アメリカ帝国大混乱!!!① ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜
アメリカ帝国大混乱!!!① ゲスト:伊藤貫(評論家)〜西部邁ゼミナール〜
ゲスト:
伊藤貫:評論家、国際政治・米国金融アナリスト、近著「自滅するアメリカ帝国 〜日本よ、独立せよ」(文春新書)ほか多数
【ニコ動】
(西部邁ゼミナール)アメリカ帝国大混乱① 2016.08.13
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29440449
今村有希
今回は、アメリカのワシントンD.C.から評論家の伊藤貫先生がお越しくださいました。
今村有希
アメリカの大統領選挙では、民主党からはヒラリー・クリントン候補が、
今村有希
共和党からはドナルド・トランプ候補が選ばれ、11月の投票日に向け、熾烈な選挙戦が繰り広げられています。
僅か0.1%の富裕層が莫大な富を得て格差が広がるだけでなく、政治・経済・軍事をも支配するという異常事態に、アメリカ国民の不満が高まっています。
グローバル資本主義による共同体の破壊、諸外国への軍事介入と大きな問題を抱える“かつての帝国”は、今や大混乱に陥っています。
EUからの離脱を選んだイギリスに見られるように、グローバル資本主義はもはや断末魔の叫びであり、いま世界は大きな曲がり角に差し掛かっているようです。そこで今回から3回に渡り『アメリカ帝国大混乱!!!』と題しまして議論して頂きます。それでは先生方、宜しくお願いします。
西部邁
あぁ、どうも良いタイミングで来てくださいました。
伊藤貫
はい。
西部邁
良いタイミングというのは日本でね、安保法制なるものを巡ってね、
伊藤貫
はい、はい、
西部邁
サヨクは「戦争法反対」だと言って、ウヨクは「日米同盟でもって危険を負担しなきゃいけないんだ」と。
[*左翼“戦争法反対” 右翼“日米同盟危険負担” ]
伊藤貫
(うん)
西部邁
そういう馬鹿なケンカをやっているんですよ。
伊藤貫
はい。
西部邁
ところが両陣営ともね、アメリカという国がどういう国なのかについてはね、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
何も知らないか、少なくとも何も議論していない。一体それで戦争だの同盟だのってなんという沙汰だというねぇ・・・吾輩一人で頑張っていたんですけどね、
[*アメリカという国がどういう国なのか“左翼”も“右翼”も何も知らないか議論せず ]
伊藤貫
はい、
西部邁
そこに(伊藤が)来てくださったと。
伊藤貫
はい(笑)
今村有希
(笑)
西部邁
アメリカ人以上のアメリカ人が来てくれた。
西部邁
イギリスがEUから離脱してね、
今村有希
はい、
西部邁
僕はもちろんね、(離脱に)大賛成で、というのは昔あのサッチャーさんが引退した直後にイギリスが(EUに)参加するかどうかの時に、サッチャーさんたった一人はね、反対してたんですよね。
伊藤貫
(うん)
西部邁
それで僕はその時に自分の雑誌で「サッチャー弁護」をやって、日本で弁護しても何の効果も無いんですけどね(笑)、あの当時からね、もう由々しいことになるだろうと。いわんやあれは4、5年前になりますかね、ギリシャの経済危機だなんだって。もうEUの崩壊、亀裂というのはもう何年も前から殆ど自明のことなんですね。
[*ギリシャ経済危機2010年、EU崩壊は自明のこと ]
伊藤貫
はい。
西部邁
それがとうとう表沙汰になったというだけで僕は驚きはないのだけど、
今村有希
はい。
西部邁
その辺りのことを、話してもらうところから始めましょうか。
伊藤貫
はい。1989年にだのベルリンの壁が壊れて東西の冷戦というのが終わりまして、1991年にソ連帝国が崩壊したわけですね。そうすると1991年から93年にかけて、実は世界の経済システムと政治システムは二つのoption(オプション)があったわけです。
[*1991年ソ連崩壊後の世界政治経済二つのoption ]
伊藤貫
