日本はロシアとどう付き合うべきか② 岩田昌征〔千葉大学名誉教授〕 木村三浩〔一水会代表〕 〜西部邁ゼミナール〜

日本はロシアとどう付き合うべきか② 岩田昌征〔千葉大学名誉教授〕 木村三浩一水会代表〕 〜西部邁ゼミナール〜

 


ゲスト
岩田昌征:千葉大学名誉教授、セルビア科学芸術院外国会員、経済学博士、著書『二〇世紀崩壊とユーゴスラヴィア戦争 -日本異論派の言立て』〔御茶の水書房〕ほか多数


木村三浩一水会代表

 


【ニコ動】
西部邁ゼミナール)日本はロシアとどう付き合うべきか【2】2016.12.10

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm30198893?playlist_type=mylist&group_id=37360182&mylist_sort=6&ref=mylist_s6_p1_n226

 


今村有希(女優、西部邁ゼミナール助手)
ロシアのプーチン大統領安倍総理との会談を受けて、日本はロシアとどう付き合うべきか、3回に渡り論じて頂いております。ゲストをご紹介します。千葉大学名誉教授の岩田昌征先生と一水会代表の木村三浩先生のお二方です。


米中露を相手に如何に外交を展開していくのか、今後の日本のあり方について示唆に富む論議になるかと存じます。


西部邁
先週はユーゴスラヴィアをめぐりね、ロシアの裏玄関側、裏庭の話を聞いてもらったんですけど、表庭では今、今度12月の・・・いつですか?プーチンさんいらっしゃるのは?


木村三浩
15日ですね。


西部邁
あぁ〜、15日ですか。プーチンさんが(日本に)来て、まぁ一応世間では経済外交と言われている。もう日本人は経済の事しか関心が無いから。

[*ロシアのプーチン大統領が12月15日に来日、安倍首相のお膝元である山口県長門市で首脳会議 ]


木村三浩
(頷く)


西部邁
要するに、ロシアの自然資源ね、天然ガスその他。資源の少ない乏しい日本がロシアとパイプを持つと。日本というのはアレですよ、


今村有希
はい


西部邁
明治このかた、富国強兵以来ですけど、日本の国柄を守りながら西洋の文物をとり入れて、それこそ『和魂洋才』と称してね、“日本型の近代化” をしたと。


木村三浩
(頷く)


西部邁
それでプーチンさんも考えているのはね、そう簡単にアメリカ型、ヨーロッパ型にしたくない。“ロシア型の近代化” をしたいと。そのためには、日本のこの百何十年のね、近代日本の経験を学ばなきゃいけない。

[*欧米流の近代化でなくロシア型の近代化を希望、日本の百何十年の経験を学ばなければならない ]


西部邁
…というところで大体話がおしまいになっているんだけど、これから話して頂くように複雑な事情が絡み合っていて、


今村有希
はい


西部邁
第二次世界大戦の戦争末期にね、日ソ中立条約ってあった。向こう(ロシア)が破棄して・・・破棄させたのはアメリカなんだよ、破棄しなさい!って・・・ルーズベルトね、戦争に参加しなさいって。

[*日ソ中立条約を破棄しソ連北方四島を占領する:択捉・国後・色丹・歯舞〔1945年〕 ]


西部邁
中国の蒋介石にもね、ヤルタ会談というんだけど、沖縄まで獲っちゃいなさいと。北方領土だけじゃなくて、北海道も獲ったらどう?と。とんでも無いアドバイスをしてたのがね、小さい声で言う・・・“アメ公” なんですよ!


今村有希
(笑)


西部邁
でもね、ルーズベルトは途中で死んじゃってね、トルーマンに代わってからね、もうヨーロッパでは(日本の敗戦前に)冷戦が始まってますんでね、


岩田・木村
(頷く)


西部邁
そう簡単に行かなくなるんですけどね、そういう複雑な過去を持っていますから、今度、領土問題も引っかかってくるね、それから(日露)平和条約の問題も引っかかってくる・・・

[*日露平和条約の締結と北方領土返還の問題 ]


西部邁
(木村を指して)…どういう心構えで日ソ民間外交の先頭を走って・・・えぇ?


