▪️特別講義 西部邁×表現者塾々生 安保法改定を巡って(西部邁ゼミナール)

▪️特別講義 西部邁×表現者塾々生 安保法改定を巡って(西部邁ゼミナール)

評論家 西部邁 近著:「生と死、その非凡なる平凡」(新潮社)

【ニコ動】
西部邁ゼミナール)安保法制改定を巡って 2015.06.07
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm26433011?cp_in=wt_tg

西部邁

どうも。元西部塾の、あるいは、元表現者塾の元塾生の皆さん、麻子ちゃん以外のね。

小林麻子

はい(笑)

西部邁

ご出席ありがとうございます。

今日は特別番組になるんですけど、安倍首相が、5月の初めになるかな訪米して、いわゆる日米同盟なるものについて「頑張ります」と言って、アメリカの上下院合同会議で大喝采を浴びて。スタンディングオベーション・・・立ち上がってね、拍手。

それで、それを喜んでいる日本人と、困ったと言ってる日本人と両方がいる。これはやっておかないとね、やっぱりね、ゼミナールですからね。

ところで、スダさんか、後ろの(席の)。ゼミナール・・・どういう意味かご存知?

塾生

・・・。

西部邁

知らないでしょう?

塾生

はい、すいません。

西部邁

大学生がゼミナール、ゼミナールと言っている。なんとかゼミ出身とか言ってるけどね、ゼミナールの意味知らない人多いんですけどね、それは教授が教えないからでしょうけど。

あれなんですよね、むかしポルトガルカソリックが日本にやってきた頃、セミナリヨ(葡:seminário)と言ってたね。「神学校(セミナリヨ)」という意味ですけどね。それがゼミナールのあれ(語源)ですよ、ポルトガル語。まぁ、スペイン語でも何でもいいんだけど、その辺りの言葉でしょう。

[*「参考」イエズス会が日本人の司祭・修道士育成のためにつくった教育機関で、セミナリヨ初等教育)とコレジオ(高等教育)、およびノビチアート(イエズス会員養成)とあった。]

西部邁

セミナー(seminar)とは何か?セミナリオ、これはね、この場合で言うと、宗教、キリスト教ね。キリスト教の考え方の種子(※タネの方)をね、僕は別にシモネタを言おうというんじゃないんですけどね、男性のあれのことをザーメン(semen:精液)というでしょう?種子ね。同じ語源なんですよね。

つまり、キリスト教の種子、精子の種を蒔く学校というので「セミナリオ」ね。

小林麻子

(なるほど。)

西部邁

だから、大学のゼミナールも、何か考え方、学問でも科学でも思想でもなんでもいいんだけども、それの「種子を蒔く」と。

ハッキリ言います。僕はそんな種子は蒔きたくない、君たちに、わっはっはー(笑)

塾生一同

(笑)

西部邁

己が蒔く種はだいたい悪い種ですからね、いやぁ〜冗談で言うとね(笑)

まぁ、それでですね、この問題(安保法改定・日米同盟)を巡る考え方の種子をまぁ止むを得ず蒔いたフリをするということをやっておかないとね。

ゼミナールと称して何もやっていないのかと文句言う人がいないとも限らない。

アオヤマ君に聞こうかな。

塾生

はい。

西部邁

この前、安倍首相が言ったでしょ?それで先ほど言ったように、(米国上下院に)歓迎されたのですけど、まぁ言っちゃおう。

いわゆる『朝日新聞系』の人々が「危ない!」と。

塾生

えぇ、はい。

西部邁

「アメリカのやる戦争に日本も巻き込まれる!」

塾生

はい。

西部邁

他方ね、まぁ言っちゃおう。『産経新聞系』にシンパセティック(sympathetic:)な(笑)同情、共感を持つ人々は、「よかった!これで日米の関係は強くなる」と。例のね、「沖縄・尖閣を中国に奪われずに済むのではないか。よかったよかった」と。君はどっち?

