錆びついて剥げていく「日本の心」② ゲスト:中山恭子 参議院議員(日本のこころを大切にする党代表) 〜西部邁ゼミナール〜

錆びついて剥げていく「日本の心」② ゲスト:中山恭子 参議院議員(日本のこころを大切にする党代表) 〜西部邁ゼミナール〜


ゲスト:
中山恭子 (日本のこころを大切にする党代表 参議院議員、元駐ウズベキスタン共和国タジキスタン共和国特命全権大使、元内閣府特命・公文書管理担当・拉致問題担当大臣) 【著書】ウズベキスタンの桜(KTC中央出版)国想い夢紡ぎ(万葉舎)


【ニコ動】

西部邁ゼミナール)錆びついて剥げていく「日本の心」② 2016.10.01

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29750573


今村有希
前回に引き続きまして、日本のこころを大切にする党 代表で参議院議員中山恭子先生にゲストとしてお越し頂いています。


戦後71年の今年、我が国ではようやく安保法制が施行されました。野党は「集団的自衛権の行使は憲法違反である!」との主張を続けていますが、問題は安保法制そのものではなく、日米同盟強化の名の下、仮にアメリカが侵略的な軍事行動を起こした場合に、日本はどのようにして抗うのか。つまり、『日本が外交・軍事的に如何に力をつけるか』が問われています。


今後の日本が国際社会の中で文化的な意味合いも含め如何にあるべきか。日本の長い歴史に培われた『日本の心』を取り戻すための議論が行われるかと存じます。


それでは先生方、宜しくお願い致します。


西部邁
あっ今週も宜しくお願いします。


中山恭子
宜しくお願い致します。


西部邁
あの、酒場に行かれないでしょうから、存じ上げないでしょうが、


中山恭子
はい


西部邁
この数年間、非常に不愉快だったのは、僕らとほぼ同世代のね、まぁあんまり女性は来ないからですね、“クソジジイ共” がですね、


中山恭子
はい(笑)


西部邁
時候の挨拶のようにして、「安倍には困ったもんだね、うん・・・困ったもんだ」と。


[*“安倍には困ったもの・・・” 酒場で時候の挨拶のよう ]


中山恭子
えっ?!どうして・・・


西部邁
つまり、安保法制改定をやるから。それから、憲法改正を口にしているからと。


中山恭子
あらまぁ〜。


西部邁
ところが中身が何もないんですね。もう時候の挨拶なんです。困ったもんだ、うん、うん、と頷きあってると。


中山恭子
はい、あらまぁ〜。


西部邁
本当に「あらまぁ〜」でねぇ(笑)


中山・今村
(笑)


中山恭子
ちょうど敗戦の時、次の年に私は小学校一年生で、多分その頃はまだ日教組教育というのはそれほど強くなくて、


西部邁
うん、


中山恭子
ちょうど70歳くらいの方々が、まさに『日教組教育』を小学校時代からずっと受けてきたから。


西部邁
うん。まぁ僕らの世代も結局、中学生になればそうですからねぇ、あまり変わらないんですけどね。


中山恭子
えぇ、そうですね、はい。


西部邁
圧倒的多数派が、まぁ日教組教育というかね。今村さんご存知?ぼくアメリカ、イギリスで1年ずつ暮らした時に、


今村有希
はい


西部邁
平和主義者のことを「pacifist(パシフィスト)」というでしょう。うん向こうの家庭に招かれたりなんかしてこういう会話があったとするでしょう。あそこにクボタってプロデューサーがおるんだけど、


今村有希
はい(笑)


西部邁
(顔を顰めながら)「クボタはパシフィストだねぇ。」


今村有希
はい


西部邁
どんなニュアンスか分かる?分からないでしょう。


今村有希
分からないです。


西部邁
結論を言うと、「ヤツはどうにもならんヤツだねぇ」と。


今村有希
えぇ〜?!(笑)


西部邁
それは何故かと言ったらね、具体的に言えば、自分の恋人が傷付けられようとも・・・


中山恭子
(頷く)


西部邁
殺されようとも、犯されようとも、自分はパシフィストだから・・・ね? 武器を手にすることは、或いは、暴力を使うことはしない!!と。誰がどう見たってね、臆病者・卑怯者ってことだから、


今村有希
はい


西部邁
「アイツはどうにもならん奴だね」というニュアンスがね、絶対とは言いませんよ、だけど、おおよそそういうニュアンスで使われてる。


[*平和主義者 pacifist の意味・使われ方 / pacifist「アイツは[臆病卑怯]どうにもならん」 自分の恋人が殺傷されても武器や暴力は使わない ]


中山恭子
いま国際社会の中で日本という国は、そういう目で見られていると。


西部邁
日本語で言えば「平和主義」という言葉を negative word(ネガティブ・ワード)、或いは、boo(ブー)、booingのね、


今村有希
はい


西部邁
boo word(ブー・ワード)として使っている学者も新聞記者も政治家もほとんど誰もいない。平和主義といえば一応ね、褒め言葉のことをフレーフレーのhurray wordというんだけど、一応フレー・ワードということになっちゃっている。


[*学者 記者 政治家も pacifist を boo 批難語で使わず、hurray word 褒め言葉として使っている逆転現象 ]


西部邁
もうそこまで言葉が逆転しちゃっていますでしょう。よくまぁ(中山)先生もこんな国で政治家になられましたねぇ・・・


中山恭子
いやぁ本当に・・・


西部邁
僕もよくこんな国で評論家なんぞやっとるもんで!!(笑)


中山・今村
(笑)


中山恭子
なんとか取り戻せないかと思いますけど、本当に平和主義と言ったらキレイな言葉に日本では聞こえますけども、


西部邁
うん、そうですね。


中山恭子
国際社会から見ると、まさにPacifist(パシフィスト)なんですね。


西部邁
しかも語源も、


中山恭子
Pax(パックス)ですねぇ。


西部邁
Pax Romana(パクス・ロマーナ)のPaxでしょう。


中山恭子
はい。


西部邁
Pax Romanaで言うと、古代ローマが地中海沿岸を「平和にした」と。


今村有希
はい。


西部邁
この場合の「平和」は “平定した” という意味になるのよ。「平定」って分かるでしょう?平らげることね。


今村有希
はい。


西部邁
強い者が弱い者を押さえつけて、それゆえ静かになる。それで、パクス・ロマーナ。それで19世紀はPax Britannica(パクス・ブリタニカ)ね。


「*Pax Romana[ラテン語]の意味は、ローマ帝国の強い力による弱い者の “平定” ]


今村有希
はい。


西部邁
イギリスが七つの海を支配するわけさ。「イギリスの支配」という意味なのね。Pax Americana(パクス・アメリカーナ)だって、「アメリカが全世界を支配しました」と。


[*Pax Britannica は19世紀のイギリスの支配、Pax Americana はアメリカによる “平定” のこと ]


中山恭子
そうです。globalism(グローバリズム)ってまさにそういうことですね。


西部邁
そういうことでしょう。それがね、日本人はね、そのPax(パクス)の意味?・・・でもね、これ(中山)先生ね、昔、Pax Romanaを調べましたら、3番目の意味でね、平定された弱小国が・・・


中山恭子
あぁ、・・・国、はい


西部邁
『(平定された弱小国が) 抵抗の姿勢を示す不安定な統治状態』ね(笑)


[*Pax Romana[ラテン語]の3番目の意味は、平定された弱小国が抵抗姿勢を示す不安定な統治 ]


中山恭子
(笑)


今村有希
へぇー。


西部邁
それはね、平定されて喜んでるでしょう、平和平和なんつってるのは。


中山恭子
まず、ありませんよね。


今村有希
うん・・・


西部邁
一つの国しか、ここしかないでしょう(笑)


今村有希
(笑)


中山恭子
そう、そうなんですよ。


西部邁
(他国に平定されたことに対して)みんな反乱を起こす!或いは、起こしたいと思うでしょう?!


中山恭子
起こそうとするんですよね。


西部邁
(統治状態が)非常に不安定になるわけさ。


今村有希
はい。


西部邁
だから、パクス・ロマーナにそういう意味もあるのね。


中山恭子
はー、そこまで深い意味が。


西部邁
ガックリきちゃう。安保法制は僕ね、これは当たり前のことなんですよね。


[*安保法制の整備は当然、世界の常識で日本が特殊 ]

 

中山恭子
うん・・・まだまだ足りてないです。


西部邁
足りてないですよね。


中山恭子
えぇ。


西部邁
一つの例をとりましょうか、


今村有希
はい


西部邁
例えばね、(中山)先生は前線で戦っているわけさ。


今村有希
はい


西部邁
で僕は後方からそれを支援するわけ。先生が傷付いたら困るってんで包帯を持ってく。赤チンキも。


中山恭子
はい


西部邁
でも、それを支援しているのは、(支援相手が)正しいと思うから支援しているわけでしょう。


中山恭子
(うんうん)


西部邁
間違ったことを先生がなさっているなら、包帯も赤チンキも無償で準備しませんよ!


今村有希
はい。


西部邁
ところがね、(中山)先生が前線で傷付かれたと、


今村有希
はい


西部邁
となったら、僕がですよ、正しいことを応援するために「前線に行く」わけですよ。後方支援じゃなくて前線に行く。人道支援だけじゃなくて武力も或いは、参加することも必要になるわね。


今村有希
はい。


西部邁
それからアジアに限定せずにね、石油を巡るシーレーンというのはずーっとアラブから繋がっているんですから、


中山恭子
そうですね。


西部邁
南シナ海東シナ海ね、だからアラブまで行くことも有り得べしと。


中山恭子
はい。


西部邁
それ自体は何の問題も無いわけさ。アタマがイカれてなければ、そりゃそうだねでおしまいなの。


今村有希
はい。


西部邁
ところが大問題はね、これは「日米安保」ということで、それこそね、何て言ったっけ?中国人が大好きな、韓国人も大好きな・・・『歴史認識』ね(笑)


中山恭子
はい、そうですね。


西部邁
歴史認識を使うとね、アメリカは相当ヒドいことになってるわけですよ。


中山恭子
そうですね。


西部邁
ベトナムだろうがイラクだろうがアフガンだろうが。それ考えたらですよ、「アメリカが仕掛けたヒドい戦争にね、日本が巻き込まれるという恐れがある」という言い分自体は正しいわけでしうよね。


中山恭子
(頷きながら)はい。


西部邁
ところが、菅・安倍が正しいのはそこまででね、まともでしたらですよ、アメリカが仕掛ける、簡単にいえば侵略的ないろんな事に呑み込まれない・巻き込まれないためにはどうすればいいか?と考えなきゃいけない!!


[*ベトナム・アフガン・イラクと米国には暴走の歴史、日本が巻き込まれないためにはどうするか ]


中山恭子
はい、はいそうです。そこが足りてないんですね。


西部邁
つまり言うと、日本がある力を付ければね、アメリカさんよと、気軽く(加勢)したいのは山々だけど、どうもウチの(国の)世論は「これはどうもヒドい戦争だ!」と言っていると。


今村有希
うん


西部邁
これに参加したら我が与党は潰れますわ。・・・というまともな国民の世論があるか、或いは、そういう判断をする政治家とか役人がいるかね、


中山恭子
うん。


西部邁
そういう日本人の軍事力も含めて政治力、文化力があればね、アメリカに、要求通りにその後をノコノコついて行くような行動をしなくて済むわけさ。


[*アメリカの要求にノコノコ従わないためには、政治・外交・軍事・文化的に日本がチカラを持つ ]


西部邁
それ言わば『個別的自衛の問題』ですよね。


中山恭子
はい。あの例えば北朝鮮で監禁されている人たちを救出できるか、あの中で動乱・内乱が起きた時とか不安定になった時、国会で総理に質問しましたら、・・・「そこに自衛隊を派遣することは、今回の(安保法制)改正であっても出来ません!」と、そういう改正になってないんです。


[*北朝鮮で内乱発生しても、救出に自衛隊派遣できない ]


中山恭子
で、じゃあどうするのか?と聞いたら、・・・「アメリカ軍か韓国軍に入って貰って救出に当たるしかありません!」と。これが今の現状なんです。


西部邁
それは安倍さんがお答えになった?


中山恭子
はい。『だから日本は、自国民を救出するためにも、その内乱状態になっている中に自衛隊を送れない。』


西部邁
それ安倍さんの御意見というよりも、いつの間にやら日本人が71年かけて、そういうふうにしてしまったんだね。


中山恭子
はい。


西部邁
それで政治家もそれ以上言っちゃうとまたヒドい目に遭うから、自衛隊の海外派兵はしませんと。ぼく馬鹿か?!と思いますよ。何か守ろうとする時にね、


今村有希
はい


西部邁
内側から戦うか、ドアを蹴破って外に出るかは “その時の状況” であってですね、


中山恭子
そうですね。


西部邁
僕ずーっと家にいるんですぅ〜とかさ、


中山恭子
(笑)


西部邁
況やですよ、自分のために戦ってくれている人にね、あのオニギリ運びますからね、僕のために戦っておいてね〜


中山恭子
(笑)


西部邁
世の中で一番嫌われるのはそういう輩ね!!


[*何かを守るため内側で戦うか、外で戦うかは状況次第 ]


中山恭子
嫌ですね。そういうのは卑しいと思われてたハズ。


西部邁
えぇ。まともな心、日本の心を持ってた人たちの多くはね、


今村有希
はい


西部邁
過ぐる大東亜戦争で責任といっては語弊があるけど、


中山恭子
あぁ〜


西部邁
責任をとって死んでったと。


[*真面目な日本の心をもった人、大東亜戦争で責任とり死ぬ ]


中山恭子
はい。


西部邁
それから問題は戦後なんです。僕の責任でもあるんですけどね、まぁ要するに、頑張るぞ!!という奴を吸収してったのはほとんど左翼だったんですよね。


中山恭子
あぁ〜なるほど。


西部邁
今さっき日教組のこと言いましたが、まぁ日教組も含めてね、


中山恭子
はい


西部邁
なかなか左翼はいい奴・・・最初はね。


中山恭子
(頷く)


西部邁
ところがあれ長年やってると、完全な馬鹿になるんですよ!!


中山恭子
あっそうですか(笑)


西部邁
ね。戦争終わった時でいえば8千万か。心を持った部分からまず死に、で次に左翼とかいうそういうのに巻き込まれて長年経って完全なアホが一丁二丁三丁と出来ちゃうという、 そういう歴史の中で、


中山恭子
あぁ〜、この70年以上・・・


西部邁
それで(中山)先生の(選挙)票が増えないと!(笑)


中山恭子
増えないです、本当に(笑)


今村有希
(笑)


西部邁
昔、こういう時を書いていたんですよね、『輿論(よろん)』ってやつは。


中山恭子
あ〜はいはい。


西部邁
これ玉の輿の「輿(こし)」ですよね。


中山恭子
輿ですね、はい。


西部邁
これで『輿論』と。この「輿(よ)」というのは「こし」


中山恭子
こし。


西部邁
あの荷車の台の部分らしいですね。


[*輿論[よろん]の輿は、荷車の台の部分を意味する ]


今村有希
台・・・はい。


西部邁
女性が玉の輿(たまのこし)・・・


中山恭子
玉の輿に乗る。


西部邁
というのは、


今村有希
はい


西部邁
車の荷台に乗る、要するに山ほどの宝物ですね、


中山恭子
はい。


西部邁
金持ちの御曹司のところにお嫁にというのが玉の輿に乗るという、


中山恭子
・・・ところにお嫁に、はい。


西部邁
だから土台の部分なんですよね。この輿論というのは『社会の土台にいる人々』ね。


中山恭子
はい。


西部邁
の、もっと言うとあれですね、『common sense(コモンセンス)=常識』ね。


[*輿論[よろん]の輿は、社会の土台にいる人々の common sense 常識のこと ]


中山恭子
えぇ。


西部邁
自分の国は自分で守るのは当たり前(=常識中の常識)だろうと!


中山恭子
はい。今のいう国際社会ではですね。


西部邁
誰か助けてくれるだろうなんてアテにする、そんな馬鹿がいるもんかい?!っていうふうな常識ね。


中山・今村
はい。


西部邁
僕のお袋は小学校しか出てませんけど、小学校しか出てなくたって、この社会の土台にいる人々にはある常識があったでしょう。


中山恭子
はい。


西部邁
ここから起こってくる論のことを指して、昔はこちらのコシロンを「ヨロン(輿論)」と呼んだ。


中山恭子
輿論と言った、はい。


西部邁
それがね、戦後、(輿論だと)字画が多過ぎるから、


中山・今村
うふふふふ(笑)


西部邁
当用漢字では “当て字” だっただね、これ(世)はヨロン(輿論)の。


中山恭子
はい。


西部邁
世界の「世」を当てて「世論(ヨロン)」にして。いつの間にか意味も変わってね、


今村有希
はい


西部邁
今の世間で流行している論。


[*当用漢字で “世論” になり、今の世間で流行する “論” に ]


中山恭子
うん


西部邁
(酒場での)「安倍には困ったもんだね」っていう(笑)、そういう話になっちゃう。


中山恭子
はい、そうですね。それが、こちらのヨロン(世論)が、その例えば日本の中であれば、日本にとって本当にその方向が正しいということの何の保証もないわけですね。


西部邁
そうなんですね。


中山恭子
理性も、それから判断力も全て、全員が全て優れていればですけども。


西部邁
しかも、僕は「世間」をこれ乱暴に言いますけども、輩(やから)?・・・ヒデェなぁと思うんだけども、この平成の御代もう28年ですか、


中山・今村
はい


西部邁
振り返ったってね、まず細川政権ができて「日本新党」ですよ?ウワァーッと大人気で支持率8割、あれ8ヶ月で潰れたんでしたっけ?(笑)


中山恭子
あぁ〜そうでした、はい(笑)


西部邁
今度、小泉政権?また(世論の支持率)8割でさ、郵政改革だー!!・・・ってどうもダメだ。今度は反小泉だと。で民主党でしょう?また8割の人が支持率でしょう。それで3年経ったらもうダメだと。


今村有希
うん・・・


西部邁
民主党は何もできない!!今度は安倍政権ができて8割のまた支持率で。世論がこの28年、自分の頭がどう動いてきたかね。


[*平成の御代は “左右の振幅” 、細川護煕内閣[新党]、小泉純一郎内閣[郵政]→ 民主党安倍晋三内閣 ]

 

中山恭子
はい。


西部邁
右端から左端までさ、お前さん方の頭はほとんど脳震盪で狂ってるやんけ!!というね(笑)


中山・今村
(笑)


西部邁
フッと自分で思わなきゃね。先生!


