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▪️ピケティ騒ぎの後始末②~利潤率はなぜ一定なのか?~(佐伯啓思×柴山桂太:西部邁ゼミナール)

▪️ピケティ騒ぎの後始末②~利潤率はなぜ一定なのか?~(佐伯啓思×柴山桂太:西部邁ゼミナール)

【ニコ動】
西部邁ゼミナール)ピケティ騒ぎの後始末② 2015.04.12

思想家:佐伯啓思

京都大学准教授:柴山桂太

評論家:西部邁(著書「蜃気楼の中へ」新版:中央公論社表現者5月号 4月16日発売)

女優:小林麻子

小林麻子
先週は「ピケティ騒ぎがどうして起こったのか?」を議論していただきましたが、今週はその『21世紀の資本』という書物の内容に立ち入る形で、ピケティの主張が相当に説明不足であることが明らかにされるはずです。

柴山先生に、利潤率(r)が成長率(g)を上回るという事態(r> g)がどうして長期にわたって持続したのか、またそれが、どうして所得格差の拡大をもたらしてきたかについて説明をお願いいたします。

柴山桂太
ピケティの本で、まぁ分厚い本だけども「一箇所だけものすごい有名」になって・・・これだけで有名になったとも言える。それが、r(資本収益率)とg(経済成長率)の不等式(r> g)という、いま黒板に書いてあるんですが、これ少し専門的な話になりますけど、rというのは、資本、会社の持ってる機械だとかの実物資本と金融資産が利子でもって増えていく、その増えるスピードと、gというのは経済成長率、GDPが増える。

我々の賃金というのは普通「g」に対応しますので、経済成長、ありていに言ってしまうと、「我々の賃金が増えるスピードよりも、お金持ちの持つ資産の増えるスピードの方が大きいので、資本主義社会においては格差が広がる」ということを、ピケティは過去300年ぐらいの統計データを使って、経験的にそれが過去もそうだったし、これからもそうだというふうに言ったんですね。

[*r(資本利益率)> g(経済成長率)]

小林麻子
はぁ。

柴山桂太
ということなので、これからアメリカ中心に世界の自由資本主義社会で、再び、お金持ちはよりお金持ちになり、一般労働者はたいして給料が増えないと、こういうふうな社会が実現すると言ったんですが、『問題は、rとgの不等式がなんで成り立つのか?ってことも含めて突っ込んだ説明が無いんですよね。』

うん。

柴山桂太
ただ、『歴史的にそうだった』というだけなんです。

小林麻子
はぁ。

所得格差の拡大に対する不満は、どうして爆発しないんですかね?・・・あっ、どうして革命は起こらないんですかっ!!!

???ど、どうしてでしょうねぇ・・・(笑)

小林麻子
アハハ・・・ガクッ(笑)

はっはっは。まぁそれなりに先進国はね、日本もアメリカも、それからヨーロッパも勿論、いろんな問題がありますが、しかし経済的な水準からすればね、戦後、相当な勢いで成長しましたから、もうここまで来ると、かなりのレベルまで来てるわけですね。かなりの豊かさを実現している。

小林麻子
はい。

だから『革命』を起こすということは、自分もスッカラカンにならないとダメだし、社会全体の秩序も全ていったん破壊しないとおかしい。

小林麻子
はい(ペコリ)

そこまでやってまでという気力は無いと言いますかね、切迫感はやはり無いんじゃないでしょうか。

小林麻子
はい。

今ね、佐伯さんが仰ったことを別の言い方をすると、どうして所得格差が開いているのに、低所得者が不満を爆発させて社会を破壊するほどの大騒ぎまで持っていかないのかと、簡単な説明はこうなんですよね。

格差は拡くているんでしょう。俺はピケティ正しいんだと思う。ところが、そのプロセスで何が起こったかと言うと、勿論、食えない人がいないわけじゃないんだけども、先進諸国で言えばね、それが労働者がいて、労働者が同時に抹消したとも言われるわけね。そういう人たちが雇用契約を結んで、非正規雇用も含めて、賃金稼いで、サラリーを貰って、それでもって買いたいものを買って、それで、まぁまぁね、奥さんを貰い子供を育てて、子供を学校に行かせている。生活がそこそこ、まぁ落ち着いた社会でいえば成り立っているのね。

格差が拡こうとも、それが実現するにあたっては低所得者なり中所得者なりが、それなりに自分で判断して金を稼いで、それで金を使って生活をしているのよ?

