かヨーロッパ人にね、美しく聞こえたみたいね、アメリゴ・ベスプッチの「アメリゴ」って言葉がね。“アメリカ” と名づけようじゃないかと。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
ところが数ヶ月後に実はそれが “ウソだった” とバレたわけさ。

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
だからアメリゴ・ベスプッチというのは別名ね、「詐欺師」って意味なの。

 

今村有希
フフフフフ(笑)

 

佐伯啓思
(笑)

 

西部邁
ねっ(笑)そのことをアメリカ人相手に言うとね、10人のうち2人か3人は知ってて、

 

今村有希
へぇー

 

西部邁
ミスター西部その話はやめてくれと。

 

佐伯・今村
(笑)

 

西部邁
あなたが『アメリカニズムの終焉』(中公文庫)って書いた、

 

佐伯啓思
えぇ

 

西部邁
主要の論点は何でした?

 

佐伯啓思
90年に冷戦が終わってそれで世界中がグローバル化するという、そういう話になりかけた時期なんですよね。

 

西部邁
あぁ、そうだね。

 

佐伯啓思
その時に最初の湾岸戦争が起きて、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
まぁイラクとアメリカの間に一種の戦争が起きると。

 

西部邁
うん。

 

佐伯啓思
その時に、ぼく初めてアメリカに1ヶ月少し行ってきたんですね。

 

西部邁
あぁそうなんですね。

 

佐伯啓思
はい、初めてアメリカを旅行しましてね、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
で、ちょうどワシントンで湾岸戦争の勝利パレードをやってたんですよ。

 

西部邁
うん。

 

佐伯啓思
で、その後いろんな場所でいろんなアメリカ人と喋ったり、まぁ政府関係者のような人とも喋ったりしましたけれども、何かみんな一様にあんまり自信がないんですよね。

 

西部邁
あぁ、あの頃ね。

 

佐伯啓思
えぇ。で、湾岸戦争に勝ったぞ!というふうに言ってるわりには、何か将来に対して非常に不安を持っていて、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
で、まだ日本がこれほど悪くなる少し前なんですよね。

 

西部邁
そうだねぇ。

 

佐伯啓思
えぇ、93年ぐらいですからね。まぁ日本はその後、『失われた20年』という長期的な停滞に入りますけど、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
まだその前で、アメリカ人と喋っていると「いやぁこれからまだ日本の方がいいじゃあないか、アメリカはもうダメだ」みたいな話をしていて、ものすごくある種の不安に駆られているなぁと
いう感じがしたんです。

 

西部邁
うん。

 

佐伯啓思
で、ものすごく焦ってるなぁという感じがしましてね。

 

今村有希
えぇ

 

佐伯啓思
いわゆる「アメリカン・デモクラシー」というのも、彼ら自身も何かそういうものを信じきれていないようなそういう印象がありまして。ですから簡単に言えば、要するに、『アメリカ型の自由や民主主義でグローバル世界を上手くやっていくというふうなやり方はたぶん失敗するだろう』なぁと(笑)

 

西部邁
うん。

 

佐伯啓思
で、まぁ(※本を出した当時の93年頃は)その入り口でね、そういうふうに入るあたりなんですけど。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
なるほどね。

 

佐伯啓思
えぇ。

 

西部邁
まぁ四半世紀近くアメリカの混乱・衰退はもう目を覆うばかりね。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
これはね、実は伊藤貫君って、彼はね、アメリカ(ワシントン)在住ですから、そのうちの一部を言うとスゴいんですよ。この26年間(=1990~2016年)、

 

今村有希
はい

 

西部邁
アメリカ人の9割の実施所得が低下していると。

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
他方ね、トップの0.1%の超富豪の資産評価で言うと数百兆か、数百兆円ずつ増加している。この間、アメリカの労働生産性ね、80%上昇しているのだが・・・いい?

 

今村有希
はい。

 

西部邁
アメリカの平均所得は本当は労働生産性に応じて労働者の賃金もUPするわけ。たった4%しか上昇していない!