塾生

僕はどちらでも無いですね。

西部邁

どうなんだじゃあ(笑)

塾生

というのはですね(笑)、マトモな大人というか、付き合い中であれば、危ないと分かっててもやらなきゃならない時もあるし、また、そのいわゆる、これはちょっとヤバいなと思ったら、やるよやるよと言っててやらなかったりとか。

西部邁

そういうことか。

塾生

えぇ。そういった意見なんだけどね・・・俺は君の、俺じゃない、僕か。僕は君の意見にね・・・今の僕が聞いたのは、アメリカのやる戦争に巻き込まれるとしたら、君の言ったことはこうなるよ。

「アメリカのやる危ない戦争にも、極論すると“間違った戦争”にも参加しなきゃいけない時もある」とかって、そういうこと?

塾生

いや、そうではないですね。

西部邁

どうなんですか。

塾生

それは違うと思いますけども、えぇ。

西部邁

僕はね、どっちみち同じなの。『どっちにも与出来ない。』

ただその理由はね、第一の理由は、アメリカって日本ではない、外国でしょう?まず、外国に頼ろうとするね、わかりやすく言うと、尖閣を中国に2020年あたりに獲られそうだと。自分では守りきれない。(だから)アメリカに頼ろうと。それで「日米同盟」というわけさ。

でもね、本当に日本人がね、じゃあ日本は何をするのかってね。自分の領土を獲られそうな時に、じゃあ日本人はこれから、2020年なんて言ってますが、あと5年間、『日本が自力で何をするか』と。こうやれば(中国を尖閣から)追い返せるとかさ、向こうが(尖閣に)来ないようにするという議論をやった上で、最大限・最善の努力を「こうだ!」とやって、それでもどうしようもないと。それで、アメリカに「どうしょもない時はこの分だけ頼むぜ!」というのならわかりますよ。

ところが、日本でそんな議論あった?

塾生

無いですね。

西部邁

あと日本が何を為せるか、為すべきかってことですよね。

視聴者はまた驚くだろうけど、これは論理的なことだから、簡単に怒らないでもらいたいが、例えば、中国も北朝鮮もなんか『核』を持っていると。これは怖いと。

それが、日本は核を持てなんて言わないよ。「持つべきか・否か」って一度たりとも議論してない。

いざぶつかったらね、ひょっとしたらですよ、国民の、そういう軍事問題に対する教育もあるでしょう?教育の有も込めて、「徴兵制を敷くべきか・どうか」、敷かなくてもいいんですよ。べきかどうかについて議論は、1分たりとも行われた形跡はないわけさ。

塾生

無いですね。

西部邁

中国は何十年に渡ってかな、10年か、15年かもしれないけども、年率15%の軍事費を拡大していると。さて日本はどうするか?と。GDP(比率)1%でいいのか・どうなのかって議論も。いいのかもしれないよ。でも、その議論もしてないわけさ。サッパリね。

自分の努力について、自己検討しないで、危ないから、怖いから、アメリカに頼ると。それで、安倍首相その他は、「どんな国も自分の国を自力だけでは護り切れない。これが今の国際情勢である」と。それらは本当よ。だから集団自衛が必要であると、それも本当かもしれないが、じゃあ肝心の今の日本の努力が最大限なり何なりやってるかどうかの自己検討は何もしないわけさ。それまずおかしいよね?

塾生

そうですねぇ。

西部邁

何が特におかしいかと言ったらさ、戦後70年近く、多くの場合はですよ、本当なら、『憲法9条第二項は、非武装なんだから。』

塾生

そうですね。

西部邁

「武器持っちゃいけない」と。それなのに、その憲法まだ変えられてないでしょう?それどころか、多くの人々が気分的にね、「戦争は嫌よ」と。僕も別に好きじゃないだけどね。

塾生

そうですよね。

西部邁

でも、貴方が言ったようにね、『別に好き嫌いで戦争やるわけじゃないんだから。致し方なく武力衝突に入った時にどうするか?』という議論は一切この国ではほとんど【タブー】になっているんですよ、(そのことについて)あからさまに話すことがね。

そんなことをほったらかしにして、集団自衛だとか、アメリカとの協力だとか、その為には、日本もアメリカに助けて貰うだけに、僕たちも最大限の皆さんのご協力を致しますので、ということを言っている。

そういう話を「賛成か反対か?」なんてされたってさ、『自分自身の検討を最初にやれや‼︎』と。

塾生

はい。

西部邁

うん。そして今の安保法制、いろんな法律があって、その改定が国会でいよいよ審議・決議が進むんですよ。それ自体ね、いいですよ、軍事問題について今までの法制は不備だから、いざ衝突の可能性がいろいろあるから、そういう場合にどうするか法律的にしっかり準備しておこうと、それもその通りよ。でも、ヒラツカさんに聞いてみようかな?