中山恭子
はい


西部邁
こんな国で政治家やっちゃいけません!!(笑)


中山恭子
いけませんね(笑)


西部邁

冗談(笑)


中山恭子
ほんと(笑)


西部邁
僕は自分のカミさん死んだんですけどね、ふと思い出す事があったんですよ。僕のお袋と女房のお袋、全く赤の他人ですよね。


中山恭子
えぇ。


西部邁
それが戦後1年か2年、異口同音に同じことを言ってた。


中山恭子
はい


西部邁
僕のお袋の方で言うとね、『日本の男と来た日には、たった一回の戦争に負けただけで腰を抜かして全くもう!!』


[*日本の男と来た日には、たった一回の戦争に負けただけで、腰を抜かして全くもう ]


中山恭子
うん


西部邁
と、僕のお袋と女房のお袋が言ってた。


中山恭子
あぁ〜そうですか。


西部邁
一言一句違わないということは、たぶん多くの女性たちがね、


中山恭子
・・・思ってたと思いますね。


西部邁
しかも、産めよ増やせよでその女性たちがあなた、もうウチで言うと6人も子供を産んでいる。


中山恭子
あぁ〜そうですか。


西部邁
女房のお袋だって5人も産んでる。


中山恭子
そうですか。


西部邁
4人5人6人と、日本の男が戦うと言うから、日本の女たちは必死で、


中山恭子
そうですねぇ・・・・


西部邁
銃後の備えで頑張っている。


中山恭子
そうですね。


西部邁
だけど、負けたらみんなしてさ・・・寄らば大樹の陰、えぇ? 長い物には巻かれろでしょう。


[*銃後の備えで頑張った女性、負けた途端に寄らば大樹の陰]


中山恭子
そうですね。


西部邁
もうそろそろあれですね・・・男性の選挙権は禁止して、


中山・今村
(笑)


西部邁
おべんちゃらじゃないけど、とりあえず女性に決めてもらうと!日本の男の品定めをね。


今村有希
はい(笑)


西部邁
コイツらに選挙権をやっていいものかどうかと。


中山・今村
(笑)


西部邁
もちろん日本の女たちが戦争が好きだったって言うんじゃないんですね。


中山恭子
えぇ、決して違います。


西部邁
大変だったでしょう。


中山恭子
それはそうです。子供たちを守ってはい。


西部邁
そうですよね。


中山恭子
もう必死で生きてきたわけですから。


西部邁
ビックリしたもん。戦争中、疎開してて、東京からよ、


今村有希
はい


西部邁
どこに疎開していたと思う?


中山恭子
北海道。


今村有希
北海道ですか?


西部邁
旭川の更に山奥だった(笑)


中山恭子
大雪山のすぐ麓ですね。


西部邁
(中山の)お父さんのご出身で。


中山恭子
はい、実家がありましたから。


今村有希
はい。


西部邁
ということは、5歳ぐらいの時ですね。


中山恭子
そうです。5歳6歳の。小学校一年生から北海道の。


西部邁
あぁ〜そうか。


今村有希
へぇー。


中山恭子
でも、お陰さまでそれは本当に宝物みたいな5年間で。


西部邁
あぁ〜5年もおられたんですか。大雪山の麓と言われて(笑)


今村有希
(笑)


西部邁
マイナス30度ぐらい?(笑)


中山恭子
マイナス34度というのがあったのも、


西部邁
(マイナス)34度!!うわぁ〜


今村有希
えぇ〜!


中山恭子
はい、今でも記憶しています。


西部邁
そうですか。


中山恭子
はい。一歩家から出ると空気がまるで凍った、鈴のようなリーンと張ったような空気でこれほどキレイな場所はありません、自分の人生の中でですけど。


西部邁
うん・・・・いや本当になんか、結局、国を守るということを考えた時に、そういう自分たちの人生ね、幼い4、5歳の時からね、どんな環境で、自分のお袋が何に苦労してどうのこうのということを全部含めて、


中山恭子
そうですね、はい。


西部邁
まぁそういうところで心が出来てきて、


中山恭子
そうですね


西部邁
これが最後の最後で、まぁ簡単に言えば、立つべき時には立たなきゃならないし、


中山恭子
はい


西部邁
我慢すべき時には我慢しなきゃならないという、


中山恭子
・・・しなきゃならない


西部邁
決断が出来るんですよね。


[*自分たちの人生、母親の苦労全てを含め心ができ、立ちべき時に立ち、我慢の時と決断ができる ]


西部邁
そんなぬくぬくぬくぬくぬくぬくと・・・そろそろISに日本に来て頂きたい!!


今村有希
(笑)


中山恭子
ちょうど私、ウズベキスタンタジキスタンの大使をしていた時に、すぐ国境を接して南側がアフガニスタンで、あそこでISの前のアル=カーイダとタリバンが丁度こう(抗争しながら)・・・大きくなってきた頃だったんです。


西部邁
あぁ〜そうでした。


中山恭子
はい。でそこでやはり日本人4人が人質に取られて、いろんな方が助けて下さってなんとか救出できたんですけど、


西部邁
あぁ〜そうですか。


中山恭子
その時にそのグループにタリバンやアル=カーイダ、ISグループ、イスラム原理主義グループは、「日本人を対象にするのか?!」と問い合わせをしたんです。そしたら彼らはですね、「日本が原爆を落とされた国だということは知っています。でも、今の時代に日本はやはり欧米諸国と同じ形で動いているので、日本人もテロの対象になっています。」という答えが返ってきてました。


[*日本が原爆を落とされた国であること知っている、今の時代に欧米諸国と一緒に動きテロの対象になる ]


西部邁
うん。


中山恭子
決して日本はISの非対象ではない。対象国だということをしっかり認識しておく必要があると思っています。


西部邁
えぇ。僕もそう思います。


中山恭子
はい。


西部邁
だって世界中ね、そういう原理主義のテロもあるけどね、いろんな国のアメリカのみならず中国もそうですけども、いろんな意味で『国家テロ』までねやり合うような雰囲気というのは、気分的にはもう『第三次世界大戦の前哨戦』がね、始まっている。


中山恭子
はい。


西部邁
でもね、みんな核武装してますの大国は、大戦はなかなか勃発しないんだけれども、その前哨戦がいつまでもじくじくじくじくとね、長い長い前哨戦というね、そういう状況がもう始まっているんですよね。


中山恭子
うん。


西部邁
(中山)先生、いろいろ政界で辛い立場にお有りで・・・まぁ僕も死ぬまで頑張りますんで、先生も(笑)


中山恭子
えぇ。西部先生が元気で発信して下さること自体が。


西部邁
ご健闘をお祈りします!


中山恭子
ありがとうございました。


今村有希
ありがとうございました。

 


【次回予告】天皇陛下の譲位の御意思を受けて:ゲスト 高森明勅神道学者・歴史家・皇室研究者]〜西部邁ゼミナール〜

 

 

 

錆びついて剥げていく「日本の心」① ゲスト:中山恭子 参議院議員(日本のこころを大切にする党代表) 〜西部邁ゼミナール〜

錆びついて剥げていく「日本の心」① ゲスト:中山恭子 参議院議員(日本のこころを大切にする党代表) 〜西部邁ゼミナール〜


ゲスト:
中山恭子 (日本のこころを大切にする党代表 参議院議員、元駐ウズベキスタン共和国タジキスタン共和国特命全権大使、元内閣府特命・公文書管理担当・拉致問題担当大臣) 【著書】ウズベキスタンの桜(KTC中央出版)国想い夢紡ぎ(万葉舎)


【ニコ動】

西部邁ゼミナール)錆びついて剥げていく「日本の心」① 2016.09.24
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29709129

 


今村有希
今日は、日本のこころを大切にする党代表の中山恭子先生をお招きしました。


中山恭子
宜しくお願い致します。


今村有希
今上陛下が攘夷の御意志を表明されたことを期に、この平成の御世においてうち続いた、いわゆる「構造改革」の騒ぎは日本のこころを強めたのか、それとも弱めたのかが今こそ真剣に振り返らなければならないのではないか?という趣旨で中山先生にお越し頂いたわけです。


中山先生と西部先生は東京大学で凡そ同期であったらしく、忌憚の無い意見交換が行われるのではないかと期待されます。


中山先生は、『国想い夢紡ぎ』(著:中山恭子 万葉舎)という書物を上梓されております。先生、本日は宜しくお願い致します。


中山恭子
宜しくお願い致します。


西部邁
あぁどうもありがとうございます。でも僕まさかねぇ、中山先生が東大でね、僕の1期後輩とは存じ上げず、


中山恭子
ハイハイ(笑)


西部邁
つまり僕の悪行の数々を見ておられたに違いない(笑)


中山恭子
いえいえ(笑)私たち後輩の者にとっては、


今村有希
はい、


中山恭子
西部邁というのはヒーローでしたから、


今村有希
はい。


西部邁
何を言って・・・悪役ね(笑)


中山恭子
あの西部先生にお声をかけて頂けたというだけでも、非常に光栄なことだと思ってます。


西部邁
今日はお声をかけたのは、お世辞じゃなくて、中山恭子先生が非常に正しいことを言っている。ところが、ときどき選挙があるでしょう?


中山恭子
はい、


西部邁
ぜんぜん先生の党が増えない。


中山恭子
はい(笑)


西部邁
この世の中は狂っとるなと(笑)


中山恭子
いや(笑)選挙をやりながらあまり広がっていないなというのは実感できるわけですけど、


西部邁
うん、


中山恭子
考えてみればというよりは当たり前のことなんですけど、日本のこころを大切にしたいという想いを持っているのは、“日本のこころ” というのが何なのかを知っている人たちだけで、


西部邁
うん、


中山恭子
戦後教育を受けた方々というのは、日本のこころなんて全く知らない方が大半ですから、


西部邁
そうなんですよねぇ・・・


中山恭子
だから、大切にしようと言われても何のことかは掴めない・・・。


西部邁
1899年か、


中山恭子
はい、


西部邁
発表されたのはもうちょっと後ですけども、新渡戸稲造内村鑑三が執筆されたのは前々世紀末、


中山恭子
はい。


西部邁
つまり、新渡戸稲造は『武士道』ね。


中山恭子
えぇ。


西部邁
クリスチャンですよ。内村鑑三も同じクリスチャンですが、


中山恭子
そうですね。


西部邁
「代表的日本人」


中山恭子
えぇ。


西部邁
それで、日本人の心は何であるかを言った本なんですね。


中山恭子
はい。


西部邁
理由があってね、当時、外国人が「日本人には宗教教育というのがないのか?!」と、


中山恭子
あっ、はい。


西部邁
「ありません」と。「いったい日本人は自分たちの心を子供たちにどうやって伝えているんだ?」と。「お前たち馬鹿か?!」と言われて、


中山恭子
えぇ、


西部邁
それで自分たちの心は何であるかを。


[*「武士道」新渡戸稲造、「代表的日本人」内村鑑三、宗教教育なく心をどう教えるか外国人に問われる ]


中山恭子
はい。


西部邁
ところが考えてみたら二人とも、新渡戸稲造内村鑑三も日本の心を言うために誰を持ってくるかというと、例えば、内村鑑三でいうと「西郷隆盛」とかですね、そういうことになってくる。 つまり、江戸時代ですよね。


[*西郷隆盛など歴史上の人物の生き方を書いた「代表的日本人」内村鑑三


中山恭子
そうなんですよね。


西部邁
或いは、明治維新の初めでしょう。


中山恭子
はい。


西部邁
僕は敗戦の年に小学校入学ですけども、それはともかくね、戦後もう71年経ちましたが、


中山恭子
はい、経ちましたはい。


西部邁
71年前まではもう忘れましょうと。悪い歴史でしたということですからね。


中山恭子
えぇ今の方たちにとって。


西部邁
だからね、日本の心を具体的に論じよと言われたって、


中山恭子
そうなんですよね。


西部邁
持ってくるものが無いんですよ。


中山恭子
はい。それで選挙で言ってみてもですね、


西部邁
うん、


中山恭子
「大変だ、日本の心が無くなりそうだ!」なんて思っているのは本当にごく僅かな方々で、その方々は真剣に日本の心の大切さというのを分かって下さっているのですが、90何%の方々というのは「日本の心って何だい?」というのが精一杯だったと思うんです。


西部邁
そうですよねぇ。


中山恭子
これは票にはならないなぁという思いがあります。


西部邁
中山恭子先生がおられるということを我々が知ったのは、


中山恭子
はい、


西部邁
例の北朝鮮の日本人の拉致問題ですね。


[*北朝鮮による拉致問題で日本人5人が帰国 ]


今村有希
そうですね。


中山恭子
覚えてますか?


今村有希
はい。


中山恭子
2002年でしたから、


今村有希
2002年、はい。


中山恭子
もう14年前です。


西部邁
14年前になりますか。


中山恭子
はい。何歳だったかしら(笑)


西部邁
生まれてはいるんでしょう?(笑)


今村有希
はい、生まれてはいます(笑)


中山恭子
生まれてはいたんですね(笑)だから、ほとんど例えばいま30歳の方でも中学生くらいだとすると、ほとんど覚えていないっていう・・・


西部邁
そうでしょうねぇ・・・


中山恭子
はい。


西部邁
あのお母さまは、早紀江さん(横田早紀江)が一度テレビでこういうことを言われて、ぼく胸を打たれるというか蓋がる思いがしたんだけども、たった1回きりでしたがね、


中山恭子
はい、


西部邁
私は自分の娘の命を助けたくて言ってるんじゃないんです!!


中山恭子
そうですね。


西部邁
日本人として、自分たちの同胞がこういうことをされていて、・・・しかもね、合計で言えば何百人なんでしょうけど・・・それに対して何の抗議も怒りも、それどころか関心も持たないようなそんなことでいいのか?!ということを問いたいんです!!と。


[*北朝鮮の日本人拉致問題 横田早紀江さんの覚悟 ]


中山恭子
はい。


西部邁
私がこういう運動を、拉致返還の運動をすればするほど、自分の娘の命が仮に存命、生きていたとすれば、こういう運動をすればするほど危なくなるということを私は知っているんです!!ってね。


中山恭子
はい、そうですね。


西部邁
つまり、分かりますでしょう?


今村有希
はい、分かります。


西部邁
そこまで覚悟したひとりの婦人をね、本気で助けようとしないというね。


[*“北朝鮮からの救出運動すれば娘の生命も危うくなる” 横田早紀江さんの覚悟と本気で助けようとしない日本人 ]


中山恭子
そうですね、はい。もちろん「気の毒ね」とか「大変ね」ということは当たり前のこととして考えられますけど、やはりこれは『日本という国、国家の問題』であって、


西部邁
そうですよね。


中山恭子
『国家として自分の国民が外国に人質になって監禁されているのを放置している国、というのはたぶん今の国際社会の中では考えられない、あり得ない。』


西部邁
えぇ。


中山恭子
『だから、ある意味では日本は独立国家としての意識が無い国だと思われても致し方無い』という思いがあってですね、


西部邁
えぇ。


中山恭子
これは国として救出をするという作業が必要だというそんな思いで。


[*国家として救出活動が必要、北朝鮮の日本人拉致問題


西部邁
うん。当時はあの小泉純一郎首相の時ですけどね、


中山恭子
はい。


西部邁
ピョンヤン、平城(平壌)に行かれて、平壌・・・


中山恭子
宣言。


西部邁
平壌宣言を出された。


[*日朝平壌宣言 2002年、小泉首相金正日委員長 ]


中山恭子
はい。


西部邁
僕は実はあの時ね、インテリで言うと僕だけだったんですよ、この平壌宣言に不満である!!と。


中山恭子
そうだったんですか。


西部邁
実は、いわゆるその『拉致問題』と、


中山恭子
はい、


西部邁
それから、『北朝鮮核武装問題』は separate(セパレート)分離して対処するということが確認されたんですね。


中山恭子
はい。


西部邁
そして、日本側も拉致返還のために、金額は忘れましたけども、相当の金額の経済援助をする予定であるというね。 そこで手打ちをしたんですよ。


[*北朝鮮による “拉致” は侵略性を示している。“核武装” 問題と切り離した平壌宣言は間違い ]


中山恭子
はい。


西部邁
核武装の話は政治家として危ない話ですからご返事なさらなくて結構なんだけども、


中山恭子
はい、


西部邁
僕の意見は、中国もロシアもそして北朝鮮核武装している時にですよ、僕は日本が断固核武装していいかどうかまで専門家じゃないから言わないけれども、少なくとも核武装国に囲まれていた時に、『日本の核武装はどうするんじゃい?!』という議論ぐらいはね、これはかつて中川昭一さんが仰ってたことなんですけどね、


中山恭子
そうなんですよね。


西部邁
それをオープンにしてこそ一人前の国民だろうと!いう気持ちが(自身に)あった。


[*核武装諸国に囲まれながら公に議論すらできない国民 ]

 

中山恭子
はい。


西部邁
ちょっとNPT 核不拡散条約のあれ第8条かな。自分の国の周辺事情が危ない時はね、この条約から脱退していいって書いてあるわけですよ!


[*異常事態が自国の利益を危うくしていると認める場合、主権を行使してNPT条約から脱退する権利有する ]


中山恭子
はい。


西部邁
ものすごい危ないわけですよ!アメリカもロシアも中国も・・・ってね。この時にですよ、まぁ(NPTを)脱退するかどうかは別として、脱退について議論しないような、小さい声で言いますよ・・・バカ国民が何処にいるんじゃい!!(*ぜんぜん小さい声じゃなかったですw)


今村有希
(笑)


中山恭子
(今の声が)大きかったですね。


西部邁
大きかった?(笑)


中山恭子
はい(笑)


西部邁
だとしたらね、こんなこと言うと、核武装しちゃだめよというのはね、この国はどう考えても侵略的な国であると。侵略的な性格を露骨に持っている国が核武装するとね、先制侵略攻撃に使う可能性があるから、考えられるから、


今村有希
はい。


西部邁
そうなってくるとそこで話が戻るんですけどね、拉致だけじゃないんですけども、例えば、大韓航空機爆破事件とかね、これ北朝鮮がやったことですけども、


中山恭子
はい。


西部邁
それから偽ドルね。


中山恭子
偽ドル、偽タバコ。


西部邁
その他諸々ね。そしてこの拉致問題も含むと。


中山恭子
はい。


西部邁
ずっと集めていくと、この拉致問題というのは、同時の北朝鮮がどう見ても aggressive(アグレッシブ)な、侵略的な国であると、


今村有希
(頷く)


西部邁
事の一つの決定的な証拠がこの拉致問題であると。


中山恭子
はい。


西部邁
であるが故に、こういう侵略的な国の核武装ね。国際社会の秩序を根元的に乱すからという形で、両者(※拉致問題核武装問題)を連絡させておかないとですよ、それを切り離してしまったらね、たぶん拉致問題では北朝鮮は知らぬ顔の半兵衛を決め込むだろうし、核武装は粛々と進めると。


[*北朝鮮の拉致と核武装を分離した平壌宣言の問題 ]


中山恭子
日本政府そのものがですね、北朝鮮が行っている日本人を連れて行くことに対して、人質にとって監禁しているこの問題に対して、これまで今も続いていますが、日本政府の方針の中で拉致されている日本人を救出しなければならないという考え方が無い!・・・


[*拉致された日本人救出する方針が日本政府にはない ]


西部邁
あっ!


中山恭子
・・・というのが非常に明確に出て、西部先生が仰った『平壌宣言』で拉致問題がどう取り扱われているかというと、「日朝が正常な関係にある中で、生じたこのような遺憾な問題・・・これが拉致問題を指すんですが・・・が、今後再び生じることが無いよう適切な措置をとることを確認した。」なんです。


西部邁
・・・そういう文章ですか!