 

佐伯啓思
うん・・・

 

西部邁
あとの分、誰が持ってくかというと、上位1%もしくは0.1%ね。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
その巨大な何十兆円、何百兆円と持っているそのうちの6、7割はこれは正確な統計で、特にヘッジファウンダーになってくるとアメリカ重視だと言われているんですがね、彼らが全部持ってくわけさ。そんな巨大な所得格差ね。今村さん、

 

今村有希
はい

 

西部邁
日本の社長とね、MXも社長が居られると思うんだけども(笑)、まぁ社長・重役と平社員ね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
まぁ平均の(給与格差は)せいぜい15倍程度しかないんですよ。一般勤労者の所得が年間500万だとすれば、5000万、6000万というのが社長の年収ね。向こうは何倍だと思う?・・・300倍、400倍よ!

 

今村有希
はー!!!(驚)

 

西部邁
それぐらいね、CEOとか言ってさ、Chief Executive Officer(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー:CEO)もう巨大なこう(格差)なの。もうそこまで(格差が)開いちゃって。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
その連中たちがね、巨大な金を「政治資金」にこれを注ぎ込むわけ。しかも、その7、8割は民主党系らしいのよ。小さい声で言いますが、日本人ね、この間(広島に)オバマが来て、オバマさんバンザーイ!!なんてキャーキャー言ってたけどね、オバマの時代にへっへっへ(笑)ものすごいその政治資金が民主党の側に傾いた。

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
本当、オバマこそはね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
オバマこそは)本当にアメリカのその所得格差をはじめとする、そういう社会格差の最後の総仕上げだね。

 

佐伯啓思
うん。

 

今村有希
(頷く)

 

西部邁
それが日本人はね・・・オバマちゃん♪ヒロシマに行ってくれてありがとう♪♪ とか言っちゃって、広島行っただけでね、「オバマさんには核兵器の廃絶を期待する!!」とか言って、新聞の見出し、テレビの見出しでやってる。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
オバマ時代にアメリカは、核兵器関連の財政支出を30%増やしているわけさ!!』

 

今村有希
(うんうん)

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
ハッキリ言ってね、bullshit!!(ブルシット=デタラメ)って言うの英語で?(笑)

 

佐伯啓思
(笑)

 

西部邁
それアメリカ人みんな知ってるワケさ、だいたいね。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
だからトランプのようなさ・・・まぁ日本で言えばとんでもなくなんて言うの?・・・小さい声で言うけどね・・・どこのゴロツキじゃいってね・・・でもそういう人間にだってブアーッと要は集まったわけ一時ね。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
それから、民主党の第二候補のサンダースなんてのは、自分のことを「社会主義者」と言っているのよ。もうアメリカ人の社会主義嫌いはほとんど病気みたいなモンだけど、社会主義者と名乗ってもね、『こんな所得格差が広がるぐらいならば社会主義でもいい』みたいな気分の奴らが・・・民主党(代表選挙)で落ちましたけどね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
もうヒラリーに肉薄するぐらいの票を集める。それぐらい今もアメリカ人は、俺たちもうダメだと。

 

佐伯啓思
普通に考えればね、それは政治的な経験からするとクリントンが圧勝ですよね。

 

西部邁
うん。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
問題にならないハズですよね普通なら。まぁ好き嫌いはちょっと別にしても。トランプが大統領になる・ならないに関わらず、ここまで旋風を巻き起こしたこと自体が、非常に重要な話で、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
今のアメリカを象徴していますよね。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
あの今、民主党系に随分政治資金が集まっているって仰ってましたけど、ヒラリー・クリントンはものすごい巨額な政治資金であれだけの選挙戦をやって、で、トランプがまぁ人気があったのは、トランプはまぁ(政治資金は)貰ってるでしょうがね、ヒラリーに比べれば、選挙支援者からの資金は(トランプは)ものすごく少ない。

 

西部邁
うん!