『戦争状態』というのは、まぁ、戦争にも小さい戦争、大きな戦争あるからあれだけど、いまとりあえず、かなり大掛かりな戦争だとしましょう。それは、国家にとっての『非常事態』でしょう?もっと言うと、『危機的状態』ですよね。この国の憲法に『非常事態法』って無いわけですよ。明治憲法にあったの知ってる?

塾生

はい。明治憲法にはあったと。

西部邁

戦時、その他の国家非常の際には、明治憲法では【天皇大権】ね。この場合の大権というのは、天皇が全部決めるとか、そんなことじゃない。いつ鉄砲を撃っていいとか、そんなことを頼むのは天皇に失礼ってなもんでさ、いつ鉄砲撃っていいとか、そんなことを天皇にね・・・そうじゃなくて、【シンボリック】にね、普通の状態じゃない、非常事態ですよと。それで、象徴的に非常事態ですから、天皇に大権があることにして、普通の法制ではやっていけないことを、普通の超法規的なことも戦争(状態)ですから、行われるかもしれませんよ、というようなことが非常事態ってことだからね。

つまり、いつ鉄砲撃っていいかとか、撃ち方がどうかということについて法律で決めてですよ、いちいち軍人が最前線で法律を紐解いてどうするかなんてね、なんと考えているのかと・・・

塾生

自衛隊は建前上)軍隊じゃないですよね。

西部邁

まぁ、そうだけどさ。軍隊ちゃあ軍隊だけど、本当は軍隊じゃないんだよね。

だから、安保法制改定ということ自体がね、なんか、「何もかも法律の許可を得なければ鉄砲も大砲も突撃も撤退も・・・」って、そんな馬鹿なね、こういうことは、戦争・武力衝突というものを真剣に考えていないから、ってことね。

塾生

はい。

西部邁

しかも、これ、安倍さんのあれだけど、お役所が分かってないわけさ。もちろん、法律は大事だからね。でも、【法律が超えた事態】が、もっと言うと、とりあえず、【憲法を停止しなきゃならない事態】が、戦争状態では大いにあり得るんだというね。その前提の考え方がそもそも呑気極まる、昼寝を決め込んでいるような我がジャパニーズ・ピープルであらせられるわけさ。困ったもんだなと思う。

先を急ぎますけどもね、安保法制の、僕は首相演説なんかを聞いてて大体分かったんだけど、この改定の趣旨はね、だいたい3つなんですよ。麻子ちゃんに聞こう。

小林麻子

はぁ。

西部邁

いち。これまでは「後方支援」で、例えば、アメリカにしよう。アメリカの後方支援をしますと。憲法の制約があるので、前線には行きません。

今度ね、前線に行く必要があるなら、前線に行けるように変えますってことが一つね。

小林麻子

うん。

西部邁

この前まではね、主として「人道支援」に徹しますと。簡単に言うと、包帯とか赤チンとか、冗談半分で言えばね(笑)

人道支援、傷ついた人を助けます、みたいなことをやる。しかし今回は、やっぱり人道支援に限らず、要するに、武力衝突の場面にも赴くこともあり得るべし、というふうに法制を変えますと、こうなってるわけさ。

これまではね、自分中心でアジア、日本を含め東アジアにしましょうか、その周辺のことしか念頭に無かったけども、今や国際化が進み、グローバルな時代とすら言われておりますと。

極論すると、アラブだスラブだいろんなところでドンパチ起こっているわけさ。必要とあらば、地球の裏側へも「行け」と言ってるんじゃないよ?「行くこともあり得るべし」と、いうふうにこの3つね。

簡単に言うと、❶前線活動への参加。❷武力衝突を引き受ける。それから、❸地域も全世界へと拡大する。《こともあるかもしれないというふうに、法制を変える。》

この(安保法制の)改定自体には、麻子先生はいかが感じられますか?

