公共活動のほかに道はなし③  ゲスト:藤井聡(内閣官房参与・京都大学教授)青木泰樹(東海大学非常勤講師・京都大学特任教授)〜西部邁ゼミナール〜

公共活動のほかに道はなし③  ゲスト:藤井聡内閣官房参与京都大学教授)青木泰樹(東海大学非常勤講師・京都大学特任教授)〜西部邁ゼミナール〜

ゲスト
藤井聡内閣官房参与京都大学大学院教授、レジリエンス研究ユニット長、近著『スーパー新幹線が日本を救う』(文春新書)

青木泰樹:東海大学非常勤講師、京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授、近著『経済学者はなぜ嘘をつくのか』(アスペクト

【ニコ動】公共活動のほかに道はなし③ 2016.08.06

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29389813

今村有希
世界的に広がる経済危機の中で、今後の日本のあるべき姿は、公共投資の時代に備えるしかないというテーマでお送りしている連続企画の最終回です。

ゲストは東海大学非常勤講師で京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授の青木泰樹先生と、京都大学大学院教授でレジリエンス研究ユニット長の藤井聡先生です。

民間需要が見出せない国内では政府主導の公共事業の必要性がクローズアップされています。それでは先生方どうぞよろしくお願い致します。

西部邁
あぁ、3週目もどうぞ宜しく。

藤井・青木
宜しくお願いします。

西部邁
「国土強靭化」・・・国土・・・National Landとしましょうか。

藤井聡
はい。

西部邁
Nationalってラテン語でnatio(ナティオ)と言うんですけどね、もともとの意味は「自分たちの生まれたところ(場所)」、つまり我々で言えば「日本」ですよね。

[*【国土】National Land:natio(ラテン語)自分達が生まれた場所 ]

今村有希
はい。

西部邁
あるいは、mother landともいいますよね、母国のことね。

今村有希
はい。

西部邁
或いは、愛国心のことを、日本人は愛国心のことを簡単にPatriot(パトリオット愛国者)というけども、あの(Patri-otの)Patri(パトリ=父の、男性の〜)というのはもともとはお父さんという意味なんです。

一同
うん。

西部邁
ということは、祖父たちが生まれ育って生きてきた土地、それが National Land、お父さんでもお母さんでもいいんですけどね。

[*【Patriot】愛国心:語源は「父」pater(ラテン語:パーテル:天なる父→神父)父祖たちが生まれ育って生きてきた土地 ]

西部邁
やっぱり人間というのは、そう簡単にお月さんに行ったり、火星に行ったりもできないですよね。少なくとも圧倒的大多数の人は、生まれた土地・時間、そういうものに制約されて一生を50年・80年送る、その土台をresilient(レジリエント)にしようというね、

藤井聡
うんうんうん、

西部邁
まぁ当たり前のこと・・・といっちゃ失礼かもしれないが、言っているお二人なわけですよ。

[*生誕地、時間的制約の人生、その土台である国土強靭化 ]

今村有希
はい。

西部邁
ところが日本はだんだんと resilient(レジリエント)じゃなくなってくると、

藤井聡
うん。(深く頷く)

西部邁
脆い。脆弱なの。

藤井聡
Vulnerable(ヴァルネラブル=脆弱な)とかって言いますよね。

西部邁
あぁそうか、Vulnerableね。脆いという意味。

藤井聡
国土強靭化というのは日本国政府の基本方針になっていますし、国会でも「国土強靭化基本法」がつくられて、それで国土強靭化をやっていきましょうということになっているわけですけども、そこで政府のお手伝いをしているのが一つの仕事ですけれど、もともとのきっかけはやはり『東日本大震災』、あの時に大きな被害を受けてすぐにその地域が元に戻らない・・・これに対して、すぐに戻れるような力をこの国家全体が持つべきじゃないかと。この折しも首都直下地震、或いは、南海トラフ地震、或いは、富士山の噴火というようなものすごい危機に、われわれ日本国家は直面しているわけで、そういうものが起こったとしても、被害をゼロにすることはできなくても、必ず元に戻る、或いは、もっと強い国になるようにですね、跳ね返るように、下に落としたボールが上に跳ね返ってくるように『元通りになるような力』、『回復力』を身に付けようと、それがまぁ強靭化ということですね。

[*国土強靭化:東日本大震災など過去の災害を教訓に平時から備え、被害を速やかに回復する力 ]

