◼︎アメリカ文明は欠陥品である(評論家 国際政治米国金融アナリスト 伊藤貫)~西部邁ゼミナール~
◼︎アメリカ文明は欠陥品である(評論家 国際政治米国金融アナリスト 伊藤貫)~西部邁ゼミナール~
伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト
【ニコ動】
(西部邁ゼミナール)アメリカ文明は欠陥品である 2015.02.22
小林麻子
先週に引き続き伊藤貫先生のご登壇です。先生はアメリカのワシントンD.C.に御在住しつつ、アメリカの外交軍事の転変に関し鋭くかつ広い分析と解釈を発表され続けておられます。
とりわけ、日米があたかも対等の提携関係を結んでいるかのように言う日米同盟論は虚妄の説にすぎないことを常に指摘してこられました。
スラブやアラブをも巻き込みつつ、あたかもハルマゲドン(アルマゲドン)、つまり「善と悪との世界最終戦争」との感を呈しつつある現下のきな臭い世界情勢について、伊藤先生から的確な批評が下されるでしょう。大いに期待できます。
それでは先生、どうぞよろしくお願い致します。
今週も宜しくお願いします。
伊藤貫
お願いします。
今週はテーマとしてはね、伊藤先生・・・
伊藤貫
はい。
『アメリカニズム(Americanism)』
冗談のようですけど、大昔ぼくアメリカに滞在した時に、しょっちゅうね、低レベルのパーティをやってて・・・
伊藤貫
えぇ。
何度か聞いてみたのね。「あなた方の国の名前はどうしてAmericaというか知っているか?」といったらね、低レベルのせいもあるんでしょうけど、知ってるのは10人に1人か2人だったけど。
ごめんなさい麻子さん、これ前置きのうちに失礼だが。
小林麻子
はい。
どうしてアメリカのことを「America」というか由来はご存知?
小林麻子
(困って顔を手でふさぎながら)前に先生に聞いたけれど・・・あのぉ・・・
そんなことはさっさと忘れちゃいました!でいいの。忘れたっていいの。
これはむかしアメリカ大陸の話ね、
[*実は、伊藤貫が前々回の出演時に、西部が同じ質問をして、アメリゴ・ヴェスプッチの話を同じようにしたわけだ。]
【アメリゴ・ヴェスプッチ】
1497年 - 1504年の間に、4度、新大陸へ航海。コロンブスを初めとするヨーロッパ人がアメリカ大陸を東アジアであると考えたのに対し、ヴェスプッチはアジアとは別の大陸、すなわち(ヨーロッパから見て)新大陸であると主張し、またコロンブスより1年早い1491年に到達したと【虚偽の発表】をした。
それにより、また、商人であり自己アピールに長けた彼のラテン語名アメリクス・ウェスプキウス (Americus Vespucius))の女性形からこの新大陸にアメリカという名前が付けられた。 後に最初に到達したという嘘は暴かれるが、その時には既にアメリカという名前が定着してしまっていた。]
▷アメリカの名前の由来 アメリゴ・ヴェスプッチ
島じゃなくて「大陸を発見した」と称して、本当は(アメリカ)大陸の発見もコロンブスだったんですけどね、西インド諸島だけじゃなくて。ところがね、一足先にヨーロッパに帰ったのが、【アメリゴ・ヴェスプッチ】という人で、それでね「大陸を発見したのは俺だ」と言って、講演旅行やって大金儲けたらしい。
それで、アメリゴ・ヴェスプッチというのは、簡単に言うと【嘘つく人】という意味になるのね・・・ということをアメリカ人に向かって言うとね、アメリカ人たち嫌な顔をしてたりね。
伊藤貫
ハハハハハ(笑)
1人2人知っている奴は、「西部それやめてくれ」って。そんなことはいいんだけど、僕は別にアメリカを嘘つき呼ばわりしたいんじゃないんですけどね、やっぱりね、アメリカの今やキャピタリズム、資本主義、アメリカ流の民主主義、American Capitalism と American Democratism が、20世紀を含めていえば100年間近く、1世紀間、猛威を振っているんですよね。
もうこれはあれだな・・・何か、ハルマゲドンでも起こって不思議じゃないなって気分で僕は、後期高齢者に入っているんですけども。
伊藤貫
はい。
貴方のご意見を伺いたし。
伊藤貫