小林麻子

あ・た・し・わ・ぁ・・・・(震え声)・・・

西部邁

適当に言っていいからね。

小林麻子

みんなが騒いでいるように、戦争に巻き込まれてしまうの・・・かしら・・・(震え声で)

西部邁

大きな声で言わない。小さな声で言うぞ。

(小声で)ばかやろう!

小林麻子

(´・ω・`  ) すいません。

一同

(爆笑)

西部邁

その意味はさ、一つ言おうか。いい?

小林麻子

(´・ω・`  ) はい。

西部邁

後方支援をやりますけどもね、という。後方を支援するんだから、「支援」するんだからね、そこで行われている戦争は、自分たちで『肯定』しているわけでしょ?

もしも、間違った戦争ならば、後方なんか支援しちゃいけませんよ。「やめろ!やめろ!!」と言ってればいいわけ。あるいは、やめるべく努力すればいい。

小林麻子

そうで・・・すね・・・。

西部邁

「支援する」んだから、その戦争は、日本は概ね正しいとみなしているんでしょ?正しいとみなしたら、前線まで行ったってね。でも、前線に行くと、怖いから、傷つくから嫌です。そういうのって普通さ、【卑怯者】とか【臆病者】って言うんじゃないの?

小林麻子

そうですねぇ・・・

西部邁

貴女ね、あなた女だから責任ないけど、(他の)あと5人ね。貴女は後方でさ、「5人の男のコ、どんどんケンカやっといて」と。「わたしちょっと後ろから握り飯運ぶから〜」・・・それね、いちばん嫌われるタイプなのね。

一同

(爆笑)

小林麻子

・・・(´・ω・`  )そうですね。

西部邁

『全世界から嫌われるタイプね。』

お前ら、(この戦争が)正しいと言っているなら、犠牲はお前たちがやれと。自分は犠牲は嫌だから、(その代わり)包帯を巻いています、みたいなね。それを臆病者とか卑怯者とか言うわけさ。

まぁ、そうかと言って、なんか森の石松(※清水次郎長一家)みたいにいつも先頭に行きなさいと言ってるんじゃないんですよ。そうじゃなくて、後方支援が正しいと判断するのならば、「前線も正しい」と思っているはずだから、それならば、必要であり、可能ならば、『前線に行くこともあり得るべし』と思うのが、真っ当な男であれ女であれそうですよ。

小林麻子

なんか、ただ・・・

西部邁

(言いかけた小林にかぶせるように)なんか、真っ当な女なら、自分の男に傷つきなさいと。

小林麻子

(汗)・・・あぁ、はい。

西部邁

死んだら線香あげてあげますよ、みたいなことをおやりなさい。

小林麻子

・・・ただ、・・・あぁ(上を仰ぐ)・

西部邁

(またかぶせるように)私も一緒に戦うから、ぐらいのことを嘘でもいいから言ってくださいよ。

小林麻子

ただ、行くべき戦争じゃないところにも行ってしまう・・・

西部邁

その前に「やめろ!」と言えばいいわけ。

小林麻子

・・・そうですよね。

西部邁

そりゃ、後方支援しちゃいけないわけさ。

小林麻子

(うん)

西部邁

そうでしょう?だから、前線活動か後方支援かという話自体がね。

(その戦争が)正しい(と判断する)場合には、後方支援しても、場合によっては前線活動にも行かねばならぬで話はおしまいなの。

じゃあ、(安保法改定)第二の。誰に聞こうか、スダさんに聞こうかなぁ。

第二は、そこで言ったことね。例えば、「人道支援」を主として、要するに、武力衝突はしません。先ほどのと関係あるけど、「人道支援に徹します」というその話はこれまでの話。「武力衝突も引き受けるかもしれません」というのは、どう思う?

