◼︎文明の衝突と不介入主義外交(評論家 国際政治米国金融アナリスト 伊藤貫)~西部邁ゼミナール~
伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト
【ニコ動】
小林麻子
アメリカ在住の伊藤貫先生が久方ぶりに来日されましたので、今日は先生をお招きして、アメリカの世界戦略はどうなっているか、その中で、特に、日米関係がいかなる展開を示そうとしているのか、話していただきます。
先日、IS 「イスラム国」が二人の日本人を拉致し、それにともない身代金要求、捕虜殺害といった問題が世間を騒がせました。これらの問題の根底にも、いわゆる日米同盟の仕組みが影を落としていると思われます。
伊藤先生の大局的、かつ、鋭利な分析がここで開陳されるに違いありません。
それでは先生方、宜しくお願い致します。
あぁ〜9ヶ月ぶりどうもありがとうございます。
伊藤貫
はいどうも、はい。
「イスラム国」のね、日本人人質問題があって、僕の見解を「誤解を恐れずに」大雑把にいくと、「イスラム国」が二人を処刑したのは言語道断、許し難いってみんなね・・・それでいいんですけど、まぁ同時に僕でしたらね・・・
伊藤貫
えぇ。
僕は首相でも大臣でも局長でもないから言えるんだけど、『言語道断なのはあんなところにノコノコと出掛けてった』、殺された方の家族には悪いけどね、【(ISの勢力圏にわざわざ自ら)出掛けて行ったのを言語道断と!】いうぐらいのことを、大臣たちが言うとトラブルの元だけど、言論人その他はね、少しは言ったっていいんじゃないか。
でも、誰も何一つ言わない。日本人の言葉遣いというのは妙なもんだなというのが一つ。
伊藤貫
はい。
もう一つは、もっと大きな問題になるんですけども、今の問題、テレビ新聞は露骨に言わないんだけど、実は、implicit(インプリシット=暗黙)、隠伏的に安倍批判があってね。
伊藤貫
えぇえぇ。
それがね、安倍さんがね、例のイスラエル訪問して、人道的支援と限定はあるけども、IS、「イスラム国」のテロに対する撲滅作戦のいわゆる「有志連合」に参加します、ということを世界的に明らかにして、それに対するRetaliation(リタリエーション) 報復として、今度の人質事件が起こったのであると。
伊藤貫
はい。
「悪いのは安倍なのではないか?」という意見をみんな言いたくて言いたくてウズウズしている気配が、新聞テレビ、ほんのちょっとはウズウズを通り越して実際にやっている。
伊藤貫
はい。はい。
ただ、僕ね、それも否定もしないのだけど、でも、今更そんなこと急に言うなよってね。
アメリカにずるずるべったり取り縋って、日米同盟だの、アメリカに学べだの、それから、平成に入って20何年、構造改革論をはじめとして、アメリカ型のマーケットにしましょうとか、政府にしましょうみたいなことを20数年言った挙句にね、
伊藤貫
えぇ。
「有志連合に入るのはけしからん!」という。どこまでこう、なんていうのかな・・・呑気なこと言ってるのかなってことは、まぁ〜くどくど言っちゃあれだけど、僕の気持ちとして、事件が終わってから2週間経って残ってるんだけど。
そんなことはともかく。アメリカにいると、どんなふうに見えました?こないだの馬鹿げた事件が?