で一つのoptionは、アメリカが1945年以降のリーダーシップを維持して、アメリカの基準とアメリカの経済システムをスタンダードとするglobalism(グローバリズム)、それから世界の経済的統合と。でアメリカにとってEuropean Union(EU)というのは、その一つの道具として都合が良かったわけですね。
西部邁
うん。
伊藤貫
で日米同盟もそのまま堅持したいと。アメリカがユーラシア大陸の周辺部であるヨーロッパとか中東とか東アジアを全部支配すると。それがoption No.1と。
[*欧州、中東、東アジアをアメリカが支配するoption ]
西部邁
うん。
伊藤貫
でoption No.2が、当時ハーバードのハンティントン(サミュエル・P・ハンティントン)とか、それから当時まだ生きてたジョージ・ケナンとか、ジョージ・ケナンというのは冷戦の封じ込め理論を作った人なんですけど。それとかあとはキッシンジャー(ヘンリー・アルフレッド・キッシンジャー)とか。
そういう人たちが議論したのが、それは無理だと。
西部邁
うん。
伊藤貫
要するに、アメリカのやり方・経済システム・軍事覇権・政治システムを世界中に押し付けて統一しようとするのは無理だから、今後の世界はUnipolar(ユニポラール)要するに一極構造ではなくて、Multipolar(マルタイ〔マルチ〕ポラール)、多極構造になっていくと。
[*【一極構造】Unipolarから 【多極構造】Multipolarへ 「封じ込め政策」提唱のケナン(米外交官)等が主張 ]
伊藤貫
で多極構造になっていくと、18世紀とか19世紀のヨーロッパには、例えば5つか6つの大国があったわけですけれども、その5つか6つの大国が Balance of power(バランス・オブ・パワー)をやって、そしてそれぞれ別の経済システムと政治体制を持ちながら均衡していくと。でそれが、option No.2なわけですね。
[*【勢力均衡】Balance of power 19世紀以降の欧州、それぞれの経済システム政治体制を持ち均衡してゆく ]
伊藤貫
アメリカでは、もちろんoption No.1が勝ったわけです。
西部邁
うん、うん、うん。
伊藤貫
で当時のアメリカは要するに、日本に独立させるつもりはないし、それからEuropean Union=EUに対しても本音レベルでは独立させないと。
西部邁
うん。
伊藤貫
90年から91年に非常に面白い事件があって、それは何かと言うと、European UnionがEuropean military policyというのを持ちたいと。ヨーロッパ、西欧共同体が独自の軍事政策を持ちたいと。そしたらブッシュ政権(パパ・ブッシュ政権)の国務省の次官補が、日本で言えば局長なんですけど、(※身を乗り出して熱弁調で)ヨーロッパに乗り込んで「そんなことはさせない!!」と、「独自の軍事政策など何事だ!!」と、「独自の軍事政策を持とうとするんだったら、アメリカとヨーロッパの軍事協力関係は即座に切るぞ!!」と。
[*欧州独自の軍事政策に米国務省の次官補が圧力 ]
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
ヨーロッパ諸国は軍事情報とか軍事技術でやっぱりアメリカに依存していますから、即座に切るぞ!!と言われると困るわけですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
そこまでやってヨーロッパの独立を阻止しようとしたわけですね。何でかと言うと、アメリカのスタンダード、アメリカのglobal hegemony(世界覇権)を維持したいからで、その時に常にアメリカの言いなりになって動いていたのがイギリスなんですね。
西部邁
うん。
伊藤貫
要するに、European UnionとNATOで一番アメリカの言うことを聞くのがイギリスで、いつもアメリカの手先だったわけですね。
[*EUとNATOの中で米国の手先だったのが英国 ]
西部邁
うん。
伊藤貫
でアメリカから見ると、こんなに便利な国はないと。でイギリスの政治家たちも得しているんですね。イギリスの金持ちのトップ1%も得しているわけです。
