公共活動のほかに道はなし①  ゲスト:藤井聡(内閣官房参与・京都大学教授)青木泰樹(東海大学非常勤講師・京都大学特任教授)〜西部邁ゼミナール〜

公共活動のほかに道はなし①  ゲスト:藤井聡内閣官房参与京都大学教授)青木泰樹(東海大学非常勤講師・京都大学特任教授)〜西部邁ゼミナール〜

ゲスト
藤井聡内閣官房参与京都大学大学院教授、レジリエンス研究ユニット長、近著『スーパー新幹線が日本を救う』(文春新書)

青木泰樹:東海大学非常勤講師、京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授、近著『経済学者はなぜ嘘をつくのか』(アスペクト

【ニコ動】公共活動のほかに道はなし① 2016.07.23

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29302266

今村有希
今回から3回に渡り「公共活動のほかに道はなし」と題しまして論じて頂きます。

ゲストをご紹介します。東海大学非常勤講師で京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授の青木泰樹先生です。青木先生は『経済学者はなぜ嘘をつくのか』を上梓されており、経済の語源が世を治め(=経世)民を(困窮から)救う(=済民)「経世済民」であることすら知らない経済学者に騙されるな!!と警鐘を鳴らしています。

もう一方は、このほど『スーパー新幹線が日本を救う』を上梓された、内閣官房参与京都大学大学院教授でレジリエンス研究ユニット長を務めている藤井聡先生です。

世界的に広がる経済危機は、Long-run stagnation(ロングラン・スタグネーション)、つまり「長期停滞」に入っています。資本主義は断末魔的な状況を迎えており、長期的な視野でみると、公共的な枠組みの構築が今後の日本のあるべき姿ではないか、ということで、公共投資の時代に何を備えるべきか本質的な議論が展開されると存じます。それでは先生方宜しくお願いします。

藤井・青木
宜しくお願いします。

西部邁
あぁ今日はありがとうございます。

藤井・青木
ありがとうございます。

西部邁
藤井先生、

藤井聡
はい。

西部邁
何か安倍内閣は三本の矢で、

藤井聡
はい、

西部邁
一本目の矢が「インフレターゲット論」ですが、イギリスのEU離脱のこともあってね、円安がストップしたのみならず、円高傾向に入って、どうも一本目の矢は折れた。

藤井聡
はい。

西部邁
それどころか、なんかねぇ・・・「マイナス利子率」などというね、資本主義が、将来投資をしても収益が見込めないと。

藤井聡
うん。

西部邁
それで今、資本主義の断末魔的状況です。

[*民間需要がなく投資をしても収益が見込めない、日本初導入のマイナス金利は資本主義の断末魔 ]

藤井聡
そうですね。

西部邁
たぶん、一本目の矢を言ってた人は、安倍内閣の周辺から姿を消したんじゃないかと、僕は予想していて、

藤井聡
うん。

西部邁
第三の矢は「規制緩和でイノヴェーションで成長戦略」と。仮にそれが上手くいっていても、実はイノヴェーションの結果、どんどん独占体ができてですね、アメリカで言えば「0.1%の人間」がですね、その年に上がる収益の半分以上も持っていくという(*因みに、統計によればアメリカの上位1%が国民所得の25%、上位10%で半分を占めると言われる)、国内の労働分配率が減りますので、購買力が減っている。

[*“規制緩和” “イノヴェーション” の成長路線、資本の独占・寡占化が進み労働分配率は落ち購買力減 ]

藤井聡
うん。

西部邁
故に、第三本目の矢を推してる人たちも、もう安倍内閣から姿を消しているのではないかと・・・で、残っているのは

藤井聡
はい、

西部邁
公共投資、インフラ投資、国土強靭化を言っている貴方(藤井)だけじゃないのか?・・・と勝手に想像しているんですけど、どうなっています?

青木・今村
(笑)

藤井聡
はい、まさにそのように私も感じてはおるんですけども。

一同
(笑)

藤井聡
アベノミクスをこれから展開していくにあたって、金融緩和をさらに追加緩和やらないといけないという声も出てまいりまして、

西部邁
本当?