伊藤貫
あの〜【日本人にとっての結論】を言っちゃいますと『この中東問題は、日本人の手に負える問題ではないから、手を出すな!』と(笑)
まぁそうだ。
伊藤貫
で、まずそれが僕の最初の印象で。それから、勿論、亡くなられた二人の方にはお悔やみを申し上げますけども、彼らが、過去400年間、西洋文明とイスラム教文明が、どういうふうに対立してきたのかということを勉強してから、イスラムの紛争にご参加なさったというか、顔を出したというか、どこまでね、勉強してからシリアへ行ったんだと、ISに行ったんだと、いう疑問がちょっとありまして。
その「可哀想な子供を助けたい」とかね、わかるけど、だけど、それだけでね、『この400年間のイスラム教諸国と、それから、イギリス・フランス・アメリカ・イスラエル、この4国がどのくらいイスラム教諸国をぶっ叩いて、言っちゃ悪いけど、ヒドイ目に遭わせたかという歴史があるんですね。』
そこまでお分かりになって、あそこまで出掛けて行ったのか?というちょっと疑問が残るんですね。
[*オスマン帝国(1299~1922) 最盛期:15世紀~16世紀]
伊藤貫
それで、最初に「なぜ日本人は手を出さない方がいいか?」と言ったかというと、15、16世紀あたりまでは【オスマン・トルコ帝国】というのがバカでかくて、スペインの南半分までコントロールしたし、ウィーンまで攻めて(※第一次、第二次のウィーン包囲/ ハプスブルク=オスマン戦争)行ったし、とにかくヨーロッパ諸国はオスマン・トルコが怖くてしょうがないと。
16世紀になって、ハプスブルク帝国とオスマン帝国がやっと「均衡」を保てるようになって、やっと(イスラム勢力を)ヨーロッパに出てこないようにしようと。それで、1618年から1648年まで、いわゆる【三十年戦争】では、フランスがずる賢いことに、キャスリック教国(ブルボン朝)なのに、オスマン・トルコをフランス側に引きずり込んで、それで、ハプスブルクと・・・ハプスブルグもキャスリックなのね、(フランスは、オスマンをハプスブルグと)戦争させたと。
で、19世紀になるとオスマン・トルコは「Sick man of the Europe=ヨーロッパの病人」(※または「瀕死の病人」とも言われた)「Sick man of the near East」とか言われるように『病人』と言われるようになって、どんどんどんどん落ちてきて、イギリスにもフランスにもオーストリアにもロシアにも徹底的にイジメられて、そこらへんから彼らの(ヨーロッパ世界への)「被害妄想」ってはじまるんですけども。
で、「イスラム教諸国の可哀想なところ」は、14、15世紀の①『ルネッサンス』、それから16世紀はじめからの②『プロテスタント・リフォーメーション』(※The Protestant Reformation / もしくは「ラディカル・リフォーメーション The Radical Reformation」=いわゆる「宗教改革」)というやつ。それから、1648年に出来た③『ウェストファリア体制』。
で、ウェストファリア体制ではじめてNation State 民族国家(国民国家)というのができて、今の『国際法』というのは、あのウェストファリア条約から出てきているんですよ。それで、ヨーロッパは【近代】に入って、それで、18世紀の『啓蒙の時代』とか『産業革命』とか『自然科学の発達』というのがあったのですけども、イスラム教国は、いま言ったそのプロテスタント・リフォーメーションから19世紀までの『インダストリアライゼーション(industrialization=産業化)』とか『デモクラタイゼーション(democratization=民主化)』というのに、(イスラム教国は)【全部取り残されちゃったわけ。】
そう。
伊藤貫