西部邁
うんうん。
伊藤貫
それで要するに、イギリスのエスタブリッシュメントもそれでいい、それでいいと言うんですけども、イギリスの庶民は(それが)なんとなくおかしいなと。なんで自分たちの利益とは関係無く、いつも自分たちの政策がアメリカのワシントンか、それともヨーロッパ、ベルギーのブリュッセルで決められるのかちゃうんだろうと。何か分からないけど、自分たちにとって一番大切な外交政策と経済政策がいつも誰か別の奴に決められていると。
[*重要な政策を他人が決める、英国庶民の不満が広がる ]
伊藤貫
でそういう不満が広がっていて、しかも過去25年間、貧富の差がどんどんどんどん広がっていくわけです。で、先進産業諸国で貧富の差が一番酷いのがアメリカなんですけども、ヨーロッパではイギリスが一番酷いんですよ。
[*欧州における貧富の差、一番大きいイギリス ]
西部邁
あぁ〜。
伊藤貫
そうすると、自分たちが外交政策と軍事政策、経済政策を自分たちで決めていないということに対する不満があって、そこに貧富の差がどんどんどんどん広がっていくというので、イギリスのエスタブリッシュメントはもうほぼ unanimous(ユナニマス=満場一致、全員一致)、全員のコンセンサスとしてEuropean Unionに留まるべきだと言ってたのに、イギリスの国民が反発して出て行く(Brexit)ことになったと。
[*EU残留のestablishment EU離脱の英国民 ]
伊藤貫
でそれも1991年から93年にかけて多極状態を選ぶか、それともアメリカを中心とする一極状態を選ぶかという2つのoptionがあった時に、日本にもヨーロッパにも相談なく“一極状態”で、American Standardを世界中に押し付けるということを選んだわけですね。
[*1991年から1993年、多極か一極かの選択肢 ]
伊藤貫
でそこらへんでちょっと無理があったというのが(冷戦終結後の1991年から)25年経って、こういう結果になってきたと。
[*アメリカン・スタンダードを世界に押付けた25年後 ]
西部邁
まぁ僕も同じ意見ですね。
伊藤貫
はい。
西部邁
相談なくと言ったって、日本人は相談もされていないのに御自ら「大賛成!!」と。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
American Standardによるglobalism大賛成と!!
今村有希
(笑)
西部邁
・・・言ってるような国でね、僕はその頃からずーっとたった独りでいろんなこと書いた。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
いつも孤立してて・・・不愉快極まりないんで、その逆で最近ね、
今村有希
はい、
西部邁
老人でありながら愉快でねぇ・・・
伊藤貫
えぇ。
西部邁
ようやっとイギリスが(EUを)脱退してくれるし(笑)そういえばギリシャの経済危機の時に、僕らの雑誌(※表現者)で「EUの没落」というテーマでね、頑張ったりいろいろやってきたんですけど、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
ようやっとイギリス人がね、一般庶民でしょう、本音でもって。
[*一般庶民の本音が表れたイギリスのEU離脱 ]
伊藤貫
(頷く)
西部邁
ところがね、日本という国は酷い国で、テレビに出演している学者・評論家・ジャーナリストがね、昨日まで民主主義万歳で、何についてでも民意を問え!民意を問え!と叫んでた奴らがね、
今村有希
ウフフフフ(笑)
西部邁
急にですよ、
伊藤貫
はい、
伊藤貫
うん、うん、うん。
西部邁
もう日本人相手にしたくないの(呆)
今村有希
うん。
西部邁
だって昨日までですよ、民主主義、民主主義、民意に問え、民意に問えと、国会で何が決まろうが、そらぁ自民党が多数で決めたことじゃないかと、民意は反対しているなんて言ってた連中たちが、ヨーロッパの状態を見てね・・・国民投票を疑えと!!