中山恭子
はい、平壌宣言が。ですから、これまで行った北朝鮮の拉致という犯罪行為については一切触れてない。


[*拉致(犯罪)については一切触れられていない平壌宣言 ]


西部邁
拉致問題など)忘れましょうという感じですか。


中山恭子
そういうことになります。これはいずれにしても致し方ありませんということが明確に平壌宣言には書かれている。


『従って、日本という国は、日本国家は、日本国民が拉致されていても、その救出にあたることは致しません。相手国にお任せします。これが戦後の日本の日本国民に対する本心です!!』


西部邁
そうでしょうねぇ・・・


中山恭子
『はい。国民を守るとか、国防という単語を使うことすら、日本ではタブーだった。この2002年まで。』


西部邁
そうですねぇ・・・それは政府が悪いとか、与党が悪いとか言うよりも、日本国民の全般がそうなんですよね。


中山恭子
(頷く)


西部邁
さる著名なね、まぁ言ってみれば左翼系の文芸批評家が、例の9条の第2項ね。


中山恭子
はい。


西部邁
日本は非武装不交戦でいくということについて、


中山恭子
はい、


西部邁
これは日本人の無意識だから。潜在意識ね。だから、国民投票にかけても間違いなく否決されると。


[*憲法9条は日本人の無意識、国民投票否決と文芸評論家 ]


中山恭子
はい。


西部邁
僕の知ってきた日本人はね、武器、武装ね、「武器イヤだなぁ〜」と。「ケンカ?戦い?イヤだなぁ〜」・・・その程度では無意識にね。


今村有希
はい。


西部邁
うん・・・だから、今の日本人は本当に変でしょう?


中山恭子
そうですね。


西部邁
だって、自衛隊を93%が認めてるのよ。


中山恭子
はい。


西部邁
ところが、自衛隊は明らかに戦力で、交戦可能な。


中山恭子
はい。


西部邁
ところが、9条第2項を死文とみなす、廃止することには、まぁこの前のあれ(※世論調査)で言えば6~7割が反対と。


今村有希
はい。


西部邁
まぁいわゆる統合失調状態なんですね、オツムがね。


[*自衛隊を93%が認めながら、憲法9条第2項の廃止には6~7割が反対する国民 ]


中山恭子
そうですねぇ、全く矛盾した。


西部邁
そう。そしてそれからいよいよ中山先生も行くんですけどね、


中山恭子
はい、


西部邁
僕その文芸批評家もヒドイなぁと思うんだけども、仮にそれが日本人のね、武器持ちたくない、戦いしたかない、まぁそれは無意識でどうしょもないと。


今村有希
はい。


西部邁
ということはですよ、相手に攻められてもね、もうともかく、


中山恭子
ゴメンなさい。


西部邁
ゴメンなさい従いますと。


中山恭子
はい。


西部邁
従僕でも奴隷でもなんでもいいけどね、それもまた日本人の無意識か?と。


今村有希
はい。


西部邁
そうなるでしょう。


中山恭子
そうですね。


西部邁
僕だと、そんな情けない国民相手にこれ以上モノは書きたくない、テレビで喋りたくない、何なんだこいつらはってね!!


[*相手に攻められても従僕・奴隷になる情けなさ ]


中山恭子
そうです、はい、そうですね。


西部邁
そこまで言わないわけね、文芸批評家はね。でもそういう人たちばっかり。


中山恭子
えぇ。情け無い国になってしまっています。


西部邁
例えばだけども、尖閣に小さいといっても中国の公船、おおやけの船が山ほどくると。 或いは、竹島にも(韓国の)与党代表がどっさか来ている。


中山恭子
えぇ。


西部邁
あの背後には実はアメリカなんですね。竹島で言うと、アメリカが李承晩政権、古い政権ですけどね、


[*尖閣周辺への中国船侵入、竹島問題も背後にアメリカ ]

 

中山恭子
はい、


西部邁
まぁ言ってみれば「二枚舌」を使ってね、


中山恭子
そうですねぇ・・・


西部邁
竹島は)日本のものだと日本人には言いながら、李承晩が俺のものだと言った時に、お前たちの言い分も認めないわけじゃないみたい曖昧な返事をするわけ。

 

[*李承晩ライン主張時、日韓に対しアメリカの二枚舌 ]


中山恭子
はい。


西部邁
尖閣についても実はそうであってね、


中山恭子
そうですね。


西部邁
要するに、アメリカが一つの中国で大陸の方に寄るでしょう、


中山恭子
はい。


西部邁
それで、国民党・台湾政権が猛烈に怒るわけですよ、俺たちを裏切るのか?と。「いやいやそういうわけじゃないんだ。お前らの言い分もよく聞いてやるから。」とアメリカも(当時の台湾に)言う。その言い分の一つがですね、「尖閣は台湾のものだと。」


[*尖閣諸島の領有権めぐり台湾がアメリカに反発 ]


今村有希
うん・・・


西部邁
うん、それはそれなりに言い分を聞いちゃった。ところが、実際上はいまや国民党は中国政権にまぁまぁ実質乗っ取られようとしているわけでしょう。


中山恭子
はい。


西部邁
そうすると中国は台湾経由でね、尖閣は俺のものだという理屈が出てくる。


[*尖閣諸島の領有権めぐり、中国は台湾附属を主張 ]


中山恭子
はい。


西部邁
それについてまた日本もね、こんな事態になった元々には5割か10割はともかく、アメリカさんも関係しているでしょう、二枚舌使ったでしょうと。


中山恭子
はい。


西部邁
尖閣で言うとね、


今村有希
はい、


西部邁
施政権は日本にあることを認めると言うんですよ。


中山恭子
はい、そうですね。


西部邁
でも領土権(領有権)については知らないと。勝手に日本と中国でおやんなさいと。


[*日本の施政権は認めるが領有権は知らぬとアメリカ ]


中山恭子
(頷きながら)はい。と言ってますね。


西部邁
これがまた嘘でね。


中山恭子
そうですねぇ。


西部邁
もともと領土とは何かと言うとですね、


今村有希
はい、


西部邁
例えばですよ、貴女(今村)が僕を長い間に渡って支配していると。


今村有希
(目を大きくして)はい、


西部邁
10年50年・・・つまり施政権、管理権、統治権が長きに及んだ時に、周囲にね、西部は今村のもんだと。


中山恭子
ウフフフフ(笑)


今村有希
(笑)


西部邁
つまりそうでしょう、施政権が歴史的に持続した時に領土になるわけさ。


今村有希
はい。


西部邁
別に神様がここは誰の物って決めてるわけじゃあないんですよね。それも二枚舌(※アメリカが口にする尖閣における日本の施政権の是認)によるだと思うけど、それに日本は気付かない。気付こうとしない。依然として “アメリカ頼み” でね、どうにかしてくれるハズだと思い込んで自分ではやろうとしない。


[*施政権の歴史的持続が領土、依然としてアメリカ頼み ]


中山恭子
自分で守るしかないんですよね。


西部邁
そうですよね。


今村有希
国際警察とかが守ってくれたりとかはしないんですか?


西部邁
何処にあるのそんなもん、うん?


今村有希
えーっ!?・・・・無い?(笑)


西部邁
大事な問題なの、貴女が出したことは。


今村有希
大きなテーマではありますね。


西部邁
つまり World Government(ワールド・ガバメント)、世界政府というものは存在しないわけさ。


[*世界政府は存在しない、国連安全保障理事会のみ ]


中山恭子
うん。


西部邁
あるのは国連だけなの国際連合


今村有希
(うんうん)


西部邁
安全保障理事会ね、そこで常任理事国ってあるわけ。常任理事国第二次世界大戦戦勝国ね。


今村有希
はい。


西部邁
順不同で言えば、アメリカ、今でいえばロシア(旧ソ連)、中国、イギリス、フランスとこうなってるわけさ。しかも各国が『拒否権』を持っているわけ。


[*国連安全保障理事会常任理事国戦勝国 アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国 ]


今村有希
はい。


西部邁
国際警察を作られるとしたらですよ、この場合ですね、常任理事国が “一致” して国連総会にかけて全部説得して、いわゆる「多国籍軍」をね、


今村有希
はい、


西部邁
国連承認の下で多国籍軍をつくって、本来日本のものであるハズの尖閣、日本人であったハズの北朝鮮に拉致された人々、これを取り戻すためにといって、国連承認の多国籍軍が動くしかないわけさ。


中山恭子
うん・・・・


今村有希
はい。


西部邁
ところがそんなことはねぇ・・・


中山恭子
拒否権がありますから。


西部邁
出来るわけがない、拒否権発動でもって。


今村有希
あぁ〜、はい。


西部邁
それでアメリカがこれまで得手勝手にもうあちこち動かしながら、「俺たちが国際警察の代わりをする」とやって、でそれがまた全部失敗したわけさ、イラク以来ね。


[*アメリカは世界の警察やると、イラク攻撃以来失敗の連続 ]


中山恭子
ですね、はい。


西部邁
だから、アメリカはもう動きたくないわけ。『自分の事は自分でやる!!』という構えを持たなきゃいけない。


中山恭子
一つの独立国家であればですね。


今村有希
はい。


中山恭子
アメリカの属国のままでいいということであれば別ですけども。


今村有希
はい。


西部邁
(中山)先生、「プライベート・ライアン」という映画ご存知?4人男兄弟かな、次々とみんな死んでいくんですよ、徴兵されてね。


[*プライベート・ライアン 監督スティーヴン・スピルバーグ:3人の兄が戦死したライアン二等兵の救出作戦 ]


中山恭子
あぁ〜。


西部邁
それで最後の男の子が向こうの捕虜になるんですね。


中山恭子
はい。


西部邁
その時にアメリカ軍がね、『これを放置しておくのは国家として恥である!』と。


中山恭子
うん。


西部邁
private(プライベート)というのは「兵卒」(※private soldier)、二等兵という意味ですね。


中山恭子
あぁ〜、はい。


西部邁
その二等兵のライアン君を救うために、ともかく特殊部隊をつくって徹底的にやると。犠牲も膨大なものなんですよ。


今村有希
うん。


西部邁
簡単に言うと、一人を救うために数百人死ぬようなね。


中山恭子
そうですよね。


西部邁
それでもそれを守らないとね、4人兄弟の家族が全滅するでしょう。


中山恭子
はい。


西部邁
そんなね、家族が全滅するようなことを国家としては放置できないというね。


中山恭子
はい。


西部邁
そういう理屈立ての映画なんですよ。


中山恭子
うん。


西部邁
僕ね、アメリカって国は小さい声で言いますが、大嫌いなんですけどね(※お約束のまた小さくないですw)


中山恭子
はい、


西部邁
それはともかく、こういう映画を作れるだけでも立派なもんですよ!


中山恭子
そうですね。日本は敗戦について、その状況についての映画が無い。


西部邁
本当にそうですね。


中山恭子
映画を作れてないという、ある意味では非常に残念なことの一つだと思いますね。


西部邁
ということで、


今村有希
はい、


西部邁
一回目は終わって、


中山恭子
はい、


西部邁
次の回は、全く残念な国に、ほぼ同世代の我々がいるという話を・・・(笑)


今村有希
(笑)


西部邁
より深めることにします。


中山恭子
はい(笑)


西部邁
今日はありがとうございました。


中山・今村
ありがとうございました。


【次回予告】 錆びついて剥げていく「日本の心」② ゲスト:中山恭子 参議院議員(日本のこころを大切にする党代表)

 

MX・表現者 シンポジウム③ 安倍・プーチン会談を受けて米中露外交をいかに展開させるか 〜TOKYO MX 西部邁ゼミナール×隔月雑誌「表現者」連動企画〜

MX・表現者 シンポジウム③ 安倍・プーチン会談を受けて米中露外交をいかに展開させるか 〜TOKYO MX 西部邁ゼミナール×隔月雑誌「表現者」連動企画〜

 

司会進行:富岡幸一郎表現者編集長、文芸批評家、関東学院大学文学部教授、鎌倉文学館館長) 【近著】文学の再生へ 野間宏から現代を読む(藤原書店)

 

ゲスト:
馬渕睦夫(元特命全権大使、駐キューバウクライナモルドバ)【著書】世界を操るグローバリズムの洗脳を解く(悟空出版)ほか


木村三浩一水会代表)【著書】東アジアに平和の海を - 立場のちがいを乗り越えて(彩流社)〔共著〕

 

【ニコ動】
西部邁ゼミナール) MX・表現者シンポジウム【3】2016.09.17

sp.nicovideo.jp/watch/sm29664207?cp_in=wt_tg

 

富岡幸一郎(司会進行)
安倍・プーチン会談を受けて米中露外交をいかに展開させるか」ということで、馬渕睦夫先生、そして一水会代表の木村三浩先生にお出で頂きました。どうぞ宜しくお願いします。


第二次安倍内閣ですね、「地球儀を俯瞰する外交」という形で色々な外交を展開しております。いまの世界の激動の変化の速さ、英国のEU離脱にも見られますように、新たな意味での主権国家の回復という方向も出ております。勿論そこにはユーロ・グローバリズムの破綻といった経済の問題も絡み合い、更には宗教の問題ですね、ISなどの問題も絡み合っている。まぁそういう重層的な複雑な方程式の中で如何に外交を展開していくか?その辺りを今日お二人のご専門の大変深いご経験と知識からお話を頂きたいと思います。


まず馬渕先生からですね、現在の日本の置かれた位置、或いは、安倍・プーチン会談ですね、 の問題について少し概括的なお話を賜ればと思います


馬渕睦夫
一言でいえばですね、この間の「伊勢志摩サミット」ですね。サミット以降、世界が変わったというのが私の認識です。なんで変わったかというと、やっぱり伊勢神宮なんですね。伊勢神宮に参拝された各国首脳が記帳をしておるわけなんですが、それによりますとね、共通のキーワードが出てくる。それはね、平和とか共生、自然、性質、調和ですね。つまりこれは日本の伝統的な思想なんですね。これが実は最大の成果であったと思います。


それから、もう一つの成果はやはりオバマさんの広島訪問ですね。それも含めて、私は伊勢志摩サミットの一環であったと思っていますね。『国家というものを見直そう』ということになってきたわけですね。グローバルな市場だけではないんだと。そのグローバル市場化の弊害が出てきている。それに対してもう一度、立ち止まって考えてみようじゃないか、その一つの表れが、イギリスの国民投票の結果であって、『EU離脱』という選択になりましたね。


それからアメリカでトランプが共和党の候補になった。これは底流で結び付いているんですね。我々がメディアから隠されている事があるんですが、それが『ロシア』なんです。これで、プーチン大統領がもしこの年末に訪日されますと、これで完結するんだと。そうすると2017年はまさに日本の時代になるというふうに思っています。


注目すべき動きは、やはり『トルコ』なんです。クーデター未遂がありましたね、実は私は心配しているんですが、あのクーデターが成功していれば、第三次世界大戦になったかもしれないんですね。そういうことはメディアは報じません。クーデター派に加わった軍人の中には、昨年の11月24日にロシア軍機を撃墜したパイロットも入っているんです。で、私は最初からあの11月の(ロシア軍機)撃墜事件というのはおかしいと、エルドアンがやったとはとても思えないと思っていましたが、やはりそうだったですね。


エルドアン大統領がプーチン大統領に6月の終わり頃ですが、謝罪の手紙を出しました。そうすると、その直後に何が起こったかと思いますか、皆さん?・・・イスタンブールでテロが起こったんですよ。イスタンブール空港でテロが起こりましたね。で、その後で何が起こりましたか?・・・7月15日に(トルコの)クーデター騒ぎが起こった。


そういうふうに見ていきますとね、我々の目から隠されているんですが、世界は繋がっているんですね、確実に。だから今、その伊勢志摩サミット後、私は「世界が変わった」と言いましたが、そういう動きと、それに対して、そうはさせじという動きとが、いまがっぷり四つに組んでいると、そういう状況と言えるんだと思います。

 


富岡幸一郎(司会進行)
いまの世界情勢がですね、ロシアという隠されたもの、そしてトルコのクーデターから新たな構造が見えてくる思いが致しました。


あのロシア、それからウクライナに関しては、木村三浩先生が何度も足を運びですね、実際に現地でいろいろな方とお会いしてお話しております。


木村三浩
ウクライナ政変がありまして、クリミアがロシアに2年前に帰属するわけですけども、それがなければですね、プーチン大統領はG8として、日本のサミットに来てやはり伊勢に参拝されて、何らかのインスピレーションを受けた可能性があるわけですね。


ところが、ウクライナ政変、クリミア問題でG7になりまして、ロシアは今、経済制裁をEUやアメリカや日本から受けています。この中でですね、我が国の首相は非常にプーチンさんと交流を続けています。日本との戦後の大きな問題である『北方領土の問題』のですね、解決にもなるかもしれない。それは日本の悲願ですから、プーチンさんは伊勢志摩に来れなかったですけれども、その後ですね、安倍さんはすぐソチというですね、あの冬季のオリンピックが行われた所なんですが、ここに行きました。プーチンさんの別荘に行って、結果的には、日本がロシア国内のハイテク化や近代化、それに資するために「経済協力」を行いますという合意が形成されたんですね。


2018年までプーチン大統領の任期がありますから、安倍さんも2018年まで首相の任期が伸びますようですから、この間にいろいろなことをやって行こうと、そういう状況にあると思いますね。そして12月のプーチン大統領の来日に、安倍さんの郷里の山口県プーチンさんを招待するんじゃないかと。首脳同士が約束したことを実行に移して違えないことの信頼関係を作るということですね。

 


西部邁
これから始まるのは、もう『第三次世界大戦の言わば“前哨戦”』、押し合いへし合い・・・でも、ふつう前哨戦というと、短い期間でそれで本番が始まるんですが、多分ですね、この前哨戦が長く長く尾を引く。理由は、本当に第三次世界大戦になったら、お互いに核兵器を持っていますんでね、もう全滅合戦になりますからね、そういう意味じゃ「代理戦争」に近いようなものとしての前哨戦を彼方此方で長く長く尾を引く。


何故そういうふうに考えるかというと、90年代のほんの一時ね、アメリカの一極支配集中が可能じゃないかと、アメリカ自身もそう思い、日本人もその後をくっついて行けば大丈夫ぐらいに思っていた時期があったのだけども、それが例のブッシュ政権時代(※息子ブッシュ)のね、僕はあれは『アメリカの国家テロ』だと思いますけども、『イラクに対する国家侵略』によって脆くも一極支配集中の幻想が壊れた。


アメリカの一極支配集中の化けの皮が剥がれたということは、何を意味するかというと、国連が世界政府の代役をしてくれるのならいいんですよ、でもご承知のように、国連を牛耳っているのは安保常任理事会ですよ。第二次世界大戦戦勝国が入っているんですからね。旧ソ連、現在のロシアもいれば中国も入っているわけですよ。アメリカもイギリスもフランスも入っている。お互いに「拒否権」を発動すれば機能停止に陥るわけですよ。国連は決して世界政府の代わりにはなり得ない!!スプラトリー諸島というよりも、南シナ海の領有権をめぐって、オランダのハーグの国際仲裁裁判所は裁定を出して、「中国のやっていることは不法である!」・・・中国は何と言ったかご存知でしょう。「こんなものは紙屑である!!」と。


今度、逆に考えてみましょう。世界政府は存在しないとしても、まぁそれは認めざるを得ないのだが、「国際法なんか紙屑だ!!」とブチ捨てていいんだとなった途端にね、実は、国際社会というものが成立し得なくなるわけですよ。社会というのはどこかで共通のお互いの了解なり、認識なり、約束ごとを守るなりということがあって初めて society(ソサエティー)=社会でしょう。「国際社会なんかあるわけないんだ」とまで言ってしまったら、実はこの世界は弱肉強食・優勝劣敗のジャングルと化すわけですよね。果たして、こんな殺し合いのジャングル状態にどんな国家だって耐えられないわけですよ。


