マイナス金利は資本主義の断末魔① (ゲスト:京都大学大学院准教授 柴山桂太)〜西部邁ゼミナール〜
マイナス金利は資本主義の断末魔① (ゲスト:京都大学大学院准教授 柴山桂太)〜西部邁ゼミナール〜
ゲスト:
柴山桂太 京都大学大学院准教授、「表現者」編集委員、近著「静かなる大恐慌」「TPPの黒い条約」〔共著〕(集英社新書)ほか
【ニコ動】
マイナス金利は資本主義の断末魔① 2016.06.11
sp.nicovideo.jp/watch/sm290273…
今村有希
今回から3回に渡りまして、マイナス金利は資本主義の断末魔というテーマで論じて頂きます。ゲストには、京都大学大学院 人間環境学研究科の准教授の柴山桂太先生にお越し願いました。
「マイナス金利」とはアベノミクスの金融政策の一環として、日銀が金融機関から預かる預金の金利をマイナスにしたものです。これにより、市場にお金が回り、企業が設備投資を増やし、所得が上がることで物価上昇率を2%にする、という目標を掲げています。
ところが、既に超低金利が長期的に続いている上、企業が投資しても収益が見込めなければ投資のリスクを負うことは出来ません。根本的な問題は、『資本主義が末期的な行き詰まりである』ということを柴山先生以外、エコノミストすら誰一人として指摘していません。
世界に経済危機が広がる中で、これから日本人がどう構えるべきか、柴山先生教えて下さい。宜しくお願い致します。
西部邁
あぁ、今日は有難う。教えてくれ(笑)
柴山桂太
(恐縮しながら)あっ、ハイ(笑)
今村有希
(笑)
西部邁
「断末魔」って何のことかわかる?よく使われる言葉だけど。
今村有希
死に際の叫び声とかですか?
西部邁
悪魔にいろんなランクのやつがいて、
今村有希
はい。
西部邁
一番下っ端のやつが「末魔」(まつま)という。
柴山桂太
ふ〜ん。
今村有希
末魔?
西部邁
「末魔までもが断たれる」というかね、断末魔ということは、最後の、結論はそれ(※今村の回答)なんだけど、
今村有希
はい。
西部邁
悪魔の最下層にいる末魔。
[*『断末魔』一番下っ端の悪魔、その末魔まで断たれること ]
西部邁
本当にキミ(柴山)と同じ意見なんだけども、よくまぁこのね・・・なんか英語では、negative interest rateというらしいけど、まぁまぁマイナス利子率の問題、あれは何ヶ月前ぐらい?
[*マイナス金利 negative interest rate:日銀が金融機関からから預かる預金金利をマイナスにする ]
柴山桂太
1月に決定されて2月からだと思いますね、はい。
西部邁
あぁそう。それなのにね、ほんのちょっと言われたきりでさ、エコノミストはじめとして、テレビでも・・・僕は、新聞は読んでないの最近・・・ゴメンなさい。誰に謝ってるんだ(笑)
柴山・今村
(笑)
西部邁
でも、誰一人それを取り上げないの。多分、雑誌では送られてくるから、誰も取り上げていない。もうそれ自体が断末魔だね。
柴山桂太
うん。アベノミクスが金融政策で、金融をこう(ばら)撒いてですね、デフレを脱却するということをやってきたのだけども、
今村有希
はい。
柴山桂太
まぁそれが段々と効果が切れてきてしまって、その次の手として打ったのがこの『マイナス金利』という政策で、国債の金利が史上初のマイナス、長期金利がマイナスになるという。
[*マイナス金利の導入は史上初、国債の長期金利がマイナスに ]
今村有希
はい。
柴山桂太
で、金利がマイナスになる世界というのはちょっと普通の常識ではあり得ない話なんですよね。
今村有希
(頷く)
柴山桂太
普通、お金を預けたら利息が貰える。
今村有希
はい。
柴山桂太
お金を貸したら、その利息をですね。そういうふうな関係になるのだけども、マイナス金利ということは、その逆の事が起こるということです。
今村有希
はい。
柴山桂太