[*民意に問えと叫んでいたが、EU離脱で国民投票を疑えと ]
伊藤貫
うんうんうん。
今村有希
(笑)
西部邁
自分の言ってることすら何一つ自信・確信という以上に本気じゃないんですね。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
もう「YesはNoであり、NoはYesである」というね、これ昔、ジョージ・オーウェルの『Big Brother』という全体主義を表す時に使った皮肉な言葉なんだけど、国民投票?民意?それに従うのか従わないのか、昨日までYes!!と言ってた人が、今日はNo!No!!と言ってる、そういう国ですからね。
[*ジョージ・オーウェル小説に登場するBig Brother ]
伊藤貫
(頷く)
西部邁
僕は本当に最近嬉しいのはね、ようやっとイギリスが脱退してくれた、で、その大西洋の向こう側にはアメリカという国があって、
今村有希
ウフフフフ(笑)
西部邁
これは数週間前から事情は詳しくないのでありますが、あの乱暴な顔をした、乱暴な言葉をしたトランプさんが、
今村有希
トランプさん(笑)
伊藤貫
えぇ。
西部邁
これは本当に嬉しかったのはね、まぁ最近は言っていないらしいけど、いろんなこと言ってる人なんでしょうけども・・・日本?韓国?何でそんな奴らのために俺達が金を使ったり犠牲になったりしなきゃいけねぇんだと。自分の国は自分で守りやがれと。核武装したけりゃじぶんでせい!!・・・僕が言ってきたことなんだけど、日本はそれを言っただけでパージされる。
[*日本、韓国のために何で俺達が金を使い犠牲に、自分たちの国は自分で守れ、核武装は自分たちでやれ ]
伊藤貫
(頷く)
西部邁
だけど、よくぞ言ってくださいましたね、トランプさん。貴方が何者かよく存じ上げませんが、日本のことなんか知らねーと。俺達は俺達のことで精一杯だと言ってくれてただけでね、こんなありがたい御方はいないと(笑)
伊藤貫
えぇ。
西部邁
それでもう嬉しくてさ(笑)と思ってたら(※日本よ核武装せよ!の)伊藤さんが来てくれた。
伊藤貫
はい(笑)
今村有希
(笑)
西部邁
(どうぞ)
伊藤貫
アメリカが世界中の経済システムと軍事システムを支配するというのに必要なアメリカのGDPというのは、アメリカの軍事学者とか国際政治学者に言わせると、世界の経済の少なくとも4分の1(世界の総GDPの25%)は支配していないと、そういう一極体制は出来ないと。
[*アメリカによる一極支配、世界支配に必要なGDP ]
伊藤貫
それでアメリカという国は非常に変わった国で、世界大戦の直後は世界のGDPの50%を支配していたんですよ。
西部邁
すごいねぇ。
伊藤貫
だが、それはもうその当時のアメリカにとっては一極体制をつくるのは簡単だったのですけども、ニクソン政権の時にもう既に(世界のGDPの)30%まで下がっていたんですね。でそれが冷戦が終わった頃には25%ぐらいにまで下がってきて、もうその時にかなり危なかったんですよ、25%にできるかどうかと。
それから、最近はインドなり中国なりがどんどんどんどん大きくなってきましたから、いわゆる経済学で言う Purchasing power(パーチェーシング・パワー)=購買力で見ると、今のアメリカのGDPというのは世界全体の経済規模の16%か17%ぐらいしかないんですよ。
[*第二次大戦後のアメリカは世界のGDP50%を占める→ ニクソン政権時30%→ 冷戦後25% →現在16% ]
西部邁
あーあーあー。
伊藤貫
そうするとやっぱりね、本気で一極体制をつくろうとするんだったら30%はないと、世界中を支配するんだという能力が無いのに、「まだ俺たちだけが世界を支配するんだ!!」ってね、これ無理があるんですね。
で、トランプが出てきた理由は僕はよく分かってて、要するに、1945年から47年にかけてアメリカがつくったシステムというのは、アメリカがヨーロッパと中東と東アジアを全部支配するということで、それに対して、陸軍と海兵隊がやっぱり100万人ぐらい必要なんですね。
[*欧州、中東、東アジア支配、陸軍海兵隊100万人必要 ]
伊藤貫
ところが、今のアメリカというのは50数万人ぐらいしか持っていないんですよ。同じコンセプトで世界を支配するというのは無理なんですけど、そこが面白いところで、アメリカの外交政策エスタブリッシュメントと、それから軍事政策エスタブリッシュメントという奴らはやっぱり“支配欲が強い”んですよ。
[*米国の外交・軍事 establishmentの支配欲 ]
西部邁
冷戦構造の余韻ですか?