まず、アメリカに移ってきた連中というのが、これがもう問題なのでありまして、確か、1604年のヴァージニアの南の方にきた連中がいるんですけど、この連中はどうやら餓死してしまったらしくて、数年後には。
でその後、10数年経ってから、マサチューセッツのプリマス・ロックとかいうあっちの方にいって、それで大規模なアメリカに対する移住が始まったのが、イギリスのスチュアート王朝のチャールズ1世の時に、大規模な移民が始まったんですね。
[*参考「プリマス・ロック」(Plymouth Rock)とは、いわゆる「巡礼始祖(ピルグリム)」が、1620年にメイフラワー号からプリマス(現在のマサチューセッツ州東岸)に上陸した際、最初に踏んだとされる岩。アメリカ合衆国についての著作で知られるアレクシス・ド・トクヴィルも、この岩についての言及を残している。]
伊藤貫
移民が始まった時の背景が実は面白くて、ヨーロッパでは1517年にあのルターのオジさん(【マルティン・ルター】) が、なんか95ヵ条とかいうどっかの壁か門かに(かんかんと打ち付け、貼り付けて)・・・あれしてからもう大騒ぎになって・・・
▷九十五ヵ条の論題(1517年) マルティン・ルター 正式名称は『贖宥状の意義と効果に関する見解』
宗教戦争ね。
伊藤貫
・・・宗教戦争。それで、それが結局、イギリスにまでは渡ったんですけども、あの95ヵ条の何ヵ条か忘れたけど、(ルターがそれをやった)ちょうど101年後に、キャスリックとプロテスタントの大戦争、『三十年戦争』が始まったんですよ。
伊藤貫
あぁ〜そうか。
伊藤貫
それにキャスリックに対して、要するにヨーロッパの王朝(※ハプスブルグやブルボン王朝など)に対して、特にフランスとかね、同情的なスチュアート朝の王様に反乱する、過激派ね。ラディカルス(Radicals)。ラディカル(Radical=過激派)とファナティック(Fanatic=狂信者)。
今風にいえばですね、イスラム原理主義者って言われている人々がアメリカに放り込まれたと(笑)
伊藤貫
そうです。イエス、イエス。そう。原理主義者。
トクヴィル(【アレクシ・ド・トクヴィル】)なんかは、あのチャールズ1世時代に『ポリティカル・ファナティックとレリジャス・ファナティックがアメリカに移った。それでイギリスのスチュワート朝は大いに喜んで、もっともっと(アメリカへ)出てってくれ』と、厄介者払いして(笑)
▷Political(政治的な)Fanatic
Religious(宗教的な)Fanatic
あのファナティック(Fanatic)って熱狂、「熱狂主義者(=狂信者)」ね。
伊藤貫
だから、最初からね、要するにファナティックとかファンダメンタリストね、原理主義者というのは、態度に共通点がありまして、何かって言うと①『自分たちだけが正しい!』と。
伊藤貫
それからもう一つは②『自分たちだけが正しいんだから、お前も同じことをやれ!』と、押し付けがましいわけね。
それで、17世紀の初めにそういうイギリスからアメリカに移ってった奴らはみんな『押し付けがましい奴らばっかりアメリカに移ってって』(笑)それで、そういう人たちがニューイングランド・コロニーというのをつくって、100数十年後には独立革命(アメリカ独立革命)をやったと。
最初から、トクヴィルは、彼らのことを『ファナティック・セクタリアン』(Fanatic Sectarian =狂信的宗派)と呼んでいるんですね。
『世界で一番の国はアメリカ。他の国は全部アメリカのマネをしろ!』と。でね、まだアメリカの東海岸の13の小さな貧しい州だった時ですら、何かっていうと『俺たちが世界一だ』と。要するに【世界一病】ね。とにかく、アメリカこそ世界一なんだから、他の国はぜんぶアメリカのマネをしなさいという文明が出来ちゃったわけですね。
だから、そこらへんから「アメリカ外交」というのは、他の国にとってかなり難しいんですよ。
そうなんですよね。
伊藤貫
えぇ。
だから、大雑把に言うと、ソヴィエト連邦が崩壊しましたけどね、20世紀後半、20世紀全体を通じる『米ソ冷戦構造』というのは、アメリカという、今の答えで言えば、ファナティック・セクタリアン、分派主義者ね。
伊藤貫
えぇ。