木村三浩
フフッ(笑)


西部邁
モスクワ、クリミア、日本の間を何十回も往復なさっているから木村さんに話して貰おう。


木村三浩
まぁトランプさんが(次期米国の)大統領になったんでね、じきに大統領になるわけですけどね、日本が日本として主権をちゃんと守れる、独立する国にならなきゃならない。防衛も自分たちでやれるようになんなきゃならない。


西部邁
うん。


木村三浩
戦後の71年経つ中で、まだ去勢されたですね、体制になってると思うんですね。憲法もろくすっぽ自分たちでちゃんと出来ないし、


西部邁
うん


木村三浩
また安保条約なんかもまだあるし、となれば、戦後体制そのものの “1段目” の日露関係のその平和条約を締結して、当然、北方領土問題もありますから、領土も回復出来るものはしていこうということでですね、ロシアと交流をしてますね。


西部邁
うん。


木村三浩
日本の独立、日本の針路、その自主というかそういう意味ですね。


西部邁
うん、これ日本の主として右翼というか、反左翼と言われてる人たちがね、当時のソ連は日ソ中立条約を・・・あれは8月の?


木村三浩
9日、まぁ8日ですね。(※対日宣戦布告=条約破棄は8日、9日に戦闘開始・侵攻)


西部邁
9日。一方的に破棄して満州に攻め込んだんですよ。


木村三浩
うん。


西部邁
それでダーっと行って、樺太北方領土も獲っちゃった。そのことに限定して言うとね、


今村有希
はい


西部邁
これは aggression(アグレッション)、日本に対するあれなんですよ、「侵略」なんですよね。一応、パリ不戦条約という道徳的な宣言書があったんで、


岩田昌征
(頷く)


西部邁
あれはソ連、中心はロシアですけど、ロシアの侵略じゃないか!!と。


今村有希
うん


西部邁
この侵略が無かったかのように棚上げしてですよ、しかも北方領土、ご存知のように彼(木村)から聞いたのだけど、いま北方領土にはウクライナ人も含めてでしょうが、スラヴ人が?


木村三浩
2万人弱


西部邁
2万人弱ですか?!


木村三浩
えぇ。


西部邁
主として択捉?


木村三浩
国後、択捉、色丹ですね。


西部邁
あぁ〜。そんなことがあって定住しているんですよね。


今村有希
はい。


西部邁
日本人は1人も定住しない。みんな帰って来たんですよ。それも70年以上続いているわけでしょう、そういう状態の中、北方領土は世間で言われているのは多分ね、歯舞・色丹というね、


今村有希
はい


西部邁
北方領土の面積で言うと7%ぐらい?


木村三浩
そうですね、はい。


今村有希
うん


西部邁
あと大きいのは国後、択捉とこうあって、これはロシアは手放さないだろうと。まぁその辺りで領土問題を手を打つ・・・そうするとまた反左翼が怒るわけですよ。たった7%返してもらっただけで、講和条約と言えるのか!!


木村三浩
(うんうん)


西部邁
でも僕ハッキリ言う。領土とは何か・・・国際法だけども、よく日本の政治家はあれ「固有の領土」と言うでしょう。尖閣は日本の固有の領土。北方領土も日本の固有の・・・あれ英語で言うと、inherent(インヒアレント=固有の〜、生まれつきの〜)、固有の領土なんかそんなものは、ありゃしないんですよ!