藤井聡
ものすごく話を柔軟に考えますと、田舎のすごくキレイな風土の町がありまして、そこに共同体なり、昔からの伝統があったと。そこに例えば、一つの大きな道路ができたり、一つの大きなショッピングセンターができたりすると、全く昔のようなものが無くなって、どこにでもあるような金太郎飴のような町になりましたと。これもまたレジリエント(resilient)ではない。

西部邁
うん。

藤井聡
やはり状況ですから、『やはりどのような環境変化があっても昔の良いものを残していく、これがレジリエンスの別の言い方』ということもできるかと。

西部邁
そうでしょうねぇ。もう30何年も前にイギリスのケンブリッジ(大学)の近くの田舎に暮らしてたことがあった。昔で言えば、人口3万の小さな都市ですけど、非常に古い大学街ですから、何もかも悪く言えば古色蒼然、良く言えば非常にクラシカルな古典的な街なんだけど、それには相応しくない黄色と赤の・・・うん!?あれは何ですか?と聞いたら、イギリス人が笑って、マクドナルドなんですけど(照笑)

[*30年前の古色蒼然な街、ケンブリッジでの出来事 ]

今村有希
ウフフフフ(笑)

藤井聡
ンフフフフ。

西部邁
あれがマックの看板ですと。実はケンブリッジ市議会は3年間議論して、その会社をこの由緒ある街に入れるべきか否かと3年間議論して、で、観光客もいるし、外国人の留学生もいるしね、通り過ぎる者たちもいるんで、まぁ1件ぐらいは仕方がないだろうという結論になったのだが、条件付きであると。

[*街に看板の提出めぐり、ケンブリッジ議会で3年議論 ]

藤井・青木
うん・・・

西部邁
看板は30cm四方ね。以上まかりならんと・・・(条件は)1個だけ。

今村有希
はい。

藤井聡
極めてレジリエントな地域ですね。

西部邁
うん。歴史を守らないと街というのはすぐ崩れるものだと。新しいものを入れるのはやむを得ないけども、それに悦び勇んで舞い上がって飛び付くってのは、人間なり街として恥ずかしいことだという、そういう常識がね、ヨーロッパは随分変わったでしょうけど、EUになってから。僕が居たのはまだEUになる前ですからね。

[*歴史を守らねば街は崩壊、街の人たちの常識と廉恥心 ]

今村有希
はい。

西部邁
それでもまだ残ってるんでしょうね。今のEUの、僕は必ず崩壊すると思いますけど、自慢じゃないけどね、EUが出来た時に、「これは大間違いである!!」と書いたのは(胸を張って)・・・

今村有希
ウフフフフ(笑)

西部邁
日本人の多しといえども私だけで、誰からも相手にされなかったけど(笑)

一同
(笑)

西部邁
ようやっとね、あれ(EU)は23年ですか?ようやっと滅び始めてね、

藤井聡
はい、

西部邁
我が意を得たりと。

[*各国各様の歴史性を無視、EU崩壊、英国の離脱 ]

藤井聡
滅びの始まりですね。

西部邁
始まりだね。

藤井聡
そういう意味で、EUは全くレジリエントではなかった。

西部邁
そういうことになるね。

藤井聡
Vulnerable(ヴァルネラブル)な存在、脆弱。

西部邁
一種のcosmopolis(コスモポリス)というのかな、なんかみんなを包み込む、実に調和的で麗しい社会が、それは誰だって考えたくなりますよ。でもそれはね、簡単に実現可能だって飛び付いたら、これね、ウィンストン・チャーチルの台詞かな・・・チャーチルというのはは不良ですから、あんまりあいつのセリフは引用したくないけどね、

『地獄への道は、善意で敷き詰められている。』

[*地獄への道は、善意で敷き詰められている(英・政治家 ウィンストン・チャーチル) ]

藤井聡
あぁ〜。

西部邁
つまりね、

今村有希
はい、

西部邁
コスモポリス、みんなで仲良く暮らせる、そういう麗しげな善意ね、

今村有希
(うん)