多分これからですね、世界は Balance of Power(バランス・オブ・パワー)、つまり勢力均衡の押し合いへし合いの政治として展開されるでしょうが、その具体的プロセスはね、国際法を介在させながら議論し、且つ、実力を示し合うというね、そーっと剥き出しの勢力均衡ではない、幾分複雑な Balance of Power Politics(バランス・オブ・パワー・ポリティクス)がこれから展開される。


もしも日本がロシアともそれなり経済外交から始まって、それなりの政治的な一定のですよ、戦争状態はまだ(ロシアとは)終わっていないんですから法律上ね、平和条約を結ぶなり何なりという形でロシアとある一定の協力関係に入った時に、初めて日本はバランスの手立てを手に入れるわけですよ。アメリカと中国に挟み討ちされてどっちへくっ付くか、両方共から蹴飛ばされるなどという情けない惨めな、そういうガキであることを日本人はそこで一歩脱してね、「お前たちがそこまでやるんなら、俺たちはロシアと手を結ぶぜ!」と。「俺たちロシアから・・・・」後は言いませんけど・・・(木村の方を見て)ロシアの核でも借りて頑張ると言うか(笑)

 


木村三浩
(超苦笑い)


会場
(笑)


西部邁
まぁというのはね、冗談半分で言ってるんですけど(笑)、そういうことも含めてね、ある種の駆け引きをね、勢力均衡のための有力な日本にとっての手立てとして、ロシアがいるんだと。


日本はこれから本当に一本立ちして、アメリカがいずれ何でも助けてくれるだろうなどという情けない形で、アメリカの膝に乗っかり首っ玉に噛り付き、頰っぺたを舐めまわしてたこの憐れなジャパ公がですよ、ようやっとアメ公さんから切り離されて一人歩きになって、そして米中露というね、三国の間でどういうふうなバランス外交を取るかという『本当の重大な試金石』が、この第三次世界大戦の打ち続く前哨戦の中でいよいよ始まる。

 


富岡幸一郎(司会進行)
7月15日のトルコのクーデター、在米イスラム指導者ギュレン師というのが黒幕にいるとも言われてますが、もしあそこでクーデターが成功していたら、まぁ第三次世界大戦。8月9日にロシアのプーチン大統領サンクトペテルブルクで会談しています。


つまりイスラム中東圏では欧米の優等生と、まぁそれは欧米側からの理論ですが言われているトルコがですね、ある意味、軸足を替えたと。つまりロシアとの関わりに向かったというのは、これは一つ大きな事かなぁと思っております。

 


馬渕睦夫
今そういう第三次世界大戦をやっぱり起こそうとしている勢力がいるんですね。これはどういう人かというのはすぐ分かるんですが、はっきり言えばネオコンなんですが、つまり、『プーチンとえるドアの仲を割く』というのがこの間の事件。ずっと去年のロシア軍機撃墜以降の工作だったわけです。我々気付いてないんですが、日本がロシアに接近するのもその人たちがそうはさせじとやっているわけですね。


『だから、トルコとロシアの関係がどうなるかというのは、日本とロシアがどうなるかという事と実は連動しているんです。』

 


木村三浩
第三次世界大戦が既に始まっているというのはですね、日本にいるとなかなか実感が沸かないんですけれどもですね、いまクリミアでウクライナの諜報機関と軍隊が北部の方に上陸しましてね、ドンパチやって何人かもう死んでるんですね。それをもってして、プーチン大統領とメドベージェフ首相はですね、「今更こんな事をやっているのかウクライナは!」と、ウクライナと国交断絶を考えるという事まで発言しているんですよ。


クリミアでやった工作・銃撃行動は、これは挑発以外の何物でもないんですが、対ロシアの前衛国家だということなんですよ、前線の前衛国家。ウクライナの北部はいまだにもう「ミンスクの合意」がされましたけども戦闘状態があります。これがとんでもないことになって破裂したらですね、第三次世界大戦が本当に起きる可能性というのは目の前にありますよね。


じゃあ外交と日本の国益のためにどうするかと言ったら、私は安倍さんに是非、もう山口にプーチン大統領が来られて、すぐ北方領土が何島か返還、4島一括だとか3島だとか2島だとか・・・いうことにはならないかもしれません。ならないかもしれませんけども、その端緒が出来てきてさぁこれからスタートだ、そのためには平和条約、早く1日も早く日本とロシアの平和条約を締結していただきたい。こっからスタートです!!

 


馬渕睦夫
4島だけを日露でどうすると言っても、これは埒があかないわけです。つまり2島になるか3島になるか、面積で2等分するとかそうじゃなくて、日露関係全体の中で北方領土問題を考えると。『日露関係というのはグローバルな意味を持っている』ということを総理も強調されているんですね。ここが一つのポイントだと思うんです。つまり日本とロシアだけのものじゃないんだと。これはグローバルにもいい影響を及ぼすんだということです。


これはどういうことかと言うと、つまり経済協力の話が出ましたけども、ロシアの経済をハイテク産業化すると。アメリカとかの監視を入れて、中国のように経済発展を図るんじゃなくて、『土着の経済発展を図りたい』というのがプーチンの念願なわけですね。それには欧米の資本ではダメなんです。日本しか協力相手はいない。何故か理由はお分かりですね。日本自身が明治維新以降、その近代化というものを土着化して、つまり欧米近代化というものを『日本化』して、今日の繁栄を築いたからなんです。


だからプーチンもそれをやりたいということですね。昔からロシアに伝統的にある西欧化とスラヴ化をどう上手く融合させるかということです。それに対してピタッと答えを出せるのは日本しかないということですね。


そこでその仰った平和条約ですが、平和条約ということは、結局、北方領土問題を解決するということですから、これが平和条約を結ぶということは領土問題が解決するということですね。ではその見通しはということなんですが、私は、今年のプーチン大統領の予想される訪日が鍵だと思います。経済と領土の取引じゃあないんです。どちらがロシアの安全保障にとっていい事かということの選択をプーチン大統領に選ばせる。つまり、安全保障の観点からプーチン大統領に選ばせる。

 


富岡幸一郎(司会進行)
ロシアの経済、西欧化とスラヴ化、スラヴの土着の問題、それはやっぱり日本人だからこそ理解出来る、非常に先ほどの最初の話の伊勢志摩サミットとも繋がるとこだと思います。大変重要なことだと思いますね。


まぁプーチン正教会との繋がりとか、そういうことも含めていろいろなその構図が解けてくるのかなと思いました。

 


西部邁

やっぱりネオコンの問題ね。あれは本当に大事な問題で、私がビックリしたのは、ネオコンがむかし創始された時にですね、アーヴィング・クリストル親子(※アーヴィング・クリストル:ネオコンの創始者、かつてはトロツキスト)が関係していたという情報が出たんですよ。


どこまで本当か知りませんが、実は僕18、9(歳)の時からこのクリストルを知ってまして、実はTrotskyist(トロツキスト)なんですね。つまり分かりますか?トロツキストってのはこれ左翼の代表のひとつですけども、『世界革命論』ですよ!!『世界を同質にする』というね。実はネオコンもそうなんですね。『アメリカ的な自由民主主義、この原理で世界を画一的に統一する』というね、そういう意味ではね、右の端と左の端ね、それがもうみんな出生も忘れたんだけどもいつの間にやら手を結ぶようにしている。


それに対する対抗の拠点があるとしたら、今の(馬渕の)話に繋げると各国の土着のもの。これは狭い意味でのナショナルなものじゃなくて、言わば、『開かれたナショナリズム』として各国が各国の利益を守るように、他国とどういうふうにして巧みな知恵ある外交を展開するかというふうな折り合わせの世界として国際社会を構想する以外になくて、その努力を怠ると、Trotskyist(トロツキスト)とNeo-Conservatism(ネオ・コンサバティズム)のですね、合体としての本当に『第三次世界大戦』の血生臭い風景しか未来に見えてこないと。お互い気をつけましょうということになる。


馬渕・木村
(笑)


富岡幸一郎(司会進行)
以上をもって、第一部、第二部、今日のシンポジウムを終わらせて頂きます。先生方、どうもありがとうございました。


【次回予告】錆び付いて剥げていく「日本の心」 :ゲスト 中山恭子 参議院議員 〔日本の心を大切にする党 代表〕〜西部邁ゼミナール〜

 

MX・表現者 シンポジウム② 護憲の妄論を排して改憲の道筋を明らかにせよ〜TOKYO MX 西部邁ゼミナール×隔月雑誌「表現者」連動企画〜

MX・表現者 シンポジウム② 護憲の妄論を排して改憲の道筋を明らかにせよ〜TOKYO MX 西部邁ゼミナール×隔月雑誌「表現者」連動企画〜

司会進行:富岡幸一郎表現者編集長、文芸批評家、関東学院大学文学部教授、鎌倉文学館館長) 【近著】文学の再生へ 野間宏から現代を読む(藤原書店)

ゲスト:
浜崎洋介(文芸批評家、日本大学芸術学部非常勤講師)【編著】人間とは何か(文春学藝ライブラリー)ほか

佐藤健志(評論家)【近著】戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する(徳間書店


【ニコ動】
西部邁ゼミナール) 平成の時代とは何であったのか【2】2016.09.10

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29620429

⚪︎第一部:護憲の妄論を排して改憲の道筋を明らかにせよ

富岡幸一郎(司会進行)
先般の参議院選挙で3分の2を改憲勢力が獲ったと言っております。まぁしかし勿論、ご存知のようにその中身を見ればですね、公明党とかいろいろあるわけで、まぁ衆参3分2を獲っても実際に改憲の発議をし、憲法改正に行くには道遠しという感があります。

まず今日はゲストの皆さんからですね、この今の状況、そして戦後70年に渡ってこの憲法を押し頂いてきた我々の状況についてご発言頂きたいと。

浜崎洋介
文学をやっているとですね、つまり現実と言葉との対応関係ということについては・敏感にならざるを得ない、いや、敏感になることが言葉を扱う人間の倫理だと。その限りで言えば、やっていることと、言っていることの一致やズレ、それについての敏感な感性というのがどうしても必要になる。

日本国憲法というのは、つまり言っていることと、やっていることが完全にズレているわけです。言っていることは「平和憲法」であり、やっていることは「自衛隊とそして安保」なわけですね。この“ズレ”についての感性を持っている限り、あの憲法を肯定することが出来るわけがないんですね。

その意味で言えば、それがアメリカから押し付けられた、或いは、押し頂いたということも含めてですね、それは外在的であるかないかということよりも手前で、言っていることとやっていることのこのズレ、それを考えればあの憲法をどこから肯定出来るだろうか。そして多分、恐らく文学者というのはそのズレの感覚について、発言を常に繰り返してきた。

例えば、1965年です。つまり1945年に敗戦ですから、そこからようやく20年経った。その時点で、福田恆存が『當用憲法論』というものを書く。そして、それから間もなくして3年後、1968年においては、三島由紀夫が『文化防衛論』を。勿論これは憲法論とは言えませんが、しかし憲法の話も内在的にそこでしている。

そこからもう少し経って、1979年ですね、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、江藤淳が『忘れたことと忘れさせられたこと』、或いはその翌年の1980年、そこで『1946年憲法 その拘束』を(江藤が)書く。そして勿論、西部先生もですね、1991年に『私の憲法論』(「私の憲法論 ー日本国憲法改正試案」西部邁 )というものを上梓してらっしゃるわけですが、つまり憲法以外、憲法学以外から延々とその憲法に対するある種の違和というものを発し続けてきたわけです。それこそまさに我々の『常識』或いは、『言ってることとやっていることのズレについての感覚』それに基づいての発言だったと言っていいというふうに私自身は考えています。

では、あの日本国憲法の中の不自然さ、つまりズレの核心にはいったい何があるのか。恐らく私が考えるところで言うと、2つだけ先ずは挙げておきたいと思います。

『1つは、日本国憲法が決定的に過去を否定しているということです。』

ご存知だと思いますが、勿論、GHQが書いたわけですが、少なくとも戦前、或いは明治期以降のその歴史というものをancien regime(アンシャン・レジーム=旧体制)として切断し、未来この先、理想を求めて我々はやっていくんだといったような話が出ている。過去を持っていない、記憶を持っていない個人というのはいるんでしょうか?勿論、そんな人間がいるとしたら人格喪失者ということになります。

とすれば、過去を否定した国家が骨格、つまり人格を持つことが出来るのか?恐らく出来ないわけです。その限りにおいて、自己喪失になるはずなわけです。

『もう1つが、あの憲法においては国家が完全に否定されているという点です。』

国家というものは主権において規定されます。 sovereignty(サバンティー=主権)ですよね。『主権』とはいったい何か。対内的には『立法権力』です。そして、対外的には実は『交戦権』です。立法権と交戦権によって規定される主権が、実はこの国家には、日本国憲法の中には一切出てこない!!何故か?勿論それを我々が主権として立法したわけではないからですよ!!

そして、日本国憲法という他者に立法されたその枠組みの中で我々は立法しているとすれば、最終的な主権を先ずは奪われていると考えるのが適当だと私は考えます。

戦後日本というのは70年間に渡ってあの憲法を奉じ、奉ってきたと。ようやくですが改憲議論が出てきた。だがしかし、それも内発的なものではありませんね。つまり外発的な、北朝鮮や或いは、中国といった脅威を目の前にしてようやく変えようと重い腰をあげ始めているに過ぎない。とすれば、私たちがそこは内在的にズレを感じ、それが今だと感じ、そのことからあの憲法を変えようということが、70年間起こらなかったこと自体が異常な事態だと私自身は考えます。

実際、護憲派、或いは憲法学者たちがそれをするはずなんですが(笑)、何故か、彼は憲法の枠組みの内でそれを解釈することだけに必死で、憲法自体を問おうとはしなかった。憲法学者、或いは護憲派はほとんどが鈍感であるか欺瞞であるか、その amalgam(アマルガム)だということになるわけです。

 

佐藤健志
「護憲の妄論を排し改憲への道筋を明らかにせよ」と。いわゆる左翼・リベラルの方々を中心に、戦後70年間、敗戦後70年間よく主張されてきた「現在の憲法の内容は一言一句、未来永劫変えてはいけない!」、左翼リベラルのロジックに従えば、「憲法改正というのは必ずナショナリズムを強化する方向で行われる。国家の肯定に向かうに決まっている」と。でこれは、この国の戦後日本の左翼リベラルの発想では「必ずそれは戦争への道とかいうものに結び付く」ことになっております。

非現実的な妄論であるというふうに片付けて構わないものなんですが、問題は『この護憲の妄論に面白いバリエーションがある』ということです。

憲法を改正しさえすれば、日本はちゃんと国家を取り戻すことが出来る。過去を取り戻すことが出来る。自己喪失から回復する。国家はもう一度肯定され、戦後の欺瞞や虚飾なるものから脱却出来ると。」

実は、改憲論者のほとんどは、護憲の妄論に対する評価をひっくり返しただけ。平成28年の歴史というのは、伝統の破壊が進んだ歴史です。それによって、国家の主権というものが解体されていった歴史です。早い話が『構造改革の歴史』です。そういう流れの中で行われる憲法改正が、究極の構造改革、つまり、過去の一層の否定、一層の自己喪失正当化、そしてさらなる国家と主権の否定というところへ行き着かない保証はどこにあるのか!?

『これまでの戦後憲法よりさらに戦後的な新憲法へと、そういうふうに化けていくのではないかと。この可能性について十分考慮しない改憲論議というのは非常に危険であると思います。』

ゃんと全部護憲の妄論を拝しましょう。そしてそこには、憲法さえ変えれば日本が蘇るというものも含まれます。憲法改正というのは、憲法の内容を変えるということしか意味しません。そして、現状においてはそれは究極の構造改革、或いは、グローバル化最大のトドメになる危険性の方が高いのではないか、これをまず提起しておきたいと思います。

 

西部邁
僕は気分を率直に言うと、改憲論者じゃなくて、『廃憲論』ね。

佐藤健志
(笑)

西部邁
成文憲法はいりまーせんっ!!日本国民の大事とすべきことはこういうことだよということをね、旧商家の家訓のようなことを、埃まみれでもいいけど一応飾っておくということぐらいのことはまぁいいかもしれない。言わば、言葉の感覚の問題ですね。

日本国憲法の)11条にこう書いてあるの。「人は生まれながらにして基本的人権を有する。」・・・いったい「基本的」って何なんだと?!これは解釈次第でしょう。結婚した以上、夫たるもの妻と子供を大事にしなきゃいけないというのは常識だろうなと。例えば、こういうことは基本的なの。

次の条を読みますとね、自由及び権利の欄では、公共の福祉に沿うように使わなきゃいけない。おい「公共の福祉」って何?!(それについて)一言も解説が無いんですね、文章には。これをまた我々は本当はね、言語感覚が真っ当ならば、常識に基づいて「公共の福祉ってのはさぁ〜」と電車の中で騒いじゃいけねぇとかね、

佐藤健志
(笑)

西部邁
えぇ?広場でどうしちゃいけないとか、親も爺さんもやってただろうと。まぁあぁいうこっちゃよと。それに反しない限り、人間には自由権があるんだと。公共の福祉が何だということは、対する我々の『言語感覚』が真っ当でないといけないんですね。

憲法の99条のほとんど全てはね、アメリカ軍が書いたもので、表面だけ読むと、いかにもAmericanism(アメリカニズム)丸出しの実験的な文章になっているのですが、常識をもって読み返すとね、基本的ということはね、先祖代々の伝統の精神に基本的に基づくことだよと。公共の福祉とは何ぞやとなると、これはまた社会に関する我々の伝統の感覚というものを活かしてこそ公共の精神だぜ、というふうに解釈していくと、全部いまの憲法で構わない、ほとんど。我々の解釈さえしっかりしていればね。

ところがね、1つだけ・・・どう我々が解釈し直してもね、解釈し直せない文章があるんですよ。これは実は、『憲法9条の第2項』なんですね。侵略戦争はしないという前項の目的を達するため、陸海空その他の戦略と国の交戦権、これを否定すると。

これだけはね、言葉があまりにもあれでしょう?戦力と交戦でしょう。これを解釈しろと言ったってねぇ、解釈、他の解釈は不可能なんですよ。自衛隊は戦力に決まっているし、戦力ならば必ずや交戦可能なももんなんですね、それをね、若干説明すると、日本の最高裁は、『主権国家ならば自衛権というのはわざわざ書かなくてもあるハズだから、自衛隊があってもいいんじゃないの?』という形で弁護しようとしたんですね。これは、無理やりの解釈だけどもどうしたって嘘なんですよ。

というのは他の自衛方法もあるわけです。例えば、マハトマ・ガンディーさんはですね、失敗しましたが非暴力・不服従、一切武器は手にしない、その代わり、強い者には巻かれろ、寄らば大樹の陰などと情けないことはしない!殺されても踏まれても打たれても傷付けられても我々は服従しないと。不服従、武器を持たないで戦う。

或いは、民間がゲリラで戦うというやり方もあるのだから、論理的に言うと、日本ではゲリラ戦は何の意味もありませんよと。マハトマ・ガンディーの非暴力主義も結局はうまくいきませんよということを言ってから、自衛隊は基本的には憲法には違反しないと言わないといけないのに、そういうふうな誤魔化しをやる。