『約300年分(イスラム世界は)取り残されちゃったわけよ。』
それをね、今頃になって、ヨーロッパ人とかアメリカ人が「おまえら時代遅れだ!」とかね、そういうふうに勝手に決めつけて、侮辱して、それで「アメリカのやり方をマネしろ!」とかね・・・でも、その300年間、(イスラム世界は)全く別のシステムでやってきたのだから、いきなり、そのプロテスタント・リフォーメーションからウェストファリア・システムからEnlightenment(啓蒙)、Age of Enlightenment(啓蒙時代)まで全部いきなり10年でやれ!って言われたって、それは無理ってもんでね。
そこらへんで、(米欧には)『無理と傲慢』があるわけです。
[*オスマン帝国の領土分割 英仏が国境線を引く]
伊藤貫
で、もう一つは、1919年にオスマン・トルコ帝国がポシャってしまった後に、イギリスとフランスが勝手に国境線を引いたわけですよ。
[*第一次大戦の同盟国軍での参戦と敗戦、その後のトルコ分割▷1920年の「セーヴル条約」1923年の「ローザンヌ条約」の両講話締結締結によりトルコは広大な領土を失う▷23年より共和制の「トルコ共和国」となる]
(国境線を)真っ直ぐに、垂直とか水平にね。
あれは要するに、イギリスとかフランスですけどね。国境線を人工的に引いたから、真っ直ぐなわけよ、めんどくさいから真っ直ぐにしたんでしょう。でも、普通の国境線は、だいたいなんて〜の(手で波打つジェスチャー)・・・
伊藤貫
それは、歴史的な経緯があって(そういう国境線が)できてるわけで(笑)
(国境線が)引っ込んだり出たりしてるんでしょう(笑)
伊藤貫
はい。その時に、イギリス人とフランス人は本当に腹黒くて、どういうふうに、もちろん(西部がいうように国境線を)真っ直ぐ引いちゃったんだけど、必ずね、「シーア派」とか「クルド族」とか「スンニ派」が、一つのイラクでもレバノンでも、それからシリアでも『部族同士が対立するように国境線を引いてるの。』
そうすると、どこの国でも、一つのスンニ派なりシーア派なクルド族が『ドミナント(dominant:優勢、支配)』『優勢な立場になって、他の民族を支配できない』と。そうなると、しょっちゅうケンカするでしょう?それで、イギリスもフランスもケンカさせといて自分たちが要するに、『divide and control』(ディバイド アンド コントロール:分裂とコントロール)と。
これはね、実は、イギリスがインドで学んだというか、やったやり方なのね。ヒンズー教徒とイスラム教徒をセパレイトして、ディバイドして、それでケンカさせておいて自分たちがコントロールするという。(はいどうぞ。笑)
伊藤貫
えぇ。
それをアラブにおいて起用した。
伊藤貫
ハッキリ言ってね、「オスマン・トルコの圧政から(お前たちアラブ人を俺たちが)解放してやったんだ!」とか言いながら、1919年にイギリスとフランスがやったことってこれまた腹黒くて、要するに、自分たちに都合のいいTribal chief(トライバル・チーフ)=部族長を買収したりして、それで操っていたわけね。
そうすると、1919年から2015年まで「ほぼ100年」の中国じゃないけど、『One hundred years Humiliation:百年の屈辱』と、いうのが(欧米に対してイスラム世界には)あるんですよ。
[*ブレント・スコウクロフト(1925~) 退役空軍中将、フォード父ブッシュ政権元国家安全保障担当大統領補佐官等を歴任、現在はワシントンのシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)理事、リアリスト・スクールに分類される戦略家の一人]
伊藤貫
えぇ。
彼はあの時どういう立場だったの?