西部邁
善意をあんまり振りまいていると、次第にみんな地獄に誘い込まれるというね。

藤井聡
そうですね。

西部邁
本当は日本でもそれが起こっている。

藤井聡
そうですね。

青木泰樹
丁度この、(西部)先生がケンブリッジにいらした時のその街の議会かそういう人たちの見識の高さ、

西部邁
うん、

青木泰樹
即ち、街の見識がこの経済効率だけを求めて、制度をつくりルールを変えた結果として、そうした脆弱性がいま出てきたんじゃないでしょうかねぇ。

西部邁
そう。

藤井聡
そういう意味で、強靭化という言葉は通常、その堤防とか・・・地震が来る時に堤防をつくって、

西部邁
うん、

藤井聡
建物を強くして耐震性を高めたらいい、というような話で理解されたちなのですが、実はこれは分かりやすいところですけど、本当は、その建物を建てたのは誰やねん、その堤防をつくろうと言うたのは誰やねんというと、そこにはやっぱりそこの議会とか市長とか町長の思いがあって、

西部邁
そうね、うん。

藤井聡
じゃあ無理をして堤防をつくっておこうか、ということでそれが出来てその地域が強靭化できるということを考えますと、先ほど仰ったケンブリッジの議会の議論で、

青木泰樹
うん、

藤井聡
そのマクドナルドという脅威に対してはそういう議論をして看板を小さくするし、そういうガバナンス、議会があれば大きな地震というリスクがあるのならば、こういう堤防をつくろうということを考えるでしょうから結局、今ある状況に対して何某かの外的な破壊というか、刺激があると、それに対して、危機に対して、対応しようとするのは結局は『人間のレジリエンス』であって、

西部邁
うん。

藤井聡
人間の議論であって、それがレジリエンスの根幹。だけれども、そんなものは経済政策・経済理論の中で全く汲み取られていない・・・

[*経済政策・理論で欠落する議論や人間のレジリエンス

青木泰樹
(苦笑)

藤井聡
・・・ので、経済理論なるものに基づいて制度をつくると、レジリエンスがどんどん無くなっていってEUみたいなるものが出来上がっちゃう。

西部邁
そうそう。そして滅びると。

藤井聡
滅びるということで(笑)

西部邁
モノも情報も資本も人もね、自由自在に動ける、これが理想だと。コスモポリスのね、理想は僕は否定はしないけどもね、それが主義(cosmopolitanism)になってしまうとね・・・

藤井聡
(頷く)

西部邁
もう現実が逆転してしまうという。

[*“物・情報・人・資本も自由に移動する” cosmopolitanism コスモポリスの理想 ]

西部邁
特に資本と人間ですからね、

青木泰樹
そうですね。

西部邁
ね?これはあんまり自由に移動するとね、大変なことになるんですよ。

青木泰樹
資本がどんどん移動しますとね、結局のところ、まぁ最も効率的な生産システムも世界規模で作るという話になってきます。そうすると、先進国の高い賃金を得ている方と、後発国・後進国の低賃金の労働者と、その賃金が(低い方へ)どんどん収斂していきます。

西部邁
そうですよ。

青木泰樹
ただ、そういうようなことを以ってして、低開発国・後進国の国民の経済がよくなるからいいんだというようなですね、まぁこれはただの皮をかぶっているだけなんですけども、

西部邁
うん、

青木泰樹
裏はですね、資本の収益率を最大化する、それで儲ける、それだけしか考えていないわけでありますから、まぁ資本は飼い馴らせればいいのですが、飼い馴らせない状況においては、われわれ社会にとっては最も危険なものになるんじゃないでしょうか。

[*先進国と後進国の賃金が収斂、後進国豊かにというが、その裏で “資本の収益率を最大にして儲け” 危険 ]

西部邁
そうそう。

藤井聡
いちばん本質的な問題というのは、グローバリズムが進むとそれぞれの土地、ローカル、地理の固有性というものが忘れ去られていって、僕たち人間がご飯食べたり、寝たり、喋ったりとかしたりしている僕たちの人間って必ずどこかの地理空間にこのカラダを置いて、そこで活動しているという生のリアルな生活というのが必ず土地に拘束されているのに、グローバリズムの世界では、その中、そういう我々の生活全部を縛る土地というものが無いことになってしまっている。そうすると、そんな仕組みが我々の人生を豊かにするハズが無い!!