お金を借りて利息(分)が貰えるという、簡単に言っちゃうとそういう話なんですけどね。どうして導入されたのかというと、そこまでしないとお金の貸出が増えないだろうと、そういう考え方に基づくわけですね。
今村有希
はい。
柴山桂太
ところが、金利を幾らマイナスにしても、お金を借りても儲かる見込みが無ければ、当然その投資といいますか、企業が工場とかつくったりはしないわけで。
いまマイナス金利が導入されて、実際それで効果が出ているかというと、まぁほとんど今のところ出ていないし、これからも出る見込みはかなり低いんですよね。
[*マイナス金利を導入しても、投資は増えない ]
今村有希
はい。
柴山桂太
幾ら金利を下げてもですね、もうどうにも反応しないぐらい将来的なその投資収益と言いますか、企業が投資をしても儲かる見込みというのが無くなってきているという・・・それが現状だというのがまぁ、差し当りの説明になると思うんです。
西部邁
僕ね、経済学の授業はする気は無いから、
今村有希
はい。
▷板書
i(利子)=r(収益)+π(インフレ)
西部邁
ちょっと恥ずかしいんだけどね、利子率のことを符合「i」(interest rate)で表すことが多いんですよ。rate of interestですけどね。interestの「i」、これは「貨幣利子率」ね。
今村有希
はい。
西部邁
これ例えば、貴女が1億円・・・持ってる?
今村有希
持ってないです(笑)
西部邁
1千万でもいいんだけど、
今村有希
いやいや持ってない(笑)
柴山桂太
(ニヤニヤ)
西部邁
持ってたとして、いわゆる金融資産に公明に投資すると、まぁ平均の話ですけど、「i」の利子率が得られると。
今村有希
はい。
西部邁
この1千万、1億円を(金融と実物の)どっちに投資するか?
▷板書の等式:i(利子)=r(収益)+π(インフレ)
こっち(右辺:r+π )は「実物」ね。実物に投資するとするとね、その実物を利用して「r」、これどうして「r」かというと、rate of return 「収益」ね。
今村有希
はい。
西部邁
収益率(r)が、これは見込みですけどね、「期待」ね。将来これだけ貰えるだろうな、という。この「π」は「インフレ」ね。物を持っていると、物の値が上がるでしょう、インフレ率ね。
今村有希
はい。
西部邁
これが大体「P」はPrice、これは「π」だから、(経済学は)これで表すことが多いんですよ。
[*i =r+π / 利子率=実物投資の収益率+物財のインフレ率 ]
今村有希
(うん)
西部邁
そうするとね、経済全体で金融資産に投資するか、或いは、実物資産に投資するかという、その均衡として公式(i =r+π )が成り立つんですよ。
[*金融資産か実物資産に投資、経済全体の均衡としての式 ]
今村有希
はい。
柴山桂太
うん。
西部邁
それで、いま(左辺の)これ(i)がマイナスだというわけ。マイナス利子率というわけさ。それからね、(右辺の)「π」が+1%ですが、まぁこれを(インフレ誘導で)+2%にするというわけさ。
今村有希
はい。
▷i(マイナス利子率)=r+π(2%目標)
西部邁
それでね、これをこっちに移項(※πを左辺に移項)するとね、「r=i−π」になるのだけど、πは2%だから、(移項後は)−2%、それでこれ(i)もマイナス(マイナス金利)にするというわけ。(すると⇒投資収益率r=マイナス金利−2%)
するともう単純なね、こんなことは小学校4、5年でやるのかな?子供にだってね、あぁ〜この期待収益率は実物資本に投資してもマイナスにしかならん、投資はしません、と。
[*実物投資収益率が“マイナス”にしかならない ]
柴山桂太
うん。
西部邁
あとはそれをね、箪笥に置いておくかどうかは、それは柴山君の自由だけどね。
柴山桂太
うん・・・。
西部邁
大変なことでしょう?
今村有希
はい。
西部邁
1930年代にね、long-run stagnation。何だ、stagnationって?