伊藤貫
というか、僕が思うに人間の性(さが)ですよ!
西部邁
性か(笑)
伊藤貫
うん、性!(笑)要するに、「人を押さえつけて、他の国を押さえつけて俺達だけが支配したい!!」と。でね、やっぱり人間というのは他の人を支配すること、それから他の国を支配すること自体が生きる喜びというか、生き甲斐なわけですよ。
西部邁
悪く言えば、childish(幼稚)でviolent(暴力的)な、
伊藤貫
うん、えぇ。
西部邁
それがアメリカ人の本性の全てとは言わないまでも、奥深くにあるなと。
伊藤貫
えぇ。ラテン語で言うと、アニムス・ドミナンディ(animus dominandi)という言葉になりますね。
西部邁
あぁそうか。支配本能ね。
伊藤貫
えぇ、支配本能。
[*ハンス・モーゲンソーの著書の中で、権力というものがどれほどに大切な重要なものかという政治学説を展開した時に「アニムス・ドミナンディ(animus dominandi)」というラテン語を用いた。animus(アニムス)とは、アニマル(animal)と関係あり「衝動」「活力」、dominandi(ドミナンディ)はドミネーション(domination)、「支配」。つまり『「支配しようとする衝動」こそが、少なくとも政治学における根本前提である』とモーゲンソーはつづった。
【Animus Dominandi】"優越せんとする悪意を伴わずにはいない意思"と訳され、ハンス・モーゲンソーが唱えた。これにより、"教会は政治団体へ、革命は独裁へ、郷土愛は帝国主義へ形を変える"という。人間は勢力拡大(power)を求めるという前提。*1 Morgenthau,Scientific Man, pp. 194-195( http://www.geocities.jp/vivelejapon1945/vocabulaire.html )]
伊藤貫
でね、トランプが出てきて突然人気が出たのは、トランプは、「俺達は借金国じゃないか!」と。
西部邁
うん(笑)
伊藤貫
「世界一の借金国だろうが!!」と。
今村有希
笑(伊藤のオーバーアクションな熱弁に思わず笑う)
伊藤貫
「毎年の貿易赤字を見てみろ!」と。「こんなに貿易赤字があって、例えば何でイスラム教諸国でこんなに長く戦争を続けるてるのか?」と。
[*世界一の借金国がなぜ戦争を続けている(トランプ) ]
伊藤貫
今のアメリカはアフガニスタン、パキスタン、イラク、シリア、リビア、イエメン、ソマリアと、7つのイスラム教諸国で戦争をやってて全部失敗しているんですね!!
