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“進歩”主義をめぐり- アメリカの国柄とはどんなものか③ ゲスト:京都大学名誉教授 佐伯啓思 〜西部邁ゼミナール〜

“進歩”主義をめぐり- アメリカの国柄とはどんなものか③ ゲスト:京都大学名誉教授 佐伯啓思西部邁ゼミナール〜
ゲスト:佐伯啓思京都大学名誉教授 、著書「反・民主主義論」〔新潮新書〕、『「アメリカニズム」の終焉』〔中公文庫〕ほか多数)

 

【ニコ動】

西部邁ゼミナール)アメリカの国柄とはどんなものか【3】2016.11.26

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm30116816?playlist_type=mylist&group_id=37360182&mylist_sort=6&ref=mylist_s6_p1_n224

 

 

今村有希
アメリカの国柄とはどんなものなのか、3回に渡りまして京都大学名誉教授の佐伯啓思先生をゲストにお迎えし論じて頂いています。

 

今回は、新しいものから良きものが生まれるという “進歩主義” について論じていただきます。それでは今回も宜しくお願い致します。

 

西部邁
あぁ3回目宜しくお願いします。

 

佐伯啓思
はい。

 

西部邁
佐伯さんがもう10年、15年前にちょっと雑談で教えてくれた話で思い出したの。

 

今村有希
はい

 

西部邁
どっかの番組らしいんですけど、アラブ首長国連邦の人の、ドバイで100何階かの世界の大高層ビル(※ブルジュ・ハリーファ:828.0m 206階だて)だかホテルだか出来た時に、

 

今村有希
はい

 

西部邁
その持ち主にインタビューするんですって。人生のいちばんの楽しみはなんですか?と聞くの、その大金持ちに、石油王ね。

 

[*世界一の超高層ビル建設、石油王の人生の楽しみとは ]

 

今村有希
はい

 

西部邁
そしたらね、日が暮れる頃にずっと砂漠の方に歩いていって、砂漠に日が沈むのを見るのが人生唯一の楽しみとであると(笑)

 

佐伯啓思
フッフッフッ(笑)

 

今村有希
ええ(笑)

 

西部邁
ほんと然もありなんと思った。例えばね、何兆円持っててさ、まぁジェット機を何台持とうが、ヨットを何十台持とうがね、ビルを別荘を何をどうしようが、人間ひとりでしょう?

 

今村有希
はい。

 

西部邁
で、適当な時期に死んでくわけさ。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
それは結局、「砂漠に日が沈むのを見るのが唯一の楽しみ」という大金持ちね。

 

[*「砂漠に日が沈むのを見るのが唯一の楽しみ」 世界一超高層ビルを建てたアラブの大金持ちの人生 ]

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
そういうことを少しもう考えた方がいいんじゃないかという(笑)

 

佐伯・今村
(笑)

 

佐伯啓思
うん、なんか “究極のニヒリズム” みたいな感じですねぇ。

 

西部邁
えぇ。

 

佐伯啓思
そのアラブの富豪が言っていたんだけど、その後で、「どうせ我々は何にもないこの砂漠から出てきたんだから、全部潰れてしまって砂漠に戻ってもそれでいいんだ」というね。

 

[*潰れて砂漠へ戻っても構わないとアラブの大富豪 ]

 

今村有希
ウフフ(笑)

 

西部邁
あぁ〜

 

佐伯啓思
そういう(笑)・・・ものすごい大きな建物、バブルで、物凄い打撃受けたんですよね、バブルの崩壊で。

 

西部邁
あぁそう?

 

佐伯啓思
えぇ、リーマンショックの。

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
またそのあと再建されてきたみたいですけどね。まぁだから、あんなものは消えてしまってもいいというふうな感じが何処かにあるのかもしれないですねぇ。

 

アメリカという国を考える時に、やっぱりその “砂漠の文明” とちょっと近いようなものを感じてしまうんですけどね。

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
アメリカの巨額の富をつくって、40億だか50億だかの資産を一気につくってしまって、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
それで一体何をしたいのかというと、彼らだってその別にしたい事があるわけじゃないんですよね。

 

今村有希
(うんうん)

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
何日か前にちょっとテレビを見ていたらやっていたのだけど、アメリカの大金持ちがクルーザーで海岸を遊泳しているわけです。

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
で、周りに小さなボートがちょっと幾つかあって、中ぐらいのクルーザーがあったりする。

