「天皇制」論総浚い② - 今上陛下の譲位の御意思を受けて:ゲスト 高森明勅[神道学者・歴史家・皇室研究者]〜西部邁ゼミナール〜
「天皇制」論総浚い② - 今上陛下の譲位の御意思を受けて:ゲスト 高森明勅[神道学者・歴史家・皇室研究者]〜西部邁ゼミナール〜
ゲスト:高森明勅(神道学者・歴史家・皇室研究者) 著書『歴史で読み解く女性天皇』(ベスト新書)『日本の10大天皇』(幻冬舎新書)『皇室論 - 伊勢神宮式年遷宮に寄せて』(青林堂)ほか
【ニコ動】
(西部邁ゼミナール)『天皇制』論総浚い② 2016.10.15
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29839034
今村有希
天皇陛下による譲位の御意向を受けて、天皇・皇室のあり方をめぐり広い視野で議論する、「天皇制」論総浚いの2回目です。ゲストは神道学者で皇位継承のあり方について研究されている日本文化総合研究所代表の高森明勅先生です。
今回は、日本の長きに渡る歴史によってもたらされた天皇制、そして皇室の安定的なあり方にまで議論が及ぶものと思われます。それでは先生方、早速宜しくお願い致します。
高森明勅
宜しくお願い致します。
西部邁
あぁ今週も宜しくお願い致します。今日はね、ある程度問題を限定して『皇室典範』にね、
今村有希
はい
西部邁
(皇室典範の)改正問題について、高森先生に教えていただこうと・・・というのは、今村さんもご存知と思うけど、
今村有希
はい
西部邁
あの皇室典範にはね、生前退位というか『御譲位』のことは明記されていないんですよね。
[*天皇が崩じたときは、皇嗣が直ちに即位 - 【第4条】皇室典範には、譲位について明記されていない ]
高森明勅
(頷く)
西部邁
従って準法律的に言えばね、皇室典範の改正が必要になるということになるわけですよ。
今村有希
はい。
西部邁
ただ、そこで世間が懸念しているのは、これは皇室をむしろ擁護する人達が懸念しているのはね、どう改正すべきかによって、憲法がどうの皇室がどうのと議論がね、それこそ百家争鳴状態になって、ますます天皇の地位が不安定になる恐れがあると。ここはひとつ『特別措置法』でね、
今村有希
はい
西部邁
今回に限るかどうかはともかくも、今回のこととして特別措置法で処理しようというのが、どうも安倍首相周辺のご意見のようだと。
[*今上陛下の御譲位について、特別措置法で対処を模索 ]
今村有希
はい。
西部邁
それでいいのか?!という議論を高森先生から教えてもらおうと。
今村有希
はい。
西部邁
(高森)先生はあれでしょう?
高森明勅
はい?
西部邁
(皇室)典範改正論者なんでしょう?
高森明勅
そうです。これ以外、出口は無いと。
西部邁
うん。
高森明勅
ただその前にひとつ前提として申し上げたいのは、現在の皇室典範のあり方が必ずしもですね、本来の皇室のあるべき姿と合致しているとは思わないんです。
西部邁
なるほどねぇ、それで。
高森明勅
えぇ。で、『明治の皇室典範の場合、皇室典範は皇室で決める』というですね。
今村有希
はい。
高森明勅
これは当然なんですよね。皇室典範というのは皇室に関する基本法ですから、
西部邁
うん
高森明勅
これをですね、『政府があれこれ言うとか議会があれこれ言うということは一切出来ない』というルールが明治あったんです。
[*皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スベシ:旧皇室典範【第62条】があり議会は干渉外に ]
西部邁
あぁそれでね、うん。
高森明勅
ですから、私は本来のそのルールに戻すべきだと。
西部邁
なるほど。
高森明勅
あの皇室が自らを律する “自律主義” というんですけどね、そういう国会体制を明治の日本はとっていて、それがまぁ言って見れば “敗戦” までは続いていた。
[*“皇室自律主義” 明治から敗戦まで続く ]
西部邁
うん。
高森明勅
ところが、敗戦下、占領下でですね、GHQの圧力の下で今の憲法ができた時に、要するにGHQは大変な誤解をしていまして、日本の天皇は物凄い強大な権力者だったと。
今村有希
はい。
高森明勅
それからですね、絶対的な神格化がされていたと。
西部邁
うん。
高森明勅
もう日本人は無知蒙昧で(天皇を)神様として崇め奉っていたと。そして(皇室は)巨大な財閥だったと!!