小林麻子
はい。

その限りでは、生活に対する満足とは言わないまでも、自己了解を持った上で生きてるから、そう簡単に騒ぎにならない。

騒ぎになるのはやっぱりね、『明日のパンも無い』というね・・・

うん。

明日のミルクも無い人間がわんさかいる時に、決起するということはあってね。

小林麻子
あぁ〜。

ところで佐伯さん、こういうふうにしたらあれ?

これ所得、資本の分配率ね。

分子:r(利潤率)・K(資本)
分母:Y(所得)

r・K/ Y

Yというのは経済学の習慣からならって国民所得なり、国民総生産だと。Kは、これも習慣からならってkapital(カピタル:資本=capital)で資本の量。この場合、厳密に言うと総資産ですけどね、金融資産も入れて。このrというのはrate of returnで収益率、ここで言ってる利潤率だとするでしょう。

そうするとね、総所得(Y)のうちに占める資本家の取り分というのは「rK/Y」これが『資本分配率』ね。これがどんどん大きくなるというのがピケティの主張なわけさ。

いま真剣に座って、その本(21世紀の資本)を読む気もしないんだけどもね、単純計算してみるわけさ。

資本分配率(rK/ Y)の変化率は何かと言ったら、変化分をΔ(デルタ)で表すよ。

r・K/ Y:変化率
→ Δr/r+ΔK/K−ΔY/Y

Δr/rというのは「利潤率の変化率」ね。これプラスこんどKね。ΔK/K これは「総資産の変化率」、それから分母にある分の変化率はマイナスになるんですけど、ΔY/Y 、これは算術の問題ね、歴史の問題の前にね。

それで、このこれ(ΔY/Y )のことをここでは言葉を変えて、成長率gで表しているわけさ。(ΔY/Y =g)

問題はこの「ΔK」なんですけどね、総資産の増分ね、ここが一つ、この(21世紀の資本)ではどうなっているかはともかくね、多くの場合ね、資本、資産の増分というのは、主として利潤量「r・K」から来ると。これに非常に近い。すると、ΔKはrKなわけさ。(ΔK=rK)すると、ΔK=rK、ΔK/K=rK/Kで、分子と分母のKは消去されるから、rが残ってくるわけね。(ΔK/K=rK/K=r)

それでね、もしも利潤率がこの本によれば「5%」ぐらいで歴史的に安定していると。

[*注:ピケティの「21世紀の資本」では、過去データから「資本収益率(r)」が4~5%であり、その数字は今後も変わらないと予測されている。だが、本当にそう言えるのかは、多くの論者が疑問を呈している。]

ということは「Δr/r」の変化率は、「ゼロ」(=5%で一定とするなら変化率は0となる)なわけね。(Δr/r=0)というわけで、これは消去される。
資本分配率(rK/ Y)の変化率について

→ Δr/r+ΔK/K−ΔY/Y

:ピケティによれば資本収益率は5%前後で一定 ∴ Δr/r=0(変化しない)

:ΔK=rK ∴ ΔK/K=r

:ΔY/Y (経済成長率)=g

単純計算に若干の考慮を加えると、資本の分配率は、「r−g」でね。

r・K/Y 変化率 ➡︎r(利潤率)−g(経済成長率)

r> g(資本利潤率が成長率より大きい)ならば、資本分配率(rK/Y)の変化率はいつもプラスなわけさ。資本分配率はどんどん大きくなっていく。

[*rK/Y=r−g(r−gがプラスならば、資本分配率=資本家の取り分 はどんどん大きくなる)]

そうするとね、この人(ピケティ)は歴史的に大発見した。これはね、大発見らしくて・・・大確認か。僕のような確認することは嫌な人間が尊敬措く能わざる気持ちになる。

けどしかしね、単純な中学生級の計算でそうだろうなと思うのなら、そうすると説明すべきことはね、この「成長率」(ΔY/Y=g)の方はね、これ普通でいえばですよ、だいたい、労働生産性と人口増加率であって、これがだいたい1%だっていうんですよね。これはまぁ仕方ないの。これは経済を離れた話でね、労働生産性というのは技術によって決まりますからね、まぁそんなに大きくはね、1%ぐらいずつしか。