[*“土地” “地理” それぞれの固有性が忘れ去られる、グローバリズムが進む本質的な問題点 ]

西部邁
これね、資本家が悪いとかなんかとなるとね、マルクス主義者になるけど(笑)、本当は消費者というか一般国民も悪いんですよ。簡単に言うとですよ・・・ちょっくら目立つからだとか、ちょっくら安いからといって飛び付いていく大量の消費者ね、その情けない、落ち着きのなさね。

[*“目立つ” “安い” と新しいものに飛びつく大量の消費者、情けない、落ち着きのない振る舞い ]

今村有希
(うんうん)

西部邁
昔ね、我々の時代は「新しもの好き」というのは7、8割の割合で軽蔑語だったんですよ。

今村有希
(うん)

西部邁
奴は新しもの好きだからねぇ〜、というのはね、新しものに飛び付く、でも人間の傾向に(それが)無いわけじゃないのね。やっぱり僕もね、認めますよ。

今村有希
(微笑む)

西部邁
人間というのはね、やっぱり古いものに飽きるんですよね。新しいものにフッと目を見開く。それは確かなんだけど、かと言ってね、我勝ちにそれに飛び付いてですよ、それで古いものを次々と忘れていくというね、でそれは innovation(イノヴェーション)でしょう。

新しいものの中にね、やっぱり堕落も軽薄もいろいろあるからゆっくり行こうぜと構えるか、というその違いなんですよね。

[*innovationとは novel=“新しいもの” に飛び込む事、“堕落・軽簿” も含まれ『漸進的な構え』が必要 ]

藤井聡
新しいものの最大の欠点は、我々がリアルな生活に馴染んでる保証が全く無い。

西部邁
そう。

藤井聡
要するにその新しいものというのは、空間性と身体性が剥奪されたものであって、従って、我々を不幸にする可能性が極めて大きい。ところが古いものというのは、少なくともこの僕の身体と空気に馴染んでいるのでそれほどリスクは高くない。従って、変えるとしてもgradualism(グラデュアリズム=漸進主義)でちょっとずつしか変えていかないと危ないなと。

西部邁
僕むかし福澤諭吉

藤井聡
はい、

西部邁
彼が書いたのは『西洋事情』という最初の本、幕末ですけどもバカ売れしてね、ベストセラーになった。

[*「西洋事情」福澤諭吉 幕末にベストセラー ]

青木泰樹
(頷く)

西部邁
福澤諭吉というと、(巷では)日本の西洋化・近代化の最初のリーダーとか言っているんですけど、彼が明治11、2年かな、これ驚駭(きょうがい)、狼狽(ろうばい)と言ってるんですけど、

今村有希
はい、

西部邁
これは実は、蒸気機関ね、それから電信ね、それから郵便ね、いま西洋を支配しているのは蒸気機関、電信、郵便、出版という新しい今風の情報ハイウェイ、

今村有希
はい、

西部邁
それに舞い上がっているが、驚駭、狼狽せしものなり。驚き慌てて周章狼狽、慌てふためいている。

藤井聡
あぁ〜。

西部邁
このね、猿真似をしたら我が日本の近代化は大変なことになると、明治のまぁ簡単に言えば10年ですよ・・・と言ってるのにね、福澤諭吉はそういう人だったということすら、それ以後は伝承されてないんですよ。

[*“蒸気機関・電信・郵便・出版” 「驚駭、狼狽せしもの」猿真似をしたら我が日本の近代化は大変なことになる ]

藤井聡
今だに狼狽してますね、日本のこと。驚駭し狼狽してるわけ。

西部邁
そう。

藤井聡
ITだ、なんだかんだと、金融工学だ言うところで。

西部邁
そう、そうなの。ですからね、別にこの平成に入ってから、みんな頭狂ったんじゃなくてね、

藤井聡
ンフフフフ(笑)

西部邁
元をただせば随分前からね、

藤井聡
19世紀から。

西部邁
で、昔の人はエラいのはね、やっぱり自分たちが近代化せざるべからず、西洋化せざるべからずと思いながら(でも)「気をつけようぜ!!」という意図をね、(福澤を指しながら)ある一定割合でいたんですよね。(現代は)その割合がどんどん減っちゃって。

藤井聡
新しいものが入ってこざるを得ないとしても、諸外国との競争の中で、こざるを得ないとしても我々の国土に馴染むように、それを徐々に徐々に計画的に合理的に理性的にダメなものは修正しながら入れてくしかない。

西部邁
そう。

藤井聡
それをするのがいちばん最善の方法は、やはりあの例えば、この国家という住処を国土計画でもって、きちんと我々の文化と歴史と伝統と新しいものを馴染ませながらものをつくってく。