塾生

やむを得ないんじゃないですか。そういうことになってしまったら。

西部邁

そうだよねぇ。

塾生

えぇ。

西部邁

それが本当にないとはわからないんだよ。日本人がね、人道支援?例えば、戦争の被害者、負傷者には援助しますと。でもね、それは援助するんだからね、『その戦争を認めているわけ。おおむね肯定ね。』それならね、必要とあればですよ、自分が武力を持つこともあり得る。「武力はアメリカ人はやりなさい。僕たちは武力を持つのは嫌。傷ついたら包帯巻いてあげるわね」とかさ。人道支援、先ほどのと関係あるけど、おかしいでしょ?そうだよねぇ。

だから、いまの(安保)法制改定、それ自体は何の問題もないわけ。

三番目で言うと、これもね、アジアに限らず地球、世界的な繋がりでアラブ、特に石油問題その他あるんだけど、細かいことは抜きにしましょう。遠くまでいくこともあり得る。これだってねぇ、これ自体は正しいでしょう?

「僕たち黄色人種ですから、アジアのことしか。あとは、白がどうなろうが黒がどうなろうが・・・」

一同

(笑)

西部邁

ごめんなさいよ(笑)「僕の知ったこっちゃありません」ってさ、これ怖るべき人種主義ですよ。そうでしょう?

ぼく何もね、すっとこどっこいですよ。どこにでも行けと、言っているんじゃないんですよ、考え方として。

さて、そうだとしたら、この法制改革それ自体は、先ほど言ったように、法制に基づいて戦争をやるというのは、まずちゃちな考えだけど、その事を別にして言えば、改革すべきものは改革しているだけで、何の問題もないわけさ。だから、この麻子先生の言うようにさぁ・・・

小林麻子

ごめんなさいごめんなさい(汗)

西部邁

巻き込まれりゅぅ〜 〜なんてさぁ〜

小林麻子

単純でした。

西部邁

うん。何を言っているのかと思う。東大出た人、早稲田、慶応出た人がさぁ・・・

一同

ハハハ(笑)

西部邁

別に学校の話はどうでもよくて、これは冗談で言っているんだけど、幼稚園出りゃあわかるだろうと。

小林麻子

うん。

西部邁

子供同士、むかしケンカばっかりしてた、少年たちが。その時、いちばん嫌われたのはね・・・

「ぼくお母ちゃんから戦争するなって言われて・・・ケンカするなって言われてるから家へ帰る」ってね。二階から自分の友達に、「頑張って〜!」と言ってるってね、もっとも嫌われた。

塾生

そうですね。

西部邁

ケンカしている敵より嫌われた。

塾生

うん。

西部邁

だから、そんなのきらわれるから嫌って言うんじゃないんですよ。そもそも考えて、おかしいよね。そのケンカがダメなら、『ケンカをやめろ!』って言うべきだし、そういう度胸がなければ、あとは『沈黙』して、黙って俯いてりゃいいんですよ。そうでしょう?

ところが問題は、この法制改革それ自体は基本的には全部正しいことなの。ところが、たかだか法律ですよ?この法律制度を『誰がどうするのか』によるわけでしょう?で、いま誰がと言ったら、日本とアメリカなわけですよ。それで日米。

問題は、これまでの戦後70年の日本がどうかと。ついでに言うと、特にベトナム戦争が65年から始まったのか、まぁその前からそうなんだけど、分かりやすいところから言おう。

戦後に限っても、アメリカは本当に信ずるに足る、あるいは、いろんな戦争をやりまくったあの国は、でも、振り返ってみて、それは基本的に「肯定できる戦争」をやってきたのかと。ベトナム戦争はどうだったんだ?イラク侵略、アフガニスタン云々と(戦争を)やってみてね、何もアメリカが全部「ペケ」と言う必要はないよ。そんなに「日米同盟」と言うが、自分がお手々を結んでいる相手が、そんな全幅の信頼を置ける国なのか。まぁちょっと全幅の信頼は一般に不可能だとしてもね、「その程度」ね。相当疑わしいことを・・・。アメリカ人ですら疑ってるんだから、自分の国を最近はね。

小林麻子

うん。

西部邁

そして日本ですよ、問題は。日本はいったい何をしてきたのか、この戦争とか軍隊についてね。小さい声で言いますが・・・

『ほとんど世界の笑い者になっているわけですよ。』

それが、日米同盟と言ったらね、いくら真っ当に法制を変えても、この法制に基づいてアクション、行動を起こすね、日本とアメリカそれぞれがどうなのか、それぞれの関係がどうなのか、ということは肝心要の問題なわけね。そうでしょう?