人口だってね、経済の外で決まりますから、いまの日本の人口の増加率はマイナスですけども(人口減少社会)、まぁだいたい(労働生産性はさほど飛躍的に変化しない、よって、経済成長率とは)『人口学的に決まる。』

[*一般に、経済成長率は、労働人口の増加率と技術進歩による生産性の増加率によって決まる。]
【「問題はr(資本収益率)ね。なんで、(ピケティによれば)rが5%で一定なのか?」】ということについて、何ら説明、論理的に説明でないとしても、歴史的に説明しないと、r> gならばなんとかかんとかとか言われたってさ、僕は、(巷のピケティ熱のごとく)騒ぐ気は起こらないわけよ。

柴山桂太
うん。まぁだから、確かに資本(収益率)が5%というのは、過去300年間の統計をとってみると、年によって変動はあるのですが、だいたいrつまり「資本の収益率」は、4~5%でほぼ一定しているんですね。

g(経済成長率)は、(ピケティが)仰るように高度成長期には高いし、いまは低い。200年間ぐらいを平均すると1~2%ぐらいなので、(総じて)常に資本が拡大する影響力は働いてきた。

でも、普通に考えると変なんですよね。つまり、経済は1%ぐらいしか成長しないのに、お金持ちの富は5%増えていくというのは、なんでなんだ?と疑問に思いますよね。

小林麻子
はい。

柴山桂太
でも、(ピケティは)説明していないんだけども、『幾つかの可能性』はあって、一つはその、資本というのは何か新しい商品を作る時の機械を買ったり、投資をしますよね。そこで発生する収益の一部が資本の取り分として入るので、何かそういう常に次々と資本が新しく生まれ変わっていって、新しい収益をあげる、若しくは、あげる期待がずっと発生しているということによってあがっているという解釈は一つありますね。

この本にも書いてあるんですけど、K/Y(資本/国民所得)、これ所得を満たすのにどれだけ資産を使うのかという「KYレーション」、これがどんどん上がっているということも実証されているのね。それもそうなんでしょう。

[*よかったら、このサイトが参考になるので、ご参照ください。

でもこれ(K/Y)普通で言うとね、わかるかなぁ。普通はモノを生産するのにね、簡単にいえば、資本と労働の両方、原材料はまぁどっちみち差っ引かれるから原材料は抜きにして、資本と労働を使うのだが、割合において、資本の量が(現代において)どんどん増えている。

これね、英語で言うと「capital-using(資本使用的な)」、資本をたくさん使用するような、technological-innovation、技術革新が数百年立て続いている。これね、歴史的にみてそうでしょう?だってさ、工場もできるし、車もできるしさ、いろんな科学装置もできるし、もっと言うと、鉄道の線路も敷かれるしさ、モノを作るのにいろんなね。

これだけじゃないんですよ、物理的な資本だけども、『資産』としてもね、株式会社制度が19世紀から20世紀に急速に発達しますでしょう?そしたら、この物財の収益の可能性を証券化して、securitization(証券化:セキュリタイゼーション)、security、証券にして、この証券を社債だとか株式にしてまた売り出すという形で、どんどんこの(K/Yにおける)「K(資本量)」が増えてくるわけさ。

そういう意味でのね、資産、資本といって到らなければ、資産使用的なtechnologicalおよび、この場合は株のこともあるから、social-innovation、革新がどんどん続いていくという歴史的経過があったと、あるんでしょうね。

小林麻子
うん。
そうすると問題はですよ、しかも、これ(K)がイノベーション(innovation)ね。あぁ〜俺ばっかり喋って悪いなぁ・・・『革新』さ。

つまりね、佐伯先生があるinnovation起こすわけ。そしたら新商品を作れるわけ。極論するとね、ある一定期間、他のやつが特許を買うまでは、あるいは、適当にマネするまでは、佐伯さんは自分の製品についてはある種の「独占」ね、(独占できる)期間がある。競争者がいても、競争者は少ないから「寡占」ね、佐伯さんの他に2人か3人しか(競争相手が)いない。