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
でそれを見ながら、いやぁアメリカってのはとにかく自分で頑張って、自由な社会なんだからやればここまで、こんな大きなモノまで持てるんだよと。

 

今村有希
うん

 

佐伯啓思
で、そう言った後でね、あちらには小さいのもあるねぇとかいう話もして、しかしねぇ、そうは言ったって小さいモノは小さいなりの楽しみがあって、本当のところはどちらが幸せなんだ?なんて言って、フフフフフ。

 

今村有希
ウフフフフ(笑)

 

西部邁
いや僕ね、カミさん亡くなってから時々ね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
生まれて初めてだけど、あのコンビニエンスストアでさ、コーヒー買ったりするんだ。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
あの convenience(コンビニエンス)ってのあるでしょう、「便利」って意味でしょう。


今村有希
はい。

 

西部邁
これ(convenience)調べてみたの。con(コン)というのは「一緒」でしょう。vene(ビニ)というのは「集まる」とか「行く」というかね、(convenienceで)『みんなが集まる』という意味なのね。

 

[*convenience 便利な物 con=「一緒に」 vene=「来る」〔集まる〕 ]

 

今村有希
はい。

 

西部邁
これ言い得て妙でね、旧石器の昔からね、新しいモノを発見すると、convenient(コンビニエント)「便利」でしょう?

 

今村有希
はい

 

西部邁
だってね、これまで2発3発打たないと鹿倒れなかったのにさ、立派な鏃(矢尻)で1発首に当てれば倒れるんだから、

 

今村有希
はい。

 

西部邁
でみんなが集まる。それね、やっぱりやむを得ないんでしょうねぇ、便利なモノに集まる。

 

[*旧石器の昔から新しいもの 便利なものに人々が群がる ]

 

西部邁
でも僕が言いたいのはさ、なんにもその息急き切ってね、全員挙ってさ、えぇ、convene(コンビーン)、集まることはなかろうと。10人に1人はさ、もうちょっとゆっくり行こうかなと。

 

今村有希
うん

 

西部邁
なんかこうスピードの問題というか量の問題ね。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
今違うんだもの、何かあったらみんなあんた、ウワァーって集まるでしょう。僕なんて未だにじゃないけどスマホも、これ恥ずかしいんだけど(笑)パソコンも触ったことないんだよ。

 

今村有希
うん。

 

佐伯啓思
パソコンもだんだん時代遅れになりつつあります(笑)

 

西部邁
そうだろう!(笑)

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
息急き切って、しかもみんなしてね、新しいモノ

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
ということは、新しいモノには何か良きモノがあるというふうに多くが思い込んでいるでしょうね。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
昔、ギリシャ哲学者というか翻訳者で田中美知太郎という人の名セリフだと思うんだけど、

 

今村有希
はい

 

西部邁
「昔は人も時代も上等であった」ってね。

 

[*「昔は人も時代も上等であった」ギリシャ哲学の権威といわれた田中美知太郎 ]

 

今村有希
はい。

 

西部邁
まぁ説明抜きで言いますけどね、『古いけれども上等なものは沢山あった』んですよ。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
アナタ、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』(In Praise of Shadows)って読んだことない?

 

今村有希
ないです。

 

西部邁
ないのかっ!!

 

今村有希
ハイッ!!

 

西部邁
いいよなくて(笑)

 

今村有希
す、すいません・・・(苦笑)

 

佐伯啓思
ハッハッハッハ(笑)

 

西部邁
陰翳礼讃というのは「薄暗がり」ね。

 

今村有希
はい

 

西部邁
陰翳ね。つまり・・・あれいつ頃なんだ、昭和の初めでしょうねぇ?

 

佐伯啓思
そうでしょうね、京都にいてこちらに来てからですね。関東大震災の後ですよね、彼。

 

西部邁
あぁそうか。それで、どんどんやっぱり新しいinnovationが起こるでしょう、当時からね。

 

今村有希
この場合、具体的に言って「便所」のことなの。

 

今村有希
はー。

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
何も明るい水洗便所でジャーっと流すことないだろうと。だいたい昔の汲み取り便所ってのは家の隅っこにあって薄暗がりでね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
ゴメンなさいね・・・尾篭な話したいわけじゃないんだけどね、その陰翳の中でゆっくりとしゃがんでゆっくりとやってるうちにいろいろな思いもめぐって、なかなかおつなもんだと(笑)

 

[*「陰翳礼讃」谷崎潤一郎の随筆 昭和8年〔1933年〕 薄暗がりの厠(かわや)での用足しは思いがめぐる趣がある ]

 

今村有希
うん

 

西部邁
…いう話が陰翳礼讃なんだけどね。

 

佐伯啓思
うん、そうですねぇ。

 

今村有希
へー

 

西部邁
やっぱり僕そういう「陰翳礼讃」、まぁ古いものですけどね、そういうものが何割かは居てね、それでちょうどいいんだという。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
聞いたところによると、ブータンという国は結構まだ頑張っているんでしょう?