西部邁
なんかねぇ(笑)
高森明勅
だから(GHQは)皇室財産を全部取り上げろと。そして「人間宣言」をさせて、神格を自分で否定させろと。そして、天皇からあらゆる権限を取り上げて、皇室のことさえも国会が決めるようにですね、
西部邁
うん
高森明勅
民主的なコントロールの下に(天皇を)置いてしまえと、
西部邁
そう。
今村有希
はい。
高森明勅
ということでやってしまっていますから、この形は皇室に対するGHQの誤解、或いは、皇室の存在感をより弱めていこうという意図によるものですから、これはこのまま私は本来は肯定してはいけないと。
西部邁
うん。
高森明勅
日本国憲法の第2条に、皇位の継承の仕方は皇室典範のルールに従えと、
西部邁
そうですね。
高森明勅
そういうふうに憲法に書いてあるわけです、これが憲法第2条に。
今村有希
はい。
高森明勅
そして典範を見てみると、典範の第4条にですね、天皇が崩じた時は、皇嗣が直ちに即位すると。
今村有希
はい
高森明勅
「天皇がなくなった時だけしか即位してはいけない」、そうするとこの憲法とこの典範を放置したままですね、今回、天皇陛下が8月8日にですね、あの明らかにされた「御譲位」というものを実現することは・・・少なくとも法律上、憲法上は無理。
[*天皇が崩じたときは、皇嗣が直ちに即位する / 憲法と皇室典範を放置したまま譲位は実現不可能 ]
今村有希
(頷く)
西部邁
天皇が崩じられた時に皇嗣が、皇太子がそれを継承すると(皇室典範に)書かれている。でももうちょっと捻くれて読むとですよ、
高森明勅
(うん)
西部邁
今度のような形で生前退位しちゃいけないと禁止されているわけでもないんですね。憲法も含めて法律論の根本にはね、実は法というのは『法の本質は禁止の体系』なんですよね。
[*生前退位を禁じてはいない / 法の本質は禁止の体系 ]
高森・今村
(頷く)
西部邁
今の憲法もそうなっていないのだけれど、つまり今村さんも僕もさ、別に悪党だというわけではないのだけども、
今村有希
はい(笑)
西部邁
愚か者なところはあるしね、ひょっとしたら僕は悪党かもしれないんですよ。
今村有希
ウフフフフ(笑)
西部邁
殺すなかれ、盗むなかれ、騙すなかれというそれこそモーセの十戒でいえばその十戒を犯しかねないところがあるわけさ。
今村有希
はい。
西部邁
で、犯したらですよ、「こういう罰を与えるぞ!」というのが法なわけですよね。そのことを誇張して言うとね、
今村有希
はい
西部邁
『法に禁止されていないことは実はやってもいい』と解釈もできるんですよね。ちょっとそれは強引すぎる?(笑)
高森明勅
え〜〜はい、これはちょっと無理で、
西部邁
わっはっは(笑)
西部邁
まぁそうだねぇ・・・
高森明勅
2つしかないんですよ。
今村有希
はい。
高森明勅
天皇が退位した時か、崩じた時か。でも皇位継承って2つしかなくって、崩じた時は即位しろと言ってるので、こちらを変えていないのにですね、いやそれは禁止していないからといってもちょっと無理なのと、
西部邁
無理か(笑)
高森明勅
あとそうした場合ですね、じゃあ退位した天皇ってどういう立場になるのか。
西部邁
うん。
高森明勅
これも典範に「太上天皇(上皇)」ということを位置付けないと、
西部邁
うん
高森明勅
略していうと「上皇」その上皇がなくなったときはどういう葬儀をするのかですね、
西部邁
うん・・・
高森明勅
その上皇は皇族のメンバーに入っているのか入っていないのか、皇族のメンバーはこれだけがメンバーですよいうことを典範の中で規定しているんです、実は。
今村有希