木村三浩
(笑)


西部邁
神か仏が、これはお前のもんだ!と決めたわけじゃないんですからね、


今村有希
うん。


木村三浩
(うんうん)


西部邁
世界史を見れば領土ってのはね、奪ったり奪われたり、長い間そこに人が住んでれば一番いいんだけど、住んでないとしてもそこの統治権、管理権、施政権がね、非常に持続的・安定的に続いてた時に、国際社会があそこはどこそのの(国の)ものと認めようというふうに共通に承認すると。それで territory(テリトリー)、領土に昇格するというね。それをアメリカがすんごいズルいやり方でこれを分離してね・・・尖閣が典型的ですよ。「施政権は日本にあるから日米安保の適用範囲で中国が手を出したらアメリカも何かする・・・かもしれませんよ?」と言って脅かしをかける。


木村三浩
(頷く)


西部邁
でもね、本当は施政権と領土権(領有権)というのは、日本はね、


木村三浩
うん


西部邁
ずっとあそこは、前に木村さんにあそこに山羊を放ってですね、


今村有希
(笑)


西部邁
僕は山羊に鉄砲持たせりゃよかったなんて言ってからかったことがあるんだけど(笑)


木村三浩
(笑)


西部邁
人間は住んでいないのだけど、まぁ一応、海上保安庁が(尖閣の)周りをぐるぐる巡ったりしてね、一応ね、日本の施政権はまぁ・・・弱いね、


木村三浩
うん


西部邁
弱いけど、まぁ持続してたのね。そしたらアメリカのようにね、施政権が70年、あれ日清戦争の頃からですからね、ずーっと続けばもう100何十年、日本のものだってことはね、本当は領土ですよって言えばいちばんいいのに、アメリカはそれをしない。


今村有希
うん


西部邁
何故しなかったのかと言うと蒋介石ね。


岩田昌征
うん。


西部邁
台湾の当時の。


今村有希
(うん)


西部邁
総統の蒋介石に妥協するために、尖閣は地理的に言うと台湾のすぐそばですからね、あれはオレのものだ!と蒋介石が言った時に、アメリカは “二枚舌” 使ったんですよ!


木村三浩
うん。


西部邁
蒋介石に対して)そうかもしれん!と。でも施政権は日本にと言って(領有権と施政権を)分離しちゃう。話を戻しますけど、北方領土だって、どういう論理になるんでしょうねぇ。70年もですねぇ、ロシアがいて。


木村三浩
うん、択捉には軍事基地がつくられている。国後にもそういう滑走路がつくられていますけど、日本側が奪われてますよね、実際ね。


西部邁
奪われてる。


木村三浩
で、今まで何交渉もしてきましたけど、昭和31年(1956年)のその日ソ共同宣言においてね、


西部邁
えぇ


木村三浩
(日ソ)平和条約が締結した暁には、歯舞・色丹を引き渡しますということになってますよね。


西部邁
そうですよね、二島返還。


木村三浩
二島返還。で、その後の安保条約の改定の時に、今度はソヴィエト側が、「いや(日米)安保を結んでいるならば、二島返還ないよ」ということも言ってきてですね、グロムイコ(アンドレイ・グロムイコ、ソ連外交官、長期にわたり外相)は、


西部邁
うん


木村三浩
でその後はずーっと「領土問題は存在しない」(というスタンスに)立ってきて、ソヴィエトが崩壊する前にゴルバチョフが来て、「(北方)四島の問題はあります!」と、


西部邁
なったんだねぇ…


木村三浩
そういう話ですよ。


西部邁
うん


木村三浩
それから今に続いているわけですよ。で、ゴルバチョフが来るのは89年ですから、崩壊の前ですからもうなんだかんだと言って、もう(それから)20何年経ってるわけですよねぇ。


西部邁
うん


木村三浩
で、いろいろ東京宣言(※エリツィン細川護煕)だとか、クラスノヤルスク宣言(※エリツィン橋本龍太郎)だとか、イルクーツク宣言(※プーチン森喜朗)だとかやってますけどね・・・やっと本格的に今回、始まる状況になってきたんですよ!


西部邁
うん


木村三浩
それは安倍さんとプーチンさんが個人的信頼関係をつくってるし、安倍さんが14回も(プーチンに)会ってヤル気になったという時ですね。平和条約を締結することによって、二島を返還してもらって、そして他の二島はどうするかと。


西部邁
うん


木村三浩
で、例えばその時に「潜在主権」ですよね。それを認めて、施政権を向こうでいいよと言うのかね、


西部邁
うん


木村三浩
潜在主権も認めないで、じゃあどうのこうのということになるのか、いろいろやる方法は・・・


西部邁
或いはそれを(その時の)状況にするか。


木村三浩
状況そう。一緒にやるだとか、そういうことになっていくと思うんですよ。


西部邁
そうですね。


木村三浩
それしかないでしょう。ただ重要なのはね、12月の15日にね、山口県長門で大谷山荘という温泉で、


西部邁
うん


木村三浩
安倍さんと時間を決めないで、プーチン大統領が話すわけ。ところが次の日に東京に来るということになったんですよ!