伊藤貫
大統領安全保障補佐官です。
補佐官、特別補佐官でいてね、ともかく、『アラブには、つまりバクダッドまでには行く必要はない』と。軍隊ね。
伊藤貫
えぇ。
ところが、息子(ブッシュJr.)まで来るとね、ちょっとおかしくなっちゃってさ、徹底的にあちこち壊しちゃったでしょう。ここまでめちゃくちゃにされたらですよ、いま(伊藤が言った)数百年に渡ってじゃないけど・・・
伊藤貫
えぇ、そうですよ。
とりわけ、ここ十数年に渡ってそれされたら(※米欧によるめちゃくちゃな破壊と殺戮)ね、俺たちは・・・State(ステート)ってのは、これは何度も言うんだけど(※先週も言いました。笑)、これ日本人は「国家」とか「政府」とか訳してそれでいいんだけど、もともとは『状態』って意味ですからね。
伊藤貫
えぇ。
『自分たちのアラブ文明、イスラム文明の“もともとの状態”を取り戻すのは、俺たちの権利だぜ!』と。で、『俺たちにはもともと国境線が真っ直ぐにあったんじゃないぜ!』ってんでね、イスラムあるいはコーラン、それに基づいてイスラムの状態を取り戻すぜということに、実は、言い分として、正当性を持っている。
伊藤貫
えぇ。
僕が言いたいのは、それぐらいのことを認めたっていいだろう。単にね「3万人の凶悪なるテロリストがいます。撲滅に参加しましょう!」ってね、子供のね、紙芝居じゃないんだからと、ちょっとクレーム付けたいけど。
[*オスマン帝国の第一次大戦の敗戦降伏後にパレスチナのイギリスによる占領統治が始まり、1922年当時の国際連盟における委任統治制度によって、イギリス統治領パレスチナとして運営されることとなり(有名なイギリスの「三枚舌外交」における、ユダヤのロスチャイルド卿と結んだ「パルフォア宣言」が土台となって)かの地にユダヤ人の入植がはじまる。1948年に過激派ユダヤ人の問題、アラブ人の問題に耐えきれなくなったイギリスは、パレスチナの統治を放棄して国際連合に委ね、同5月14日にユダヤ人は「イスラエル独立宣言」(47年の国連「パレスチナ分割決議」に基づく=実際はアメリカのリーダーシップによって決まった)を行う。アラブ諸国はこれに反発し、パレスチナ人支援の名目でアラブ諸国は義勇兵が集い、イスラエルとの「第一次中東戦争」に突入する。]
伊藤貫
えぇ。もうちょっと具体的に言いますと、1947年にアメリカがリーダーシップをとってパレスチナの土地のほとんどをユダヤ人にくれてやると。(※1947年のいわゆる国連「パレスチナ分割決議」)『シオニスト』と言われるユダヤ人にくれてやるということに決めたのですけど、あの当時、パレスチナと言われるところにユダヤ人の人口は、せいぜい15~20%しかいなくて、8割から85%はパレスチナ人だったわけね。
伊藤貫
それをアメリカは、確か(イギリスが統治管理していたパレスチナの地の)「56%はユダヤ人にあげる」と。それでパレスチナ人はもちろん面白くないわけですよ。自分たちは(パレスチナの地における人口構成の)8割から85(%)。
でね、それからがもう、おかしくなって、それで要するに、たった人口15~20%の連中が(パレスチナの地の)78%を獲っちゃったと。しかも、1967年にもう一回、アラブ戦争というのがあって(※第三次中東戦争)イスラエルは結局、Preemptive Attack(プリームティブ・アタック) 先制攻撃して、パレスチナ人が住んでいるところを全部獲っちゃったと。(※現在の火種になっているガザ地区、ヨルダン川西岸地域の支配権をイスラエルが獲得し、パレスチナを統一する)
そん時に(アメリカ)国務省は、「これは国際法違反のイスラエルによる侵略戦争である」と、「イスラエルは占領したところから出て行け」と言ったのだけど、その後に、アメリカの政治屋が何をやったかといえば、『イスラエルに対する軍事援助と経済援助をぶわーっと増やした(笑)』、要するにね、口ではイスラエルの侵略はよくないと言いながら、実際には、(イスラエルに対しアメリカは)軍事援助と経済援助をやり放題でね。
これについて、途中で悪いんだけども。
伊藤貫
はい。
僕は、情報に接しないことが普段以上に多くなって、僕の意見じゃないんだけど、ある人が・・・小さい声で言うと、「この場呼んだある人」が・・・
伊藤貫
はーはー。えーえー。
(テレビを)観ている人は覚えているのだけど、(前回、前々回出演の木村三浩氏は)こんな感じがすると。
伊藤貫
うん。
伊藤貫
あ〜あ〜あ〜。えぇ、えぇ、えぇ、知ってます、知ってます。
ちょっと待って、最後まで聞いて。
僕はね、そんなことは情報通でもなんでもないから、そういう説があって、仮にね・・・仮に、かもしれないでいいんだけど、かもしれない仮説の世界で言うと、今度すごいことになるのはね、そういうイスラエルの秘密警察のモサドが手を出すなり、金を出すなりやっているんだとすると、アメリカが(それを)知らないわけがないんでしょう?