 

佐伯啓思
基本的には「自前」でやってきたんですよね。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
(選挙戦を)自分の資金でやってきた、そういうところがトランプがウケた、まぁひとつの理由ではあるんですよね。

 

西部邁
しかもその政治資金は単にヒラリー本人に入るんじゃなくて、“マスメディア” にも入っていくわけね。

 

佐伯啓思
うん。

 

今村有希
(頷く)

 

西部邁
だから、マスメディアは本当にもうAからZまでほぼ全部ヒラリーが得するような報道番組を作りあげるわけさ。

 

佐伯啓思
うん。

 

今村有希
はー(驚)

西部邁
こんな恐ろしい国になっちゃったんだね。

 

佐伯啓思
そうですね。だからトランプが「この選挙は不正が行われている!!」と(笑)

 

西部邁
ワッハッハッ(笑)

 

佐伯啓思
メディアも含めて要するにまぁ出来レースみたいなね、インチキやってるんだと(笑)

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
で、訴えるみたいなことを言っていましたけども、メディアは自分たちの意見を書くこと自体は別に合法ですからね、それは別に問題はないんだけれども、

 

西部邁
うん、まぁそうでしょう。

 

佐伯啓思
その背後まで言うとね、トランプの言いたいことも分からなくはないですよね(笑)

 

西部邁
うん。アメリカってヒドい国でね、一応、法律ではね、個人の政治献金は幾ら幾ら、日本で言えば何十万円って決まっているのよ。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
ところがね、アメリカって面白い国で、憲法があるでしょう?

 

今村有希
はい

 

西部邁
憲法を持ち出して、

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
「誰に幾ら金を出そうがそれは人間の自由だ!」と。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
ね?憲法で自由を保障されている以上ね、こんな憲法なんかはね、(制限・規制を)実行しちゃダメなんだというマスコミが作りあげる世論が支配してね、

 

佐伯啓思
うん。

 

今村有希
はい。


西部邁
大金持ちたちはさ、もう凄まじい献金、何百億円というやつをバンバンやるわけね。しかも、ある奴なんて、ヒラリーに何百億円やると同時に共和党のね、もうどんどんアラブなんか潰しちゃえというね、そういう戦争屋みたいな候補にもまた献金してるわけさ。

 

今村有希
へー。

 

西部邁
もう本当に『カネの世界』ね。

 

佐伯啓思
うん。ずーっとまぁ、アメリカのその政治というのはそういう体質だと。つまり政治とそれから軍と産業が結び付いているというふうにずーっと言われてきて、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
昔、あの『The Best and the Brightest(ベスト・アンド・ブライテスト)』という有名な本が、

 

西部邁
あぁ〜

 

佐伯啓思
僕らの学生時代ですね。

 

西部邁
要するに、アメリカのベトナム戦争を指揮した国防長官(※ロバート・マクナマラ

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
そう。だからベトナム戦争と冷戦絡みで、軍と産業と政府がどれだけくっ付いてそこにカネが集中してるかって話を書いた人(※ニューヨーク・タイムズの記者デイヴィッド・ハルバースタ)がいて、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
その構造がやっぱりずーっと結局は続いているんですね。

 

西部邁
そうだね。

 

[*ベスト・アンド・ブライテスト(The Best and the Brightest)は、「最良の、最も聡明な人々」を意味し、1960年代のアメリカ合衆国ケネディとそれを継いだジョンソン政権において安全保障政策を担当した閣僚および大統領補佐官たちを指す。

 

ニューヨーク・タイムズの記者デイヴィッド・ハルバースタムにより、同名の本が出版された。ベトナム戦争を始めたケネディ政権と、それを継いだジョンソン政権において国防長官を務めたロバート・マクナマラを中心とした「最良の、最も聡明なはずの人々」が、いかにして政策を過ち、アメリカ合衆国ベトナム戦争の泥沼に引きずりこんでいったのか、ホワイトハウスの内情を克明に描いたドキュメンタリーである。/ wikiより ]

 

佐伯啓思
で、一時はその(ビル)クリントン大統領の時には、ウォール街とそれからIT産業とそれから政府が完全に結び付いていると。昔の軍はやはり重工業なんですよね。

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
ところが、1990年代のアメリカはIT産業が発達したから、ITとそれからウォール街、金融街と、それから政府が結び付いていたというふうによく言われて、