西部邁
おぉ


木村三浩
で、経団連なんかの会合で経済協力のいろいろ協議をしようということで東京にやってくることになったんです。


西部邁
うん


木村三浩
これスゴいいい面を持っているんですよ!


西部邁
そりゃそうでしょうねぇ。


木村三浩
えぇ。何故かと言うとですね、あのクリミアにロシアが行った後に、G7の国々の首都に入るというのは東京が初めてになるんですよ!


西部邁
おぉ


木村三浩
アメリカ大使館は(それを)すごく嫌がったんです。


西部邁
うん。


木村三浩
で、東京には行かないで田舎でやってくれと、(会談は)個人的に、と言ってたけど、最終的にロシアの側のやっぱり経済でやるんだということで受け入れて、(東京に)来ることになったということの意味は、やっぱり大きな意味があるなと思いますから、


西部邁
うん


木村三浩
12月の15日によって平和条約が締結して、というのは無いのですけどね、無いのですけども、そっからスタートしていってやっぱり二島先行(返還)でもですね、私は早くやった方がいいなと、確かに動かした方がいいなというふうに私は思うんです。


西部邁
うん。岩田さんどう思う?


岩田昌征
そうですねぇ、まぁ私はロシアについてはね、土地勘も無ければ何もないんですけども、


西部邁
僕もね、モスクワ空港にトランジットで数時間いただけ(笑)


岩田昌征
ハハハ僕もおんなじ(笑)


今村有希
(笑)


岩田昌征
まぁ理由がありますけどね。僕はこのソ連には行かない!!という志を立てて(笑)


西部邁
(木村を指して笑う)


木村三浩
(苦笑)


今村有希
ウフフフフ(笑)


西部邁
だってさ、亡くなった奥さん(ユーゴ人)の敵地ですから、


今村有希
うん…


西部邁
ロシアの足を踏まない!!と決めて(笑)


岩田昌征
東欧諸国の小国とか中国を僕の研究対象にしてたから、


西部邁
ワハハハハ(笑)


岩田昌征
やっぱり大国との関係ではね、どっちにしてもこっち側(東欧の中小国)になんとなく心情が移る(笑)しかしまぁそれは別にしてですね、いまプーチンも昔のソ連と違ってね、小国的恐れの心情は持っていると思っている。


西部邁
あぁ、なるほどね。


岩田昌征
世界で大国、地域大国はカナダは別にしてね、


木村三浩
(うん)


岩田昌征
それからオーストラリアも孤立してますから別にして、例えば、中国とかね、アメリカとかね、ブラジル、インドね、これみんなね、自分の広大な領土を守り切るに十分な人口を持っているんですよ。


木村三浩
(うんうん)


岩田昌征
ところが、ロシアは今、1億4500万(人)くらい。


西部邁
そうか・・・日本と大して変わらないんだ。


岩田昌征
で、日本は1億2700万です。日本が日露戦争をやった時にね、日本の人口が4000万ぐらい。


西部邁
うん。


岩田昌征
それから相手(ロシア帝国)は1億4000万だったんです!それで経済力は向こうの方がもちろん上・・・今は、経済力は日本が上で人口もトントン、で、守り切るには相当少ない。


西部邁
うん


岩田昌征
不安要因ですね、プーチンにとっても。


木村三浩
うん。


岩田昌征
それから、もう一つはね、いま温暖化、温暖化とか言われてるでしょう?