藤井聡
国債が(日銀買いオペで)どんどん(市中から)無くなっていますから、あと2年ぐらいで国債が全部無くなるハズなんですけど、これ以上、追加緩和するっていうのもね、どっかで限界が来るってことがあるんじゃないかと思う。

西部邁
うん。(吹き出し笑い)

藤井聡
景気が良くならないのは「構造改革が足りないからだ!」という声も非常に多くて、

[*長期停滞で金融政策の限界、“構造改革” が足りないのか ]

西部邁
(呆れ笑い)

藤井聡
一方で、財政政策をしっかり進めようという、(西部)先生がいま仰った『この道しかない!!』んじゃないかと思われる方向で行こうとすると、「緊縮財政をやらないと財政破綻するんじゃないか!?」ということで、なかなか(西部)先生が仰ったような方向かどうかというのは、うん・・・。

西部邁
あぁ、そうか。じゃあ貴方はまだ、安倍さんの周辺で孤立してるんだ?

藤井聡
えぇ・・・いかがでしょうか(汗笑)

西部邁
情けないねぇ。

藤井聡
ただですね、この状況の中でもやはり、第一の矢の金融緩和にも限界が(来ていることに)なんとなくみんなが気付いていますし、

西部邁
そうでしょうねぇ。

藤井聡
構造改革も確かに必要だろうけども、それだけやっててもやっぱり難しいんじゃないかという、

西部邁
うん、

藤井聡
財政政策を求める声がどんどん強くなっているのは間違いないです。

西部邁
まぁそりゃそうでしょうねぇ。

藤井聡
ただ、他の方々(※一本目の矢、三本の目の矢の主張派)がいなくなった・・・というわけではないという。

西部邁
この間の「伊勢志摩サミット」でもあれでしょう、もっとも重要なテーマは、この財政出動、具体的に言うと『公共投資』ですけどね、

藤井聡
はい。

西部邁
それに各国が精力を傾注、注いでいかなきゃいけないというのがまぁ、唯一の積極的な同意点ですよね。

[*公共投資への精力傾注、G7伊勢志摩サミット ]

藤井聡
そうなんです。そこで、こういう共同宣言が出されまして、『質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則』と。これを軸にですね、世界中で投資を拡大していき、縮小しつつある需要というものを拡大していこう、といくことは、G7でもかなり重要な案件として議論され、共同宣言が出されているんですね。

[*質の高いインフラ投資の推進のためG7伊勢志摩原則、投資を拡大し縮小する需要の拡大に取り組む ]

西部邁
うん。

藤井聡
ただ、それでも報道はほとんどされていない!!

西部邁
そういうふうにして、自分の言ったことをアレですか・・・実行する気はないというのはやっぱり日本政府がいちばん目立っていますか?

藤井聡
安倍総理もG7の前にヨーロッパに行かれて、各国と財政政策の国際協調をやろうというんで調整をされるぐらい安倍総理は非常にそこは積極的なご発言をされていると。

西部邁
うん。

藤井聡
一方で、実際の国債発行額というものを、赤字額というものを見ますと年々縮小してきていると。

西部邁
うん・・・

藤井聡
これは、(青木)先生やっぱりこれは、痛烈なな緊縮状況にあると解釈できると思うんですけども?

青木泰樹
そうですね、そうですね。「マイナス金利」などということを資本主義の主義などというふうに捉えられるわけなんですが、金融政策の限界が露わになったにも関わらずですね、

西部邁
うん、

青木泰樹
スンナリと、このアベノミクスの第二の矢である『財政出動』にみんな人が向かわないのは何故かと言いますと、第三の矢の「成長戦略」がですね、まだ残っているんですね。


西部邁
あぁ、嘘話の。(呆れ顔)

青木泰樹
えぇ。グローバリズムを進行させようという勢力が残っておりまして、そのグローバリズムを推進する人たちは、『反財政主義』なんですね。

[*財政政策に向かわない原因、グローバリズム “成長戦略” ]