やっぱりソ連も(アメリカと)同じだったんですね、社会主義という他愛もない「教条」それを信じ込んで、原理としてね、『それ以外のものに対しては、世界革命を要求する!』というね。そういう意味では、(アメリカとソ連は)一卵性じゃないとしても、二卵性双生児ぐらいソックリさんたちが実は冷戦構造だったの。
結論を言うと、戦後の日本がオツムが狂っちゃった最大の原因をたずねるとね、そもそも「双子の兄弟(アメリカとソ連)」がね、ファナティック・セクタリアンたちがぶつかり合ってる時に、『アメリカに付くのが保守派で、ソ連若しくは中国に付くのが革新派だ』というね、そういうとんでもない馬鹿げた価値基準、規範基準で戦後をつくりだして、それで、自民党だ、社会党だ、共産党だがこうやってまだ続いているわけですよ。
これはね、70年間もオツムの基本軸が狂ってたらね、そりゃあねぇ、どんな優秀な我が民族だって、いささかならず、溶けて流れてNOへとなりましたと。
それを助けに伊藤貫君が来てくれるかと思ったら、また(アメリカに)帰るとか言ってて。ふっふっふ(笑)
伊藤貫
あっ、そうだ。
伊藤貫
えぇ。で当時、ジョージ・ケナンは若手の30歳ぐらいの外交官としてリトアニアかな? かなんか。というのは、アメリカは当時ソ連と外交が無かったもんですから、それでケナンはドイツ語もロシア語もものすごく流暢な人物ですから、リトアニアとかエストニアとかあそこらへんに配置されて、それでロシアから入ってくる情報を、それであそこらへんは人口の2割か3割はロシア人でしょう。
でね、その時に彼が日記に書いているのがすごくて・・・
Americanism, like Bolshevism,
あっはっはっは(笑)
伊藤貫
(Americanism, like Bolshevism,)is a disease which gains footing in a weakened body.
disease=病気、
(アメリカニズムは、まるでボリシェヴィズムのように)弱くなった国家に取り憑く病気であると。
でね、
If the Old World has no longer sufficient vitality economic or cultural,it will have to drown in the flood,ascivilizations have drowned before it.
要するに、経済的なもしくは文化的なバイタリティーを失ってしまうならば、ヨーロッパという古い世界は(the Old World)は、この『new barbarian invasions(野蛮人の侵略)』に押し流されてしまうだろうと(笑)
[*the Old World=(1920年代当時において)ヨーロッパのこと]
そうすると、ケナンは1928年の時点ですでに(西部)先生が仰ったように、『アメリカニズムとボリシェヴィズムというのは似たようなもんで両方とも病気だ』と。でしかも『barbarian invasions(野蛮人の侵略)』だというふうに・・・
これ他のある人ですけどね、英語で言うとこんな言葉使って『Re-barbarianism』『文明の再野蛮化が始まった』と。これはオルテガ(ホセ・オルテガ・イ・ガセット)という人が1930年だから、ちょうどその頃でしょうね。
伊藤貫
えぇ。
それから、こんな言葉を使ってた。『Vandalism(ヴァンダリズム)』 、Vandal(ヴァンダル)というのはね、ゲルマン民族の一族で「ヴァンダル族」というのがいて、それがイタリア半島に流れ込んだりさ、民族大移動の時。
▷Vandalism ゲルマン民族の一族に由来
それでね、ヴァンダル族にとってはね、いわゆる文化というもの、ローマが遺した文化ね、「文化それ自体が気持ち悪くてしょうがない。全部ぶっ壊せ!!」というんで、ローマの破壊に入ったんで、わけわかんない、なんで(自分たちが)壊しているのかが。それで、そのことを『ヴァンダリズム(Vandalism)』というんですけどもね。訳せば『文明破壊の野蛮行為』というのかな。
話を戻すと、アメリカニズムもボリシェヴィズムも・・・(ボリシェヴィズムは)ソ連のことね?