ある一つの論理的繋がりとして、「かもしれない」で言うとね、あるそういう一種の国際的マッチポンプっていうの、その結果が何かと言ったら、『アラブの地帯が徹底的にこれまで以上に破壊される』というね、そういう状態。
たぶん僕ね、それなんかうまく・・・そのことは僕は何も知らないから・・・置いておいたとしてもですよ、その(背後でモサド陰謀説についての)事実問題は。なんとなくね、いま世界情勢の動き方からすると、そういう推論も成り立ちうるなぁ・・・というのが、ここで伊藤さんに聞きたいのだけど。
伊藤貫
はい。
[*世界資本主義の生き残りのため戦争を仕掛ける]
いまのいわゆる資本主義、世界資本主義がね、なんだかんだと言っているけども、何かなんとか生き延びようとするとね、これまで何度もそうだったように、ともかく世界に破壊を仕掛ける、戦争を仕掛ける、戦争を仕掛けることによって、勿論、軍事産業その他を活性化して何とか景気を取り戻す。取り戻しているうちに、何とか次の手を見つけ出すというね。
これがかつての第一次世界大戦、第二次世界大戦で世界協働で行われたことなんだけれども、そんなことを茫漠と思い起こすとね、誰が意図的にやっているかのことじゃなくてですね、やっぱり世界システムというものが、そういう「戦争と言う名の大破壊」ね、これはアラブだけじゃなくてスラブ、ロシアの問題も入ってくる。シリアを応援してきたのはロシアですからね。シリアをぶっ潰すということは、簡単に言えばロシアが深手を負うということで、そんなことまでね、誰が計算した?というよりも、何か、世界のある種の客観的な動きとして、戦争の時代がはじまってしまったと。それに連なる形でしか、もうキャピタリズム、世界資本主義は生き延びれないというね。
そういうことを、さすが世界を支配してきたアングロサクソン系の人たちは、あるいはそれに群がる人たちは、本当に実感していてね、そこに突っ込んでいると。
というふうなものの見方があるんですけど?
伊藤貫
僕は、あのね、いま(西部)先生の仰った、最初の半分は賛成なんですけど、後の半分は残念ながら賛成できないです。
で、最初の半分に賛成というのは、要するに、僕もやっぱりお金儲けのために、そういうFinancial Motivation があって戦争をさせているんだという説には『賛成できない』んですけども、「あそこで紛争を続けることによってイスラエルが得する」というふうに言っているユダヤ人がいることは『事実』なんです。
なるほどね。
伊藤貫
でなんでかって言うと、僕がまだ若い頃、1984年頃かな、変なことに気が付いたんですね。で何に気がついたかというと、サッダーム・フセインが、あれ確か80年か81年にイランに侵略戦争を仕掛ていって(【イラン=イラク戦争】)、それでアメリカがね・・・
あぁ〜!!