西部邁
あぁ、そうでしょうねぇ。

青木泰樹
えぇ、そういうような人たちです。

西部邁
規制緩和で民間の主体的活力に任せよと。小さい方がいいと。

青木泰樹
そうですね、そうですね。

西部邁
財政出動は役に立たないと、まぁこれは10年前の話ですけどもね、その余韻がまだ濃く残っていて、

青木泰樹
はい、

西部邁
ここまで『嘘話』が平成に入ってからで言うと28年間も嘘話を聞かされているとね、もう生きるのが嫌になってくるという・・・

[*“規制緩和” で “民間活力” “小さな政府” という嘘話 ]

藤井・青木
(大苦笑)

今村有希
(笑)

西部邁
経済学では利子率のことを「i」で表すことが多いでしょう、これ金銭投資する。で、実物資産に投資するとね「r」というreturn(リターン)が見込まれると、これは「期待収益」ですけどね。

青木泰樹
そうですね。

西部邁
それから、実物はインフレ(π)があるとしたら、今は2%目標ですよね、

藤井聡
はい。

西部邁
π これは2%儲かると。

左辺:i(金融資産への投資利子率)
右辺:r(実物投資への期待収益)+π (インフレ率 )

これね、市場、マーケット・メカニズムの働きで言えば、金銭投資(i)するか、実物資産に投資(r)するかで、これはこうする(i=r+ π)だろうと。

[*i(利子率)=r+ π (実物投資の期待収益 + 物財のインフレ率) ]

藤井聡
うん。

西部邁
ところがね、これ(左辺の「i」)をマイナス(利子率)にするってわけね。ですから、これ(右辺の「π」)をこっちに持って来れば(左辺に移項する)、「-2」でしょう。(iー π =r)

ということは、この(π 移項後、右辺に残された「r」である)期待収益が、これが-2だか4だか知らないけど、-4(r)ぐらいにしときましょうか、平均でね。

藤井聡
ンフッフッフッフッ。

西部邁
経済の(実物)投資をしても、収益(r)は「マイナス」であると。

藤井・青木
はい。

西部邁
ところがそう簡単に言えなくて、平均でそうなんですよね。独占体はイノヴェーションに先行して勝利した藤井君は独占利潤を貪るわけですよ。それで巨大独占体を形成して、最終的には購買力がないでしょう、つまり先ほど言ったように、民間の購買力は賃金が増えませんからね。

[*経済に投資して期待収益がマイナスなら投資は増えない。独占体は独占利潤を貪り、賃金は上がらず購買力は落ちる ]

藤井・青木
(頷く)

西部邁
まず外国にいくんだけど、外国も限界があるでしょう、そうすると、最終的にはね、結局は政府を動かしてね、

藤井聡
はい。

西部邁
もっと言うと、『戦争をやる』と、仕掛ける。

[*巨大独占体は戦争仕掛け、血生臭さが世界に広がる ]

藤井・青木
(苦笑)

西部邁
いい?本当にそうなっている、世界中が血生臭い状況で至る所で。それに反発するテロも起こっていますけどもね。そんなふうにして、成長戦略の2本の矢は。

しかもね、このマイナス利子率で言うとね、だから民間は平均で言えばね、期待収益があれですから、マイナスにしても、期待収益はもっと低いんですから『借りない』わけですよ。

[*期待収益低いマイナス金利、民間は金を借りない ]

藤井聡
そうですね。

西部邁
借りたってどこに?・・・パナマに持ってくの?

藤井・青木
ワハハハハ(笑)

西部邁
ねっ(笑)

青木泰樹
特に、マイナス金利というのは、まぁ金の貸し借りというのは「現在の金と将来の金との交換」ですからね、当然のことながら、例えば、現在の1万円と1年後の1万円をまぁ交換しましょうと言った時に、誰も貸しません。何故かといったら『不確実がある』からです。

西部邁
そうですよ。

青木泰樹
ですから、『今の1万円の方が1年後の1万円より高い』んですね。

西部邁
そうでしょう。

青木泰樹
ところが、マイナス金利となりますとね、今の1万円とですね、まぁ将来の1万円「以下」、これを交換するとかそういうような話になってくると、金を貸す人がいなくなるということで、それがまぁ資本主義ですと言われてることだと思いますけどね。