『結論を言うと、最高裁を批判したいんじゃなくて、実はこの私たちは、このどうしようもない戦力は持たない、交戦はしないというのは他に解釈しようがないんですよ!!』

しかも日本人ときたらヒドいんですよ。自衛隊の存在を認める人は世論の93%ですよ。そしてこの9条第2項を廃止するのに反対!!護憲が60%・・・日本人のアタマはいわゆる統合失調症に陥っているわけですよ。

佐藤健志
(笑)

西部邁
憲法を論ずる前に、日本人よと、アタマの分裂状態をどうにかね、まぁ優秀な民族だと言われているんだけども、少しは治してから憲法に取り掛かってくれと。それを治さない限り、護憲も改憲もありゃしねぇと。

浜崎洋介
(頷く)


佐藤健志
『優れた芝居の人物はですね、その矛盾に対して自覚的である。』


日本では、文学者と言われる方々の中ですら、これについて自覚しないようにしようとする傾向が非常に顕著であったと。


浜崎洋介
(うんうんうん)


佐藤健志
じゃあその連中は言葉のセンスがおかしいのか?・・・実は福田恆存さんはそう言いました。『今の憲法は名文という大江健三郎氏の文章感覚を私は疑います。』とハッキリと當用憲法論であの人は言いました。で問題は、それについて自覚的に突き詰めるという姿勢があるかどうか。遺憾ながら、護憲派の文学者にはこれが無いわけです。


言ってることとやっていることのズレ、言葉と現実のズレに関する不誠実な向かい合い方、これが実は戦後のいわゆる言論空間と言ってもいいですし文学空間と言ってもいいですが、それが根本の問題にあるんじゃないかと。護憲でも改憲でもいいけど、それを真面目に論じる前にですね、まずそういった感覚を磨いてくれということが中身ではないかと私は思うわけです。

 


浜崎洋介
文学というのは、言っていることとやっていることのズレということは勿論それは道具にして、すごく多用するジャンルではあるのですが、しかしながら、作者はですね、その言ってることとやってることのズレがどうズレているかを自覚していない限り書けないですね。だって、そのズレを面白ぐ、或いは味わうわけですから。


とすれば、この『自覚』がある限りにおいて、私はそれが偽善であったとしても、実のところそれはいいと思っているんです、実は。つまり、偽善の自覚があればですね、言ってることとやってることの間で股裂になっている感覚がありますから、いちおう統合しているわけです、なんとか。その緊張感さえあれば実のところ、この股裂がキツいが故に、いつかやはり自然な形で、つまり constitution(コンスティチューション)というのは原義が気質とか体質ですから、つまり自然な形でそれを求めようとするのが人間の普通の感性だろうというのが一つです。


ただそこまで行くとですね、ここまで分裂しているものをなぜ戦後70年間われわれは持ってきたのかという方がむしろ不思議になってくるわけです。


佐藤健志
(笑)


浜崎洋介
明治から繋がっていることだと僕自身は思っているんです。つまり明治維新の時に、我々は文明開化の論理で富国強兵、或いは殖産興業をやった。それがダメになってきた、それが日露戦争後の空白だった。そこに出てきたのは大正期の個人主義、或いは教養主義だった。がしかし、それも関東大震災や或いは、日中戦争の最中で終わっていく。その時に、もう一回復活するのが、まさに西洋的な文明開化を超えた形で出てくる『近代の超克』或いは『大東亜共栄圏』という思想だった。それも無くなったんです。


つまり、戦前も戦前で『価値の空洞化』をめぐっていろんな議論がなされてきた。そして、私たちはいったい何者かという自問自答をしてきた。その最期の果てに、あの大東亜共栄圏の理念も失った時の『空白』が出てくるわけです。この空白に何が流れ込んできたか、勿論、マッカーサーという慈しみの父、つまり慈父ですね。彼が書いた日本国憲法ですよ!そしてその中では国民と国家が分裂するわけです!!「国家は悪い事をする連中だ」と。一方で、「国民は純朴で本当はいい人間だから、その彼らにいい憲法さえ与えればいい社会をつくるはずだ!!」といったその免罪符を与えた。つまり、これは懲罰と免罪のうまい組み合わせですよね。それに免罪された国民たちは乗ったわけですよ。僕はその『乗ったところから全てが終わった』と思います。つまり、『これが日本人の弱さの問題』だと僕は思ってますね。

 


富岡幸一郎(司会進行)
自衛隊という軍隊がありながら、陸海空その他の戦力は有しない、国の交戦権は認めない、というこの分裂・・・これはやっぱり自覚しないで、しないようにしてきたということの一つの私は端的な現実は『日米安保条約』。つまり『アメリカ軍が日本にずっといてくれる』という、これがですね、やっぱり決定的だと思います。

 


西部邁
あの大東亜戦争がやった軍人なんてのは、日本人としては特殊な例外ですね。いわんや神風特攻隊なんてのは例外中の例外で、『我が国民の無意識な貞操はですね、実は“属国根性”なんです!!』と、小さい声で言いますよ、本当にそうかもしれないの。


一同
(大笑い)


西部邁
でも厄介なんですよ、それを認めちゃうとね、そんな者たちを相手にものを書いたり喋ったりですよ、


浜崎洋介
(うんうんうん)


西部邁
本を出したり説得したりということの無意味さ。もっと言うと、そんな人間たちに囲まれて生きてることの無意味さまで、言っちゃあねぇ、異様に怖い無意識なんですよね。


一同
(大笑い)


西部邁
文学者ともあろう人たちが、なぜそこまで論じないのかと。でもね、もうちょっと深い意味もあって、実は僕は断固として自衛隊を擁護しますし、自衛隊が出来た途端に、憲法9条第2項はあんなものはとうに死んだ文章ですと、死文ですと、反故と化しておりますということを常識にしちゃえばね、いいんだけども、でも本当のことを言うと、軍隊、近代主義の権化ともいうべきこの軍隊、でもそれを嫌いだけども迎い入れて、存在し、励ます以外にですよ、自分たちの国家どころか、自分の家族も自分の命すらも保障されないのだというね、そこまでもうひと押しふた押し考える力が無くて「軍隊は嫌いよ!」と、「警察はイヤよ!」というところでとどまったんじゃ、それは本当に少年少女の sentimentalism(センチメンタリズム)に終わると。


やっぱり選挙権18(歳)になったらしいけど、大人になるってことはですね、嫌いな事でもやらなきゃいけない事が多々有るもんだと。大人の感覚というのかな、そういうことでもって、いわんや国家のことは大人の感覚で論じるということが必要かなと。

 

佐藤健志
この国はですね、右の方への支持がワァーっと8割行ったかと思うと、また左への支持がワァーっと8割行くそういう国です。“今は” とりあえず保守と言われる側の勢いが強いからいいけれど、それが本当に今後も続くか、そして憲法というのは本当に変えていいものであるという通念のみ確立された後、仮にこの『グローバル化思考』というか『構造改革思考』というか『国家否定思考』というのがですね、“また” ガンと流行り出した時にどういう憲法改正が行われるか、あのエドマンド・バークは、近代の保守主義の原点と言われる「フランス革命省察」で、『保守主義者たる者、重大な局面であればあるほど臆病なぐらい慎重でなければならん!』と断言しておりますが、もう憲法改正については全くそれが適用されると思います。

 

浜崎洋介
私自身もこれは ambivalent(アンビバレント)なんですが、つまりいま(憲法を)改正すれば保守側が強いから我々の意図通りの方針でやるのやもしれないけども、もちろん時代が変わればそうではないと。しかし、われわれ近代の経験って150年ぐらいしかしていないんですね。つまり、行ったり来たりもたいしてしていないわけですよ!宗教戦争から憲法というものがつくられたということの西洋史を見てみれば、実のところ相当な年数の中で行ったり来たりはしている。その都度、国が破れたり、あるいは勝ったり、もの凄い傷付き方をしている。果たしてこの国は、傷付いたと言ったって、実のところ西洋に比べて非常に歴史的経験は非常に浅いと考えています。その限りで、実は“私たち自身の手でどのようにしてであれ変えるべきなんだ!!” と私は思っています。変えて経験すればいいんですよ、間違いを。そしてそれで学ぶんです。ですからこれは長期的なスパンです。今そのようにして、もちろん左に振れるというのは、私自身の本意でありませんが、しかし、そういうふうになるんだとしたら、それは日本国民が選んだことでしょう、そこで傷付けばいいわけです。私自身はそう考えています。


富岡幸一郎
浜崎さん、佐藤さん、どうもありがとうございました。

【次回予告】MX・表現者シンポジウム③ 馬渕睦夫×木村三浩×富岡幸一郎

 

MX・表現者 シンポジウム 平成の時代とは何であったのか① 〜TOKYO MX 西部邁ゼミナール×隔月雑誌「表現者」連動企画〜

MX・表現者 シンポジウム 平成の時代とは何であったのか① 〜TOKYO MX 西部邁ゼミナール×隔月雑誌「表現者」連動企画〜


司会進行:富岡幸一郎表現者編集長、文芸批評家、関東学院大学文学部教授、鎌倉文学館館長) 【近著】文学の再生へ 野間宏から現代を読む(藤原書店)


⚪︎基調講演:西部邁(評論家、表現者顧問)


⚪︎第一部:護憲の妄論を排して改憲の道筋を明らかにせよ


浜崎洋介(文芸批評家) 佐藤健志(評論家)


⚪︎第二部:米中露外交をいかに展開させるか 〜安倍・プーチン会議を受けて〜


木村三浩一水会代表) 馬渕睦夫(元特命全権大使ウクライナモルドバ


【ニコ動】
西部邁ゼミナール) 平成の時代とは何であったのか【1】2016.09.03
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29576326

 


【MX・表現者シンポジウム 西部邁基調講演】


西部邁
先般ですね、今上陛下が生前退位「御譲位」の意思を表明されました。


私が評論家になった翌年から「平成」の時代が始まったわけでありますけども、比較的よく覚えているのでありますが、今上陛下が御即位、践祚(※せんそ)の式というところで、御自分は「現在の日本国憲法を守る、そこに書かれている平和と民主を守る」、という御宣言をされて即位されたことをよく覚えております。


で、私は「護憲の妄論を排して〜」ということでありますから(笑)、その止んごとなき御方の台詞にいまあれこれ言おうというのではなくて、いずれにせよ、今上陛下がお辞めになるということは、皇室典範以上に、元号が変わるかどうかまで定かではないのですが、おそらく「平成」という元号も変わるのであろうと、それが1年後か2年後か知りませんが。


ということは、平和の「平成」の御代(※みよ)もですね、いよいよもって終わりを遂げて、新しい時代に入っていくということで御座いますから、もうあえて言えば、『平成の時代とは何であったか?』という言わば過去形をもって平成の時代を批評してかからねばならない時期が我々にとってやってきたのであるというふうに考えられる。


一体、「平成の時代」って何なんでしょうね。私はそれと同時に評論家になったので、比較的その流れが頭の中に残っているのでありますが、一纏めで言えばですね、仕置かれ曰かれというか、右に振られたり左に振られたりしたけれども、『構造改革』という言葉が止まぬ日は無い。そして、その内容はと言うと有り体にいうと、『日本の歴史的なるもの、それをできるだけ弱くして壊して、新しいものに構造を変えていく。』で、新しいものの方向は何かというと、一纏めで言えば、今の憲法に大凡合うような、ということはあの憲法はアメリカが草案を書いたものでありますから、『アメリカ的な考え方に沿うように、この国を変えていく。』


・・・というよりも、戦後ずっとそんな時代が続いて早71年になりますけども、結局、平成という時代は纏めて言えば、『戦後的なるものの陥穽を、意図するとしないとに関わらず遂げた、或いは遂げようとした18年間であったと。』言っていいんだと。


例えば、経済で言うと、資本主義というものが「アメリカ流」のものにどんんどん変えて、この場合の「アメリカ流」とは何か、いろんな言い方がありますが、目立つところを挙げれば、『ひたすらなる競争でもって規制を緩和して、いわゆるinnovation(イノヴェーション)というものを立て続けに引き起こす。これこそが資本主義であり、そしてそれを支える自由市場経済であると。』


皆さん考えてことはお有りですかね?innovationというものは、「新しきものの中に入っていく」ということで、そしてこれはかつてシュンペーターという経済学者が触れたことでありますけども、『イノヴェーションというものは必ずや独占利潤をそれに成功した者が獲得する。それを目指して行われる。』


[* innovation:novel(ノーベル)=新しい(新奇・奇抜)+ in(イン)⇒ 新しいものの中に入っていく(=in・novation) ]


ゆったりとした歴史的な流れの中でイノヴェーションが起こる事は、旧石器時代以来あたり前のことでありますけども、かくも“急激、過激に起こる”ということになるとですね、『イノヴェーションをめぐる自由競争は実は、“経済における自由の否定” であって、つまり独占体なり寡占体なりというものが次々と形成され巨大化していく。』


で、実際上そうなってるわけですね。有り体に言うと、巨大な金融資本が出来上がり、巨大なビックビジネスが出来上がり、その代わりの中小零細の企業が潰れたり、疲弊したり、沈没に喘いだりしているという逆転現象が起こっている。


実はもう一つ、アメリカ的なるものを支えているのは「民主主義」「American democracy」、これは憲法で盛大に書かれた事柄でありますけども、これもそうですね。民主主義というのはいろんな解釈ができますが、民衆に sovereignty (ソブリンティ=主権、統治権〔※通常は、絶対的な主権である君主権を指す〕)、厳かな権利があるなどと、そんなハズはありませんので、普通に考えて、まぁ「民衆の多数派を占める、民衆のいわゆる世論なるものに最終の政治的決定権が帰着するのである」という弱い意味においての、狭い意味においてのdemocracy(デモクラシー)ならば、おそらくデモクラシーは現代文明にとって不可避なものでありましょうが、実際にその「ヨロン」というものは「セロン」とも言いますが、それは各国各様の事情によって、歴史の流れによって異なってくるわけですね。


ところが、この平成の御代に行われた戦後の陥穽、別名『Americanization(アメリカナイゼーション)の陥穽』ということはどういうことか言うと、『American democracyという具体的なやり方を、それを世界各国に普遍的に追従させようとするそういう運動であった。』


実際にアメリカはそういうことを翳して、アフガンとかイラクとか、その他様々なる攻撃をした。皆さんご記憶でしょうかね?バクダッドが陥落した時にアメリカは宣言を発したんですね。『イラクの新たなる Nation building(ネイション・ビルディング)』・・・この言葉自体がね、『国家を建設する』でありますから、これ自体がアメリカ的なんです。つまり、国家というのは歴史の流れの中で自ずと、言わば自生的、植物が自生するように、英語で Spontaneous(スポンティーニアス=自生的な、自然発生的な)といいますが、(自生的に)出来るものではなくて、『歴史をぶった切るようにして合理的な設計書・計画書によってbuild(ビルド)、建築・建設するのであるという、ある種の “社会実験主義” 』と。これがAmericanism(アメリカニズム)の本質なのでありますけども、それが(戦後の日本国)憲法にも蓋となられているのですが、であればこそアメリカはですね、『イラクのNation buildingをGHQ方式でやる!』と。


GHQというのはお忘れの方もいるかもしれませんが、 General Headquarters(ジェネラル・ヘッドクオーターズ)つまりアメリカ軍の総司令部のことですね。そのやり方。つまりアメリカにとって日本の占領とその統治、それで新しい日本国家の建設、それはもう忘れられない楽しい素晴らしい思い出なわけですよ。「この方式をイラクに適用して新イラク国家を建設するのである!」と言って、結局は大失敗に陥っていまご覧のようなアラブ全体の混迷・混乱へとアメリカもまた引き摺り込まれてしまったというふうに言えるんですね。


そうならば、私たちは平成の御代というのは、天皇には何の責任も無いのでありますけども、天皇を象徴として掲げるこの日本の国家、つまり国民とその政府、国府ですね、他の言い方をすると国の家、つまり国家、日本の国家がですね、昭和のその間に十分にAmericanize(アメリカナイズ)されていたのに、それを(Americanizationの)陥穽を、さらなる陥穽を目指して『構造改革』という言葉でまとめられるような、若しくは、『抜本改革』だの『急進改革』だのといろんなことが言われましたが、その28年間であって、その時代がようやく幕を閉じようとしているのであると。


さて、私たちは振り返り見ればですね、このAmericanization(アメリカナイゼーション)はどんな規模でいま全世界的な形で挫折しているか、ということが日々報道されているわけです。例えば、先ほど言った資本主義で言えばですよ、結局のところinnovation(イノヴェーション)をやるのは資本をたくさん持っている人たちが更にですね、資本にとって有利になるようなイノヴェーションをやるわけでありますから、結果としては資本の分配率が高まり、逆に言えば、労働の分配率が低まり、それ故、国内の購買力が減退し、万止むを得ず、その国の資本は外国へと出て行くが、外国語マターみたいなことをやっているわけですから障害にぶつかり、結局のところはですね、イノヴェーション活動というのはどこかで壁にぶつかってしまう。


実際にこの5年10年アメリカがやっていることと言えば、その限界を突破すべく、今度は政府を動かして、これ動かしてって命令で動かすわけじゃないんでありますが、自ずから動きとして政府を巻き込む形で昔の人々が言ったところの『帝国主義戦争』と言われて致し方ないような形での戦争を至るところで仕掛けていく。それがいま現在で言えば、ウクライナであったり、逆にシリアであったり等々すると。本当にビックリしますね。


ひょっとしたら、あのロシア革命を率いたレーニンの言ったことは正しかったのか。これはレーニンが正しいというよりもですね、レーニンをして正しく見えさせるような、非常に単純素朴な愚かさの中に現代人がアメリカ人を先頭にして、またアメリカ人の真似をするこのジャパニーズなる人種を先頭にしてその愚かさの中に落ち込んでいった四半世紀であったと。これが平成の御代だと言えなくもない。


民主主義も同じですね。民衆に主権を与えると言いながら、実際に起こったことはと言えば、世間ではpopulism(ポピュリズム)と言っておりますが、造語ですが僕は厳密に『popularity(ポピュラリティー)=人気』ですね。populismというのは元々は「人民主義」でなかなか良い面もあったのですけど、アメリカで言えば、ニューヨークの金融資本が自分に都合のいいようなメディアを使って都合のいいような屁理屈を捏ねまわして拡めるのに対して、アメリカの中西部の農民たちが、自分たちの質素なそして健全な勤労精神でもって、この大資本の策謀に闘うことを指してポピュリズム(※短命に終わった、19世紀末のアメリカの人民党ほか)と呼んだ時期もありますので、正確に『ポピュラリズム(popularism)=人気主義』と呼びますが、実はアメリカのデモクラシーというのは全世界的なポピュリズムの蔓延として、特に日本においてはそうなっておる。


考えてみてください、この四半世紀を振り返ったら、最初はですよ、細川なる人物(細川護煕)が出てきて、「自分は破壊者になるのだ!革命家になる!!」とまで言ってみせた。で、小沢一郎なる人物がお忘れかもしれませんが出てきて、自民党の幹事長をやってた人物が「自民党を潰して抜本改革をやってみせる」と。等々流れのなかに、今度は日本社会党までもが自民党との連立政権でもって、結果としては日本社会党は消滅しましたが、おやおやおやと思って、世論がそのように動いていく。


そのうちにですよ、自民党から小泉なる人物(小泉純一郎)が出てきて、大臣をした人物がですよ、「自民党を潰してでも自分は郵政改革をやってみせる!」と。郵政改革は何であったかというと、日本の一般庶民が蓄えた少額預金の集積がいつの間にやら外国への投資として流れていくことを許すような、そういう郵政改革万歳!!で日本のポピュラリズム(popularism)の世論は8割大賛成!!