西部邁
そう、うん。

藤井聡
或いは、都市計画をやっていく。或いは、地域計画をやっていく。で、それを見直しながら、徐々に徐々にその国土というものを少しずつ変えていく。

[*国土計画で文化・歴史・伝統と新しいものを馴染ませ、都市計画、地域計画を見直しながら徐々に変えてゆく ]

西部邁
そうね。state(ステート)ね。stateの元々の意味は「状態」という意味ですけども、

藤井聡
状態。

西部邁
歴史がもたらした状態ね。

今村有希
(うん)

西部邁
それを確認するのが、この場合は政府ですけども、まぁ国家と言ってもいいけど、その国の統治状態、「秩序」ですね、これをステート(state)。で、普通、キャピタリズム(capitalism)、キャピタリズムと言うけども、資本主義だってね、その土台をしっかりしなければ、特にね、人間一般がそうですが、資本もそうですけど、「未来」を見越して、

藤井聡
うん、

西部邁
未来を予想し、想像して行動するでしょう?

今村有希
(うん)

西部邁
そうすると、それが暴走する可能性があるわけさ。失敗して沈没する可能性もあるわけ。そうするとね、ある程度、全体を見渡す立場にいるステート(state)、この場合は政府ですけども、具体的に言えば役人ですね。役人の工事をなさっている(藤井と青木を指して)こういう方々。

藤井・青木
(苦笑)

今村有希
(うんうん)

西部邁
こういう方々ね、どうも上から見てると、諸外国と比べるとこういうふうになりそうですよと。東西南北ね、だいたい東南東方面に進むのが、しかもその進み方の速度がね、これぐらいの速さで行くのが良さそうですよという一つの仮説でもいいけどね、それを示さないとね、要するに、資本主義なんて四方八方に暴走し始めるという可能性があると。

[*state capitalism 歴史がもたらした状態を確認する政府(国家)の統治による指針・方向性 ]

藤井聡
そうですね。

西部邁
それをみんなしてね・・・「ステートが出てくるのは社会主義だ!」と。頭イデオロギーですね。

藤井聡
うん。

西部邁
社会主義反対!!自由主義で行きます!!というね。

藤井聡
(頷く)

西部邁
社会主義ヒドいことになったんですよ、

今村有希
はい。

西部邁
ソ連もね、共産党の中国も。

今村有希
(うん)

西部邁
社会主義の弁護なんか一切しませんけれども、しかしね、これから恐らくね、ある種のsoft socialism(ソフト・ソーシャリズム)と言っていいようなね、

藤井聡
うん、

西部邁
柔らかい社会的な統制、方向付けね、それが無いと、個人の自由も資本の競争もあったもんじゃないというね。

[*soft socialism 柔らかい社会的統制・方向付けを示さなければ、個人の自由、資本の競争もない ]

西部邁
実は、1930年代はそれが行き過ぎちゃってね、全体主義が出てきちゃって、ファッショだナチズムだスターリニズムだですごい国家体制になったのだけど、その轍を踏んじゃいけないけれどもね。

青木泰樹
今回の英国のEU離脱に対する国民投票

西部邁
うん、

青木泰樹
離脱が決まったわけなんですけども、英国には『ウィンブルドン憲章』と言いましてね、結局のところ、テニスのウィンブルドン大会で外国人ばっかりが優勝するという話なんですけれども、

西部邁
あーあー。

青木泰樹
何を意味しているかというと、あの「金融ビッグバン」で(ロンドンの)シティが金融を解放して、自由自由ということでですね、まぁ外資系の企業が国内の企業を駆逐する。で、ほとんど外資にとられてしまった。

西部邁
うん。

青木泰樹
そういうような状態を受け入れたわけなんです。ぜんぶ自由にしよう、効率的に行こうと。しかしさすがに、さすがに我慢強いジョンブル(John Bull=典型的なイギリス人)もですね、余りにもヒドいこのグローバリズムにはちょっと抵抗してみようかなというその保護主義の一環として、今回のそういうの(EU離脱への動き)があったんじゃないでしょうかね。