今村有希
うー、分からないです(困)
西部邁
停滞(stagnation)ね。
柴山桂太
停滞ですね。
西部邁
本当にまたその(スタグネーションの)繰り返しね。まぁそういうことを言ってるのはスティグリッツ?
柴山桂太
スティグリッツです。
西部邁
スティグリッツあたりが、『資本主義は長期停滞に入った』と言ってるらしいがね、そんなこといちいちノーベル賞学者から言われなくたってね、
今村有希
(笑)
西部邁
小学生か中学1年生程度の知識があれば、(r=i−π から)へぇ〜と。
柴山桂太
うん。
西部邁
ロングラン・スタグネーション、長期停滞ですねと。
[*long-run stagnation=長期停滞、1930年代「セキュラー・スタグネーション論」 ]
西部邁
で、これは安倍さんには文句は言わないけども、これで日本では規制緩和してイノベーションで経済成長だ!!と言ってる。
[*規制緩和でイノヴェーション、“経済成長”だという日本 ]
柴山桂太
うん・・・
西部邁
ずっと言い続けている。
柴山桂太
これまでは、だから「不況」という言葉では言ってたんですよね。
今村有希
はい。
柴山桂太
日本は不況だ、というふうに。「不況」というのは、まぁ好況があって不況があるわけですから、今は一時的に調子が悪い、というそういう捉え方だった。
今村有希
(うん)
柴山桂太
一時的に調子が悪いんであれば、金融政策を行うことによって、政府が一生懸命に刺激してあげると民間がお金を使い始めると、こういうことが期待できたんです。
今村有希
はい。
柴山桂太
で、日本は(過去)20年間いろんな政策を打ってきたわけですけどね、アベノミクスになってからは、とりわけ金融(金融政策)で経済刺激策をやってきた。で、これが効かないというのは、有り体に言うと、「不況ではない」ということなんですよね。これは『停滞』、つまり、そもそも、その今の収益(r)ということで言うと、
今村有希
はい。
柴山桂太
経済が成長する力というものが、あまり無くなってきたというふうに、いまは考えるべきなんだろうということだと思うんです。
[*不況ではなく停滞、経済成長する力がないこと ]
柴山桂太
金利の歴史を調べたという、むかし学者が居まして、
西部邁
あぁそう?
柴山桂太
400年ぐらいのこう、とは言っても比較はいい加減なものだとは思いますけど、「金利が2%を切ったということはほとんど無い」そうですね。
ケインズが書いているんですけど、「イギリス人はどんなことにも我慢出来るが、2%の金利には我慢出来ない!」という言葉があるらしくって(笑)
[*「イギリス人はどんなことにも我慢できるが、2%の金利には我慢できない」ケインズ ]
西部・今村
(笑)
柴山桂太
(金利)2%割り込むだけで、その過去何百年も無かったような異常事態。
西部邁
しかもマイナスだぜ。ネガティヴ。
今村有希
はい。
柴山桂太
それもマイナス(金利)ですからね。資本主義の長い歴史の中で、度もさっき仰ったような『停滞』(stagnation)ということは繰り返しているんですよね。だけど、今回の停滞は、ちょっと過去は簡単に比較出来ないような、相当その深刻なと言ってもいいし、もっと言えば、かなりこう歴史の転換になるようなそういう停滞なんじゃ無いかって気がしますね
[*今回の経済停滞は深刻で歴史の転換になるのでは ]
西部邁
要するに、投資のフロンティアね、が無くなったなんだと、そういう言い方している。それでいいんですけどね、もうちょっと噛み砕いていうとね、みんなこうイノベーション、イノベーションと言ってるでしょう?
[*有望なフロンティアがなく、マイナス金利は最期の叫び ]
今村有希
はい。
西部邁
innovationというのは「技術の革新」のことなんですけどね・・・あなた新幹線で来た?
柴山桂太
はい。
西部邁
新幹線であれ何て言うの?あの(企業広告や案内などの)テロップが流れるでしょう。
今村有希
はい。
西部邁
企業の広告。「わが社のイノヴェーション」・・・技術の革新ね、それの連続なんですよ。ところがね、このinnovationのね、大雑把に言うとですよ、この3人で革新を競い合うでしょう?