それが5年続くと、どうも(郵政改革は)問題のようだと。小泉はもうダメだと。それで全く逆の民主党(※当時)の内閣へと変わって、そしてそこで民主党支持また(世論の)8割。で、3年やったら民主党政権のあらゆる政策が失敗して、特に失敗したのはmanifesto(マニフェスト)政治。何もかも選挙で国民に政策も数値と期限と行程まで決めてもらうという、民主主義というよりも直接民主主義丸出しの馬鹿げた政策の結果、政府も国家もメチャクチャになる。それで民主党政府もダメだと。


で、今度は逆になって安倍政権誕生。どうも安倍は気に入らないからと言って、スキャンダルでもって潰して・・・一体この25年の日本の民主主義、つまり世論というものは何なのかというと、右へ振れ左へ振れ、しかも右の8割支持かと思ったら左の8割支持、何年続くかと思ったらせいぜい3年程度と。こういうことをやっているのがdemocracy(デモクラシー)万歳!!の結果であった。


と考えると、その淵源は何であったか?こんな憲法があったからこうなったんじゃなくて、憲法に示されているような “そういうアメリカ的なるものの感じ方・考え方・振る舞い方” ということを根本から反省することをせぬままに(戦後の)71年でありますが、そのクライマックス、それこそsummit(サミット)=頂上として平成の28年があったのだと。


まだ今上陛下は御即位のままでありますけども、もう譲位の御意志を表明されているからにはこの平成という御代は過去形として何であったかということを今日、憲法問題及び外交問題として議論してみたいと思います。ご期待下さい。これをもって基調報告と致します。ありがとうございました。


【次回予告】 MX・表現者 シンポジウム② 佐藤健志 × 浜崎洋介 × 富岡幸一郎

 

 

 

 

アメリカ帝国大混乱!!!③ ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜

アメリカ帝国大混乱!!!③ ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜

ゲスト:
伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト、近著「自滅するアメリカ帝国 〜日本よ、独立せよ」(文春新書)ほか多数

【ニコ動】
西部邁ゼミナール)アメリカ帝国大混乱③ 2016.08.27
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29536958

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160829174342j:image


今村有希
今回は「アメリカ帝国大混乱!!!」の3回目です。引き続き、ワシントンD.C.在住の評論家 伊藤貫先生にお越し頂いています。アメリカの大統領選挙で台頭したトランプ候補の主張にアメリカ国民の本音がくっきりと映し出されているように、かつての帝国はどうやら“内向き”志向へと大きく舵を切りはじめているようです。

イギリスのEUからの離脱、頻発するテロと、いま世界は大きな曲がり角に差し掛かっています。今後の日本国家としてのあり方を考える上で重要な論点が炙り出される議論になるかと存じます。

それでは先生方宜しくお願い致します。

伊藤貫
(深々と礼)

西部邁
今日は最後の週ですが宜しくお願い致します。ぼく、よく新聞もテレビも見ていないんですけどね、

伊藤貫
はい、

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160829174327j:image


西部邁
この前にオバマさん来て、「広島を訪れた最初の(アメリカの)大統領」、それを日本人が喜んで喜んで、

伊藤貫
はい。

西部邁
ところがね、ビックリしたのは翌日に報道で、アメリカが新しい核弾頭、それはターゲットによっては爆発力は自動的にね、例えばあそこに5万人いるから今日は5万人分爆殺できる爆発のさせ方をできるような、コンピュータ付きの、そういう核弾頭を発明しましたと。

[*オバマ大統領の広島訪問、その裏で核弾頭の新開発 ]

伊藤貫
(深く頷く)

西部邁
(報道に)出てるわけですよ。

今村有希
(目を丸くして驚く)

西部邁
それなのに日本の学者、評論家、ジャーナリストたちが、「オバマさんにはもう少し頑張ってもらって世界の核廃絶へと向かって頂きたい」と。

西部邁
何をしているのかね、あぁいうほとんど(オバマの)猿芝居以下のことについて、日本人がどこまでわかって猿芝居に合わせてるのかはともかく、

伊藤貫
(頷く)

西部邁
僕はこのどうしたってトランプを応援したくなるのはね、

今村有希
はい、

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160829174404j:image


西部邁
僕はね、核武装せいせいとワーワー叫んでいるんじゃないんですよ。僕なんかどういうわけだか金正恩北朝鮮の方と意見が一致しておりましてね、preventive(プリベンティブ)=予防的でも、先制攻撃に核は使ってはいけないと、憲法に新しく書けと。

[*核兵器の“先制”不使用、北朝鮮 金正恩第一書記]

今村有希
はい。

西部邁
つまり報復核ね。撃ち込まれてから撃ち返す。これでも考えてみたら異様な忍耐力であってね、

伊藤貫
(頷く)

西部邁
撃ち込まれるということは、50万、100万死ぬってことでしょう?それに耐えてね、尚且つ、反撃の体制を持つということは、その国民なり政府なりに異様な覚悟と努力と準備が無いとね。

[*“報復核” 攻撃受け50〜100万人死亡に耐え反撃体制、国民とその政府に覚悟・努力・準備が必要 ]

西部邁
するならば、そこまで覚悟した上でね、「(日本よ)核武装せい!」ということを15年前ぐらいに本で書いて・・・大変に評判を落としまして、

伊藤貫
はい(苦笑)

西部邁
(西部は)核武装主義者!以上おしまい!!・・・となって。

伊藤貫
(頷く)

西部邁
アメリカがですよ、オバマが何を言おうがですね、アメリカなりロシアなり中国なりが、核武装廃絶に向かうわけがないというね(失笑)

[*核廃絶には向かわない、米中露は核を手放さない ]

伊藤貫
はい。

西部邁
なんでこの単純なね、これ人類の歴史がそうですよ。旧石器の昔から、自分たちが作った発明品を手放した奴なんて見た事がない。

今村有希
(頷く)

伊藤貫
(うんうん)

西部邁
この日本に核を落として貰いたい!!・・・と冗談で言いたくなるぐらいの(笑)

伊藤貫
(笑)

伊藤貫
今回のオバマの広島訪問に関して一番思ったのは、日本の保守派とそれから日本の軍事評論家がいかにイカサマであるかと。

西部邁
うん。

伊藤貫
で僕は、左翼の人がイカサマなことを言ってもぜんぜんニコニコ笑って許してしまうんですが(笑)

西部邁
俺と同じだ(笑)

伊藤貫
えぇ(笑)あの軍事評論家とか保守派の言論人がイカサマなことを言うと、もうスゴく腹が立つんですよ!!

[*オバマ大統領の広島訪問、保守派・軍事評論家の如何様 ]

西部邁
あぁ(笑)

伊藤貫
腹が立った理由は、まずオバマ核兵器の製造予算を増やしているんです。減らしていないんです!!

今村有希
へぇー。

伊藤貫
まぁ広島に来て、「日米で協力して核の無い世界をつくりましょう」と言いながら、オバマが大統領になってから、ブッシュの息子の政権よりも少なくとも3割の核兵器の製造予算が増えているんですね。アメリカは次の世代の核弾頭を作るために、いま新しい工場を建設している最中なんですね。で多分、次の20年か25年間で核兵器にOne trillion dollarと!

西部邁
おぉ。

伊藤貫
要するに100兆円以上使うつもりなんですね。日本の自衛隊の全部の予算で5兆円でしょう?アメリカは要するに100兆円使うと。

[*オバマ大統領は核戦力に1兆ドル(100兆円) 次世代の核弾頭を製造のための工場も ]

伊藤貫
でそういうことをやっている国が日本に来て・・・(※顔を左右に振りながら)日米で力を合わせて一緒に核廃絶のために・・・ってね、

西部邁
ワハハハハ(笑)

伊藤貫
おかしいじゃないかと、日本の保守派が言わないと。それから軍事評論家がそのことを言わないと。

伊藤貫
でもう一つおかしいのは、アメリカの・・・こういうことを言うと、もしかしたら国務省とかCIAにぼく殺されちゃうかもしれないんですけど、本当の事を言うと、

西部邁
本当に気を付けてよ!

伊藤貫
えぇ、えぇ。2006年にアメリカの国務省は、日本のいわゆる反核勢力に対する態度を変えたんですね。でそれまでは、日本の反核運動をやってる連中はすごく都合が悪かったわけですよ、アメリカは核を持ち込みたいから。だから敵対的な関係があったんですね。

ところが、2006年になって急に仲良くなりだしたんですよ、日本の核兵器を無くせと言ってる連中と。でなんでかって言うと、2006年の確か秋だと思うんですけども、北朝鮮が最初の核実験をやったんですね。

[*日本の反核運動勢力に米国務省が近づく 2006年 ]

西部邁
あぁ〜。

伊藤貫
そうするとアメリカ政府は驚いて、要するに中国だけじゃなくて北朝鮮も核保有国になっちゃったと。でも日本にだけは(核を)持たせたくないと!!そうすると、今まで反核勢力をアメリカは敵視していたのに、これは日本の反核勢力を強くしないと危ないというんで(笑)

今村有希
(頷く)

伊藤貫
で次の年か次の次ぐらいあたりから、アメリカの駐日大使がワザとらしく広島とか長崎の反核セレモニーに出て行って、「私は日本人の反核運動にすごい深いシンパシーを感じる」とか、要するに、(アメリカ政府は)日本人にだけは核を持たせたくないという、反核勢力に国務省がコミットメントし出したわけですよ。

[*駐日米国大使が広島長崎反核セレモニーへ / 日本に核武装させまいと、米国務省がコミットメント ]

伊藤貫
でね、僕はワシントンに居て、あぁ〜やっぱりヒドイな(アメリカの)やることは・・・

西部邁
こういうことでしょう?日本だけに(核を)持たせたくないということの意味は、

伊藤貫
はい、

西部邁
別に日本がアメリカに報復することを恐れてという、そんな馬鹿げたことじゃなくて、日本が核を持たない限り、結局、日本はアメリカに付き従うだろうと!

伊藤貫
はいはいはい。

西部邁
アメリカに助けを求めるだろうと!それどころか単に軍事問題だけじゃなく、経済的にも政治的にもね、『アメリカの属国であること』に、日本は甘んじるであろうと。

[*日本が核を持たなければ、属国に甘んじるという思惑 ]

伊藤貫
はい。

西部邁
自分たちの核の傘がね、もう破れ傘になっているのだけども、でも結局日本は核が無い限り、アメリカ様アメリカ様と頼りにするだろうと。州に昇格する前のね、territory(テリトリー)というのだけど、日本をterritoryにしておきたいという、そのために日本には核を持たすな!!という、そういう計算なんでしょうね。

[*日本を準州 territory に、そのために核を持たせない ]

伊藤貫
明らかに出たのが、1992年の2月に作られた Defense Planning Guidance という機密文書(※通称DPG 1992年)なんですけども、そこに書いてあるのが、要するに91年の3カ月か4カ月前にソ連帝国が崩壊したんですけども、その後にすぐにアメリカのGrand Strategyを立てて、そこに書いてあるのが要するに、ロシアと中国をアメリカと競争できる能力を持つ国にしないと。その次に重要なのが、European Union、特にドイツに自主防衛能力を持つ独立国にさせないと。それから4番目に書いてあるのが、日本に自主防衛能力を持たせないと。で日本は永遠にアメリカの保護領=protectorate(プロテクトリート)、属国にしておくと。(※中露の競争能力・ドイツと日本の自主防衛力を抑える)

[*[参考]DPG:「1994~99年のための国防プラン・ガイダンス」通称 DPG(Defense Planning Guidance for the Fiscal Years 1994~1999)1992/2/18 作成 ペンタゴンの機密文書。チェイニー国防長官とウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、この機密文書(DPG)の戦略構想に承認を与えた
DPGの内容を知り得たのは、統合参謀会議メンバーと、四軍(陸海空海兵隊)の最高幹部のみ。しかし、DPG作成の三週間後この機密文書の内容が、NYタイムズと、ワシントン・ポストにリークされてしまった。

● DPGの最重要七項目

ソ連崩壊後の国際社会において、アメリカに対抗できる能力を持つ大国が出現する事を許さない。西欧、東欧、中近東、旧ソ連圏、東アジア、南西アジアの諸地域において、アメリカ以外の国がこれらの地域の覇権をにぎる事態を阻止する。

❷アメリカだけがグローバル・パワーとしての地位を維持し、優越した軍事力を独占する。アメリカだけが新しい国際秩序を形成し、維持する。そして、この新しい国際秩序のもとで、他の諸国がそれぞれの“正当な利益” を追求する事を許容する。どのような利益が他の諸国にとって “正当な利益”であるか、という事を定義する権限を持つのはアメリカのみである。

❸他の先進産業諸国がアメリカに挑戦したり、地域的なリーダ ーシップを執ろうとしたりする事態を防ぐため、アメリカは他の諸国に対して《必要な配慮》をする。アメリカが国際秩序にとって “害”とみなされる事態を修正する責任を引き受ける。何が国際秩序にとって “害” とみなされる事態であるか、という事を決めるのも“アメリカ政府のみ”である。

❹アメリカに対抗しようとする潜在的な競争国が、グローバルな役割、若しくは地域的な役割を果たす事を “阻止” する為の(軍事的・経済的・外交的な)メカニズムを構築し、維持していく。

❺ロシア並びに旧ソ連邦諸国の武装解除を進める。これら諸国の国防産業を民生用に転換させる。ロシアの所有する核兵器を急速に減少させる。ロシアの先端軍事技術が他国に譲渡される事を許さない。ロシアが、東欧地域において覇権的な地位を回復する事をそんなのはする。

❻ヨーロッパ安全保障の基盤をNATOとする。NATOは、ヨーロッパ地域におけるアメリカの影響力と支配力を維持する為のメカニズムである。ヨーロッパ諸国が、ヨーロッパだけで独自の安全保障システムを構築する事を許さない。

❼アメリカのアジア同盟国 ~特に日本~ が、より大きな地域的役割を担う事は、潜在的にこの地域を不安定化させる。従ってアメリカは、太平洋沿岸地域において優越した軍事力を維持する。アメリカは、この地域に覇権国が出現する事を許さない。

DPGの中に描かれるアメリカの潜在的な競争国(=敵性国)として描かれていたのは、ロシア、中国、日本、ドイツの四国である。 (※以上、伊藤貫著書より引用)]

伊藤貫
彼らの考えていることは、『日本をアメリカに依存せざるを得ない体制に組み込んでおいて、それで日本の経済をアメリカの金融業者とか大企業の株主がお金をいっぱい儲けられるように構造改革していこう』と。

[*日本をアメリカに依存させ、構造改革による金儲け ]

伊藤貫
日本の経済を利用して、アメリカ人がお金儲けして、でしかも、日本の自衛隊を『アメリカ軍の補助部隊』として!!使えるようにするけども、

西部邁
そうだね。

伊藤貫
日本が独立できるような能力は持たせないと。

[*自衛隊は米軍の補助部隊、独立能力は持たせない ]

西部邁
うん。

伊藤貫
でそっからすると、中国と北朝鮮が日本をターゲットにした核ミサイルを何百基持とうが、日本にだけは持たせたくないと。でここら辺でそういう動機があるから、オバマがワザとらしく広島に来て、自分の国の核兵器の予算は増やしながら、

西部邁
ンフッフッフッ(笑)

伊藤貫
ねっ?日本国民に対して、「世界から核兵器を無くすために一緒に努力しましょう!」と。

西部邁
プッ(吹き出す)

伊藤貫
これ英語で言うと、manipulation(マニピュレーション)なわけ。

[*アメリカは核兵器予算増やして、“世界から核廃絶” と “manipulation” 操られている日本人 ]

西部邁
あぁ〜。

伊藤貫
これだけmanipulate(マニピュレート=操る)されて気が付かない日本人というのは一体どういうことになっているんでしょうね?!

西部邁
猿なんじゃないんですか。

今村有希
(俯いて苦笑)

伊藤貫
いやぁ(笑)

今村有希
(笑)

伊藤貫
とにかく(笑)、これだけ都合のいいように操られてて保守派の人たちが(それを)言わないと。

[*アメリカに都合よく操られても自己欺瞞の自称保守派 ]

伊藤貫
それからもう一つは、自衛隊の幹部には(その現実が)分かっているんですよ。分かっている奴がいるんです。

西部邁
うん。

伊藤貫
僕がちゃんと喋って合うと、これはおかしいと。でもね、自衛隊の幹部の奴は、1対1のプライベートな場で喋ると、「これはおかしいよね、伊藤さん」と言うんだけど、絶対それは出さないんですよ!

[*アメリカの都合のよさを自衛隊幹部も表に出さず ]

西部邁
出さないね。

伊藤貫
うん。

西部邁
実はこの場でもね、ある方を呼んだ時にね、

伊藤貫
はい、

西部邁
僕が今度の安保法制?

伊藤貫
えぇ、

西部邁
アメリカが例えば、何処ぞこに侵略しようなどというね、それにくっ付いて来いと言われた時に、それを断るためには、日本が力を持ってないと断れないでしょうと。

[*アメリカに引きずられない日本の力を強化する必要 ]

伊藤貫
はい。

西部邁
個別的自衛力ね。まずは集団的自衛から始めましょうと安倍さんも言ってて、「自分で自分の国を守ることは出来ません」というところから事を始めて貰いたくないと。アメリカの不当な要請を断るなり、誤魔化すなり、焦らすなりするためには、日本がある程度の力を持たなきゃならないですよね?と元自衛隊の大幹部に言ったら、自衛隊の人がスルリと会話かわして、

伊藤貫
えぇ、

西部邁
何を言うかといったら、「日米が共同でリスクを負わなければ、アメリカから信じて貰えません!」というふうに話をズラしちゃってさ、僕それ以上やったらテレビでケンカになりますからね、

伊藤貫
えぇ。

西部邁
MXに迷惑かけちゃいかんから知らん顔してましたけど(笑)、もう全部そんな流儀ですね。自衛隊も含めて日本の保守派は、「アメリカの付属軍」であることに甘んじる以外にもう道は無いと思っているんだね。

[*米国付属軍として甘んじるほか道はなし:自称保守派 ]

今村有希
はい。

伊藤貫
ド・ゴール将軍(シャルル・ド・ゴール)が大好きなんですけども、

西部邁
あぁ!

伊藤貫
ド・ゴールさんが言ってるのは、アメリカを信用しろ信用しろとと言われるけども、アメリカは民主主義だろうが?!と(笑)

西部邁
ワッハッハッハッハー(笑)

伊藤貫
民主主義だったら、4年後にアメリカの大統領が誰になるかわからないだろうと!!で、4年後に誰が大統領になるか分からないのにその国を信用しろと言われても、信用する気になれないと(笑)

[*四年後のアメリカ大統領が誰か分からず信用ならない ]

西部邁
(笑)

伊藤貫
でそうなんですよ。

西部邁
スゴイねぇ(笑)

伊藤貫
4年後の大統領が誰なのか、誰も知らない人を信用してその人に命を預けて生きてゆくのが楽しい、これっておかしいわけね。

西部邁
そう。

伊藤貫
でもう一つ、ド・ゴールが言った言葉で僕が大好きなのは、『独立無きところにintegrity無し!』と。

[*「独立なきところにintegrity〔統合〕なし」 シャルル・ド・ゴール将軍(フランス) ]

西部邁
あぁ〜。

伊藤貫
で、『integrity無きところに独立無し!』と。

西部邁
そうだね。

伊藤貫
要するに、国家の独立と国民のintegrity(インテグリティ)というのはコインの裏表で、インテグリティを持っていない国民は独立できないんです。で逆に言うと、『独立していない国民はインテグリティが無い』と。

西部邁
統合された状態ね、integral(インテグラル)。

今村有希
はい。

伊藤貫
えぇ。いま仰った自衛隊の元高官が(はぐらかして)逃げちゃったと。自衛隊だけじゃなくて、外務省の事務次官も審議官も局長もみんな逃げるんです。

西部邁
そうでしょう。

伊藤貫
日本の保守派の偉い人たちは全員逃げちゃうんですね!