 

佐伯啓思
うん、まぁそうですね、国民の満足度も高いみたいですね。

 

[*ブータン王国国民総幸福量を建国の理念に過去と繋がっていることで生きられると考えている ]

 

西部邁
うん、新しいものを入れるんだけどね、要するにいろんな規制が敷かれていて、もうそう息急き切って入れるなと。古いものを守れというね。

 

今村有希
うん

 

西部邁
だから、日本ももう「第2のブータン」ぐらいになれば、

 

今村有希
(笑)

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
ただ人口が多過ぎるから厄介ですけどね。

 

佐伯啓思
まぁそうですねぇ・・・やっぱりあのヨーロッパとアメリカで随分と違うところはあるんだけども、今の「陰翳」でいきますとね、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
ヨーロッパはまだ「陰」の部分は随分ありますよね。

 

西部邁
そうだね。

 

佐伯啓思
たとえば、教会見ても、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
ゴシックの教会とかは中に入るとものすごい暗いでしょう。で、ステンドグラスから光が集まってくる。

 

[*アメリカに比べ陰翳が残るヨーロッパの教会 ]

 

西部邁
そうだね。

 

佐伯啓思
地下があるんですよね。

 

今村有希
へー

 

佐伯啓思
で、地下にいろんなものが隠されていたり、要するに死体が置かれてたりね、

 

今村有希
(驚いた表情で)はい

 

佐伯啓思
まぁある種のホラーの世界みたいなものが地下にあって(笑)

 

今村有希
(笑)

 

佐伯啓思
それは見えない、普通は見えない。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
そういうものの上に教会のこう高い上にそびえる、神に向かって。アメリカはそういう意味では本当に文字通りに「啓蒙主義」という、啓蒙主義ってenlightenment(エンライトメント)で「光を当てる」となるでしょう。だから、「すべてを明るくしよう」というのが、

 

[*啓蒙主義 enlightenment 光だけで陰翳のないアメリカ ]

 

西部邁
そうなんだよね。

 

佐伯啓思
えぇ。その本当に光だけをアメリカは持ってきてしまって、全部「陰」を無くしてしまって。

 

西部邁
奇妙なのはイギリスですよ。イギリスがまず民主革命、産業革命をガンガンやるでしょう。

 

今村有希
はい

 

西部邁
いわゆる「近代」をつくりだしたのはイギリスなわけさ。

今村有希
(頷く)

 

西部邁
ところがね、産業革命がだいたい終了したのは19世紀半ばだと言うのね。

 

今村有希
はい

 

西部邁
その頃から急にイギリス人はね、

 

佐伯啓思
あぁー

 

西部邁
何か古いものを、“アンティーク志向” になってくるのね。その証拠に、あれ1880年かな、例えば
ウィリアム・モリスなんて出てきてね、

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
インテリア・デザイナーたちはよく知っているけど、思想的には社会主義なんだよ。妙な社会主義で「中世に戻ろう」という社会主義でね(笑)

 

[*中世に憧れを持つ社会主義 ウィリアム・モリス〔1880年〕 ]

 

今村有希
へー

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
僕がイギリスで1年ぐらい暮らした時にね、小さな田舎のcottage(コッテージ=コテージ)見つけて、

 

今村有希
はい

 

西部邁
それね、何回も潰れているコッテージなのよ、何回も建て直して。その村の歴史がたまたま手に入って読んだんだけど、自分が住んでた家が最初に出来たのがね、1575年。

 

今村有希
えー(驚)

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
エリザベス1世の頃

 

今村有希
はー

 

西部邁
織田信長の頃かな。

 

佐伯啓思
ほー

 

西部邁
何かイギリスはね、急激に産業革命完了と同時にそっちの方へ志向を。

 

[*antiqueへと志向する産業革命後のイギリス / イギリスでは1575年に出来たcottageを立て直す、エリザベス一世〔日本は戦国時代〕の頃 ]