はい。
高森明勅
で、そこから洩れてしまうということを考えるとですね、具体的な支障が生じるわけですから。
[*「退位」後の太上天皇=上皇としての位置付け / 皇族のメンバーから洩れてしまう問題が生ずる ]
西部邁
なるほど。まぁそれはそうだね。
高森明勅
ただ間違った議論がありまして、憲法変えなきゃいけないという話が早い段階からですね、実はメディアに流されて、まぁ私が意地悪に見ると、どうも読売新聞・日本テレビ系のですね、報道は常に「憲法改正が必要だ!」と。
[*憲法改正の必要性がある / 間違った情報がメディアに ]
西部邁
これはどういう理由ですか?
高森明勅
これはですね、ひとつは水をぶっかけてですね、譲位に向かう世論を押し留めようと。
西部邁
あぁ〜!
高森明勅
だって憲法改正必要だよと言ったら、(世論は)「あぁ無理だなぁ〜」と。
西部邁
あぁ〜。
高森明勅
あとは読売が間違った憲法草案をつくっていると思いますけども、(読売は)改憲派なので。
西部邁
あぁ〜。
西部邁
なるほどねぇ。
高森明勅
どちらにしても私は、非常に不純な動機があって、
[*攘夷へ向かう世論押さえる / 改憲利用の不純な動機 ]
高森明勅
でも憲法改正する必要が無いというのがこれまでの政府ですね、昭和46年、47年そして53年、繰り返し政府答弁されていて、典範は改正すれば法律的には可能だと。
西部邁
そうだよねぇ。
高森明勅
わざわざ憲法を変える必要はないというのが今までの(政府の)解釈ですから、憲法改正は必要ないと。ただ特措法だけでやると。
西部邁
うん。
高森明勅
特措法だけでやるとなると、今度は典範に従えと憲法に書いてるのに、典範は変えないで特措法だけでやっちゃえと、一代限りの、
西部邁
あーあー
西部邁
そうだねぇ。
西部邁
うん
高森明勅
ということで、典範改正が王道だろうと。
高森明勅
私自身も、あの(皇室典範)改正に必要な条文も検討しましたけども、追加すべき条文は一条だけですね。
西部邁
へぇー。
高森明勅
現行の条文を幾つか手直しすればいいというだけであって、一部に報じられて、或いは、識者たちが言ってるような大掛かりな制度変更が必要だというような話にはなりません。
西部邁
うん。
高森明勅
でしかもですね、今の天皇陛下が(昭和)64年の1月7日に即位をして、翌日から「平成」にかわったわけですけども、
今村有希
はい
高森明勅
平成元年の1月9日に、即位後 朝見の儀ということで、
西部邁
あぁ、ありましたねぇ。
高森明勅
初めて天皇として御言葉。『自分は此の度 日本国憲法と皇室典範の定めるところにより皇位を継承した』
[*日本国憲法及び皇室典範の定めるところ - 皇位継承 即位後 朝見の儀における御言葉〔平成元年1月9日〕]
西部邁
うん。
高森明勅
という言い方をされていまして、要するにこれは、前近代の歴代の天皇が即位をした時に、『天下の大法に従って自分は即位した』と。
西部邁
うん。
高森明勅
要するに、勝手にですね、
今村有希
はい
高森明勅
恣意的に即位したんではなくて、その古代以来のルールに則ってやっていると。
西部邁
うん。
高森明勅
憲法の定めるところにと言ったって、皇位は『世襲』というですね、そして親から子へ継ぐというルールですから、それに従って自分は即位したということを仰っている。
西部邁
うん。
高森明勅
ところがですね、憲法は勿論ですけども典範も変えないでですね、単独の特措法でですね、これはやっぱり皇位を継承するという重大事を余りにも軽んじていると。
[*皇位の継承は国家の重大事である ]
西部邁