西部邁
そうね。

伊藤貫
僕はそれを見て、もう一度言いますけど、左翼がintegrityが無いのはどうでもいいのだけど(笑)

西部邁
(笑)

伊藤貫
保守派がintegrityが無いというのが、これが本当に腹が立つんですよね。

西部邁
いまの日本共産党が典型的ですけどね、本気じゃないんですよ。例えば、日本共産党が綱領でね、

伊藤貫
えぇ、

西部邁
自衛隊廃止!と言ってるの。仮に自分たちが政権を獲るなり近付けばですよ、必ず軍隊を持つ。んな事は、昔の共産党はそういうふうに言ってたし、

今村有希
(うん)

西部邁
左翼はそういうふうにテキトーなことを言ってますけど、左翼の言うことを本気にする必要もないんですね。

[*自衛隊廃止を綱領で謳うが、政権とれば軍隊持つ共産党

伊藤貫
(笑)

西部邁
ところが、日本の保守派は、非左翼と言われてる人たちは、

伊藤貫
えぇ、

西部邁
自衛隊の強化について、核武装はまず絶対に論じないしね、

伊藤貫
(深く頷く)

西部邁
或いは、徴兵制も絶対に論じないし、或いは、自衛隊費の倍増についても絶対に論じない。

[*自衛隊強化、核武装、徴兵、予算増を論ぜず:自称保守派 ]

西部邁
日本のその保守派がですよ、

今村有希
(うん)

西部邁
「もう斯くなる上は、アメリカの51番目の州にして貰えばいいじゃないか」ということをね、そういう発言が平気で許されるのね。

[*アメリカの51番目の州にと平気で言う自称保守派 ]

西部邁
アメリカ様がですよ、日本を51番目の州に昇格させてくれるハズが無いんですよ。理由は、日本は1億3000万人口を持っていますでしょう、投票で言えば7、8000万持っているわけですよね。7、8000万の票がどう動くかね、そんな恐ろしい国は州にして貰えないの。

今村有希
うん・・・

西部邁
せいぜい州以下の、それで先ほど言った「準州(territory)」ね。投票権は持たない。その代わり、いろいろ統治上の面倒を見てやるというterritory=準州、或いは、protectorate=保護領の位置に日本を置くと。

今村有希
(頷く)

西部邁
この70年間実質上そうだったんですよ。

[*準州 territory として統治の面倒を見る、保護領 protectorate に置く(戦後70年余) ]

伊藤貫
(深く頷く)

西部邁
アメリカはその味をもうしっかりと噛み締めているわけ。これを手放してなるものか!!と。アメリカの鉄の爪から逃げることは、僕が生きてる限りは起こらないだろうと。僕はもうじき死にますんで。

伊藤貫
はい・・・いやいやいや(笑)

西部邁
伊藤さんが死んだ後は、僕は(日本が)どうなってるかはよく知らんと(笑)

伊藤貫
僕はもうトランプという人間が大統領に相応しい人間かはかなり疑っているんですけども、それと同時にヒラリーが大統領になって欲しいとも思わないです。

トランプが出てきて、1つだけいいこと言ってくれたのは、アメリカの世界を支配するシステムというのは、そもそもアメリカのGDPが世界経済の50%だった時に出来たもんだと。

西部邁
あぁ〜。

今村有希
(頷く)

伊藤貫
今は16%か17%しかないと。そうするとトランプは商売人ですから、

西部邁
うん、

伊藤貫
要するに、軍事知識とか外交知識が無くてもほとんど本能的に「こんなのは割に合わない!」と。で無理に決まっていると。

[*アメリカによる世界支配はGDP50%占めていた時、“割に合わない” とトランプの商売人の直感 ]

西部邁
うん。

伊藤貫
6つか7つのイスラム教諸国で戦争してても全然負けてる。勝てないと。

西部邁
でも、途中で悪いけど、

伊藤貫
はい、

西部邁
アメリカのestablishmentは、日本のGDPはすでに自分のものだと計算に入れてるんじゃないの?(笑)

伊藤貫
ワハハハハ(笑)いやだから美味しい日本市場だから、放したくないわけです!

西部邁
(笑)

伊藤貫
トランプの言ってることで1つ理屈があるのは、彼は、「アメリカはロシアと戦争したくない」と。

西部邁
うん。

伊藤貫
だから、ウクライナ問題でもう(ロシアと)拗らせるのはやめてくれと。

西部邁
あぁ、やめた方がいい。

伊藤貫
それから、「アメリカは中国とも戦争したくない」と。だから北朝鮮が(核を)持っているんだったら、日本にも持たせて俺たち引き上げればいいと(笑)

[*ロシアと戦争したくない “ウクライナ問題”、中国とも戦争したくない “日本に核武装” ]

西部邁
あぁ(笑)

伊藤貫
トランプというのは非常にバカにされているんですけども、ただひとつ正しいのは、アメリカはロシアと戦争したくないよと。中国と戦争したくないよと。で、『ロシアと中国と戦争するのは割に合わない』と言ってるんですね、商売人だから(笑)

[*アメリカはロシア、中国と戦争するのは割に合わない ]

西部邁
(笑)

伊藤貫
で、それは実は正しくて(笑)、アメリカが本当にロシアや中国と軍事衝突するというのは、割に合わない話なんですね。

西部邁
うん。

伊藤貫
だから僕は、例えば尖閣問題だけじゃなくて、南シナ海の問題でも、アメリカと中国が軍事衝突するってことは無い!!と思うんです。

[*尖閣南シナ海をめぐる米中の軍事衝突はない ]

西部邁
僕もそう思うな。

伊藤貫
で日本の保守派は、「そんなことは無い!アメリカは日本を守ってくれるんだ!!」

西部邁
ンフッフッフッ(失笑)

伊藤貫
というのは、彼らの非常にchildishな願望で、英語で言えば wishful thinking(=希望的観測)というんですけど、

[*日本を守ってくれると保守派、wishful thinking ]

西部邁
あぁ、希望的観測ね。

伊藤貫
そうそうそう。日本の保守派は過去71年間、アメリカにしがみ付いていれば大丈夫だと、そればっかり繰り返しきたから、トランプみたいな人間が出て来て、(アメリカの)本当のことを言っても、

西部邁
うん、

伊藤貫
そんなことは聞きたく無い!!と。(※耳を塞ぎながら)本当のことを言うのはやめてくれ!!と(笑)

[*アメリカにしがみ付いてきた、戦後71年にトランプが台頭 」

伊藤貫
でハッキリ言って、アメリカが徐々にその東ヨーロッパとか中東とか東アジアから退いていくというのは、これはもうinevitable trend(イネビタブル・トレンド)。

[*東ヨーロッパ、中東、アジア、アメリカが退くのは避け得難い ]

西部邁
うん、避け得難い。

伊藤貫
避け得難いトレンドになると思いますから、だから日本の保守派と自衛隊防衛省、外務省は、ちょっとそこらへん真面目に考えないと、とんでもないことになりますね。

[*自衛隊防衛省、外務省、保守派が真面目に考える時 ]

西部邁
あぁ〜。我が愛する伊藤貫先生にご忠告申し上げる。自分たちの国家、政権に不都合な人間への・・・

伊藤貫
あぁ〜ハイハイ(笑)

西部邁
“暗殺命令”を最も大量に出したのは・・・

伊藤貫
オバマですね。

[*最も大量に暗殺命令を下してきたオバマ大統領 ]

西部邁
オバマさん。

伊藤貫
はい。

西部邁
(伊藤を指して)・・・そのうちにね、

今村有希
えぇ〜!(驚く)

伊藤貫
えぇ、そのうち。

西部邁
命令が・・・

伊藤貫
えぇ、そう(笑)

西部邁
愛駒に命下る可能性が無きにしも非ずだから(笑)

伊藤貫
あまり本当のことは言わない方がいいという。ハイ(笑)

西部邁
もう全世界がテロに見られるように、あれは単なるそのIslāmic Terrorと考えちゃいけなくてね、全世界が、もうある種の生きるか死ぬかという戦いに入っているんですよね。

[*全世界が生きるか死ぬか、戦いに入っている ]

西部邁
それは各国各様に、特に指導層はそのことを分かってて、

今村有希
(うん)

西部邁
そうであるがゆえに、一方では「あいつは殺してしまえ!」というね、

伊藤貫
(頷く)

西部邁
そういう暗殺命令に大統領が大量に署名するってなことも平気でやってるし、もう日本だけが自分たちはparadiseにおれると思って、アメリカに頼ってればどうにかなれるという、これ英語でいうところの bullshit=嘘話ね、嘘話を信じてもう71年、世界の全体状況が身の毛のよだつ状態へと刻一刻と近づいているんですね。

[*“アメリカに頼っていれば” bullshit 嘘話の戦後71年 ]

伊藤貫
はいそうです、えぇ。

西部邁
ともかく、そろそろワシントンD.C.を引き払って、

伊藤貫
いやぁ〜(苦笑)

今村有希
(笑)

西部邁
日本国家のために(笑)

伊藤貫
いや(笑)あのアメリカって国が世界を如何に間違った方向に引きずってきて、最終的にはアメリカもヒドイ目に遭うし、もしかしたら日本は完全に滅亡してしまうかもしれないし、

西部邁
(頷く)

伊藤貫
それからヨーロッパ、中東も混乱するでしょうけれども、アメリカは最終的に大失敗するまで、自分たちが大失敗したことを認めないでしょうし、そういう国民ですから。

西部邁
あぁ〜。

西部邁
IS(Islāmic State)との関わりでやられているという、あのテロが次第にアジアに近付いていますけども、それを狭いそのイスラミックなんとかという、狭い意味で考えちゃいけないのであって、

伊藤貫
(深く頷く)

西部邁
全世界がね、本当に秩序なき混沌と暴力の時代に刻一刻と近付いているんだということのひとつの現れとしてね、

[*テロにみられるように全世界が秩序なき混沌と暴力の時代に刻一刻と近づいている ]

今村有希
(頷く)

西部邁
あぁいう情勢が次第にアジアにも近付いていると。そういうところで、

伊藤貫
はい、

西部邁
3回、どうもありがとうございました。

伊藤貫
(深く礼)

今村有希
ありがとうございました。

【次回予告】米中露外交・改憲 「MX・表現者シンポジウム」

 

 

アメリカ帝国大混乱!!!② ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜

アメリカ帝国大混乱!!!② ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜


ゲスト:
伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト、近著「自滅するアメリカ帝国 〜日本よ、独立せよ」(文春新書)ほか多数


【ニコ動】
西部邁ゼミナール)アメリカ帝国大混乱① 2016.08.20
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29484089

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160821151015j:image

f:id:sakurajimaoyuwari:20160821151027j:image

 

今村有希
3回に渡りまして、ワシントンD.C.在住の評論家 伊藤貫先生にお越し頂いており、今回はその2回目です。前回はイギリスのEU離脱をめぐり各国各有の国民の歴史に培われた国柄を無視したグローバリズム資本主義では世界が立ちゆかないことなどを論じて頂きました。
いま何故アメリカが大混乱に陥っているのか、近代を顧みながら今後の日本のあるべき姿に大いに参考になる本質的な議論が展開されるかと存じます。それでは先生方、宜しくお願い致します。

西部邁
何かね、グローバリズムというものを最初に広げたのは90年代で、

今村有希
(頷く)

西部邁
あれは、ヒラリー・クリントンのご主人のね・・・何クリントンでしたっけ?

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160821150942j:image

 

伊藤貫
ビル・クリントンです。
西部邁
あっ、ビル・クリントンね(笑)

伊藤貫
はい。

今村有希
(笑)

西部邁
一種の金融グローバリズム

伊藤貫
はいはい、

西部邁
或いは、証券グローバリズムでもって・・・情報グローバリズムも含めてかな。

伊藤貫
(頷く)

西部邁
もうひょっとしたら(アメリカによる)世界の一極支配かと。アメリカは賑わうしね、日本もそれに付き従おうと。

[*金融・証券・情報のグローバリズムで世界一極支配、1990年代にクリントン政権時に押し広げられる ]

今村有希
うん。

西部邁
それに絡んで日本では『構造改革』、structural reform(ストラクチュアル・リフォーム)と。

伊藤貫
えぇ、はい。

西部邁
アメリカ的なコンピュータ計算システムでもって全てを動かそうと。

[*日本では“構造改革” structural reform アメリカ的コンピュータシステムで全て動かすと ]