 

今村有希
(頷く)

 

西部邁
日本人はロンドン、ロンドンと言うけど、多くのイギリス人は「ロンドン?あんなところはイギリスの街じゃない!」と、

 

今村有希
(笑)

 

西部邁
実際外国人だらけですからね。

 

佐伯啓思
うん

 

今村有希
(うんうん)

 

西部邁
宗教に興味ある人はね、ロンドンなんてのは evil city(イービル・シティ)、evilというのはこれ宗教用語で「悪魔」という意味ですよ。

 

今村有希
へー

 

佐伯啓思
ちょっと面白い映画でね、あのマイケル・ムーアの「世界侵略のススメ」という、

 

西部邁
えぇ〜?(笑)

 

佐伯啓思
ご存知ないですかね。

 

西部邁
知らない(笑)

 

佐伯啓思
これ面白い映画ですよ。まぁマイケル・ムーアはご存知の通り左翼系のね、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
リベラル派の映画監督なんだけど、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
この「世界侵略のススメ」というのはね、マイケル・ムーアがヨーロッパに出かけていって、アメリカには無いその国の一番いい物をアメリカに紹介するという、そういう映画なんです。ドキュメントで。

 

[*映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」 ヨーロッパに出かけ各国の良い物をアメリカに紹介 ]

 

今村有希
へー

 

西部邁
ほー。

 

佐伯啓思
最初にね、まぁイタリアあたり行って、イタリアの経営者と話しをして、有給休暇が2週間貰えるらしいですね。

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
そんなにやって大丈夫なのか。そんなに君らは休めるのかと。

 

今村有希
(うん)

 

佐伯啓思
そしたらイタリアの経営者が、それは我々も遊びたいからだと(笑)

 

今村有希
えー(笑)

 

西部邁
(大笑い)

 

佐伯啓思
何のためにそんなに働く必要があるんだと。我々だって休暇が欲しいんだと(笑)

 

[*イタリア人の長い有給休暇、経営者にインタビュー ]

 

今村有希
(笑)

 

佐伯啓思
今度はフランスに行ってね、フランスで学校を、中学校の公立学校へ行ってランチを見るんです、給食を。

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
そしたらね、フルコース食べているんですらしいんですね、中学校で(笑)

 

[*フランスの小学生はランチにフルコース ]

 

西部邁
ほぉー(笑)

 

今村有希
エェー(笑)

 

佐伯啓思
何か、あのスープから出てきてメインが出て、最後にデザートが出てきて、それを1時間ぐらいかけて食べるらしいんです。

 

今村有希
ふーん

 

佐伯啓思
で、アメリカの公立学校はこんなものを食ってるぞと言ってね、あの写真で見せたら、

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
みんなフランスの子供はビックリして・・・

 

西部邁
可哀想にと(笑)

 

佐伯啓思
そう、可哀想にと(笑)

 

今村有希
へぇー(笑)

 

佐伯啓思
これは鳥のエサなの?とかそんなことを言ってたんですけどね(笑)

 

[*マイケル・ムーアの世界侵略のススメ ]

 

一同
(笑)

 

佐伯啓思
まぁそういう種類のことをまぁドイツ行ったり行ったりね、まぁグルーっと回ってヨーロッパはまだいかにゆとりがあるか、そんなに急か急か急か急か進歩進歩便利便利と考えずにね、

 

今村有希
(うん)

 

佐伯啓思
それぞれの国でそれぞれの国の守るべきものがあるんだと。

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
イタリア人は遊ぶ事をとにかく守りたいと(笑)

 

今村有希
フフ(笑)

 

佐伯啓思
フランス人はちゃんと美味いメシを食いたいとかね。まぁマイケル・ムーアが最後に、本当はアメリカにももともとこういう文化があったハズだと。

 

西部邁
あったんだよねぇ

 

佐伯啓思
うん、いつの間にか変わってしまったということを言うんですけどね。

 

西部邁
もともとイギリスから(アメリカに)移民したのはPuritan(ピューリタン)でしょう。しかも理由がね、なんか食えなくなって流れたんじゃなくて、宗教上の理由というか、迫害から逃れるために来た俺たちが中心だから、ある程度の財産を持って移ったんですよね。それゆえね、財産があるお陰で、ヨーロッパ・イギリスのある文化を実現できる力を持った人たちが東海岸のあちこちにコミュニティを作ったわけさ。だから19世紀まではね、そういうヨーロッパの伝統みたいなものは残ってたんですね。