[*シティ(金融中心地)の金融解放で外資が国内企業を駆逐、John Bull(イギリス人)は保護主義の一環でEU離脱

西部邁
そうでしょう。

藤井聡
保護主義という言葉はに関していろんな解釈があるかもしれないですけど、

西部邁
うん、

藤井聡
それぞれの地域には地域の事情がある。それをこう無視して、過剰に他と共通にしたら問題が起こるのは当たり前で、

青木泰樹
うん。

藤井聡
それこそ僕の身体に他の人の血を入れるとエラい病気になると思うんです。

今村有希
(笑)

藤井聡
エラいどうしょもなくなったりとかするのと同じで、やはりその生命体のアイデンティティというのが生命の基本であるとすると、それも地域や国家のアイデンティティというものも過剰に(他と)交換し過ぎないというのは当たり前ですよね。

青木泰樹
そうですね。

西部邁
あのホセ・オルテガ(ホセ・オルテガ・イ・ガセット)というね、1955年ぐらいに亡くなったスペインの哲学者、彼がこの場合にはstate(ステート)=政府、国家と言ってもいいのだけど、これのことを指してね、

今村有希
(うん)

西部邁
skin(スキン=皮膚)・・・国家・政府はskin=皮膚のようなものである、と。

[*「政府(国家)はskin 皮膚のようなものである」(スペイン・哲学者 ホセ・オルテガ) ]

今村有希
はい。

西部邁
今村さんになぞらえましょうか。

今村有希
はい(笑)

西部邁
いまお笑いになったでしょう?

今村有希
はい(汗笑)

西部邁
ここの頬が緩む。或いは、瞼が閉じる・開く、なんでもいいんですよ。

今村有希
(うん)

西部邁
この皮膚のお陰でね、ここ(皮膚)にはなんか一兆個の細胞があるんでしょう?

藤井聡
うんうん。

西部邁
細胞全体として皮膚がまとめ上げて身体ができていて、身体は完全に自由じゃないけど、皮膚を通じて外部と呼吸をしているわけ、皮膚呼吸ね。そうでしょう。

今村有希
はい。

西部邁
つまり、皮膚は全体をまとめると同時に人間の外部との、環境との総合反応。だって、ここ(皮膚)から炭酸ガスが排出されているんですよ、自分の口から。何かを吸収したり排出したり、外部との接触を可能にしているのは皮膚。

恐らくね、政府ってのは人間になぞらえると広い意味での「スキンのようなもの」であって、日本なら日本としてまとめながら、でも日本も中国だアメリカとある種の関係の中にあるんだと。時々ね、なんか中国方面からなんかすごい炭酸ガスが来ますけどもねぇ・・・

一同
(大笑い)

西部邁
アメリカからもメタンガスが来ますから、摂取すればいいとは必ずしも言わないけども、でもそういう意味での伸縮性のある保護主義ね。

藤井聡
そうですね。

西部邁
Protection(プロテクション=保護)ね。雁字搦めの鎧で保護したら、それはねダメだと思う。

今村有希
うん。

西部邁
強靭性ってそういう意味でしょう?

藤井聡
そうです。

西部邁
伸縮性があると同時に保護をし、保護すると同時に相手との関係も保たせるというね。

[*伸縮性のある保護主義、相手との関係を保つ強靭性 ]

藤井聡
しかもこの身体を上手く維持していくためには、様々な部位を全部共通する血管で繋いで、

西部邁
そう、そう。

藤井聡
そこでこういろんなものを輸送しながら、そして骨格がありそして身体が成り立っているわけですから、この身体ひとつあるんだと思った瞬間に、スキン(skin)、皮の必要性と基本的なインフラストラクチャ、あの道路や鉄道やら堤防、そういったものの必要性を当然ながら理解するハズ。

西部邁
そう、そういうこと。最後の僕のメッセージ。

今村有希
(うん)

西部邁
藤井聡よ。さっさと副首相になれ!!

藤井聡
(大苦笑)

青木泰樹
ワッハッハッハッハ

西部邁
首相までとは言わないが(笑)安倍首相のまわりにいる有象無象たちを蹴散らかしてくれと!!

今村有希
(笑)

西部邁
でもまぁ多分・・・不可能でしょうねぇ(笑)

藤井聡
ンフッフッフッフー(笑)

西部邁
だから、めげずに頑張って下さい!!

藤井聡
はい、ありがとうございます(笑)

西部邁
ということで、お終いにさせていただきます。

今村有希
はい。

西部邁
3週間ありがとうございました。

一同
ありがとうございました。

【次回】「アメリカ帝国大混乱!!!」 ゲスト:伊藤貫(評論家)