先ほど(高森が)言った明治の時代にね、
今村有希
はい
西部邁
気分的に言うと戻して貰いたいということがあるもんだから言うのだけど、皇室典範の改正が必要でもね、ただの1行以上書いたことは、皇室内部の事情により、変更されることもあるべしと。
[*皇室典範改正 皇室内部の事情によって変更されることもあり得べし - 条項の追加で十分 ]
今村有希
はい。
西部邁
ただ、本当はそこは書かなくていいんだけど、条件もあってね、俗世の世界と皇室の世界というのは先ほど言ったように繋がっているわけですよ。
今村有希
はい
西部邁
条件というのはね、まぁこれは結論飛んじゃうけど、天皇は日本国家の象徴である。言葉を変えれば、文化的なHead(ヘッド)=元首であると。それでね、政治的な元首は、実は総理大臣でいいと。
今村有希
はい。
西部邁
しかしこれは通底で政治は何やってるかといったら政策を決めてるわけさ。あれ勝手にサイコロで決めてるんじゃないんですよ。
今村有希
はい
西部邁
ある「日本人の価値観」を基準にして、これは良くてこれは悪いということになるでしょう。じゃあ日本人の価値観は何なんだと、価値観はどこから来たんだと、転々と行くとその象徴の問題に、文化の問題に結び付くという意味で、文化元首と天皇元首はどこかで繋がっている。
[*天皇は “文化的元首” “政治的元首” は総理大臣 / 日本人の価値基準をめぐり文化的象徴と通底する ]
高森明勅
(頷く)
今村有希
はい。
西部邁
条件というのは、政治的元首、もっというとね、本当は内閣でもいいんですけども、そういうところと皇室の連絡がね、ちゃんと取れている限りですよ、皇室典範はいま書いてあることが基本だとしても、それに変更することも、皇室の事情によってあり得べしと、いうごく曖昧な1行を付け加えてそれで話はおしまい!!・・・とするのはダメですか?
[*文化元首〔天皇〕と政治元首〔首相〕が連絡取れている限り、皇室の事情によって典範を変更することもあり得べし ]
高森明勅
・・・苦笑。
西部邁
ダメだと彼(高森)は言うんだよ(笑)
今村有希
(笑)
高森明勅
いや、状況としてまず政府自体が皇室を、その聖なるですね、存在として、
西部邁
うん
今村有希
はい
高森明勅
聖域として扱っているのかと。
[*政府が皇室を聖なる存在として扱っているか ]
西部邁
(頷く)
高森明勅
現在の安倍政権のやり方というのはたいへん不安がありまして、宮内庁の幹部人事というのは他の象徴と違ってですね、その政治的な任用をしないんです。
西部邁
うん。
高森明勅
というのは、天皇を直接お支えするのが宮内庁ですから、
今村有希
はい
高森明勅
この宮内庁に政治的な人事を行うということは、その天皇を政治に巻き込むということになりますから、
西部邁
うん・・・
高森明勅
これまでの内閣は、実は法律上は可能であっても、直接ですね、総理大臣・首相官邸が手を突っ込むようなことは避けてきた。
[*政治的な任用をしない / 宮内庁の幹部人事をめぐり ]
西部邁
うん、なるほどね。
高森明勅
ところが、今回初めて、
今村有希
はい
西部邁
あぁ〜。
高森明勅
今まではだいたい各省庁の次官まで昇りつめて、それで民間に天下って1回政治的な臭みをきれいさっぱり洗い流した人が、宮内庁の次長に入って、それで皇室のルールを身に付けて長官になると、
西部邁
なるほど。
高森明勅
ということをやっていたんですけども、官邸から宮内庁の次長に行ってるんですね。(それで)次の長官という。こういうやり方が罷り通っているということは、非常に私は心配で、
西部邁
うん
高森明勅