西部邁
うん


岩田昌征
温暖化ってことはどういうことかと言うと、海の氷が溶けるということです。


西部邁
うん


岩田昌征
北極海が氷の海じゃなくなって、艦船が自由に通行出来る。そうするとですね、場合によっては、アメリカの第六艦隊、第七艦隊もあそこを遊弋するという可能性が出てきちゃうわけ。今までのロシアは、西部戦線、南部戦線、東部戦線、ここを守ればよかった。


木村三浩
うん


岩田昌征
もう一つ、この地域(北極海沿岸)を守らなきゃいけない。


西部邁
むかしアメリカいた時にね、アメリカって面白い国で、子供向けにね、本屋に地図が売ってるの。


今村有希
はい


西部邁
1ページ目開いたらね、地図の中心が北極なの。


岩田昌征
うん。


西部邁
ということはね、


今村有希
あー、はい


西部邁
今度はアラスカとシベリアが対決してるわけですよ!


岩田昌征
うん(笑)


西部邁
模様まであってそれで何か立ってるんだ。


今村有希
(うん)


西部邁
この模様は何だと思ったら、“ミサイル” ね。


岩田昌征
うん、すごいね(笑)


西部邁
つまり(米露)両軍がね、アラスカとシベリアにこうミサイルを立てて、我々は(日本の地図からすれば)何か向こうがアメリカでこっちがロシアだと思っているけども、向こうにすれば目の前にアメリカ(ロシア)があるという。


今村有希
(笑)


岩田昌征
ミサイルは確かに破壊力は大きい。しかし、心理的な破壊力はね、反対に分けている。


西部邁
そうだねぇ。


岩田昌征
さらにその上にですね、ついプーチンがぽらっと漏らしたのは、2014年の4月の17日かそのぐらいだったと思うんですけども、セルビアの新聞で読んだんですけども、プーチンさんがですねTV討論でサンクトペテルブルクの視聴者の質問に対してですね、「西側の人たちの中にはユーゴスラヴィアを解体するようにロシアを解体しようと策謀している人たちがいる」と、こういうことを言っちゃったんだ。


木村三浩
(うん)


岩田昌征
つまり、クリミア半島を併合して、クリミア半島の併合の正当性でプーチンが出すのは、旧ユーゴスラヴィアコソボのアメリカによる分離、強制分離ですよね。だからアメリカがあぁいうことをやってて、国境を勝手に(アメリカが)変えちゃったわけだと。自分たちもアメリカと同じことをやったんだと、クリミアの例は出してた。


木村三浩
(頷く)


岩田昌征
ところが、その時はじめてユーゴスラヴィア全体の解体の策謀に類することがロシアに行われていると。


西部邁
確かにね、僕の漠たる印象に過ぎないけども、やはりロシアにはそういう恐怖心、不安はあると思うね。それはやっぱりウクライナ問題辺りからね、やっぱりどうもアメリカの capitalist(キャピタリスト)、あるいは militarist(ミリタリスト)でしょうけどもね、


木村三浩
(うんうん)


西部邁
ロシアをどう解体するかはともかく、ロシアの主として “自然資源” ですね、今は自然資源の価格は下がっているけども、何にしても世界に膨大に膨らんだ financial capitalist(ファイナンシャル・キャピタリスト)=金融資本がさ、それの使い途がもう無くなっているわけですよ。最後にあのロシアの自然資源をね、World Market(ワールド・マーケット)に引きずり出して、


岩田昌征
うん


西部邁
簡単に言うと、叩き売ったらどんなもんだべみたいなね、とんでもない策謀が進んでると大雑把に言えばね・・・というふうにプーチンたちはこう身構えているというね、


木村三浩
フフッ(笑)


岩田昌征
うん。


西部邁
まぁそういう風景ですよね。


木村三浩
あの『悪の論理』って書いた倉前先生(政治学者 倉前盛通)がね、それでシベリアの資源のことを言っていますね。


西部邁
あぁ〜そうかぁ。


木村三浩
えぇ。だから、Geopolitics(ジオポリティクス)の、地政学でロシア側にしてみれば、やっぱり自分の防衛するということでの心理性がそういうところであると思うんですよ。