今村有希
はい。
西部邁
ねっ。貴女(今村)が勝つわけさ。
今村有希
ウフフ(笑)
柴山桂太
うん。
西部邁
例えば、同じ種類のものについてね、そしたら我々は負けるわけですよ。簡単に言うとね、我々はそれまでの研究開発人件費も含めてその他、全部ドブに捨てることになる、大きく言えば。
今村有希
はい。
西部邁
で、貴女ひとりの、イノヴェーションというのはそういうことなんですね。
[*“イノヴェーション” 技術革新に含まれる大いなる矛盾 ]
西部邁
ということは、革新を通じて「独占」というのは言い過ぎだとしても、「寡占」というのはね、
今村有希
はい。
西部邁
ごく少ない企業の、まぁ言ってみれば大企業しか生き残らないと意味になるわけです。
[*革新競争で独占寡占化し、大企業しか生き残らない ]
西部邁
ところが、日本のエコノミストはもう、マーケットの競争、マーケットの競争ってもう25年ぐらい言ってるんですよ、経産省も、大蔵省も、自民党も。
柴山桂太
うん。
今村有希
はい。
西部邁
ねっ。ところが何の競争かと言えば、「革新競争」なわけ。で、その結果が独占(もしくは寡占)になるわけでしょう。僕別にね、独占体に恨みなんか無いんだけど、問題はここでこれが出てくるんですよ。「革新」というのは普通ね、何だっけ、capital using、或いは、labor saving、革新は現代は、不器用な言葉なんだけど、capital usingというのは「資本使用的」ね、逆に言うと「労働節約的」。
[*現代におけるイノヴェーションとは:「資本使用的」capital using、「労働節約的」labor saving ]
西部邁
革新の結果は、何とかピケティ・・・トマ・ピケティ?
柴山桂太
ピケティですね。
西部邁
延々こんな、あんな厚い本(「21世紀の資本」)を読む気力も俺は何も無かったけど、彼(柴山)はまだ若いから全部読んだらしいけどね。
柴山桂太
うん、まぁ一応・・・(笑)
今村有希
はい、ウフフフフ(笑)
西部邁
結果ですよ、いい?
今村有希
はい。
西部邁
革新は労働節約的なんだから、労働分配率は下がるわけですよ。ねっ?労働者の取り分がどんどん下がってくる。せっかく今村さんが独占体を築いたにも関わらず、この商品(独占体の商品)を買うのは一般に労働者でしょう?
今村有希
はい。
柴山桂太
うん。
西部邁
ところが、労働分配率が減ってますから、ということは、国内の購買力は減っていますから、なかなか売れないわけ、思ったように。
[*労働分配率が減少し、国内の購買力は低くなる ]
今村有希
はい。
西部邁
当然最初は、海外に売るとか何か言うけど、海外ったって地球は限られているんだから、
今村有希
ウフフフフ(笑)
西部邁
僕は向こうでやっていますから、限界あるでしょう。
今村有希
はい。
西部邁
その結果として、イノヴェーションをやっても、独占体を形成しても、さっき言ったように儲けがあがり難い。そして、中小企業は大いなる苦境に放り込まれ、倒れる、とこうなっているわけ。
今村有希
はい。
西部邁
そこまではまだいいのよ。今村さんも去るもので、独占体をね、そうすると何処に活路を求めるかと言うかというと『政府』に求めるわけさ。
[*利潤獲得した独占体は“活路”を政府に求める ]
西部邁
だって、労働者が(商品を)買わないのだから、大雑把に言えば。
今村有希
はい。
西部邁
じゃあ(独占体は)「政府」を動かそうかと。一番いい方法は何だと思う?
今村有希
・・・わ、わからない(笑)
西部邁
わからないの?(笑)
今村有希
フフフフフ(照笑)
西部邁
戦争。
柴山桂太
戦争でしょうねぇ。
今村有希
あぁ〜!!