[*現在の1万円が将来下がれば、金を貸す人もいなくなる ]

西部邁
明日、来年持つ1万円は何が起こっているかわからない。インフレが起こっているかもしれないし、パニックが起こっているかもしれない。

今村有希
はい。

西部邁
その『不確実性がプラス利子で表されている』ハズなの。

今村有希
(頷く)

西部邁
それがマイナスにしてしまうということは、世の中でんぐり返っちゃっている証拠なんですね。

[*将来の不確実性がプラス利子、でんぐり返しの “マイナス利子” ]

今村有希
はい(笑)

藤井聡
そういう意味では、政府内、或いは、マスコミの中での空気が日本においては緊縮的な空気がまだ強いかもしれないですけど、『日本だけが低金利でなくて、世界中がヨーロッパを中心に低金利になっている状況ではもう、公共の投資以外に道はない』ということはもうコンセンサスは得られつつあって。

[*世界中が低金利の時代で、公共投資のほかに道はなし ]

西部邁
そうでしょうね。ですから平均で言うとね、今やマイナス利子率、それでもいいんだけどね、それをね、政府が借りてですよ・・・ということは国債を発行して、それをいわゆる公共投資、若しくは、もっと広く『公共活動』ね、

今村有希
はい。

西部邁
それで、ちょうど1930年代がそうだったんですけどね・・・

藤井聡
そうですね。

西部邁
それと似たような、そっくりな状況が生まれてきているのにね、今みんなして時代錯誤の中でね、昨日一昨日まで言ってたようなことをピーヒャラピーヒャラ言っているんですよ。

[*1930年代に似た状況で、時代錯誤の中で同じことを言う ]

一同
(苦笑)

西部邁
もう僕がISだったら・・・(銃を構えて撃つポーズで。笑)

藤井聡
ワハハハハ(爆笑)

西部邁
ISじゃあありませんが(笑)

今村有希
(笑)

藤井聡
ISとは少し違いますが(笑)、民主主義とはかなり距離のある、例えば中国では、今みたいな議論に基づいて、中国の執行部の首脳が「それはそうだ!」ということであればスグ投資を始めると。というのは、彼らが今やっているのは「34兆円の交通インフラ投資」を、年間34兆円の交通インフラ投資を5年間やるということを公表しています。それと共に、中国を中心としたアジア各国、アフリカも含めてAIIB・・・

西部邁
あぁ〜。

藤井聡
アジアインフラ投資銀行(AIIB)を創って投資を加速しようということを、今この世界状況の中では普通に考えれば、公共投資を拡大していく。しかも低金利ですから、いま借りた1兆円が将来も1兆円、あるいは9千億円になっているかも。これやらないの?どうなの?いつやるの?今でしょう!?みたいな。(←例の林先生のマネをしながら。笑)

[*中国はインフラに年34兆円、アジア各国はAIIBで投資加速 / 1兆円借りても返済額が減る、いまが公共投資の好機 ]

西部邁
(うんうん)

藤井聡
それが成功してインフレ率が(将来的に)3%4%になってきますと、1兆円借りると10年後には(返済額が)1兆5千億とか2兆円とかになってしまうわけですから、これいま(公共投資を)やらないというのはあり得ないですよね。

西部邁
そうだね。

藤井聡
従って、中国はいま投資を拡大していますし、あのサンダース、アメリカで社会主義といっているサンダースも100兆円規模の・・・

西部邁
民主党の第2候補だった人。

藤井聡
はいアメリカの。と言ってますし、その対抗のトランプも、「これまで大統領選に出馬した誰よりもインフラ投資のことを誰よりも理解している」と、自らインフラ投資をやると言っているので、

西部邁
ワハハ(笑)

藤井聡
これは中国、アメリカは投資をガンガンやると、両方とも仰っているわけですよね。ここで(日本が)やらないというのは確かにあり得ない選択だと。

西部邁
僕ね、新聞も雑誌もロクに読んでないんだけど、僕の大雑把なアレでは、政府のいわゆる「財政赤字」ね、

藤井・青木
(頷く)

西部邁
(※苦虫を噛み潰したような表情で)本当に役人どもが、財政赤字のことばっかり言っているでしょう? でもね、だいたい1000兆円だと言われているでしょう?ねぇ、財政赤字さ。でもね、これが全てじゃないけど、これはあれでしょう、現在世帯が未来世帯からの借金ですよね。このうちのどれくらいか誰も言わないけれども、【未来世代のための公共投資】に使っている分が、

藤井聡
全くその通りです!!