[*イラン=イラク戦争 米はイラクを支援/ その背景は1979年にイランで起きた「イラン革命(イラン・イスラム革命)によって、親米政権として事実上アメリカが傀儡化していたイラン・パフラヴィ朝を、革命指導者のルッホーラー・ホメイニー(ホメイニ師)が打倒し(皇帝は亡命)、イラン・イスラム共和国が成立する。米欧はイランのイスラム革命に警戒、危機感を募らせる。]
伊藤貫
そうだよ。
伊藤貫
However、しかし、『(アメリカと蜜月のハズの)イスラエル政府は、(アメリカと敵対している革命後の)“イランに軍事援助”しているんですよ。』
あぁ〜・・・凄いねぇ。
伊藤貫
そうそう。それで僕がね、ワシントンに住んでて、それでイスラエル・ロビーに近いユダヤ人に「ちょっとおかしいんじゃないの?」と。「あんたの国のアメリカはイラクを応援しているでしょう。だが、あんたが大好きなイスラエルは、イランを応援している。それじゃこの戦争はいつまでたっても続くじゃないか?」と。
ねぇ。
伊藤貫
ねぇ、なんかねぇ・・・。
伊藤貫
『あの連中をいつまでたっても戦争がやめられない状態においておくことが、イスラエルの利益だ!!』というわけ。
[*イラン人とアラブ人の殺し合い イスラエルの利益に]
うん。
伊藤貫
というふうに(そのユダヤ人が)言うんですよ。「はぁ、恐ろしいことを考えているもんだ」とぼくは思ったわけですね。
それで、話を今に戻しますと、現在のシリアに関しても、確か、2年ぐらい前に【エドワード・ルトワック】とかいうね、ユダヤ人の戦略家がいて、こいつは確か、いまワシントンのシンクタンク(CSIS)で仕事しているんですけど、結構ある程度は有名なんですけどね。
伊藤貫
伊藤貫
すると、ここでスンニ派のあぁいう過激派グループ、アルカイダ(※スンニ派が主体)と、それからイスラミック・ステイト(IS)が強くなると、困るのはアサドであり、ロシアであり、イランであると。そうすると、(ルトワックは)『イスラエルにとってこんなに都合のいいことはないからやらしておけばいいんだ』とかね、言うわけ。
[*参考:ルトワックの「シリアの内戦を長引かせろ」論
(地政学者 奥山真司氏のサイトより)
伊藤貫
だから、そっから言うと、(西部)先生の仰った最初の半分は・・・
いや、僕が言ったっていうよりも、他の人(木村三浩氏)が言ってて(笑)
伊藤貫
他の人が言った半分は、最初の半分は、やっぱり僕がワシントンに住んでると、(それと)同じことを言うやつがいるんですよ。
なんとなくイメージとして、これはご存知と思うけどね。
これは「Harmagedon(ハルマゲドン:ギリシャ語)」ね。英語ではHを発音せずに「アーマゲドン(Armageddon、アルマゲドンとも)」というのだけど、要するに『善悪の最終戦争』という考え方が、旧約聖書以来あるわけですよ、ヨーロッパにね。
[*ハルマゲドン 善と悪の最終戦争]
何かね、世界最終戦争がはじまってるとか言っているんじゃないんですよ。何か勝手にね、まぁ〜伊藤さん的に言うと・・・
伊藤貫
はい。
もうアメリカでもどこでもいいんだけど、『自分たちは「善」だと決めて、それに逆らう者は「悪」だと決めて』、それはお互い様かもしらんけど、そういうふうに決めてね、いまは別に大決戦が起こっているわけでもないけども、大決戦になることも厭わず、「行ってまえー!」みたいな感じで世界が動きはじめている気配は確かにするんだよね。
伊藤貫
で、さっき(西部)先生が、好意的に名前をお出しになったスコウクロフト(ブレント・スコウクロフト元国家安全保障担当大統領補佐官)ね。
えぇ。
伊藤貫
僕もね、スコウクロフト爺さんが大好きなんですけども・・・
ほうほう。
伊藤貫
スコウクロフト爺さんは、今でも立派なことを言っているんですよ。
あぁそう?