小林麻子
はい。
それも、恐らくこんな臭い(※再野蛮化とかヴァンダリズム的な臭い)を持って、世界中で暴れてぶつかっているってことを、ケナン先生をはじめとして、心ある人々は100年も前から少しずつわかってきたのね。
伊藤貫
▷トクヴィル(仏 1805~1859年) 著書『アメリカの民主政治』など
伊藤貫
トクヴィルは、1835年頃からフランスの国会議員やってて、確か、1848年の革命騒ぎ(※『1848年革命』フランス2月革命、ドイツ3月革命などヨーロッパへの伝播)の後は、1年ぐらい外務大臣をやってて、それでナポレオンの甥(※ルイ・ナポレオン▷のちに帝位についてナポレオン3世を名乗り「第二帝政」を開始する)とケンカして引退したんですよ。
僕も大好きです!!へっへっへー(笑)
伊藤貫
『ヨーロッパはアメリカにウンザリした。アメリカとはもう付き合いたくない』と、それで彼が何と言ったかと言うと、ラテン語でアメリカのことを『robustus(ロバスト)』とか『ピュエリル(pueril)』とか呼んでいるんですよ。
(嬉しそうに)おぉ〜。
伊藤貫
どういうことかというと『robusta(ロバスタ)』って「頑強」ね、とか『ピュエリル(pueril)』って要するに「ガキっぽい」、要するに「子供」ね。
▷pueril 文化的小児病
小さい声でいう。『文化的小児病』、ピュエリル(pueril)ってね。僕も言葉好きなんだ、puerilってねぇ。
伊藤貫
でね、要するにトクヴィルから見ると、『アメリカってもの自体がロバスタ(robusta)でピュエリル(pueril)であると。』
robusta(ロバスタ)って「頑なな」って意味?
伊藤貫
(強いジェスチャーを加えながら熱っぽく)頑強!タフな!もうタフな!!『タフな小児病患者(robusta pueril)』
もうだから、どうしようもない、扱えないと、扱いようがないというふうに(トクヴィルはアメリカのことを評した。)
伊藤貫
小林麻子
うん。
伊藤貫
いまアメリカと言われている、テキサスとかユタとかネバダとかカリフォルニアとか全部あれメキシコのものだったんですよ。当時のメキシコがやられたことは、1940年と41年に日本がやられたこと(※徹底した経済制裁と最後通牒のハル・ノート)と同じで、メキシコとしてはファイトバック(fightback:反撃)せざるを得ないと。
で、ファイトバックせざるを得ないから、ファイトバックしたら『最初に手を出したのはあいつら(メキシコ)だ。やっちまえ!!』といって徹底的にやっちゃうと。で、トクヴィルは(アメリカの)そのやり方を見てて、『もういい加減にしてくれ』と。
でまぁ、日本の問題に戻しますと、僕も非常にそういうアメリカ文明、アメリカ文明というもの自体がすごくアーキテクチャル(architectural)ですからね。アーキテクチャルで、しかも歴史を否定した存在ですからね。
▷ahistorical 無歴史的な
伊藤貫
「無歴史的」「反歴史的」(が「ahistorical」)、ahistoricalというと、例えば、amoral(エイモラル)というと「無道徳」、immoral(インモーラル)が「反道徳」でしょう? 無道徳というとamoral(エイモラル)な。
でアメリカというのは、ahistorical なempire(エンパイア)である。[無歴史的帝国がアメリカである]
で、結局それを僕はマネせざるを得なくなった日本は、何故かというと、日本の保守派の連中は「日本人は腰抜けになったからだ」と。勿論それはもう6割ぐらいは正しいんですけど、僕は実は【福田恆存】さんと同じで・・・
うん。
伊藤貫
そうねぇ。
伊藤貫
うん。
要するに、アメリカの左翼が教えたことに拍手喝采してる連中と、アメリカの右翼が言ってることに拍手喝采している連中といて、だから、『産経新聞なんかは、アメリカの右翼に拍手喝采するわけです。』
小林麻子
うん。
伊藤貫
小林麻子
あ〜そうかぁ。
伊藤貫
で、どうしてそんなヘンテコリンな状態になっちゃったかというと、福田恆存さんは、『明治以来の教育に失敗したからだ』と。
▷福田恆存
「明治以来の教育に失敗したから」
あぁ〜そうだと思うね。
伊藤貫
えぇ。いうふうに仰るんですよね。
で、明治以来の教育制度というのが、福田さんに言わせると【立身出世主義】だと。
あぁ〜。
伊藤貫
で、福田さんは、『教育というのは立身出世のためにやるんじゃないんだ』と。
それね、徳川時代は立身出世の為に勉強したんじゃないわけよ。だって、勉強しても立身出世できないんだから(笑)・・・江戸時代は。