小林麻子
はい。

普通の、あの馬鹿たれのエコノミスト、経済学者が言ってるような、市場競争、競争市場なんていうんじゃなくてね、innovationが立て続く世界では、innovationに成功した奴らが「自分のmarketを持つ」わけ。何事か独占、何事か寡占的な。ということを、あとで詳しい説明ありますけども、そういうのは『自分で価格付けをする』わけ。

小林麻子
あぁ〜。

[*innovationの後 独占・寡占が生じる]

このスマホイノベーションスマホはね、5・6万で売りに出して、しかもそこで需要予想もやりますでしょう?「結構、みんな飛びつくだろうな」云々・・・自分でpricing(プライシング)、価格付けをやる。自分でadvertisement(アドバータイズメント)、広告もやる。

ついでに言うとね、いろんな不都合があったら、なんてったって金の問題は国家にとって大問題ですから、財務省とか日本銀行とかそういうところをちょっと動かして、それに相応しいですよ貨幣供給なり公債のオペレーションをやってくれ、とこうなるでしょう?そうするとね、「5%」になっていましたというんじゃなくて、独占・寡占を中心とする経済のあれが、だいたい5%ぐらいは上乗せしてね、この場合は賃金に上乗せして取る、というふうに「自分で決めている」から5%になりました、という説明じゃダメなの?

柴山桂太
うん・・・そうだと・・・もちろんピケティがそう言ってるわけではないんですよ。あえて、rとgで、rが5%の理由を説明するとすると、それはかなり有力だと思いますね。

おそらくそうだと思う。

柴山桂太
えぇ。いまAppleって会社がスマートフォンで有名で、あそこは「利益率が40%」ってものすごいんですよね。

[*Apple売上総利益率38%(2014年度第四半期)]

小林麻子
す、すごい!

柴山桂太
すごいんですよね。ある意味で価格を事実上支配、市場支配してしまっているんで、相当な利潤を取れるんです。

小林麻子
はい。

柴山桂太
その大部分が「株主」とか、Appleの「経営者」に入るわけですよね。

そういう形で、このAppleの新商品みたいなものが次々に生まれてゆけば、確かに利潤率はすごい高いものを維持するんだというふうになります。

ということは、裏を返すと「それを買ってる人がいる」ってことですよね。

小林麻子
はい。

柴山桂太
つまり、新商品が次々に生まれてくるということは、反対に言うと、資本家が儲けようと思っている反面は、次々に消費者がそれを買ってくれるからそういうのが起こるわけで・・・

そうなんだよねぇ。

柴山桂太
なので、r> gが拡大しているのは、「資本家ががめつい」という以上に、『消費者が新しい商品を欲しがっているから』って、こっちの方が原動力になっているというような解釈もできるんだと思います。

小林麻子
はい。

結局、資本主義というのは先週の話でね、cap、capitalismの「cap(キャップ)」というのは頭、つまり先頭を走るものなんですね。

だがら、資本主義というのは常に新しいことをやって、新しいものを開拓して、新しいところに利潤機会をつくっていくというそういうシステムというか装置で・・・

うん。

現代では、20世紀では新しい分野というのは常にイノベーション、基本的には『技術革新』で起こる、新しい技術。

うん。

で、新しい技術は確実に利益をあげるわけですよね。

小林麻子
はい。

それが、場合によっては10%近くの利益をあげることができる。だけど、古くなるものもあるわけですよね、こういう衣服だとか机だとかコップだとかありますけども、あるいは自動車だってそうだけど、自動車だって出てきた頃には、売れば10%ぐらいの利益があがったかもしれないけども、いまトヨタの車一台売ったってね、ほとんどたいした利益があがらない。

仮に(車一台売った利益が)2%ぐらいだとしますよ。そうすると、わりと我々の生活の中にも入ってしまった既存のモノに関しては、収益率は非常に低くなるわけですよね。

結局、そこのところでどういうことが起きているのかということをやっぱりもうちょっと見ていかないと、この本当の意味での格差の問題というのは分からないと思うのですが、問題は、その新しいスマートフォンだの出てきたり、新しいインターネット関係のものが出てくる、今度はバイオが出てくると。で、《その新しいものが、逆に成長に結びつかない》ってことですよね?