 

今村有希
へぇー。

 

佐伯啓思
ずーっとアメリカはそういう体質なんです、結局のところは。

 

西部邁
僕が好きな人で昔のね、ソースティン・ヴェブレンという1929年に死んだ人がいるのよ。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
これね、19世紀から20世紀にかけてのアメリカを牛耳っているのはここに書いた(※板書)ね、captain of finance(キャプテン・オブ・ファイナンス)ね。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
financeってこの場合「金融」って意味ですよ。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
captainというのは日本では船長さんのことだけども、まぁこの場合は「首領」という意味ですね。要するに『金融の首領が、首魁が、アメリカを牛耳っていると』、これはもう本当にね、昨日一昨日始まった話じゃないのね。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
今で言えば、100年前からなんだけど、その規模が巨大に広がったわけさ。

 

今村有希
(頷く)

 

佐伯啓思
そうですね。今回のその選挙というのは、かなり重大だということの意味は、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
そのアメリカだけの話でもなくって、

 

西部邁
そうねぇ。

 

佐伯啓思
世界全体に関わる話だって気がするんですよ。それは簡単に言えば、こういうグローバリズムで物凄い世界的な大競争をやって、でしかも、ITと金融工学だとかね、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
金融市場、そこで物凄くカネが儲かるような仕組みを作ってしまった。それはアメリカが中心になってやったけど、今はもう世界中がみんなそうなってしまって、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
そうすると、資本は非常に簡単に移動するから資本の収益率の高いところに一気に資本が流れていく。流れていったところで働いている連中はものすごく得をするのだけども、

 

今村有希
(うん)

 

佐伯啓思
資本が無くなった(引き上げられた)ところはものすごく苦しくなるわけですよね。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
だから世界中でどこに行っても格差が開いてきていて、つまり、このグローバルな競争の中で物凄く大きな格差が世界的についてきていて、で、その “象徴的な表れ” がいまアメリカに出てきているってことですよね。

 

西部邁
そうそう。しかもね、アメリカのやっていることはどうもこうみたい。その企業利益が入るでしょう?その利益の90何%を株主が持っていっちゃう。

 

佐伯啓思
うん。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
ということはね、『企業利益・収益を使って設備投資・開発投資をほとんどしない!!』ってこと、アメリカは。じゃあ大変だと思うでしょう?

 

今村有希
はい。

 

西部邁
で、何をやるかと言ったら、その株主資本主義であるその連中たちが、外国の設備投資・研究投資をやって着実に・・・まぁ着実かどうか、いろんなことをやってるやつらを要するに “買収” しちゃうわけよ、乗っ取っちゃう。

 

今村有希
(うんうん)

 

西部邁
そういう形のなんていうの・・・カネでもって自分たちのカネを使ってね、そのカネで設備投資やって世界をリードするというならまだいいんだけど、

 

今村有希
はい

 

西部邁
そのカネを使って、優秀でまぁ効率いいことをやってるやつをカネで乗っ取っちゃうというね、それをやってるのね。

 

佐伯啓思
うんうん、そうですね。

 

西部邁
そういうグローバリズムなんです。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
もう日本なんてまんまとその餌食になっている。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
小さい声で言う、僕はザマァみやがれ!!と思ってる。

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
言わんこっちゃないだろうと。これだけ佐伯と西部が25年にわたって言ってるのに(笑)

 

今村有希
はい(笑)

 

佐伯啓思
ワッハッハッハッ、まぁそうですねぇ(笑)だから、やっぱりそのアメリカが生み出したグローバリズムをどういうふうに始末するというか、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
それから、トランプが「世界から身を引く」というのは要するに『反グローバリズム』なんですよね。

 

西部邁
そう。

 

今村有希
(うんうん)

 

佐伯啓思
『もうグローバリズムが上手くいかない』と彼は言っていて、それにあれだけ一般のまぁ普通の白人の労働者が共鳴しているんですよね。

 

今村有希
うん。

 