西部邁
でも、そういうことを逆に言えばですよ、国後・択捉がね、(ロシアは)それは手放さないでしょう、ぼくハッキリ言う。


木村三浩
(頷く)


西部邁
ということは、ロシアはロシアでやっぱり太平洋に対して自分たちは睨みを利かすんだなって、まず大したことじゃないでしょうけどね、


木村三浩
うん、うん


西部邁
もう当然そういう strategy(ストラテジー)=戦略持ってるハズですよね。ですからね、日本の人たちが四島返還なんて簡単に言うけども、


木村三浩
(うん)


西部邁
いま世界のいろんな力のね、押し合いへし合いの中で、ロシアはロシアとして頑張ろうとしている時にね、そう簡単にですよ、条約がかつてどうだったからこうだからというのは甘っちょろい話でね、四島返還でないと平和条約結ぶな!なんて黄色い声はね、あげても全く無駄というね、そういうリアリティの中にあるんだと思いますけどね。


木村三浩
二島は返ってくるということですから、それで上手くやるのが一つやるという実績つくった方がいいと思いますけどね。


西部邁
うん、まぁそうだね。


岩田昌征
そこでね、このロシアに対する安心感を与えなければならない。


木村三浩
そうですそうです。


岩田昌征
つまり、四方面防衛しなければならない、あの広いところを。東に関してはね、ロシアを潜在的敵国として扱いませんよぐらいはね、安心感を与えると。日本はヤル気になれば大変な力を持っているのだけど、ロシアが限られた国民所得をね、


西部邁
うん


岩田昌征
膨大なお金を東方防衛のために使うような状況にはしませんよと、


西部邁
うん


岩田昌征
という安心感を伝えなければならない。


木村三浩
でいまロシアが極東で、


岩田昌征
うん


木村三浩
またはシベリアで恐れているのは中国なんですよ、実際。


岩田昌征
うん。


木村三浩
中国人が、


西部邁
どんどん(シベリアに)入ってきてますもんね。


木村三浩
入ってきている(中国人の)移民がね。であそこは大体500万人ぐらいしかいないわけだけど、ロシアの方は、それが入ってきちゃってそれを恐れていてね、ロシアのまぁ高官と話した時に、やっぱり中国ともこうやってユーラシア同盟みたいな形でやってるけど、バランスを取らないと我が国もダメなんだと。そういう意味では日本とね、やりたいということを言ってましたよ。


岩田昌征
うん。


西部邁
結論めいたことをとりあえず言わせてもらうと、やっぱりそのバランスの問題で、


木村三浩
(頷く)


西部邁
いまロシア側から言いましたけども、今度は日本側から言ってもね、


岩田昌征
うん


西部邁
やっぱりアメリカと中国に挟まれているね、アメリカはそれこそトランプじゃないけども、うるせえ!(お前らで)勝手にやれよ!!と、お前たちの面倒なんか見てられねぇ!!・・・そうは速やかにいかないでしょうけど、


木村三浩
(うん)


西部邁
中国は中国でですよ、やっぱりあの国内はガタガタの状況の中でどうしても外部に押し出してくるというね、もう挟み撃ちの状態になる可能性は十分にあるわけね。


木村三浩
そうそうそう。


西部邁
その時に日本が北のロシアとね、それなりに手を結ぶことによって後はこれはどういう外交になるのか知らないけれども、巧みにアメリカなり中国なりにね、それをこう “牽制する” というね、


木村三浩
うん


西部邁
そういう “3つ目の駒” を日本は手に入れるんだというね、そういう意味でも、ロシアにとってもバランスでしょうが、


木村三浩
そうそうそうそう


西部邁
日本にとっても大事なバランスの駒なんですね。


西部邁
今度の安倍・プーチン会談というのは瞠目すべきことなのね。


木村三浩
うん。それはそうだとおもいます。


岩田昌征
(頷く)


西部邁
ということで、3週目に入ります。


木村・今村
はい。

 

【次回予告】『ロシアとどう付き合うべきか』 ③ ゲスト:岩田昌征〔千葉大学名誉教授〕 木村三浩一水会代表〕 〜西部邁ゼミナール〜