だから、そういう面でもやっぱり皇室典範とか、或いは、宮内庁自体をもっと政治から離すという知恵が逆に必要。
今村有希
(頷く)
西部邁
なるほどね。
高森明勅
今回は緊急の場合ですから、もう陛下が平成30年ということを仰っていますので時間もありませんから、これはやるしかないんですけども、
今村有希
はい
高森明勅
本来であれば、宮内庁の位置付けであるとか、或いは、皇室典範の位置付けなんかもやっぱり考える。
西部邁
そうですね、本来はそうですね。
高森明勅
はい。
西部邁
これはどうです?もうね、最近はあまりちょっと下火ですけどもね、『男系相続』となってて、
今村有希
はい
西部邁
要するに女帝ね、が問題だと。そのうちに女系はもっと問題だと。なんならば、女系が、こんな下品な事いうと昔なら不敬罪になるけども、
[*女帝女系天皇をめぐり巷間に広まる狭量な話 ]
今村有希
はい
西部邁
その女性が・・・ちょっとホリエモン君って会ったことないんだけど・・・ホリエモン君にも失礼だな(笑)
高森・今村
(笑)
今村有希
はい
西部邁
こんなことも起こりかねないじゃないかみたいなことも巷間で議論しているわけですよ。そういうことをも知った上で言うんですけどね、やはり皇室というファミリーがね、
今村有希
はい
西部邁
つまりさ、男ひとりでは何ともしがたいんですよね。でしかも、男ひとりでは子供を産めないでしょう?
今村有希
はい
西部邁
それのみならず、ひとつの儀式だってね、天皇と皇后と相協力して、或いは、(皇室)ファミリー全体としてやっているわけですよ。とてもおひとりじゃ出来るようなそんな軽いお仕事じゃないわけですよ。
そうならば、考え方から言うとね、天皇論、天皇論ということになっているけども、それでいいんですが、天皇は実は『皇室の代表者』であると。こう考えて本当に大事なのはね、sacred family(セイクリッド・ファミリー)というか、半ば『聖なるファミリー』として考えられる皇室ね、
[*天皇は皇室の代表者、sacred 聖なるファミリー ]
今村有希
はい
西部邁
この歴史的連続が大事であって、そのことを確認すればね、女帝であるか女系であるかというのは少なくとも二義的三義的な問題である。
今村有希
(頷く)
西部邁
もしも国内の統合の象徴だけを考えれば、
今村有希
はい
西部邁
女性の方が遥かにある種の統合能力ね。(今村を指して)見てごらん・・・微笑ひとつでね、
高森明勅
(笑)
今村有希
(照笑)
西部邁
えっ?男共をたぶらかすだとかさ(笑)
今村有希
(笑)
西部邁
例えが、言葉が悪いけどね(笑)
高森明勅
それセクハラかもしれないですね(笑)
西部邁
(頭を押さえながら)セクハラか・・・(笑)
今村有希
(笑)
西部邁
なんかそのねぇ・・・英語でじゃあ言おう。Integration(インテグレーション)というんですけどね、
今村有希
はい(笑)
西部邁
大体の家庭・家族そうでしょう?家庭内部のね、この場合でいえば国民統合ですよ、それはやはりね、女性的な能力の方が人によりますけども、平均でいえば優れていると言えなくもない。
[*Integration 統合、女性的な能力の方が優れる ]
今村有希
(頷く)
西部邁
だから、女帝であっても一向に構わない。それから、民間から入ってきたって今の皇后陛下がそうですけどね、民間から入ってこられたけども、ともかく見事にね、その聖ファミリー、sacred family としてのですね、皇后としての仕事を見事にこなしているわけね。
[*聖 sacred ファミリーとして皇后陛下の見事な仕事 ]
今村有希