今村有希
(うん)
西部邁
証券の将来収益もデータに基づけば、確率分布として平均いくら、外れていくらと計算ができると。それであの証券この証券を組み合わせれば、こういうデリバティブ証券ができると、新証券が。
今村有希
はい。
西部邁
あれで全世界に売り捌いて大儲けして、で、蓋を開いたらそんな計算は全部嘘でしたと。
[*デリバティブ証券で大儲け、蓋を開けたら全て嘘だった ]
伊藤貫
(深く頷く)
西部邁
そんなね、未来を予測できるようなデータ、根拠あるデータなんて無いところに、あるとしただけのことですからね。
今村有希
うん(笑)
西部邁
それで金融パニックだ何だと言って大変なことになって、なにかそういうグローバリズム、カネ・・・
[*世界を破壊するアメリカ流 “グローバリズム” の本質 ]
今村有希
うん・・・
西部邁
それどころかね、その一環としてEUはそれやっちゃったんですけども、人間の移動ね。
伊藤貫
はい。
西部邁
とうとう、それがいまやアラブの問題をきっかけに移民問題も絡んできて、大変なことになっている。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
そのグローバリズムの問題について、やはりこの・・・彼(伊藤)はアメリカの責任者じゃないんだけども(笑)
伊藤貫
えぇ(笑)
西部邁
責任を問うというので(笑)
今村有希
(笑)
伊藤貫
自由経済システムが良い良いと言うんですけども、イギリスがEuropean Unionから出る時にいちばん問題になったのが、4つの経済的自由ということを実行したわけですね。モノとそれからサービスと資本と労働力、この4つの移動を全て自由にしようと。
[*英国のEU離脱の際の問題 “四つの経済的自由” モノ、サービス、資本、労働力の移動 ]
伊藤貫
例えば、アダム・スミスとかリカード自由貿易論を唱えた時には、彼らが考えてたのは要するにせいぜいモノと・・・
西部邁
モノね。
伊藤貫
それから、せいぜい育ったサービスを自由にするということだけで、アメリカという国の経済システムはものすごく異常で、何兆ドルという単位のお金ををコンピュータによって、1秒の100万分の1ぐらいのスピードでどんどん動くんです。
[*100万分の1秒の速さで何兆ドルが動くアメリカ経済 ]
西部邁
ねぇ〜。
伊藤貫
その0.000000…
今村有希
(笑)
伊藤貫
…1秒ぐらいで何十兆円もね、あっという間に動くわけですよ。
今村有希
(うん)
伊藤貫
資本がいつどのぐらいの額が動くかというのは、全く予測不可能になりますから、どんどんどんどん不安定化していくわけですね。
でもう一つは、どこの国にも経済システムにはどういうふうに企業と労働者は関係を持つかというんで、これは文化とか歴史とか伝統に規定されるんですよ。ところが、このglobal capitalismとかいうやつは、もう容赦無くreturn on capital、return on equityとか言ってね、要するに株主資本(=equity capital)、もしくは総資本で、return(リターン)、利益率がどのくらいかというんで、ちょっとでも下がると「全部売り飛ばすぞ!!」というふうに脅かすんですよ!!
西部邁
うん。
伊藤貫
そうすると、日本の企業が例えば内部留保がもう何百兆円もあるわけでしょう。だけど、実質賃金はぜんぜん上がらないわけでしょう。なんで上げないの?と言うと、「いや、それはもう株主が怖いから」と。
[*内部留保があっても実質賃金が上がらない日本 ]
西部邁
うん。
伊藤貫
で株主って誰かと言うと、その0.0000000…1秒に何十兆円も何百兆も動かすようなコンピュータなんですよ。
西部邁
(笑)
伊藤貫
それが怖くて、例えば日本の証券市場でも7割は外国勢、大体がアメリカ人なんですけど、その連中が支配してるわけでしょう。
今村有希
はい。
伊藤貫
でアメリカでも企業の利益がどんどんどんどん増えてっても、最近25年間はアメリカ国民9割の実質所得というのは、ジリジリジリジリ下がっているんですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
そうすると、要するに資本が主役で、資本の動きに全部の人間がある意味でenslavement(エンスレーブメント)、
西部邁
そうだね。
伊藤貫
奴隷化するわけですよ!
[*25年間アメリカ国民9割の所得がジリジリ下がる、資本が主役で人間が奴隷化 enslavement ]
西部邁
経済学でね、まぁ貨幣数量説というんですけど、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
(※MV=pt[貨幣数量説]について)Mというのはmoneyね。
今村有希
マネー。
西部邁
まぁ「金融」と思ってください。Vがね、いま喫茶店でveloce(ヴェローチェ)っていうのがね、
今村有希
あぁ、ありますね、はい。
西部邁
あれはもともとは早くコーヒーが出るから。英語で言うと、velocity(ヴェロシティ)というのは速度という意味ね。
今村有希
あぁ〜、へぇー。
西部邁
「貨幣の回転速度」ね。
今村有希
はい。
西部邁
1秒間で・・・いま1秒間なんだけど(笑)、1日に何回転貨幣が動くかというね。
今村有希
はい。
西部邁
Pというのは「価格(price)」なんだけど、Tは transaction(トランザクション)「取引」ね。
[*MV=PT:貨幣数量説、M(貨幣)V(貨幣回転速度)P(価格)T(取引) ]
今村有希
はい。
西部邁
transactionというのはモノですからねぇ、これ生産期間もかかるし、工場つくったりね。
今村有希
はい、
西部邁
(右辺のT=取引:transactionについては)そう大きくは変わらないのね、瞬間的には。ところが、こっち(左辺のMV)の方は、いま(伊藤が)言ったように、Mだ、Vだってのはね、コンピュータ・マネーで、極論すれば、
今村有希
(うん)
西部邁
ものすごい勢いで、例えば、投入されれば大きくなるし、引き上げられればマイナスになるし、
伊藤貫
(うんうん)
西部邁
こちら(※左辺のMV)は大変化を起こすわけさ。
西部邁
そうするとこっちの方(※右辺のT=取引:transaction)はあまり変化しないとすると、全部それは価格(P=price)に反映されるのね。
今村有希
(うんうんうん)
西部邁
これは急激なインフレが起こったり、逆に引き上げられるとものすごいデフレが起こったりという、資本主義の大混乱。
[*コンピューターで急激変化、インフレ、デフレの大混乱 ]
伊藤貫
(うんうん)
西部邁
で、価格が上がるんだか下がるんだか分からなくなると、どの企業も将来どう計画していいか分からないじゃないですか。
伊藤貫
えぇえぇえぇ。
西部邁
作っても高く売れるんだか安く売れるんだか分からないね、
今村有希
はい。
西部邁
そういう状態に資本主義をぶち込んだのが、その Financial globalismだったんだね。
[*価格が安定せず企業は将来の計画が立たない、資本主義を大混乱へと導いた Financial globalism ]
今村有希
はい。
伊藤貫
クリントンの時から、日本の金融市場を全部アメリカにオープンにしようと、それから構造改革しようと、
西部邁
うん、
伊藤貫
見てると奇妙な一貫性があるんです。こういうことを言うと、お前は陰謀説を撒くつもりかと言われるんですけども、クリントンの経済会議の議長をやって、その後に財務長官をやったのがルービン(ロバート・ルービン)という、元ゴールドマン・サックスの会長なんで。
[*クリントン政権時の財務長官、ロバート・ルービン
西部邁
あぁ、いましたねぇ。
伊藤貫
その次に共和党のブッシュの息子が大統領になった時に、それで誰が財務長官になるのかと思ったら、元ゴールドマン・サックスの会長で(笑)
[*ブッシュ政権時の財務長官、ヘンリー・ポールソン ]
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
要するに、民主党から共和党に代わっても、やっぱり財務長官はゴールドマン・サックスと。でその後オバマが2008年に大統領選挙に出た時に誰がいちばん選挙資金を出しているかというと、またゴールドマン・サックスなのね。
西部邁
あぁあぁ〜。
伊藤貫
で、今度ヒラリーが大統領選挙に出ているけど、ヒラリーの1人娘の旦那はヘッジファンドのマネージャーなの。その彼が、ヒラリーの義理の息子が立てた、設立したヘッジファンドに誰が金出しているのかというとゴールドマン・サックスなのね。
[*民主党共和党も財務長官にゴールドマン・サックスオバマの選挙資金、ヒラリーの義理の息子に融資 ]
西部邁
(苦笑)
伊藤貫
でね、これは単なる偶然の一致なのかと(笑)でアメリカの投資銀行でいちばん能力が高いのはゴールドマン・サックスなんですね。
[*参考:ゴールドマン・サックス出身の閣僚:クリントン政権 財務長官 ロバート・ルービンブッシュ政権 財務長官 ヘンリー・ポールソン、ポールソンの前任財務長官 ジョン・スノー  / ワシントンとウォール街との間には幾重ものコネクションがあり、このお陰で金融システム改革も貧富の格差是正も出来るハズがない /ジャグディシュ・バグワティ(経済学者・コロンビア大学)は、この構造を【財務省ウォール街複合体】と呼び、特にゴールドマン・サックスとの癒着構造については【ガバメント・サックス】などと呼ばれた ]
今村有希
(興奮口調の伊藤に思わず笑う)
伊藤貫
ロシアのエリツィンが政権とってた時に、ロシアの国債を発行してたのがこれまたゴールドマン・サックス
伊藤貫
スゴイねぇ・・・
伊藤貫
ギリシャ財政赤字を誤魔化した時に、その時にデリバティブ使って誤魔化したんですけど、それを誰がやったかというとこれまたゴールドマン・サックスなんですよ!!
[*エリツィン政権時にロシアの国債を発行、ギリシャ財政赤字デリバティブもゴールドマン ]
西部邁
(頭を抱えて苦笑)
今村有希
(伊藤のオーバーアクションにただただ笑う)
伊藤貫
これは単なる偶然なのかと!!!(笑)
今村有希
(笑)
伊藤貫
どうもねぇ・・・誰かに操られてるという感覚が強いんですよ!だから、今回トランプが人気が出たり、それからイギリスで52%の国民がNO!!と言ったのも、それからギリシャなんかもみんなEUから出たいと言ってるわけでしょう。みんなね、国民が『誰かに操られているんじゃないか!!』と。それで、僕なんかワシントンの住んでると、『何でゴールドマン・サックスは何でこんなに全部決めるんだ』と。
伊藤貫
それでね、今度のTPP
西部邁
うん、
伊藤貫
あれだってね、アメリカの金融業者がものスゴイ力を持って、裏で全部操作してるわけですよ!!で今のTPPを決めたフロマン(マイケル・フロマンUSTR代表)はゴールドマン・サックス(出身)じゃなくて、シティバンクなんですけどね。
[*金融業が力持ち “TPP” も裏で全て操作している ]
西部邁
うん。
伊藤貫
フロマンもルービンの下、すぐ下で働いていたわけですよ。だから全部繋がってるわけですよね。
西部邁
なるほどね。ヴェブレン・・・ソースティン・ヴェブレンという人が言ったんだけど、
[*Thorstein Veblen (1857-1929)アメリカ 経済学者 ]
伊藤貫
はい。
西部邁
captain of financeね。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
これの逆が、captain of industry なんだけど、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
industryの方のこれはモノをつくる方なんですけどね、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
これ captain というのはこの場合は船長というよりも親分、「総帥」という意味ですね。
伊藤貫
はい。
西部邁
金融の総帥。要するに、アメリカを動かしてるのはファイナンスを牛耳っているキャプテン(captain)であると。
[*captain of finance “金融の総帥” ファイナンスを牛耳るキャプテンがアメリカを動かす ]
西部邁
今はスゴイね、その話聞いただけでね。
伊藤貫
えぇえぇ。でね、例えばアメリカの大企業が稼ぎ出す、毎年の収益の今から半世紀前は、金融業界が獲る分というのはせいぜい15〜6%だったわけですよね。
西部邁
うん。
伊藤貫
だけど、前のブッシュ政権と、現在のオバマ政権では、アメリカの民間企業の全体の収益の40数%を金融業者が獲ってるわけね。
西部邁
ワッハハ〜、凄まじいねぇ(笑)
伊藤貫
そしたら金融業者がアメリカの生産性を上昇させるのに何か貢献したかと言うと、何も貢献していないわけでしょう。
西部邁
うん。
伊藤貫
だけど、利益だけは昔の半世紀前の3倍獲ってるわけですよ、シェアでね!
[*アメリカの民間企業における収益40数パーセントを金融業が占め、半世紀前の3倍に ]
西部邁
そうだよ、カネを持ってるというだけで(笑)
伊藤貫
完全におかしくて、だから表面的には「トランプに投票した共和党の連中はみんな馬鹿だ馬鹿だ!」とマスコミは書くんですけど、
西部邁
うんうんうん、
伊藤貫
でもまぁそれは本当なんだろうけども、だけど、そういうトランプに投票するという人達はみんな、『エスタブリッシュメント糞食らえ!!』と思っているわけですよ。
[*establishmentにNO! トランプ候補人気の理由 ]
西部邁
そうでしょうね。
伊藤貫
で要するに、エスタブリッシュメントに対してNO!!!と言いたいから、みんなトランプを応援するわけですね。
西部邁
(頷く)
伊藤貫
だから、何でアメリカの国民がそれほど怒っているのかというと、やっぱり見ると、とにかく全部利益は金融業者が持ってっちゃうと。
西部邁
うん・・・「目撃者」という映画観たことある?
今村有希
ないです。
西部邁
あれはアーミッシュという古い宗教で、新しいモノは使わないという特殊な集落があるんだ。そこでしょっちゅう出てくるのはね、「アングロサクソンの言うことは信じるな!!」ってね。
[*映画「刑事ジョンブック目撃者」(ハリソン・フォード主演)に出てくる宗教集団、近代的技術を使わず暮らしているアーミッシュ / 【アーミッシュ】:キリスト教の非主流派で、アメリカではペンシルバニア州を中心に居住し、自動車や電気を用いず農耕や牧畜を中心とした移民当初の生活様式を保持している。]
伊藤貫
うん。
西部邁
今はアングロサクソンじゃないんだけど、当時はアングロサクソンが金融を握っていて、それでその金融の動かし方に相応しい言わば理屈話をね、仕立てて、それがワシントン若しくはニューヨークから流れてくると。それに対して、このミドルウェスト、中西部のね、真面目に小麦を植えて、トウモロコシを穫ってるそういう人達がね、
今村有希
(うん)
西部邁
勝手に農産物の価格を上げられたり下げられたり、いろんなことをしながらどんどん搾取されていくと。そして、それで正しいんだという理屈をまた東海岸のインテリたちが新聞だ、あの頃はまだテレビは無いけれども、それでやるというね。
伊藤貫
(うんうんうん)
西部邁
そういうことに対する反発というのは、アメリカでずっとあるのね。
[*真面目な勤労者の反発、アメリカの中西部 Midwest ]
伊藤貫
はい。
西部邁
そういうことで考えると、多分もうアメリカ社会のね、中西部あたりのもう何百年にも渡ってあるね、そういう勤労する人達の不満ね。
今村有希
はい。
伊藤貫
(頷く)

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160821150903j:image


西部邁
金融にこう右行け左行けと牛耳られることへの不満、それが今や中西部に限らずね、いろんな Colored People その他を含めて広範に広がっていて、それがよく分からないけれども、あのトランプなる人物はどうも俺達の本心の不満をね、表してくれているようだと、それ行け!!と。
で、僕も密かに太平洋のこっち側からその通りになって欲しいと思っているんだけど、どうもそうは行かないようですね、エッヘッヘ(笑)
伊藤貫
Wall Streetの連中からの(トランプの)評判が悪いのは事実なんですけども、(西部)先生の仰ったアングロサクソンが金融業界をコントロールしているというのは実は1950年代までのことで、
西部邁
50年代までか。
伊藤貫
60年代からは別の人達が降臨して、それは名前は言いませんが(笑)
西部邁
言わない方がいいよ(笑)
伊藤貫
言わないけど、うん(笑)
西部邁
トランプを支えてるのは、この世は不公平だ!!というそういう直感、感情でしょうねぇ。
今村有希
(頷く)
西部邁
でもそれはアメリカだけじゃないんですけどね。
伊藤貫
アメリカだけじゃないですけど、あのアメリカを見る時に理解して頂きたいのは、0.1%、1%、10%という差別があって、でアメリカを本当に支配しているのは0.1%なんですよ。でアメリカ全体の過去20年ぐらいの資本の取引による利益の半分は、この0.1%が全部握っているんですよ。
[*アメリカに広がる0.1%、1%、10%層の差別、ここ20年の資本取引の利益半分を0.1%が得る ]
西部邁
うん。
伊藤貫
でアメリカの政治家の共和党も民主党も政治資金の半分以上は、この0.1%から貰っているんです。
西部邁
それなんだねぇ・・・。
伊藤貫
だから、経済政策だけじゃなくて、外交政策にしても軍事政策にしても、この0.1%を敵に回したら、アメリカの政治家はもう誰もやっていけないと。
[*資産トップ0.1%層が政治資金を提供する、経済・外交・軍事政策も敵に回せない異常さ ]
西部邁
うん。
伊藤貫
それから次の1%というのは、所得がどんどん増えているのが1%なんですね。だから、金持ちとしていい生活をしているんですけども、それじゃあこの1%は政治権力を握っているかと言えばそうじゃない。政治権力は0.1が持っているわけです。
西部邁
うん。
伊藤貫
で、過去25年間で見ると、生活レベルが上昇してきたのが10%なんですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
だから、トップ10%に所属している人達はそれほど金持ちになったわけじゃないんですけども、生活はどんどん楽になっていますから不満は無いわけですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
例えば、マスコミなんかで今の体制がいいんだいいんだと言ってる奴らは、みんな一応10%のメンバーなんですよ。
西部邁
そうか。
伊藤貫
自分たちはエスタブリッシュメントのメンバーだという意識があって、実は共和党も民主党も政策はそれほど違っていないですから、oligarchy(オリガーキー=寡占体、寡頭政治)なんですよ、oligopoly(オリゴポリー=寡占)というか、オリガーキー・システムになっていると。
[*0.1%層が政治権力を支配、1%層は金持ち、10%層は生活レベル上昇しestablish意識 / 超富裕層オリガーキー「寡占体」が政策の違いがない民主党と共和党を支配する ]
西部邁
寡占体ね。
今村有希
寡占体、はい。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
単一じゃないんだけど、ごく少数、今で言えば0.1(%)という、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
oligopolies(オリゴポリーズ)ですね。少数者が牛耳っている。
伊藤貫
で大学なんかでも、例えば左翼っぽいというか、リベラルっぽいことを言いたがる教授にしても、結局は10%に、
西部邁
うん。
伊藤貫
若しくは1%に、ハーバードの教授なんかは1%ですけども。
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
だから、今のシステムを根本的に変えたいとは思っていないわけですね。
西部邁
うん。
伊藤貫
そうすると、悲惨な目に遭っているのがボトム6割ぐらいで、ボトムの5割6割ぐらいはもう生活レベルがどんどんどんどん下がっているわけですね。
[*ボトム5〜6割は生活レベルが下がり、悲惨な状況に遭っている ]
西部邁
そうか。
伊藤貫
この人達は例えば、僕なんか去年の夏に女房と一緒にペンシルバニアとかウェストヴァージニアとかオハイオとかドライブしてたらもう田舎へ行くとヒドいんですよ!涙が出るというぐらいもうボロボロでね。
西部邁
うん。
伊藤貫
でちっちゃな町、人口数千とか1万ぐらいの町へ行くと、3割ぐらいが空き家なんですよ。
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
でボロボロになって崩れているわけ。でね、レストランなんかももうホコリだらけで、要するに誰も入っていない。要するにもう可処分所得がぜんぜん無いわけ。
西部邁
うん。町に漂流して出てたわけね。
伊藤貫
そうそうそう。
西部邁
で、裏町で乞食をやってる、簡単に言えば。
西部邁
そうそうそう。
今村有希
(うんうんうん)
伊藤貫
ワシントンに住んでる限りね、分かんないんですそれ。
西部邁
うん。
伊藤貫
下の5割から6割の国民の生活がどれぐらい苦しくなっているかってことは、アメリカのマスコミは意図的に報道しないんですよね。
[*人口数千〜1万人程度の小さな町では空き家3割、可処分所得がない、国民生活苦を報じないマスコミ ]
西部邁
だから昔からね、産軍複合体(※もしくは軍産複合体)、 military industrial complex ってアイゼンハワー(ドワイド・アイゼンハワー)というね、50年代の大統領をやった方で、引退にあたって、要するに、産業と軍隊が複合しているから、これは権力を握るから気をつけろ!と。
[*産軍複合体 military industrial complex(MIC) 国家に行使する可能性指摘(アイゼンハワー) ]
今村有希
はい。
西部邁
あれを言ったのは、まぁ55年だとすれば、もう70年近く経って、
伊藤貫
はい、
西部邁
いま起こったのは、本当に一握りのこの場合は産業というよりも金融ですね。それこそ『0.1%の金融資本』がね、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
それが軍隊どころか、政治もマスメディアも何もかも握っているというね。それでね、民主主義アメリカ。
[*0.1%の金融資本が政治からマスコミまで支配、アメリカの民主主義を真似しようという日本人も ]
伊藤貫
アメリカでいちばんおかしいのは、政治資金のシステムがね、確か10年ぐらい前に最高裁が非常におかしな判決を出して、一応、政治資金規正法というのがあって、アメリカの普通の人はMAX、最大限で1年に27万ぐらいがmaximumの最大限の。
ところが、政党に寄付するのではなくて、自分自身で政治活動団体をつくって、
西部邁
あぁあぁあぁ。
伊藤貫
それで特定の候補を応援するのには、個人ひとりで何十億、何百億使おうがそれは表現の自由だと!でトップ0.1%というのは冗談抜きに、毎年ひとりで50億、100億円使ってケロっとしてる連中がいっぱいいるわけですよ。
[*アメリカの表現の自由、おかしな政治資金規正法
伊藤貫
アメリカのトップレベルの資産層というのは、自分の個人資産が何兆円ですからね。だから何兆円も持っている人は、例えば、トマス・ピケティ(トマ・ピケティ)ですか、「LeCapital」(資本論)で書いていたんですけども、そういう billionaire(ビリオネール)、700億ドル、800億ドルとかそういうのを持っている人達は、returnが毎年8%〜10%あるわけですよ。すると、毎年5000億収入がある人達にとっては100億円なんてもうねぇ、爪の垢みたいなもんで、
西部邁
そうでしょう。
今村有希
はい(笑)
伊藤貫
それで政治家は政治家で、あの人は100億円出せるらしいとか言うと、もう血相を変えてしがみついていくわけですよ。
[*billionaire 5兆円ある人は金融で5000億円収入、政治家は100億円に血相を変えてしがみつく ]
西部邁
ヨーロッパをもう15年ぐらい前かな、ちょっと旅した時にもう分かったんですよ。つまりオーベルネというのかな、あのレストラン付きのホテルがあるでしょう、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
有名なの。全部田舎にあるんですよね。なんでこんな田舎でこんな豪勢な食事がと思ったら、アメリカからね、いま言ったような連中が飛行機でですよ、家族を連れて、おそらく友達も連れて、ちょっと飛行機に乗ってどうする?リヨンあたり行くかってな、そういう調子の動き方をしているというね。
今村有希
へぇ〜。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
そういう世界。
今村有希
うん・・・
西部邁
そのど真ん中で(伊藤は)暮らしてらっしゃる(笑)
伊藤貫
(笑)
今村有希
(笑)
伊藤貫
政治資金の話で言いますと、カール・アイカーンという乗っ取り王、企業の乗っ取り王で有名な人が、「今年は僕は大統領選挙で既に150億円使うことにした」と。
西部邁
おぉ〜。
伊藤貫
それとは別に、シェルドン・アデルソンというラスベガスのカジノ業者がいて、彼は世界で8番目か9番目の金持ちらしいんですけど、彼ももう100億円以上使うと。
[*投資家のカール・アイカーンは大統領選に150億円、実業家のシェルドン・アデルソンは100億円使う ]
西部邁
うん。
伊藤貫
でこういうことを公言するわけですよ!
今村有希
(笑)
伊藤貫
そうすると政治家はみんなビビって、アレを敵に回したら大変だと。しかもおかしいのは、ヘッジファンド業者で非常に金持ちの連中が、例えば共和党のルビオ(マルコ・ルビオ)という大統領候補にいっぱいお金を出していたんですけど、そいつらヒラリーにも出しているんです、民主党の。
西部邁
うん、そうなんだねぇ。
伊藤貫
そうすると、ヘッジファンド業者というのは政党別に対立しているようなふりをしながら、共和党の大統領候補にも民主党の大統領候補にもそれぞれ数億円ずつ渡しているわけ。
西部邁
こういうアメリカの0.1%の金持ちたちの動きと比べると、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
日本の都知事は・・・セコい!!と。
一同
(爆笑)
西部邁
アメリカを見習う気は無いが、まぁ偉大な captain of finance が、アメリカに生まれ、アメリカを牛耳って、
伊藤貫
(頷く)
西部邁
それに対する多数派のね、ほとんど直情的な反発がね、
伊藤貫
えぇ。
西部邁
選挙結果がどうあれね、広まって、これが二度と再び燎原の火にように広がったこの格差に対する不満は消えることは無いであろうと。・・・ということで次の週に入りましょうか、
一同
はい。ありがとうございました。

 

 

 


【次回】今週の続編です