 

[*英国欧州の文化実現力を持ったPuritanが東海岸へ ]

 

今村有希
うん。

 

西部邁
そういうものがプツンと断ち切られて “如何にもアメリカ的な” ね、新しいものは刺激的でみんな飛び付くと。古いものはカビが生えて嫌だみたいなね、そんな調子、文化で言えば。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
(そう)なったのは19世紀からなの。ちょうどAmerican Democracyがね、ウワァーッと花咲く頃にそういう思想的にも「古いものは捨てちゃえ!」という思想が瞬く間に広がった。

 

[*19世紀から American Democracy が花咲く頃、新しいものに飛び付き古いものは捨てろという思想 ]

 

今村有希
(頷く)

 

西部邁
classic(クラシック)ってあるでしょう。

 

今村有希
はい

 

西部邁
日本人は「古典的」としか言わないけど、classicって何だとむかし調べてみたら面白くて、

 

今村有希
はい

 

西部邁
もちろん「古典的」「古いもの」って書いてあるけどね、2番目か3番目の意味で『上等』(=classic)って書いてあるの。

 

佐伯啓思
あぁ〜、class(クラス)ね。

 

西部邁
えぇ。厳密に言うとね、やっぱりclassic(クラシック)本当の意味はね、古くて良いものを守る特定の社会階級が無ければね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
文化はダメだと。それを完全に平等にしてしまって猫も杓子もにしてしまうとね、古くて良いものを守る力を社会が無くすという、そういうのがひとつの言葉に表れているんですよね。

 

[*classic「古典的な」「上等な」 古く良きものを守る特定の社会階級が文化に必要 ]

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
うん、そうですね。ちょっとね、面白いというか、矛盾しているのはね、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
その “進歩” という概念は本当はアメリカでも成り立たないんですよね(笑)というのは、一方で自由と平等でしょう?

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
自由と平等というのは要するに、「みんなそれぞれ好きなことをやりなさい」という話なんですよね。

 

西部邁
そうなんだよね。

 

佐伯啓思
みんなそれぞれ考え方が違うでしょうと。ある者はゆっくりとしてることが、遊んでることが自由だというふうに考えるし、

 

今村有希
はい

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
ある者は精一杯働きたい。ある者はじぶんの能力を発揮したい。みんなそれぞれ考え方が違うんですよね。

 

西部邁
そうだね。

 

佐伯啓思
考え方が違って、その間に『どれが正しいというふうな序列を付けられないというのが “自由と平等”』ですからね。

 

西部邁
えぇ。

 

今村有希
(頷く)

 

佐伯啓思
ですから、そういう『相対主義』なんですね。で、相対主義の立場に立つと、何が絶対的に正しいと言えないから、

 

西部邁
そうそう。

 

佐伯啓思
“進歩” を計る尺度が本当は無いんです。

 

[*自由と平等は、それぞれの考え方が違う相対主義に絶対的に正しいものが言えず進歩を計る尺度がない ]

 

西部邁
うん。

 

佐伯啓思
相対主義では)“本当は何が進歩かと言えない” んです。

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
言えないからどうなったかと言うと、とにかく新しいものをつくって、技術的に新しいものを生み出した。科学はもうちょっと先まで行きました。それがもう少し新しいものをつくりましたという、その “プロセスが動いていく事が進歩になってしまった” んですよね。

 

[*新しいものを生み出すプロセス動くのが “進歩” とし、良い社会になるのかどこに行くのか全く分からない ]

 

西部邁
あぁ〜。

 

佐伯啓思
だから、どこへ向かって行くのかという、本当の意味で良い社会にになっているのか、一体どこへ行っているのか全く分からない。ただ、動いていくこと自体が良いことだろうというそんな話しですね今は。

 

今村有希
(頷く)

 

西部邁
そうですよねぇ。

 

佐伯啓思
そういう意味では、アメリカというのは本当に “ニヒリズム” と言いますか、進歩を奉じているように見えるけども、本当のところ “進歩というものも信じていない ”。

 

[*“進歩” を奉じているように見え信じていない アメリカのニヒリズム

 

西部邁
criterion(クライテリオン/ クリテリオン)という言葉があって、「基準」という意味ですね。何が良くて、何が悪いかね。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
問題は、この「基準」がどっから来るかと。佐伯先生の前頭葉から出るのか、今村さんの前頭葉から出るのか、