西部邁
もろ低めに見積もっても半分にしましょうか。もう半分は本当に低いんですけどね、そしたら実質ね、現在世帯が未来世代のにツケを回して、要するに飲み喰いして使っちゃったってのはね、どう大目にみたってですよ、半分なんですよね。

[*1000兆円といわれる財政赤字、未来世代から借金であるが、未来世代のための公共投資

西部邁
ところが、いま個人の金融資産? 個人の金融資産って、個人は株式会社も結局、株主という個人のものでありますから、

今村有希
はい。

西部邁
要するに、民間の持っている資産ですよね。それがどこに預けられているか詳しいことはわかりませんが、(民間資産の総額は)1700兆円だと言われているわけですよ。

青木泰樹
(うん)

西部邁
今村さんを個人になぞらえると、

今村有希
はい、

西部邁
今村さんはね、1700万円の貯金を持っている。ね?

今村有希
ハハハハ(苦笑)

西部邁
どういうわけかね、僕に500万円の借金をしてるわけさ。

今村有希
はい(笑)

西部邁
それでね、大変だ!大変だ!と騒いで、はい、私の家は崩壊ですと騒いだらさ、

今村有希
ウフフ(笑)

西部邁
イかれてるな?と誰だって思うでしょう?(笑)

[* 日本の個人金融資産は約1700兆円といわれる (例)今村さんの貯金が1700万円で借金が500万円 ]

今村有希
思いますね(笑)

西部邁
思うでしょう。

今村有希
はい。

西部邁
結構、余裕があるじゃんねぇ。

今村有希
うん。

西部邁
そしてね、今の公共投資の話に戻るけども、僕はいつまでもこれが続くとかそんなことは言わないですよ。経済状態でいろいろ変わるかもしれませんけども、それならね、今こそこういう経済状態の中で、

藤井聡
ハイ、

西部邁
況してやマイナス金利だとか言われている中で、断固としてかなり大規模なね、要するに国債を発行して財源をつくって、それで公共投資、公共活動をやって、国家の基盤を、もっというと、マーケットの基盤・枠組みね、それを安定化させると。

[*大規模な国債発行で財源をつくり公共投資、公共活動へ国家の基盤、マーケットの枠組みを安定化させる ]

藤井・青木
(頷く)

西部邁
世界各国はそんなことをは直感的に分かりますから。

藤井聡
ハイ。

西部邁
(自分を指して)小学生だって分かるますから。ところが、どういうわけかですね、我が政府からそんな声が聞こえてこない。

藤井聡
はい。

西部邁
藤井さん個人から聞こえてくるぐらいで(笑)

一同
(大笑い)

西部邁
貴方どうなってんの?(笑)

藤井聡
後はですね、カナダの首相(ジャスティン・トルドー首相)がですね、インフラ投資をGDP比1%拡大するということを言ってると同時にですね、こういうセリフを言うんです。『財政赤字を拡大する』と。

[*“財政赤字を拡大する” カナダのトルドー首相 ]

西部邁
おぉ〜。

藤井聡
非常に立派な、

西部邁
立派!