ようするに、勉強しても出世しないし、得しないから、本当に勉強の好きな人だけ勉強したわけですよ。そこが良かったわけ。
小林麻子
はい。
伊藤貫
ところが、明治時代以降はもう、中学行って、高校行っていい成績とって、高等文官試験(※1894~1948年まで採用されていた高級官僚試験)にいい点で通ると出世が出来ると。そうするとね、全部教育制度自体が、教育ってもの自体が『出世主義』と『功利主義』ね。
そうね。
▷功利主義
伊藤貫
功利主義になっちゃったわけ。でね、これってねぇ、(西部)先生がご存知のように Impoverishment of Education(教育の貧困化)ですよ。
Impoverishment って「貧困化」ね。
伊藤貫
貧困化。あのやっぱりね、「得するから」とか「出世するから」とか、「お金儲かるから」とかで勉強するだったらね、それって本当の勉強じゃないわけよ。
やっぱり勉強ってのは「好きだからやる」と、「損してもやる」と、というのが・・・
本当いうと、他にやる事がないから(自分の場合は)やると(笑)
伊藤貫
そうそうそうそう。ヒマ人はヒマを持て余しているあら勉強するとかね(笑)
でそれが、本当の文化であり、本当の教育なのに、もう明治以降、それはだから「機会平等」ってのはいいわけ。みんな機会平等で勉強しましょうと。それはいいのだけど、その悪い反面は、要するに勉強にせよ、教育にせよ、『全部出世するためだ』と『得するためだ』ということになっちゃったわけですよね。
小林麻子
はぁ。
途中で悪いけどさ、「school」「学校」ってさ、これもともとの意味はご存知じゃないでしょ?いいんだ、忘れてもいいんだ。
伊藤貫
えぇ。
▷schoolの語源
schole(ラテン語)暇
汝、自らを疑え
つまり、『いま自分が言っていることは正しいかどうか、自分で考えはじめる』というね。美しいかどうかね。
小林麻子
はい。
暇なもんだから。「暇」と言ったら悪い意味じゃなくて、本当に自分は何であるか、言っていること、考えてること、それを訪ねると。そこから『学校』って始まったもんなんですよね。
伊藤貫
Utilitarianism(ユーティリテリアニズム:功利主義)
とんでもないです。
伊藤貫
が・・・
あぁ〜ヒッピーたちがね。
伊藤貫
そうヒッピーたちがデモをやって大学を破壊して大変な時に、ケナンが『もう大学の教育はどんどん悪い方向へ向かっている』と。
要するに、全く役に立たない贅沢を、禁欲的に、“禁欲的に贅沢を追求する”というのが教育制度であると。
あぁそうか。
伊藤貫
で、それこそが Superior Education(スーペリアル・エデュケーション)であると。
本当にアメリカのことですけどね、先ほどのね、資本主義のことを『Capitalism(キャピタリズム)』というでしょう。日本人は「資本主義」でさ、例えば、資本、お金の所有が認められると。
ところが、Capitalismにはちゃんとした意味があって、(前半部分の)「cap」って「キャップ」つまり「帽子」のことなんですよ。
小林麻子
はい。
▷Capitalism
capは帽子を表す
Capitalismと言った時にはね、インプリシット(implicit)に『暗々裏に金を持っているだけで、人様の上に立つ帽子のようになって威張りくさる』ってね。
小林麻子
はぁ。
マルクス(【カール・マルクス】)って人は、『ダス カピタル(Das Kapital:資本論)』と言った時にはね、(資本論の)本には書いていないけど、前後関係からして明らかに『これはおかしくなりますよ。(おかしく)なれば金を持っているだけで、社会のキャップ(cap)になる』というね。
同じようにして、これはあの『Democracy(デモクラシー)』ですけどね、日本人よく「民主主義」なんて言うけど、ギリシャ語で「demos(デーモス)」というと「民衆」なんだけど、これ本当に昔のギリシャのプラトンを読むとね、プラトンに限らない、これはね、佐藤健志君という若者が教えてくれたのだけど、【エドマンド・バーク】、1790年に『フランス革命クソ喰らえ!」と書いたエドマンド・バーク、偉大なイギリス人ね。
▷バーク(英 1729年~1797年)
伊藤貫
えぇ。
その人の本を(佐藤健志が)読むと・・・僕だって読んでいるんだけどね(笑)デモクラシーって言葉をすべて『否定語』『非難語』として、「とんでもないものという時に“デモクラシー”」という言葉を使っているというね。