 

[*“criterion”「基準」の意味、その基準はどこからやってくるのか ]

 

今村有希
いやいやいや(笑)

 

西部邁
三者三様の前頭葉をね、出し合った時にさ、

 

今村有希
はい(笑)

 

西部邁
でもね、日本語でもさ英語喋ってもいいんだけど、言葉って我々の発明品じゃないでしょう。

 

今村有希
はい

 

西部邁
どっかからいつの間にやら母を通じて友達を通じて来たものでしょう。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
そしたらね、これも田中美知太郎がむかしチョロっと言ったのだけど、『言葉は必ず過去からやってくる』・・・

 

[*「言葉は必ず過去からやってくる」 田中美知太郎〔哲学者〕 ]

 

西部邁
なんとかスピルバーグやさ、なんとかルーカスは、宇宙からやって来たってな映画作ってるかもしれんけどね、我々を我々足らしめる、人間足らしめている言葉はね、もちろん時代によってどんどん新しく変わっていくんだけども、

 

今村有希
はい

 

西部邁
言葉の全体という基準は、必ず過去からやってくるんですよね。じゃあ3人とも勝手なこと言ってるけど、3人を繋ぐものはね、まぁちょっと時代が違うけどさ、やっぱり「過去」ってものがあってね、何にもないところで、私の勝手、俺の勝手とは違うというね。なんかみんなして共通に考えるべきものとして、我々の “共通の過去” がね、たとえば日本の歴史でも世界の歴史でもあるじゃないかと。

 

今村有希
はい

 

西部邁
どうしてもそこで『歴史』という問題が出てくるわけさ。そこでアメリカが問題なのは、アメリカが出来てもう200何十年経っているんだけどね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
何年経とうとも、アメリカ人には歴史が大事だと思う “歴史感覚が乏しい” わけさ。

 

[*歴史が大事だと思う “歴史感覚が乏しい” 1776年の独立宣言から240年のアメリカ ]

 

西部邁
あれね、湾岸戦争の時かな、あのJr.ブッシュが言ってのけたんですよ

 

今村有希
はい

 

西部邁
あの時、東ヨーロッパがソ連から独立してるでしょう、金が無いでしょう。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
それでアメリカがね、アメリカに味方してくれれば援助するぜと言って、東ヨーロッパがワァーッとアメリカ側に付くんですよ。それで西ヨーロッパ側はアメリカにいろいろクレーム付けていたわけ。これが「侵略だ」と西ヨーロッパは分かっているからね。

 

[*東欧州は米国側に付き、西欧州は湾岸戦争を批判 ]

 

今村有希
うん。

 

西部邁
それに対してブッシュJr.がね、「西ヨーロッパは traditional(トラディショナル)である」・・・これね、批難語なんですよ、ブッシュにとっては。

 

[*「西ヨーロッパはtraditionalである」 ジョージ・W・ブッシュ

 

今村有希
うん

 

西部邁
伝統的であるということはね。

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
だから我々(=アメリカ)に反対しているんだと。ところが例の西ヨーロッパにすれば、traditional というのはどちらかと言えば良い意味なんです。

 

今村有希
はい。

 

西部邁
もちろんね、あんまり古臭ければ日本語だって「因習」と呼んだりね、「頑迷固陋な因習
とも言いますから微妙ですけどね。

 

[*日本でも古臭ければ頑迷固陋な因習となるが、アメリカ人は古いものをすぐに蹴飛ばす ]

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
でもね、アメリカ人はどこかそういう古いものを蹴飛ばすというさ、本当はいろいろあったハズなのに、頓に最近、カネが世を支配するようになってからそうですねぇ。

 

佐伯啓思
そうですねぇ・・・だからそれがいちばん極端に表れているのはね、今の『第4次産業革命』とか言われるようなね、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
新しい成長戦略みたいなもので、

 

西部邁
あぁ〜

 

佐伯啓思
だからアメリカの場合には、新しい技術というのは全部国から援助がおりて、

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
でその巨大な開発費用を使って、特定の企業が patent(パテント=特許/ pat.)を取って、知的所有権を確保して、

 

西部邁
あぁ〜

 

今村有希
はい

 

佐伯啓思
で、それでそこにものすごく巨大な金が入ってきて、で、その結果がAI(Artificial Iintelligence)とかね、

 