はい。
西部邁
それはもう見事ですよ。
高森明勅
(頷く)
西部邁
僕はそのね、聖ファミリーとしての皇室が大事なんだということから考えると、もっともっと皇室典範は “聖なるという条件を守りつつ” も、やはりそのあんまりせせこましくね、天皇の血統の連続とか何とかというところに論点を絞るべきじゃないと。
[*皇室典範は聖を守りながら、狭い論点に絞るべきでない ]
高森明勅
これものすごい大事なテーマで、
今村有希
はい
高森明勅
陛下御自身が譲位を望むということを仰られているので、それの緊急の対応と思われてそちらを優先的に取り組まれていますけども、実はそれに劣らずですね、実は時間の余裕も無い。
西部邁
うん。
高森明勅
でしかも、重大さからで言えば、“皇室そのものの存続に関わる事柄” ですから、今のですね、皇位継承のルールというのは “日本史上かつてない窮屈なルール” になっていまして、皇室の血筋、皇統である、男系である、男子である、
西部邁
うん
高森明勅
そして、現に皇族であって、しかも嫡系、要するに正妻の子供でなければならない。
[*皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する、皇族であり嫡系、正妻の子でなければならない ]
西部邁
なるほどね。
高森明勅
要するに、明治の典範で「男系の男子」という縛りを初めてつけたんですよね。
今村有希
(うん)
高森明勅
でさらに今回、嫡系、世の側室という制度が無くなって、正妻から必ず1人以上の子供が産まれなければ続かないと。
今村有希
はい。
高森明勅
こういうルールでやっていてはもう存続出来なくなることは自明なんですね。
西部邁
そうでしょうね。
高森明勅
で、明治以前のですね、形式上ですけども、法制史上最高の法的位置にあったのは、実は奈良時代に制定された『養老律令』(※藤原不比等)なんですよ。
西部邁
ほぉー。
高森明勅
これは面白いんですけどね、その養老律令の規定を見ると、女帝の子供は親王として皇位継承権があると、
[*奈良時代の “養老律令” の規定では女系を容認、女帝の子供は親王として皇位継承権がある ]
今村有希
はい
高森明勅
こういう規定が入っていて、実は前近代はですね、女系を容認していたんですよ。
西部邁
なるほどねぇ。
高森明勅
それを明治の典範で狭めて、今の典範でもっと狭めていると。それをですね、まともな形に広げていけば・・・だって側室と男系限定がセットだったわけで、で、側室というのは今後あり得ませんからね、
今村有希
はい
高森明勅
そうすると、やっぱりそこを見直さなければ皇室は存続出来ないと。
西部邁
うん。もういろんな人の意見をこう眺めてきててね、本当に今日お呼びした高森先生のご意見が歴史の系譜を踏まえていると同時に、論理的理論的にいろいろと consistent(コンシステント)=整合的、かつね、今の皇室の現状が抱えている困難をね、
今村有希
はい
西部邁
乗り越えるのに非常に現実的な対応策でもあると。今日の締め括りの司会者としての言葉は、皇室問題についてはこれ以上、西部も含めて高森先生以外の発言を禁じると!!
高森明勅
(驚く)
今村有希
(笑)
西部邁
というので締めていいですか?(笑)
高森明勅
はい(笑)
今村有希
ウフフフフ(笑)
西部邁
2週間ありがとうございました。
高森明勅
ありがとうございました。お世話になりました。
今村有希
ありがとうございました。
【次回予告】青山恵子の日本の歌教室 “維新の唄” :ゲスト 青山恵子[声楽家メゾソプラノ]〜西部邁ゼミナール〜