西部邁
戦争をやればね、あれは別に武器だけじゃなくて、包帯だろうが何だろうが食糧だろうが、いろんなまず在庫を吐き出すことができるでしょう?
今村有希
はい、はい。
柴山桂太
1930年代の長期停滞(long-run stagnation)は、結局は政府が出てきて、政府は最終的にどうやって解消したかと言うと、最初はもちろん、道路を作ったりいろいろやるんですけど、最後は結局、「戦争」という形になって。
今村有希
はい。
柴山桂太
それでも、前回の長期停滞は1930年に始まって、本当に終わったのは、1952年ぐらいって言われていますよね。
[*1930年代の停滞20年続き、政府は戦争含む金を使う ]
西部邁
あぁそう?!
柴山桂太
えぇ。だから20年ぐらいかかっているんですよね。20年間、戦争を含めて政府がひたすらお金を使って、ようやく(停滞から)脱せられたというぐらいですから。
今村有希
へぇ〜。
西部邁
いま本当にこれ僕ね、左翼を20歳の頃やっていて、あまりに馬鹿らしいから22の誕生日にやめたんだけど、
柴山桂太
(うん)
西部邁
僕はね、(世の中が)こんな馬鹿なことになるなら、やめなきゃよかったなって。これは冗談だけどね、やめてスッキリしたんだけど(笑)
柴山・今村
(笑)
西部邁
レーニンというのがいてさ、
今村有希
はい。
西部邁
「帝国主義論」(※レーニン著の経済学書)あまりにも馬鹿らしくて、ゴミ箱に捨てたけど、言ってることはこういうことを言っている。
[*独占資本と国家が手を結ぶ帝国主義論(レーニン)〔だから、社会主義革命の前夜であると〕 ]
柴山桂太
そうなんですよねぇ。
今村有希
へぇ〜。
西部邁
ただ、イノヴェーションという言葉は無いんですけどね、まぁ、あんなことも言ってはいないんだけど、要するに、そのあとマルクス主義も僕あんまり馬鹿らしいから捨てたけど、捨てなきゃよかったのかなって、これ冗談で言っているのよ(笑)
柴山桂太
うん。
西部邁
国家独占資本、この場合の国家って「政府」のことですけどね、政府と独占体が癒着して、政府独占資本主義の時代が来たと。で、それがあの戦争をやらかしたと。
[*「国家独占資本主義」(マルクス) 政府と独占資本が癒着して戦争をやらかしたと主張 ]
西部邁
なんかね、馬鹿げたほど単純な、えぇ?あの理論通りに動いているわけさ。理論が正しいというよりも、人間がどんどんみんなが馬鹿になったということなんだけどね。
柴山桂太
うん。
西部邁
馬鹿になったから馬鹿な理論が合うようになったというね(笑)
柴山桂太
いや、そういう理論が出てるんだけど、忘れてまた発見してくるというそういう感じなんですよね、こういう経済とか経済学の世界というのは(笑)
いま実際、アメリカで何が起こっているかというと、段々と「独占」とか「寡占」の動きが出て来てるって言われているんですよね。
[*いまアメリカで起きていること、独占・寡占の動き ]
今村有希
はい。
柴山桂太
で、日本に先駆けて、10年以上前からアメリカでは、「規制緩和だ!競争だ!!」ってやってるわけです。で、規制緩和だ、競争だ、とやれば経済が活性化してイノヴェーションも起こるだろうという話だった。実際はまぁある程度、活性化してイノヴェーションは起きたんですね。
今村有希