藤井聡
はい、ことを言ってて、どういうことかと言うと、財政赤字を拡大するということは、この不況状況の中では民間が借金をして経済活動をしないというところを、政府が肩代わりしてあげると

西部邁
うん。

藤井聡
借金という辛いことを政府がやってあげるということを意味しているわけで、

西部邁
うん、

藤井聡
且つ、財政赤字を拡大するイコール、政府を本当にサイズを大きくする(※大きな政府)ということを言っているわけですから、そうやってカナダ経済を支えるんだと。カナダ政府の収支は置いといて、カナダ国民がみんな暮らせるひとつの家としてのカナダ経済を支えるんだと、

西部邁
そうだね。

藤井聡
という宣言を言っていると。こうい宣言をぜひ日本でもできるといいのにと。

西部邁
しかも、今のお聞きしたカナダの首相の宣言の中にはね、かつて30年代においてケインズが、大きな政府、財政が動いた時には単なるあの景気対策だったんですよ。

藤井・青木
うん、

西部邁
いわゆる「呼び水」というんですけどね、

今村有希
はい。

西部邁
ポンプね、Pumping Water(パンピング・ウォーター)といって、 まずちょこっと財政投資をすると、それがキッカケに、呼び水になって波及効果で民間活動も活発化するという、まぁ言ってみれば、単なる景気対策としてのことがまぁ少なくとも強調されるようになった。

でも、今のカナダの首相が言ってることは、単に景気対策に留まらずね、

藤井聡
ハイ、

西部邁
マーケットそのものがマイナス金利に見られるように非常に「不安定化」し「衰弱」していくと。でも、マーケットというものをどう安定化させるか、特にその長期展望をね、安定化させ、マーケットに入ってくる人たちの活動力をね如何に高めるかという、もうそういう意味も含めてのあれなんですね、財政出動というね。

青木泰樹
まさにそうですね。

西部邁
国家対策としての財政出動という・・・みんなそちらに頭が切り替わっているのにね、まぁ日本人も切り替えている人いるんでしょうけどねぇ・・・藤井さんの他にもね、へへへ(笑)

[*長期展望安定化、マーケットに入る人々の活動力を高める、国家対策としての財政出動へ頭を切り替えている世界 ]

藤井聡
いやぁ、あの政府の中でもやはり財政政策しかもう残されていないと。その中で、インフラが重要だということで、例えば、安倍総理の6月1日の増税延期の記者会見でも、あの『地方創生回廊』をつくるんだと。

西部邁
おぉ〜。

藤井聡
地方創生回廊、これは地方を創生していくためのまぁ「都市間の廊下(回廊)」をこう、corridor(コリドー=回廊)をつくっていくという、

西部邁
あぁ〜そういう意味か。

藤井聡
ハイ。新幹線ですとか、高速道路をつくっていくと。

[*地方創生回廊:都市間を新幹線などの交通網でつなぐコリドー廊下 ]

西部邁
うん、うん。

藤井聡
地方創生回廊のイメージなんですけど、これはあの決して安倍内閣でつくった地図ではなくて、あの田中角栄さんが『日本列島改造論』の中で書いた地図をベースにしたもので、実はこのゼブラのところしか出来ていないと。(※動画を再生されてぜひその地図を見てください)

 

f:id:sakurajimaoyuwari:20160724093630j:image

 

西部邁
あぁ〜。

 

藤井聡
(S47年代当時に練られた新幹線整備計画の)全体の30%しかできていないと。従って、東京を中心にしていろんなところへは行けるのですけど、地方と地方の間というものはぜんぜん行くことが出来ない、corridor(回廊)として繋げていくというのは絶対に必要であると。

西部邁
うん。

藤井聡
それは、公共事業をやっていく時に内需を拡大し、デフレを脱却するということにもなりますし、デフレを脱却した後はこの出来上がったインフラが、国家を支えていく、地方を支えていく、というダブルの意味で、そういうのを【ストック効果】といいますけども、フローのみならずストックの効果もどちらもある、という意味で、投資先としてはやはりこういう『都市間インフラ』というのは重要であるのではないかと。

[*公共事業をやってゆき内需拡大でデフレ脱却後、地方、国家を支える公共インフラ投資のストック効果 ]

西部邁
うん。エコノミスト、経済学者・・・『経世済民』の意味も知らない。あれ英語でもそうなんですよね?