[*アフガニスタン、パキスタン、イラク、シリア、リビア、イエメン、ソマリアで戦争し全て失敗の米国 ]
西部邁
大失敗(笑)
伊藤貫
そう!全部大失敗しているわけ。でね、アメリカ国民は(それを)おかしいなと思っているわけ。
西部邁
オバマさんが大統領になった時に、こんなことが書いたんですよ。
伊藤貫
えぇ、はい。
西部邁
僕の直感だったんですけどね、どうしてそのオバマという・・・簡単に人種的に言うとね、白と黒のハーフの人がね、突如プレジデントになるかと。これはアメリカ人の潜在意識における、ある種の「自己不安」ね。これ人種葛藤だけじゃないんですけど、所得格差の葛藤その他、いろんな葛藤が我が国には渦巻いていると。その代表的には人種間葛藤ね。その時に、その不安を治める為にはですよ、これは昔ヨーロッパでは、Bonapartism(ボナパルティズム)と言ってたんですけどもね、両勢力と直接関係の無い、中間勢力ね。で、ある種の権威のある、それでナポレオン3世で、それがナポレオン・ボナパルトという奴だったんだけど(笑)
[*【Bonapartism】:両勢力と直接関係のない勢力、ある程度の権威、ナポレオン・ボナパルト ]
伊藤貫
(うんうん)
西部邁
それがね、不意にそれまで政治に関係無かったのに、不意にそれをトップに持ってくることによって両陣営をなだめるというね。
今村有希
へぇー。
西部邁
それでそれをBonapartism(ボナパルティズム)と言われてたんだけど、
今村有希
はい、
西部邁
まぁそれに引っ掛けてね、オバマさんが出てきたこと自体が、アメリカ人が人種葛藤をはじめとする様々なる内部矛盾をね、たとえ潜在意識にせよ直感していて、
伊藤貫
はい、
西部邁
そういうものの一時凌ぎとしてオバマを出したんじゃないかということを、あろうことか8年前ですか、書いた覚えがあるんだけど、
[*人種間葛藤の内部矛盾、一時凌ぎでオバマを選出か ]
西部邁
僕が言ったことが正しいかどうかはともかく、今のアメリカのあれでしょう、先ほど言った、GDPの問題もあるけども、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
国内的なそういう所得格差・人種格差、葛藤の問題というのは、日本人に知らされている以上に遥かに深刻なんでしょう?
伊藤貫
僕は実は、オバマが2008年の大統領に出てきた時から、この人はインチキだなぁと思ってたんですよ(笑)
西部邁
あぁ(笑)
伊藤貫
本当のことを言うと、僕は意地悪だからインチキだなぁと思った理由は2つあって、アメリカ人というのはある意味で、支配欲が強い一方、ものすごく単純なんですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
でアメリカの政治家というのは、マスコミ人もそうなんですけど、もう決まりきったレトリックのパターンというのがあるんですね。
西部邁
あぁ〜、あるね。
今村有希
えぇ〜?!
伊藤貫
すごく優等生的に聞こえる、politically collect(ポリティカリー・コレクト=政治的に正しい)に聞こえる。しかも、morally sensitive(モラリー・センシティブ)とかいう感じでね、道徳的な感受性がすごく強くてとかね、でそういうのは僕はワシントンに長く住んでいるからもう飽き飽きしているわけ。そういうレトリックを。
[*オバマは道徳的感受性や巧みなレトリック演説 ]
伊藤貫
だけど、オバマはしらーとしてそういうレトリックをペラペラペラペラ喋りまくるわけ。この前の広島で言ったのなんて、あんなのウソ!ウソばっかりなわけ!!(笑)
西部邁
うん。
伊藤貫
だけど、僕はcynical(シニカル)だからウンザリしているんですけども、そういう白々しいレトリックをペラペラペラペラ喋るのが(オバマは)上手いと。
でもう一つは、(西部)先生の仰ったように、アメリカ人、特にアメリカの白人は実は人種問題が今後どうなるんだろうと。
西部邁
うん・・・
伊藤貫
1950年代、60年代までは、アメリカ人口の8割ぐらいまでは白人だったわけですよ。それが今はもう6割台になってきているわけですね。そして、あと20年ぐらいすると5割を切るんですよ。
[*1950、60年代までは人口の8割以上が白人、現在は6割ほどで、20年後には5割を切る ]
西部邁
すごいねぇ〜。
伊藤貫
そうすると、人種問題は今後のアメリカでどんどんどんどん悪くなっていくというね、人種問題を解決してくれるのだったら、それはもうオバマに任せたいと。
西部邁
途中で悪いけどさ、
伊藤貫
えぇ、
西部邁
今村さんね、アファーマティブアクション(affirmative action)ってご存知?