一同

(うん)

西部邁

それで結論を急げばですよ、日米関係それぞれなんて言ったけども、それ自体ですよ、変な話で、日本はアメリカに首根っこを押さえられ、もっと言うと、アメリカに憲法をつくっていただき、若干修正されましたけども、教育基本法もだいたいつくっていただき、その他いろんな法律も『アメリカ的に日本社会を変えます』と。もう変えますので、変えますので、アメリカさんよ、とやってきて70年でしょう?

戦後70年なんて、別にカレンダーを70回めくったって話じゃないんですよ。この70年を基本的に方向付けるもの、それは、戦後日本は東西南北、どっちも方向だけど、その方向はどんな色か?

塾生

色って言われても、アメリカナイズされているんじゃないかなという・・・

西部邁

まぁ、そういうことですよね。

『アメリカナイズ』なんだよね。アメリカ的に日本を変えてゆく。そうでしょう?構造改革だろうが何だろうがね。全部そうですよ、特に平成に入ってからね。

もちろん改革してもいいんだけど、基本的には、アメリカ的に社会を変えてゆくと。それが全面的に間違っているなんてことまで言わないけども、今や、アメリカ人自身が(アメリカニズム・アメリカ流を)疑っているわけね。そして、そのアメリカが依然として日本の首根っこを押さえているわけさ。

本当は、日米同盟じゃないのね。日本がアメリカに従属し、服属し、分かりやすく言えば、奴隷とまでは言えないけども、servant(サーバント)、従僕なり召使なり云々ね。

同盟というのはalliance(アライアンス)ですからね。lineに並ぶってことで。ラインに並んでないわけだ。でもすぐわかるでしょう、そんなのね。

塾生

結局、正しさの基準というか、そういうものはアメリカが判断する。正しいか、正しくないかを。そういうことですよね?

西部邁

そういうことになるよね。もちろんね、注意深く言えば、人間は神ならぬ仏ならぬ身ね。だから、これは正しい100%、これはとそんなことはね。

でもさ、『判断しなければいけない』んですよね、これはこういう理由で、こうこうこういう情報があるから、どうやらこれは正しそうだ、ということを自分たちの判断で。アメリカがやっていることが正しいならいいんだけどね。

日米同盟云々と言っている。それで(安保)法制改定と言っているけども、『大いなる穴ぼこの空いた話』でね。

それについて、「戦争に巻き込まれる」という朝日新聞及び小林麻子の考え方は・・・

小林麻子

はっ、それでなんだか正しい判断ができなさそうな気がするんですぅ・・・。

西部邁

わかった。たぶん仰る通りでしょう。したらね、正しい判断が出来ない政府なり国民なりがさ、なんで偉そうに法制を改定したりですよ、出来るのかとなるよね?

小林麻子

(うん)

西部邁

そしたら「何もしない」ということになるのね。「ぼく間違ってますから。間違って何も判断出来ない可能性があるので」と。それで、これまた(先ほどと)まるで同じよ?

小林麻子

(うん)

西部邁

あとはお手上げです、と。誰かどうにかして下さいということになるでしょう?

ちょっと、それはねぇ・・・麻子っ!!

小林麻子

ずっと来ちゃったんです。

西部邁

正しい判断が出来ないような気がするなら、せめて正しい判断出来るように。ケンカを売ってるわけではないのだが、努力しましょう、という議論するしかないじゃない。

小林麻子

そうですね。

西部邁

結論。第一週目。

『ボクもワタシも正しい判断が出来ないから、あとはお手上げです。』と。

これこそね、【無責任の極致】というものであって、俺としては、僕としては、勘弁ならねぇ。次の週にしておきます。

【次週】特別講義「日米関係の根本を問う」 西部邁×表現者塾 塾生