そうだね。

利益率は10%近くあがるかもしれないけども、平均したら5%ぐらいあるかもしれないけども、成長率が2%だということは、ぜんぜん新しいものがそれに見合うだけの成長に結びついていない、そのことの方がむしろ重要なところで、そのcapitalismの「cap」というものはもう先に行っているのだけども、先に行ったものがそれだけの経済全体の膨らみになってこないという。

[*新しい商品が成長に結びつかない]

これ経済学じゃなくて、また単純計算なんだけど、先ほどね、KYレーション、資本と所得の割合をやったけど・・・

仮に労働生産性をL、LはLabor(レイバー)、勤労者の数ね、Yは所得、だからY/Lで「労働生産性」労働平均生産性でしょう。これはこうでしょう?

Y/L=Y/K×K/L

Y/Kは、先ほどのK/Yの逆で、K(資本の量)がどんどん増えていくのだから、Y/Kは(分母Kが増えていくことで値が)どんどん下がっていく。

ところがね、資本使用的(=Kの値が増大していく)というのは、この場合のこれ(K/L)は「資本装備率」というのだけど、1人の労働者にあてがわれる装備ね。これね、どんどん資本の装備が大きくなってくるから、これ(K/L)がどんどんあがるわけさ。

L:資本の量がどんどん増大する
:よって、Y/Kの値は小さくなる↓
:K/Lの値は大きくなる↑

これね、単純なイメージで悪いのだけども、そうなってくると、労働生産性(Y/L)は、、Y/Kの値は小さくなる↓ K/Lの値は大きくなる↑ ということでもって、多くの場合はキャンセルされて(=減少と増加で打ち消しあうので)あまり(Y/Lの値は)大きくは変わらない。こういうふうになってくるでしょう。

そして、成長率gは何かというと、長期的にね、仮にこの労働生産性をη(エータ)で表すとね、労働生産性(η)かける人口増加率なわけさ。人口増加率をnにしましょうか。

g(経済成長率)=η × n

g=η(労働生産性、エータ)×n(人口増加率)

η(エータ)=Y/L=Y/K×K/L

人口増加率nはほとんど尻尾じゃない。日本で言うとマイナスになっている。それでη(エータ=労働生産性)が変わらないとなると、先ほど言ったように、資本装備率(K/L)があがるせいでね・・・そうするとg(経済成長率)はあまり変わらないというね。

そういうことが『長期的傾向としてあるということ』なんですよね。

うん。

それで他方、(資本)利潤率rは、独占・寡占の価格政策、広告政策、金融政策によって、(ピケティによれば)4~5%になってくると、r> gとなる。

僕が言いたいのは、そんな計算、算術がやりたいわけじゃなくて、なんか、そのあたりのことにちょっと深入りしてくれないとさぁ・・・

フッフッフッフ

r大なりg(r> g)でとにかく格差拡大、資本主義ダメーーーとかさ、ついでにアベノミクスもダメーーーとか叫ばれたってねぇ、ダメなんでしょうけど何もかも。

フッフッフッフ

柴山桂太
(苦笑)

小林麻子
(申し訳なさそうに、笑)

もうね、お前たちお猿さんじゃないんだから、もうちょっと(今までの簡易な数式にしたような)算術ぐらいやって、こんなことが現に起こったのかな、というね、思索は重ねてもらいたいなと、ワシは思いましたがね。

r> gという式からね、結局、いわゆる左翼の側は「だから累進課税をやれ」と。「rを下げろ」という話をしていて。で、いわゆる新自由主義者たちは、「だからgをあげなきゃだめなんだ」と「gをあげれば問題解決する」と(笑)

それは確かにね。それもそうだ(笑)

だから(gをあげるべく)「もっと成長戦略をやれ」と「もっとイノベーションをやれ」という話をしてて(笑)

しかも、こんなこともあるんだよ。

これね、労働者があてがわれる資本総量が増える(=Kが増えることで、K/Lが増える) ということでしょう?