伊藤貫
で、あのお爺ちゃんが何を言っているかと言うと、『1945年からアメリカは、アラブ諸国を自分たちに都合のいいように利用してきた』と。
で、『アメリカの都合のいい時は、民主主義を、自由社会をプロモートする』とか言いながらね、都合が悪くなると、独裁制とか軍人のクーデターとか、サウジやクウェートの王様のやりたい放題で、要するに、(アメリカは)言ってることとやってることのぜんぜん理屈が噛み合っていないと。(スコウクロフト爺さんは米国の外交を批判している)
[*アメリカの外交の特徴の一つ「デモクラシー・ユニバーサリズム」⇒「民主主義は普遍的な価値である。だから貴国もどの国も採用すべきだ。アメリカに学べ」というもの。
ハーバード大学教授 国際政治学者のサミュエル・ハンティントンは「民主主義は、世界中の国で採用されるべき普遍性を持つ政治イデオロギーだとは思っていないなかったし、世界の総ての国が民主主義を採用する事が可能だとも思っていなかった」と述べている。
だが、アメリカが「非民主主義国」に民主主義をプロモートしようとするその実態は次のようである。
これが実体である。(伊藤貫著書より) ]
そうよ。時間が無いからね、冗談半分みたいなことになっちゃうけど・・・
伊藤貫
はい。
何が民主主義だってね!?
伊藤貫
そう(笑)
ヨルダンだってさぁ、何だってねぇ、王政だろうずっとねぇ(笑)
伊藤貫
要するにね、(アメリカにとって)都合のいい時は民主主義だとか自由主義だとか言うくせに・・・
自分ら(アメリカ)のやったことは王様制をどんどん支援してさ(笑)
伊藤貫
サッダーム・フセインだって、クウェートに攻め込むまでは「アメリカの同盟国」だったのだから、だから要するにね、理屈は何でもつくと。
そうね。
伊藤貫
それで、スコウクロフトさんが仰るには、それを1945年からアメリカはずっとやってきたと。そうすると、Over two Generation、2世代を超えて、いま3世代目。それで、『アラブ人はもうアメリカに愛想を尽かしている』と。
ねぇ。
伊藤貫
で、『アメリカ政府はどんなに立派なことを言っても、アラブの若い連中はぜんぜん信用しない』と(笑)『あの嘘つきの偽善者のアメリカがまた何かを言っている』と。それで、『もうアラブ諸国の若い連中というのは、もうアメリカに対して聞く耳を持たない。もう(アメリカは)帰ってくれ』と。
で、(アラブの)彼らが本当に欲しがっているのは何かと言うと、それはフリーダムか?というと、スコウクロフトさんは『NO!』と。『自由ではない』と。それで、アラブの若者は民主主義を欲しがっているのか?というと、するとスコウクロフトは『NO!!』と。
『It's not Freedom, It's not Democracy.』
『It's Dignity!! That's what say want!! 』
[*アラブ人が求めているもの dignity 『自尊心』 ]
あぁ。dignity(ディグニティ)ご存知? まぁ言って見れば、自分たちの『自尊心』ね。
伊藤貫
そうそう。
で要するに、『アラブ人はディグニティ(自尊心)を回復したいと思っている』んだと。こういうディグニティを回復したいというモチベーションが、こういうイスラム教の過激派というか、ジハーディスト(Jihadist)ね。ジハード(聖戦)やっている連中に(ディグニティを回復したいというモチベーションが)あるんだから、スコウクロフトさんが言うには・・・
【「我々は手を出すな!」】と。
そういうことだね。
伊藤貫
そう!これが偉いんですよ、あの人は。
ということでね、一週目、あっという間に時間が来ましたけど・・・
小林麻子
あ〜凄い。
本当にそうなんですよ。『自尊心』ね。
伊藤貫
はい。
本当は同じ理屈で、僕はあのジャパニーズという人たちにも(それを)言いたいけどね。
伊藤貫
そう。
小林麻子
はい。
ディグニティは(日本人の)どこにあるのかねぇ・・・。
伊藤貫
どこにあるんだってね。
まぁ、アラブのような混乱が無いから、「我々はアメリカのお陰で食べていけまーーす!」ってね、言ってるかもしれないけども、『お前たち食べれればそれで満足なのかぃ?!』ってね・・・言いたいけど、もう時間が無いから、残りは次の週ということで、宜しくお願いします。
伊藤貫
はい。ありがとうございました。
【次回】アメリカ文明は欠陥品である
評論家 伊藤貫