それはずーっとたずねると、ギリシャの昔からそうなんですよ。
『デモクラシーってとんでもないもんですよ!』ってね。
それをね、もちろんヨーロッパだってデモクラシーの国なんだけども、心ある人、分かっている一群の人々がいてね、ますます少なくなってはいるけども、ただある程度目立って、デモクラシーしか無いかもしれんが、これが厄介至極で困ったもんでね、ぐらいの気持ちは残っているんですよ。
伊藤貫
これはもうね、19世紀からアメリカを訪れたヨーロッパの学者とか知識人がみんな言ってることなんですけど、アメリカ人が興味を示す学問とか知識というのは、最終的には『全部役に立つか立たないのか?』と。
そうね。
伊藤貫
でね、要するにアメリカ人というのは『役に立つ知識だったら取り入れてもいい。そればっかりだ』と言うんですね。
でね、そういう要するに「Utilitarian Materialist Civilization」、物質主義的で拝金主義的で功利主義的なシビライゼーション(文明)が、1945年に日本に入り込んで来たら、『日本人はパッと飛びついちゃった』わけ。
そう。
伊藤貫
これは、先ほど言いましたように、福田恆存さんが仰ったように、やはり、『明治時代以降、明治・大正・昭和の初期と「貧しい教育」をやっていたからあっという間に(戦後になってアメリカニズムに)飛びついちゃったんだろう』と。
で、そうでもない限り、そう簡単に飛びつかなかったんじゃないのか、という・・・
まぁでもそれは、教育だけじゃなくて、『明治維新そのもの』がね・・・
伊藤貫
あっ。(うんうん)
もちろん、止むを得ず起こったんですよ。西欧諸列強がまず『アヘン戦争』で中国に押し込み、更に、日本列島まで押し込もうとしているから、でそれにアメリカもくっついてグワーッと来ようとするからね、日本人は必死でやったんだ。
けれどもね・・・
伊藤貫
そうです。
もともとはよかった。【維新】というのはあれだからね、温故知新と同じで『古き良きものの復活』という意味で、もともとは良い意味なんだけど、日本人はそれはね、維新という言葉に引っ掛けて『御一新』と考えたわけです。
▷維新を「御一新」と捉えた日本人
(御一新とは)「すべてを新しくする。」一つに新しい、御一新ね。
それ以来何か、「新しいものは良いものだ」と。そうすると、新しいものは大体「金の儲けの機会」になるんで、いま日本人は、新しいものに大体多くの人は飛びつくわけさ。
それから、Democracyってデーモス(demos)、民衆はね、これも厄介で。民衆にも素晴らしい僕のお婆ちゃんとか、ひい婆ちゃんは会ってないけど、いつもいたんでしょうけどね、やっぱり、圧倒的大多数は、そういうものに飛びつく人なのね、『流行』にね。
その人たちは、畑とかね、これ差別語だけどね、畑とか田圃にいる限りは立派なり、木こりだったんですよ。あぁ〜木こりは山か。
その人たちに、いま仰ったように教育を授けて、教育を授ければ、「山から出てこれますよ、田圃から出てこれますよ」ってやった途端に、ウワーッと大量の人々がね、新しいものを目指しはじめ、そうすると、資本主義の新しい商品、民主主義の新しい世論、というのに飛びついて、はや明治維新からいうと何年になる?140何年も。
伊藤貫
最近、年をとればとるほど、『明治維新は、あれやってよかったのかねぇ・・・』と。
あの廃藩置県も勿体無いことをした(笑)
勿体無い(笑)
伊藤貫
ね(笑)せっかく官軍勝ったのだから、残したらいいのにという感じを抱きますけども。
もう時間が来たのでね。
伊藤貫
はい。
先週と今週の伊藤貫さんから、まぁ勝手にね、聴衆の皆さんに訴えかけると。
いま我々が言ってる次元は、あんなことやって良かったのか、役に立たない話だけども、しかしながら、そういうことをね、言う必要もあるし、考える必要があるしね、それはもちろん、100何十年前の過去を取り戻せないのだが、『あんなことを(当時)あんなふうにやってよかったのかね、という気持ちはね、それは、いま現在も活かせるハズなわけよね。』
小林麻子
うん。
アメリカについていっていいのかねぇ〜とかさ、中国なんかの旗を一緒に振ってていいのかねぇ〜というふうなね。
そういう意味では、やはり、大事なことを言ってくれた!!
伊藤貫
はい。
これからは、1年に1ぺんとは言わずに、1ヶ月に1ぺんぐらい(日本に)帰ってきてくださいということで(笑)
伊藤貫
はいはいはい(笑)
どうも2週間ありがとうございました。
一同
ありがとうございました。
【次回】日本の歌教室「初恋」編
ゲスト 青山恵子 メゾソプラノ歌手