はい。
柴山桂太
ところが、競争って当たり前ですけど、何も補正しなければ、勝つ人がどんどん勝っていくわけですよね。
今村有希
はい。
柴山桂太
そういうことを繰り返していけば、最初は市場に複数メンバーがいても、やはり次第にだんだんと1人、2人と・・・
西部邁
まぁ要するに弱肉強食。
柴山桂太
弱肉強食ですね、そうなっていく。まぁ独占・寡占になっていくわけです。そうすると、今度(市場競争に)勝ったやつはどうするかというと、これはアメリカで実際に起こっていることですけども、政治に献金を行って、
西部邁
そうそう。
柴山桂太
「競争を制限」したりするわけです。
今村有希
へぇ〜。
柴山桂太
或いは、ライバル会社を買収したりとかして、「市場支配を安定化」させようとするですよね。
[*独占に勝った企業は市場支配、政治献金、ライバル社買収 ]
今村有希
はい、はい。
柴山桂太
これが、レーニンたちが言っていた、『国家独占資本主義』と言われるもので。で、レーニンは、19世紀の終わりぐらいの資本主義を見て、そういうことを言ったんだけども、
西部邁
うん。
柴山桂太
100年以上経った現在も、まぁアメリカで実際それに近いことが起こっていると。
[*レーニンの国家独占資本主義、100年以上経て同じ様なこと ]
西部邁
レーニンの時代と違うとしたら、一方で情報社会だ、或いは、イノヴェーションだってね、さも新しげなことが言われているけども、その結果は、実は、100何十年前と同じね、結末になりつつあるわけ。
柴山桂太
うん。
西部邁
先ほどの話の続きをやると、戦争・・・戦争ったってさ、やっぱり実はこれもおかしいんですけどね、主要大国は核兵器を持っているでしょう。
今村有希
はい。
西部邁
だから、第三次世界大戦は、お互い共倒れですから、核兵器はね。やり辛いでしょう。
[*主要大国は核兵器保有で第三次大戦なら共倒れ ]
柴山桂太
(頷く)
西部邁
それで代理戦争なり何なり、例えば、シリアとか、ウクライナとか、そういうところをつついてね、そうすると色んな売れ残った在庫をまず政府の金で買い取らせて吐き出すことが出来るでしょう。
柴山桂太
(うん)
西部邁
やっぱり戦争というのは総力戦ですからね、単にみんな戦争というとweaponのことしか考えないけれども、それは食糧だろうが包帯だろうがトラックだろうが、全部関係してくるわけ。
[*戦争は総力戦であり、武器だけでなく全て関係する ]
柴山桂太
うん。
西部邁
もうそこに活路を見出す。けど、大戦、Great Warは起こせない。そういう言わば
第三次世界大戦の前哨戦というのかな。前哨戦というのは普通、短期間で終わるんだけどね、いつまでも終わらない前哨戦を、たぶん今村さんが死ぬ頃までやっています。
[*第三次世界大戦の前哨戦ともいえる状態が長期化 ]
今村有希
フフフ(笑)
西部邁
本当ですよ。
今村有希
(うんうん。笑)
柴山桂太
まぁ戦争に行く前にさっきのレーニンの話ってのは、独占資本主義になると、今度は海外市場を獲りに行く。当時はそれを『帝国主義』といって、強い国が弱い国を支配して、市場を囲ってしまう。他の国は入ってこないようにする。
今村有希
はい。
柴山桂太
今もまぁまぁその段階なのかもしれないですよね。TPPがありますよね?