[*新技術は国が援助し特定の企業がpatentを取り、知的所有権を確保し巨大な金を得るアメリカ ]

 

西部邁
うん

 

佐伯啓思
まぁIT革命から人工知能とか、第4次産業革命になってるわけでしょう。

 

今村有希
(頷く)

 

佐伯啓思
で、それドイツもやろうとしてるし、おまけに安倍さんもそれやろうとしているんですよね。

 

[*IT革命から人工知能へと “第四次産業革命” ドイツおよび日本の政府も取り組んでいる ]

 

西部邁
そうなんだよ・・・

 

佐伯啓思
困ったもんですねこれは、ハハハハハ(笑)

 

西部邁
本当にね、これアメリカの問題というのはね、

 

今村有希
はい

 

西部邁
本当は日本の問題でもあるんですよ。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
「近代社会」のことをmodern(モダン)というでしょう。これね、model(モデル)=「模型」ね。これ(modern)とね、語源同じなんですよ。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
それからmode(モード)というのは様式だけども、あれでしょう「流行」ということも意味するでしょう。

 

今村有希
はい

 

西部邁
それからmodern(モダン)、日本人簡単に近代化近代化なんて言うけどね、

[*近代社会「modern」 「模型」model 「流行」mode と同じ語源 ]

 

今村有希
うん

 

西部邁
「近代化」とは何かと言ったらね、「model」何もかも模型化してしまう、

 

今村有希
はい

 

西部邁
それを何もかも流行化してしまう、mass(マス=大量)というか、これ大量の人々ですけどもね。

 

今村有希
はい

 

西部邁
多くの人々が分かるために、単純なモデル(model=模型)でなければいけないわけさ。

 

今村有希
(うん)

 

西部邁
多くの人々が飛び付くためには、刺激的なモード(mode=流行)でないといけないわけね。

 

今村有希
はい。

 

佐伯啓思
うん

 

西部邁
そしたらね、分かり易い、操作し易いモデル(model)、刺激的な流行(mode)、それに飛び付くのがモダニズム(modernism=近代化)であると。

 

[*分かり易い単純模型「model」が、刺激的に大量に流行「mode」するmodernism ]

 

今村有希
(頷く)

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
それを日本人はね、明治の頃は相当気を付けてやっていたんだけど、

 

今村有希
はい

 

西部邁
昭和の初めもそうよ・・・でもいつ頃からか、もうともかくあれでさ、戦後15年20年経ってから、もう『日本の Americanization(アメリカナイゼーション)』は凄まじいですからね。

 

西部邁
財界親分衆はしょっちゅうね、こんな莫迦(=馬鹿)を言うんですよ・・・

 

「斯くなる上は、日本をアメリカの51番目の州にしてもらったらどうだ!?」と。

 

今村有希
うん・・・

 

西部邁
もちろん、結構なご意見ですがアメリカが蹴飛ばします。理由は我々1億3千万もいるでしょう。

 

今村有希
はい

 

西部邁
こんな巨大な数の州を持ったらね、

 

佐伯啓思
フフフフフフフフ(笑)

 

西部邁
…アメリカが恐ろしくてしょうがないわけさ。

 

今村有希
ウフフ・・・うんうん(笑)

 

西部邁
で、日本に可能なのは、あのプエルトリコというのは人口300万ぐらいらしいけどね・・・「プエルトリコならいいよ!」と。つまり選挙権を与えないよと。

 

今村有希
はー。

 

佐伯啓思
うん。

 

西部邁
俺たちの保護領ね。「準州」というなら territory(テリトリー)ですね、領土で言えば。

 

[*米国51番目の州にという財界人の莫迦げた話、1億3千万人の人口は選挙で脅威に保護領が関の山 ]

 

今村有希
(頷く)

 

西部邁
投票権与えないよと。

 

今村有希
うん。

 

西部邁
『我々に今や可能なのは、投票権の無いアメリカ人になることです!!』

 

今村有希
(苦笑)

 

西部邁
いや〜だなぁ〜というので・・・終わっていいかな?(笑)

 

一同
(大笑い)

 

西部邁
どうもありがとうございました、また来てください。

 

佐伯啓思
いえいえどうもありがとうございます。

 

今村有希
ありがとうございました。


【次回予告】「ロシア・プーチン大統領の来日で今後の日本は」 ゲスト:岩田昌征〔千葉大学名誉教授〕 木村三浩一水会代表〕 〜西部邁ゼミナール〜