青木泰樹
はい。

西部邁
economy(エコノミー)というけど、oikos nomos(オイコス・ノモス)だから、oikosって「家」という意味なんですよ。もちろんギリシャですからね、奴隷制ですから、奴隷10人 50人を含めての家なんですけど、日本語で言うところの『家政』ね、家の状態をどうするかというのが oikos nomosで、それが economyになった。

[*経済 economy の語源:古代ギリシャ oikos “家” nomos “秩序” =家政 ]

今村有希
はい。

西部邁
ところが今の家はね、簡単に言うと『“国家”という家』になったわけさ。

今村有希
うん。

西部邁
ね?国家全体をどうするか、というのが本当のoikos nomos,economyの意味なんですけども、

[*国家全体をどうするかが oikos nomos,economy 「経済」の本来の意味 ]

藤井・青木
(頷く)

西部邁
その国家の中のマーケットの、しかもその中でのイノヴェーション競争という・・・(渋い表情で)だから、エコノミストの責任って重いですねぇ・・・。

青木泰樹
そうですね。世界的に公共事業、これをみなさんやっていこうという雰囲気になっているにも関わらず、なぜ日本はしていないのか?というふうな雰囲気にならないのかと言いますとね、やはり、日本のエリート層と言いますか、まぁ政治家、官僚、マスコミ、知識人を含めまして、いわゆる「主流派経済学」というこの経済学の悪影響下にあるということなんですね。

[*世界的に公共事業へ向かう中で日本は、政治家、官僚、マスコミ、知識人は主流派経済学の悪影響 ]

青木泰樹
先ほど(西部)先生が仰った通りでですね、主流派経済学は基本的に「みんな同じ力の人が同じレベルで戦わす(競争する)」、

西部邁
うん、

青木泰樹
それを前提としているんですけど、現実経済というのは力のある人もいれば、無い人もいる。

西部邁
そうだね。

青木泰樹
同じルールでやったらどうなるかという、そこがですね、分かっていないということなんじゃないでしょうかね。

西部邁
仰る通りなんですよね。「競争」というでしょう、マーケットの。

今村有希
はい。

西部邁
この(競争の)「競」という字、これ同じ字が二つ並んでいるでしょう?

今村有希
はい。

西部邁
これは簡単に言うと、「人が2人並んでいる」という意味なんですよ。

今村有希
(人が)競っているんですね、はい。

西部邁
大凡、同等の力を持った者が、競争。当たり前で、相撲でなぞらえるとね、

今村有希
はい(笑)

西部邁
横綱はせいぜいね、幕内の上位としか相撲は取らないわけ。(「競」の字の片側を指して)こっちがバカデカい、で、こっちが小さいでしょう?相撲にならない、競争にならないんですね。

[*競争の【競】:大凡同等の力を持ったもの、相撲で言えば、横綱は幕内上位との取り組み ]

西部邁
市場競争、市場競争と一口で言うが、その競争の全体がね、あんまり大きな格差があっちゃいけないと、「競争が成り立たない」んでね。

今村有希
うん。

西部邁
それに全く反するね、競争論をエコノミストの・・・小さい声で言うが、馬鹿野郎たちはですね・・・

一同
(笑)

藤井聡
先生、ぜんぜん小さくなってないです(笑)

西部邁
えっ?なってない?(笑)

藤井聡
いや、大丈夫です(笑)

西部邁
新聞でもTVでもね、経済局その他にいるね、もうTV局も同じですよ、もうともかく馬鹿の一つ覚えのように、競争の意味も知らずにね、競争競争と言っているという、

一同
うん。

西部邁
もうその毒が回っているというのかな、ツケを払わされているというか大変な状態になっている中で、(藤井・青木を指して)この方々だけが、

今村有希
ハイ、

西部邁
ほんとうに今も大勝利の祝宴を張りたいってぐらいに・・・えっ?ただひとり頑張っている(笑)

藤井・青木
(笑)

西部邁
孤独に頑張っているというね(笑)、そういう状態なの。

今村有希
はい(笑)

西部邁
ということで、次の週になだれ込んでいきましょう。

一同
はい。

西部邁
今週はありがとうございました。

一同
ありがとうございました。

【次回】今週の続編です。