今村有希
はい。
柴山桂太
まぁあれは、アメリカを中心に新しい貿易ルールをつくる。まぁでも実際にはいろんな面があるんですけど、その本質というのは、まさに巨大企業が、その国外により新しい販路を求めて、特に日本なんかは市場が大きいですから(アメリカからみて)狙い目なんですけども、そういうところにうまくルールを設定してより売りやすい状況をつくる、そういうところがありますよね。
[*独占資本主義で海外市場へ、TPPによる貿易ルールを変更 ]
柴山桂太
まぁ、昔の帝国主義とはちょっと違いますけども、段々とやっぱり緩やかに昔と同じようなことを繰り返していくモードに入っているのかもしれないと思いますね。
西部邁
馬渕睦夫さんというね、元外交官、元モルドバ・ウクライナの大使かな。1年ぐらい前にちょっと聞いてアッと、なんか目から鱗が落ちるというよりも全くその通りと思ったことがある。
その当時ね、ウクライナ問題があって、大雑把に彼の結論を言うと、アメリカに本籍を持つ巨大なfinancial-capitalistたちが、プーチンのロシアの持っている天然資源ね、あれを世界マーケットに引きずり出すために、プーチン政権をぶっ潰しちまおうじゃないかとね。
[*米国本籍financial-capitalist、ロシア資源を狙いプーチン標的 ]
今村有希
(頷く)
西部邁
といって、モスクワに爆弾落とすわけにもいかないので、クリミア問題で紛争になってたウクライナ、あのウクライナあたりに恐らくCIAその他のいろんな手を加えてね、それをね、プーチンも頑張るからうまくいかないわけです。
今村有希
(うん)
西部邁
ロシアの裏玄関とも言うべき、協力関係にあるシリアね、
今村有希
はい。
柴山桂太
う〜ん。
西部邁
正面から出来ないならば、ロシアの裏玄関とも言うべきシリアを突こうじゃないかと。それで、シリア自由連合というのをつくってやったけど、あれこそね、藪を突いて蛇でさ(笑)いわゆる「IS」ね、Islāmic State、イラクを中心にしてスンニ派のテロリスト集団が出てきたわけさ。
[*ウクライナ危機で暗躍後、シリアを突くシリア自由連合 / 藪を突いて出てきた蛇はISテロリスト集団 ]
西部邁
ねっ。先ほどさ、さも恐ろしげに言ったけども、そのアメリカの企てがね(笑)
柴山桂太
うん・・・。
西部邁
第三次世界大戦の前哨戦の企てすらが、次々と失敗してね、もう何をやっていいか、もう戦争すらどうやっていいかわからんというね。本当に断末魔ね。
[*第三次大戦の前哨戦の企てすら次々と失敗 ]
柴山桂太
うん、うん・・・。構造的にそっちの方に向かっちゃっているということなんですよねぇ。
今村有希
はい。
柴山桂太
もうアメリカもある意味ではそうせざるを得ないというねぇ・・・
西部邁
せざるを得ない(笑)
西部邁
そういう状況になっているという意味では、本当に出口がない状況にハマりつつある。
西部邁
うん、そこでね、規制緩和、イノヴェーション、成長戦略・・・これね、安倍さんと言うよりも、安倍さんを取り巻くね、
今村有希
はい。
西部邁
学者、及び役人ですけどね。経済学の教科書しか読んだことのないようなオツムでね、そんなことを言ってさ、蓋を開けたら・・・
[*規制緩和、イノヴェーション、成長戦略をいう学者役人 ]
西部邁
いまご存知?いまの段階で言うとね、アメリカのトランプ、
今村有希
はい。
[*TPPは酷い協定だと、トランプ氏が断固反対 ]
今村有希
(笑)
西部邁
それでね、民主党の彼は第2候補ですけども、サンダースは中小企業、農民の保護を訴えている。それで(TPP)反対!!それを受けて、ヒラリー・クリントン?
今村有希
はい。
西部邁
私も反対と言わされる(笑)
今村有希
(笑)
西部邁
いいですか?アメリカと自由貿易を遂行させるために、TPP、TPPと・・・
柴山桂太
うん。
西部邁
・・・やってる日本がね、2年間ぐらい大騒ぎして、肝心の巨大な相手のアメリカが(TPPは)イヤよ、と言ってるわけ。
柴山・今村
(笑)
西部邁
一体この・・・何なんですか、この日本は?
柴山桂太
ねぇ、この数年間の大騒ぎは何だったのかという話ですよね。
西部邁
表現は乱暴ですけどね、ここまで来たらね・・・馬鹿につける薬は無い。
今村有希
(苦笑)
西部邁
馬鹿は死なねば治らない、いや、死んでも治らない・・・という乱暴な言葉ぐらい吐かせてもらせてくれ、
柴山・今村
(大笑い)
西部邁
・・・という切なるお願いで、第2週に入りますんで、宜しくお願いします。
柴山・今村
宜しくお願いします(笑)
【次回予告】「マイナス金利は資本主義の断末魔」② ゲスト:柴山桂太(京都大学准教授)