ということはね、一般的に言うとね、『失業』ね。

うん。

Unemployment(アンエンプロイメント=失業)、もちろんこれも5%、10%いろいろあるけども、簡単にイメージ的に言えば、【「労働を使わなくても資本でなんとかなってくるから、失業圧力が常にあるということ」】ですよ。

[*K/L(資本装備率)が上がる➡︎失業率につながる]

あとは言葉でいう。ごまかしちゃうけども、これは(ピケティの本には)一切出ていないけども、失業圧力がずっとあるということは、基本的には、賃金の上がり方が非常に少ない、あるいは、遅いということですよね。

[*失業圧力が高い➡︎賃金の上昇が遅い]

そういうことも、r=5%の裏にはさ、仮にwage(ウェイジ:賃金)を「w」で表せばさ、wageもまた低いところを低迷しておるというね。

小林麻子
うん。

そういうことも議論されていないんでしょう、この本には?

柴山桂太
そうですねぇ・・・ただ、どうして5%で、r> gが成り立つかは別として、rとgが正しいとすると、将来的にいろんな問題が起こるというのは正しいと思うんですよね。

まぁそりゃそうだ。正しいんだろうね。

柴山桂太
さっき仰ったように、イノベーションはどんどん起こる。だけど経済は(思ったように)成長しないし、労働者の賃金も上がらない。経済は低成長に入るのだけども、格差だけは広がっていくふうになるということなんですが。

先週、柴山さんが最初言ってくれたことなんだけど、今週も言ったか・・・rが実現されている前には、そもそも、勤労者はinnovating(革新的な)commodity(商品)なり何なりを買っているんでしょう?と。

小林麻子
うん。

そうするとね、資本家が悪くて勤労者は可哀想という単純な分類にはいかないでしょうと。

もっと露骨に言うと、『所得格差拡大が仮に社会悪だとしたら、その社会悪をリードしているのは、captain:資本家だが、それにやすやすと追随しているのは、consumer:消費者でありlaborer:労働者である』と。

小林麻子
(俯き加減で)はい。はい。

『両方とも所得格差の共犯やんけ!』ってね、そういうことが含まれてるってことが一つと、もう一つは、何はともあれ、そういうことが成り立つものは、シュンペーター(ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター)が言ったところのcreative destruction 【創造的破壊】という名のinnovationがね、立て続いているということね。

でこれは、たぶんあれでしょうね、不可避でしょうね。

[*シュンペーター(1883~1950)creative destruction 創造的破壊]

問題はね、これはたぶん次の週になると思うんだけども。

例えば、資本で言うとね、資本所有させなければ、社会主義のように資本は政府が、いわゆる「国家所有」というやつね、そんなもん無茶苦茶なことにしかならないんですよ。だから、資本所有を各自に認めなければならない。だがしかし、「資本をどのように使うか」「資本と労働者の関係をどうするか」という、これ『社会政策』ですよね。そういうことをしっかりやっていかないと、資本主義というのは、持たないかどうかはともかく、ものすごい矛盾に苛まれると。

もうちょっと社会全体、国家も含めて、あるいは労働者、消費者も含めての文明全体の議論をそこをある程度把握できるような、そういうものが出たら今度また議論したいけど・・・出ないね(笑)

小林麻子
(苦笑)

フッフッフッフ

だって僕たち出してるんだもん。

小林麻子
はぁ〜。

出してもどういうわけかまったく売れない(笑)

ハッハッハッハ。

このピケティの本でね、幾つかのことが書いてあって、まぁ僕が面白かったのは、格差の問題よりも、【「資本主義というのは基本的にはそんなに成長するもんじゃないんだ」】という・・・

なるほどね。

これが、彼(ピケティ)の総合的な立場で、戦後成長した30年ほどね、成長しましたけども、その方がむしろ『例外期間だ』というふうに(ピケティは)書いているんですよね。

だから、『成長できないような社会をどのように構想するか?』というそういう話になってくるんですよね。

そうだね。そういうことに対する一つのショックを(ピケティは)与えてくれたのは確かなのね。

ということで、第二週目、いささか内容に立ち入りすぎたかもしれないけども、第三週、いったい資本主義はこれからどうなるんだ?って話は次の週で。

小林麻子
はい。

今週はありがとうございました。


【次回】ピケティ騒ぎの後始末③ ~資本「主義」はどんなイデオロギーか~
ゲスト:佐伯啓思・柴山桂太