佐伯啓思
だから、中間からちょっと下ぐらいの人たちが全くそれに共感しているというのが、それがものすごく重要な。で、イギリスがEUから離脱したというのも基本的には同じことです。

 

西部邁
うん、同じこと。

 

佐伯啓思
えぇ。あれの離脱を支持したのもイギリスの中間からちょっと下ぐらいの労働者層なんですよね。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
その辺に(グローバリズムの)しわ寄せがきてしまっていて。

 

西部邁
かのTPPってあったでしょう?関税撤廃ね。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
で、あれを擁護する日本のエコノミスト、政治家、役人のほとんど全部(TPPを)擁護していたんだけど、最後の擁護の理由がね、日米同盟を、日本とアメリカの関係をより緊密にするためにはね、要するにアメリカの要求しているこの関税撤廃、グローバリズムと関係ありますが、自由貿易の姿を環太平洋に広げるべきだと。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
ところがその肝心のアメリカがですねぇ、

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
トランプ君は、『TPP?んなもんやめちゃえ!!』と。

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
ね?それで守る理由もないものはヒラリーもね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
それを守ると言うと選挙戦が不利になるから、実際にやるかどうかは兎も角、選挙運動では「私もあんまり(TPP)賛成じゃありません」みたいなことを言っているわけ。

 

今村有希
(うんうん)

 

佐伯啓思
フッフッフッ(笑)

 

西部邁
日米関係強化のためにTPPと言ってた・・・汚い言葉だけど、あのジャップどもは一体何モンなんだってね!?A新聞からZ新聞、AテレビからZテレビまでみ〜んなしてね、日米関係強化のためにと言ってたのよ。ところが肝心のアメリカが、わしゃ知らんと。

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
ほんとは(TPPなんか)やりたかねぇと言ってるわけ(笑)

 

佐伯啓思
フッフッフッフッフッ(笑)

 

西部邁
もうね、呆れ返ってね、最後に貴女に質問する。

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
なんかあなた最初さ、「ドタバタ劇」なんて言ったけど、

 

今村有希
喜劇、はい。

 

西部邁
英語でなんて言うか知ってるよね?

 

今村有希
あー、わからないです(笑)

 

佐伯啓思
フッフッフッ(笑)

 

西部邁
slapstick(スラップスティック)というのね。

 

今村有希
はい(笑)

西部邁
slapstick comedy(ドタバタ喜劇)というのよ。

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
slap(スラップ)というのは頰っぺたを引っぱたくこと。stick(スティック)というのは棒でつつくこと。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
あれ舞台の上でね、チャップリンとかなんかが昔やってたけど、サイレントの時代にね。

 

今村有希
はい

 

西部邁
いろんなもん叩いたり突いたりしてひっくり返ってバカげたドタバタ劇。

 

今村有希
はい

 

西部邁
それをslapstick comedyというの。今の大統領選はどう見ても、あのセクハラされたって女が並んだりね、

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
お前もやったんじゃないかとか、お前の夫もやったじゃないかとか、

 

佐伯・今村
(笑)

 

西部邁
あれ世界のみんなが見ている中でやってるのよ、アレを。

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
俺がアメリカ人なら恥ずかしくてね、

 

佐伯・今村
(笑)

 

西部邁
あれ日本語で穴があったら入りたいという言葉があったでしょう?

 

今村有希
はい(笑)

 

佐伯啓思
あぁ〜

 

西部邁
それを公然と全世界に公開している・・・参りました。

 

西部邁
さて、大統領選

 

今村有希
はい。

 

西部邁
これが放映される頃には決まっているでしょうが(笑)

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
slapstick comedian(スラップスティック・コメディアン)のどちらかが大統領になっている。めでたしめでたし。

 

佐伯・今村
(笑)

 

西部邁
来週に続きます。

 

今村有希
はい、ありがとうございました(笑)

 

佐伯啓思
フッフッフッフッフッ(笑)

 


【次回】アメリカの国柄とはどんなものか②『ポピュラリズム』 ゲスト:京都大学名誉教授 佐伯啓思西部邁ゼミナール〜