今村有希
知らないです、何ですか?
西部邁
ちょっと教えてやって。
今村有希
(照笑)
伊藤貫
はい、あの、1965年にあの公民権法案とか、あの投票権のcivil-rights registration(シビルライツ・レジストレーション)とか決まった時に、要するに、黒人と白人を平等化しなければならないという時に、
今村有希
はい、
伊藤貫
それじゃ学校でテストしたりする時に、言っちゃ悪いんですけど、やっぱり黒人が白人と競争レベルが競争できるところまでいっていないわけですよ。そうすると、非常に人為的に、人工的に、黒人の成績とか持ち上げてやって、それで例えば、いい大学に入れるのにも白人と露骨に競争させると上手くいかないような黒人もどんどんどんどん、ヒスパニックもそうなんですけど、黒人の方がその恩恵を受けているわけですね。
[*【affirmative action】:黒人,少数民族、女性など歴史的,構造的に差別されてきた集団に対し,雇用,教育などを保障する特別優遇政策。雇用や昇進、試験などで優遇することで社会的差別を是正する。アメリカにおいては、リンドン・B・ジョンソン大統領(在任 1963~69)の時代に導入 ]
今村有希
はい。
伊藤貫
で(affirmative actionの)問題は、今から6年か7年経つと、20歳以下の人口の半分以上が、「非白人」になるわけですよ。
西部邁
スゴいでしょう?
今村有希
はい。
伊藤貫
そうそう。そうすると、最近の半世紀間にaffirmative actionというのをやって、それほど学校の勉強なり、仕事ができない白人とかヒスパニックの人たちもこう(黒人を)無理やり持ち上げてきたわけですね。
今村有希
はい。
伊藤貫
だけど今から6、7年経って・・・
西部邁
(今まで持ち上げられてきた)そういう人たちが多数派になる!!
[*6、7年後には、20歳以下の人口で非白人が5割以上に、affirmative action 受けた少数者が多数派に ]
伊藤貫
そう、多数派になったら!!
今村有希
ウフフフフ(笑)
伊藤貫
多数派をaffirmative actionして持ち上げたら、これはもう持たないわけですよ!
西部邁
持たない。
伊藤貫
そうすると、今から6年から7年経つと必ずね、つまり白人が少数、白人の子供が少数派になったのに、それでも「非白人」を優遇するのか?という問題が出てくるわけでしょう。
今村有希
(うん)
伊藤貫
でこれね、ここで本当のことを言っちゃいますけど、これって解決不可能な問題なんですよ。
西部邁
そうですね
伊藤貫
えぇ。だから、アメリカ人はみんなそのことを予感していて、不安感があるんですよ。
西部邁
うん。
伊藤貫
それで、オバマがなんとかしてくれるんだったら、オバマに投票して任せようと。で実際にはオバマは何もしなかったというのが現実なんです。
西部邁
うん。
西部邁
いずれ colored people(カラード・ピープル)、Hispanic(ヒスパニック)も入れてね、
伊藤貫
はい、
西部邁
これまでの minority(マイノリティ)がいずれ majority(マジョリティ)になると。ところがその人達は affirmative(アファーマティブ=肯定的)、その人達を肯定するような、弁護するようなね、そういう政策・国家体系になっている。
今村有希
(頷く)
西部邁
白人は反発するだろうが、その反発に迎合したら多数派が怒るに決まっているわけで、
今村有希
(笑)
西部邁
収拾がつかない。
伊藤貫
えぇ。
西部邁
伊藤さんのご意見はともかく、我がJAPの1人として言うと・・・
伊藤貫
はい(笑)
西部邁
(小さい声で?)ざまぁみやがれ!!
一同
(笑)
西部邁
というので1週目は終わることにして、2週目に入りましょうか。
今村有希
はい、ありがとうございました(笑)
伊藤貫
ありがとうございました(笑)
【次回】今週の続編です。